第八芸術鑑賞日記

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2007年ベストテン

2008-01-01 23:28:09 | 雑記
 あけましておめでとうございます。


 12月の後半は、学校の集中講義、忘年会的イベント、クリスマス、帰省、同窓会、風邪で寝込む……と慌しかったので(更新も10日程サボりましたね)、12/15、12/22の公開作をはじめとして観たい作品の取捨選択が出来ていなかったりもするのですが、トップ10は容易に動かなさそうなので選んでしまいます。後日「もっと凄いのがあった!」となれば逐次修正ということで。
 対象は2007年1/1~12/31に日本で初公開された映画作品のうち、俺が劇場で鑑賞した63作品(レビュー未掲載のものあり)。63本観ても8.5点(大傑作)以上が出なかったのは残念だが、俺の基準がだんだん厳しくなってきているのかもしれないという気もする。ちなみに2007年は旧作は220本くらい観たかな。


 【次点】ブラックブック(ポール・ヴァーホーベン)7.0点。
  ……サスペンスでミステリーで戦争でエロスでドラマ。サービス精神ありすぎで軽さも感じてしまうが、ヴァーホーベンらしさ爆発。逆に凡百の監督なら扇情的にしてしまいがちな殺人をひたすら静謐に描いてみせるクライマックスがまたカッコいい。


 【10位】ブラッド・ダイヤモンド(エドワード・ズウィック)7.5点。
  ……テンポのよさ、明快なキャラ、適度な情報量のストーリー、次々にアクションを紡いでいく社会派エンターテイメントの名作。終盤、山腹に腰を下ろすディカプリオが一枚画として素晴らしい。


 【9位】デジャヴ(トニー・スコット)7.5点。
  ……冒頭10分でこの監督は凄いと思えない人とは映画観が違うんだろうなぁと思う。個人的には一昨年の『ドミノ』の方がさらに好きだったが。


 【8位】アポカリプト(メル・ギブソン)7.5点。
  ……メル・ギブソンはどこに行ってしまうのでしょう。『パッション』で敬虔なキリスト教徒の観客をショック死させた次がこれですか。全くもって目が離せない。


 【7位】パフューム ある人殺しの物語(トム・ティクヴァ)7.5点。
  ……極めて「映画らしい」映画。バカでしかないが、こんなバカを仰々しく一級品の作品にしてしまえるなんて素晴らしい。ダーレン・アロノフスキーの『ファウンテン』と並ぶ今年最大の怪作でもある。


 【6位】絶対の愛(キム・ギドク)7.5点。
  ……久しぶりにギドク大暴れ。「顔の整形」という題材が、単なる社会風刺とか一発ネタとかを超えて、驚異の映画的カタストロフィを呼ぶサスペンスにまで達してしまっている傑作。しかし演出は相変わらずあざとくて若い。安部公房の『他人の顔』が好きな人にも観てほしい。


 【5位】それでもボクはやってない(周防正行)8.0点。
  ……あまりにもストイックに映像の遊びを削ぎ落としてしまった生真面目さには、俺の映画観が激しく反発する。しかしそれでも、これだけよくできていたら認めざるをえないじゃないか。


 【4位】バベル(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)8.0点。
  ……時間軸や場面をいじくりまくった編集に「あざとい」とか「作為的」とかいう批判もあるらしいが、これこそがD.W.グリフィス以来の映画史90年の伝統なのだ! と徹底的に擁護したい。日本人俳優がどうとか、何か一つのポイントに注目して観ないこと。様々な時間と空間が交錯しながら展開していく流れのダイナミズムそのものがこの作品の全てだ。


 【3位】悪夢探偵(塚本晋也)8.0点。
  ……揺れる画面。金属質の効果音。純粋に抽象的なイメージだけで五感に直接訴える、映像という名の暴力。大画面、大音響で観ないなら大幅に価値は下がるが、そうした機会があれば必見。


