「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

僕がサイクリストになった、いくつかの理由(16)

2012年08月28日 | アホな自分
「で、何、それで昨日は帰ってこなかったわけ?」

と、僕は、月曜日の夜、華厳寮の203号室で、イズミに言われていた。

「いやあ、二人共感情的に盛り上がっちゃってねー・・・まあ、でも、これが最後さ。あいつも言っていたし・・・いつまでも迷惑かけられないから・・・」

と、僕は言った・・・。


「わたしは女優として強く生きていく・・・いつまでも鈴木さんに迷惑かけられないもの・・・それにわたし気づいたの・・・」

と、エイコは暗いベッドの中でつぶやく。

「わたしも、支えられる側の人間なんだなって・・・たくさんのひとに支えられて輝く・・・そういう人間なんだって・・・」

と、エイコは言う。

「だから、女優として輝いて・・・支えてくれる人たちに恩返しをしていく・・・それが私の人生のしあわせ・・・それがわかっちゃったの・・・」

と、エイコは、少し涙ぐみながら・・・ベッドの上で僕の顔を見ながら、ささやている。

「だから、わたしは、わがままを言って・・・舞台女優の星を目指して、鈴木さんと別れるの・・・そういうストーリーにしておいて・・・」

と、エイコは言う。

「鈴木さんの中では・・・」

と、エイコは涙ぐみながら、話した。


「ということは、エイコは新しい夢に向かって歩き出して・・・それで僕のところを卒業した・・・そういうことだな」

と、僕が言うと、

「そうね・・・そういうことにしておいて・・・」

と、エイコはつぶやく。

その目には涙があふれていた・・・。


「ま、あいつは、女優として成功する夢を持って、俺の所を卒業した、卒業生・・・そんなところだよ」

僕はそういう感じで、イズミに説明した。

「そう・・・じゃあ、お互い納得ずくで綺麗に別れることが出来た・・・そういうことだね」

と、イズミは納得する。

「そう・・・もう一度、最後に出会えて、よかったよ・・・そのあたりはね」

と、僕が言うと、

「パパはいいなあ・・・俺のところなんて、なんで彼女が別れを決めたかなんて、わからず仕舞いだもの・・・俺も最後に会ってみるかな・・・」

と、イズミは、真面目な表情で言う。

「まあ、自分の人生のことだからな・・・自分で決めるんだな・・・」

と、僕が言うと、

「ああ・・・俺も電話かけてみようかな・・・」

と、イズミは財布を持って部屋を出ていく・・・。


「鈴木さん・・・」

エイコは、僕の下で僕を見上げながら笑顔になる。

「ありがとう、鈴木さん・・・鈴木さんはいつもわたしを気持ちよくしてくれたわ・・・だから、最後にお礼を言おうと思って・・・」

少し紅潮したエイコは、その白い肌に汗を浮かべて、笑顔になる。

「鈴木さんに教えてもらったことだから、最後まで責任をとってもらおうと思ったけど、うまくいかなかったわ・・・」

と、エイコは少し笑う。

そして、エイコは真顔になって、

「最後にもう一度だけ・・・思い出にして・・・」

エイコはそう言って目を閉じる・・・。


「お、パパ帰ってたか・・・昨日はエイコちゃんと盛り上がったみたいだな!」

と、ガオは部屋に帰ってくるなり、そのネタを振ってくる。

「まあね・・・イズミにも話したけど、最後に、彼女の気持ちや、いろいろなことがわかったし、誤解も溶けた・・・最後に会っておいて、よかったよ・・・」

と、僕が言うと、

「へえ・・・それで結局、どういうことだったんだい、別れるって彼女の選択は」

と、ガオも聞いてくる。

「彼女には、舞台女優という新しい夢が出来た。僕という学校はもう卒業すべきと彼女は考えた。それに、僕に迷惑ばかりかけていられないから、これが卒業の時期だと考えた」

と、僕は説明する。

「すべてのタイミングが一致したから、彼女は別れを告げた・・・そんなところだ。基本的には彼女は身を引いた・・・そういう形だな。身を引いて、自分の夢に賭けたんだ」

と、僕が説明すると、

「そういうことか・・・でも、自分の一生の夢を見つけられるってのは、人生にそうそうないことだからな・・・エイコちゃんは、本当の道を見つけたんだよ、きっと」

と、ガオは言う。

「俺もそう思う・・・だから、エイコの人生を見送ってやることにしたのさ・・・そしたら、お互い、気持ちが盛り上がっちゃってね・・・」

と、僕は説明する。

「ちょっと聞くけど・・・」

ガオは少しいたずら小僧のような表情になりながら、聞いてくる。

「別れを決めてからのエッチって、どんな感じ?」

と、ガオが言う。

「そうだな・・・お互いがお互いを尊敬しているし、愛おしく感じているから・・・すっごく一体感があって、気持ちよかったぜ・・・」

と、僕が言うと、

「なるほど・・・俺も長い人生の中で、そういうことがあるかもしれんなー・・・楽しみにしておこう」

と、ガオはニヤリと笑う。

「よし、飲むか」

と、ガオは手の仕草で飲みに誘う。

「了解・・・ビール買ってくるか・・・」

と、僕が財布を出すと、

