瀬戸の住職

瀬戸内のちいさな島。そこに暮らす住職の日常。

裏を見せ、表を見せて散るもみじ

2007-11-10 | Weblog
この秋は例年になく暖かく、山々の紅葉の色づきも遅れているようです。

裏を見せ、表を見せて散るもみじ

良寛さんの晩年の句です。
裏も表もためらい無く見せながら、はらはらと地に落ちていくもみじ葉に、生死する己がイノチの有様を投影し、シンパシーを感じていたのでしょうか。

裏と表は、“人間の計らい”により生じます。
生に対する死、若さに対する老い、楽に対する苦、得に対する損、などなど。
誰だって裏より表を好みます。
人間のサガですから。

「ウチを信じれば良いことづくめ。こっちへいらっしゃい」
などと、宝くじの販売合戦をしているような宗教が世の中たくさんあるようですが、この人生、どうやってもイイトコ取りばかりはさせてはもらえません。

オギャーと吐く息から始まり、最後にスゥっと引き取る息。
刻一刻、体内で生まれ死んでゆく細胞。
成長から老いに変化していく肉体。
表裏が一体となっているからこそ、豊かなイノチではないでしょうか。

晩年の良寛さんのこの句は、散っていく1枚の葉にはかなくも豊かなイノチを見ていたような気がします。

地に落ちた葉は、やがて土のイノチに還り、木のイノチ、そして山のイノチへと繋がっていきます。