 【2位】パンズ・ラビリンス(ギレルモ・デル・トロ)8.0点。
  ……現実パート(スペイン内戦を描くハードなドラマ)、ファンタジーパート(グロテスクなイマジネーションの炸裂)双方が主人公の少女を痛めつけ続ける苛酷なお伽噺。しかしこの美しさはどうだろう! 『ロード・オブ・ザ・リング』と共に語り継ぐべき21世紀最初の十年の傑作ダーク・ファンタジー。


 【1位】グラインド・ハウス(USA ver.)(ロバート・ロドリゲス/クエンティン・タランティーノ)8.0点。
  ……長編二本立てオムニバスとしてのサービス精神が尋常ではない。日本のほとんどの劇場ではそれぞれ単独での公開だったが、是非セットで観るべき(最強なのは『デス・プルーフ』のラストなわけだが、グロいのが苦手でなければ『プラネット・テラー』でのゾンビとの死闘も見逃すべきでない)。まぁ一般人に勧めるときには避けるけれど。


 【番外】インランド・エンパイア(デヴィッド・リンチ)採点不能
  ……大々傑作『マルホランド・ドライブ』以来五年ぶりの新作を届けてくれたのは嬉しいが、ちょっとシマリが無い。一回観ただけなので評価は保留するが、次に観る機会があるかは全く保証の限りでない。


 【その他】
  ……トップ10に邦画が少ないので邦画の3位以下を挙げておくと、『クワイエットルームにようこそ』『キサラギ』『秒速5センチメートル』『Always 続・三丁目の夕日』『舞妓Haaaan!!!』あたりまでが7.0点。『嫌われ松子の一生』と『フラガール』があった昨年は名実ともに邦画活況だったと言っても許されると思うが、今年は流石に無理がある。
 洋画のランク以下では、『ボーン・アルティメイタム』『スパイダーマン3』『ダイ・ハード4.0』『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』と続編たちの出来がよろしかったかと。フィンチャーの新作『ゾディアック』も良作。上の邦画と合わせてこの辺までがベスト20圏内か。ヨーロッパものも観ていないわけじゃないが、個人的には特筆したい収穫はなし。99歳のオリヴェイラがどこまで頑張るのか追いかける決心をしたりしたけど。
 オスカーの『ディパーテッド』は悪くないけどまぁどう考えても『バベル』。ドキュメンタリーでは相変わらず『シッコ』のムーアが面白い。そして個人的な今年最大のガッカリは6/2の北野武VS松本人志が両者敗退に終わったことか。
 今年のスタートはとりあえずバートン、ジョニデのコンビによる新作に期待ですね。



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4 コメント

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ディパーテッド (kossy)
2008-01-01 23:53:05
普通ならオスカー作品賞をとった映画は上位に来ることが多いのに、日本じゃ「インタナル・アフェア」のファンが多いってこともあるかな~
新年早々「スウィーニートッド」!
楽しみにしています。
今年もよろしくお願いします。 (non)
2008-01-02 07:37:43
明けましておめでとうございます。
TBありがとうございました。

昨年も色んな作品が公開されましたね。
挙げられている作品の中でいくつか私のランキングと重なっているので嬉しいです☆

今年も素敵な作品と出会えますように。
どうぞよろしくお願いします。
日本では (0miwaken@管理人)
2008-01-04 01:15:47
>kossyさま

多くの人のベストから『ディパーテッド』が漏れる一方で、『リトル・ミス・サンシャイン』『硫黄島からの手紙』(これは日本だと昨年ですが)『バベル』あたりをランクインさせる人は散見されますものね。うーん、スコセッシ頑張れ!

スウィーニートッドには大期待です。
こちらこそ (0miwaken@管理人)
2008-01-04 01:19:51
>nonさま

コメントありがとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。

昨年は見逃した作品の中にも心惹かれるものが多くて、見たい映画を見尽くすことって不可能だなぁ、と痛感した一年でした。

今年もたくさんの素晴らしい作品を楽しみにしましょう!