第八芸術鑑賞日記

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皇帝ペンギン(2005)[旧作映画]

2007-08-21 00:23:52 | 旧作映画
 05/8/1、恵比寿ガーデンシネマにて鑑賞。6.0点。
 ドキュメンタリーながら、全米、日本ともにトップ10入りしたフランス映画。皇帝ペンギンという動物の、愛嬌ある外見の裏に隠された過酷な生態が伝わってきて、その凄さがわかる。てか単純にヒナが可愛いってのも良い。
 うーん、イメージ通り、予想通りのドキュメンタリー。こういう映画は、もちろん素晴らしい内容を持ってはいるんだけど、その内容の素晴らしさはNHKスペシャルをいい番組だよねって言うのと同じで、映画作品としての質がどうなの? という話になると何とも言えない。
 ドキュメンタリーに欠かせないナレーターが三人。一人は普通の意味でのナレーターで、後の二人の男女はそれぞれペンギンの雄雌の気持ちを代弁するセリフをしゃべる役割。「セリフ」が入った時点で、荘厳なドキュメンタリー作品というよりも家族向けエンターテインメント色が強くなっている。このセリフに関しては、映像におけるペンギンの行動がどういう意味を持っているのかを、必要最低限な分量でうまく伝えられていると思うので、それなりに成功していると言えるだろう。
 だが決して、ほのぼの動物映画などではない。ちゃんと過酷な面を描いている。卵の扱いに慣れていない若い夫婦が自分たちの卵を割ってしまい、南極の極寒の風が割れ目から凍りつかせていくシーンなどは、卵の中に息づいていたはずの生命が一瞬で消えていくのを目の当たりにするようで恐ろしい。また、南極にはそれほど外敵が多いわけではないが、それでも二種類出てくる。海の中でアザラシがペンギンを追いかけ捕らえるシーンは、一般的なイメージではペンギン同様「可愛い」動物であるアザラシの怖さを見事に表しているし(歯の並んだ口をグァっと開けるカットなどはあざといが……)、鳥がヒナを狙って現れ、首をつかむシーンは痛々しい。
 それにしてもペンギンの生態には驚嘆させられる。夏の間は3ヶ月にわたって海で餌を摂り続けるが、その後は繁殖のために全てが費やされる。繁殖地へ向かっての行進→繁殖→雌は雄に卵を預けて海へ栄養補給に行き、雄は立ち続けてえんえんと4ヶ月にわたって寒さの中卵を温める→ヒナが孵る頃に雌が帰還し、ヒナへ栄養を与える→雄は妻との一瞬の再開の後、自らの栄養補給のために疲弊しきった体でただちに海へ向かう。てか、なんか見てて「もっと海の近くで産めよ!」って言いたくなった。海から遠く、硬い地面の上(氷上)でないといけないんだってさ……
 ベタと言えばベタだが、最後はヒナが初めて海へ入り一人立ちを始めるシーンで終わるので、観終わった後の気分はすがすがしい。ペンギン好きになることは請け合い。
 あ、あと音楽が微妙に映像に合っていない気が……


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