「つまみはさ、昨日の残りがあるから・・・ビールだけ買ってきて・・・俺、500ml入り、二本でいいから・・・」

と、ガオは言う。

「オッケー」

と、僕は寮内にある自販機に速攻で走り、ビールを買ってくる。


「しかし、どうする?これから、週末は暇だぜー」

と、ガオは赤い顔で飲んでいる。つまみは、剣先イカだ。

「そうだな・・・何か始めるか・・・せっかく鎌倉に住んでいるんだし・・・」

と、僕が言うと、

「そうだな・・・湘南にいるんだから、それをうまく利用しない手はないな」

と、ガオも言う。

「ガオは、湘南のいい風景の場所に、愛車のミニで行くっていう、趣味があるんじゃなかったっけ?」

と、僕が言うと、

「まあね・・・それはあるんだけど、それだけでも、つまらない・・・なにか、こう、女性とつきあうのに、有利な趣味を見つけておきたいじゃないか」

と、ガオは赤ら顔で言う。

「せっかく湘南にいるんだから、サーフィンとか、ウィンドサーフィンに手を出してみようかと思っているんだよな・・・ミニの上にボード乗せて行くのなんて、最高じゃないか?」

と、妄想好きのガオは、その妄想に笑顔になる。

「ガオのそのホワイトモンスターのような身体で、サーフィン?なんか、サーファーって感じじゃないんだよねー。柔道着なら、似合うけど・・・」

と、けっこうひどいことを言う僕である。

「だから、なんだよ・・・この機会に俺は身体を改造して、もう少ししゅっとしたサーフィン向きの身体にしたいと思っているんだ・・・なんならパパも一緒にどうだ?」

と、ガオは言う。

「俺は前にも言ったけど、スポーツが嫌いなんです。もう、体育という授業がこの世で一番キライでしたから・・・しかも、大学時代に所属した研究室がもー・・・」

と、僕は吐き気がするような気持ちで話す。

「もろ体育会系の研究室で、スポーツ出来ることが一番みたいな感じで、スポーツ出来ない奴は、何をやってもダメみたいな価値観を押し付けられて・・・もー・・・」

と、僕は毒を吐く。

「もともと体育が嫌いだったのに、そこで、コンプレックスがさらに増大して・・・スポーツが大嫌いになっちゃったんです。まあ、見るのはいいですけど、やるのは苦手」

と、僕は言う。

「人間にはいろいろな価値観があるんです。体育会系の人たちって、自分の価値観を勝手に押し付けて、スポーツ出来ないから、お前は何をやってもダメなんだ、みたいに・・・」

と、僕もけっこう酔っているよう。

「だから、僕はスポーツはやらないんです。もっと他に楽しいものはたくさんあります。それで楽しめるのなら、僕はそれでいい・・・」

と、僕は言う。

「なるほどな・・・まあ、俺は柔道というバリバリ体育会系の世界にいたから、パパの言いたいことは、よくわかるよ。確かに価値観はいろいろある・・・」

と、それまで、静かに聞いていたガオは言う。

「まあ、自分の好きなことをやればいいんだ・・・それを自分で見つけて、その世界で楽しめばね・・・」

と、ガオは物分かりのいいところを見せる。

「だけど、多分・・・パパの周りにいた、その体育会系のひとは、「スポーツって楽しいよ」ってパパに言いたかったんじゃないのかな・・・」

と、ガオは言う。

「まさか・・・毎週、水曜日の午後はテニスを強制させられて・・・トレーニングに身をいれないからダメなんだ的に言われて・・・俺は研究がしたくてその研究室に入ったんだ」

と、僕は言い返す。

「テニスがしたくて、研究室に入ったんじゃない・・・それを、ただでさえ忙しいのに、そのテニスの為にトレーニングなんて、本末転倒ですよ・・・」

と、僕は言う。

「だいたいああいう人たちは、「私達つらい研究も進めているけど、同時にテニスも楽しんでいるの。充実した学生生活を送ってるのよ!」って言いたいだけでしょ?」

と、僕は言う。

「僕はそういう、さわやかポーズが大嫌いなんです。ポーズの為に大切な時間を割かれたり、だいたいテニスなんて下手なんです。恥かいてばっかりだ・・・だから嫌だったのに・・・」

と、僕はブツブツ言う。

「同じ研究室に好きな子でも、いたの?」

と、ガオはなんとなしに聞く。

「そうです。いたんです、同期に、好きな子が・・・まあ、大学4年の時に告白して、壮大にフラれましたけどね・・・でも、まあ、恥かくところは見せたくないでしょ?」

と、僕が言うと、

「なるほど・・・パパの論理は正しいなあ・・・」

と、ガオが言う。

「でしょ・・・まあ、とにかく、強制させられることの嫌さが、トラウマになって・・・それ以来、スポーツはやらないんです。僕は・・・」

と、僕は言う。

「ふむ、なるほどなあ・・・まあ、パパの意見はよくわかった・・・パパを誘うのは辞めるよ・・・でも、言っておくけど、女性はスポーツマンに弱いぞ」

と、ガオはニヤリとしながら、言う。

「まあ、俺が柔道家だと言うことを言うと、100%女性は俺の見方を変える・・・目の色が変わるのが、如実にわかる・・・どうだ、これでも、スポーツを嫌うか?」

と、ガオは言う。

「そこなんですよね・・・僕だって、それくらいのことは、わかっていますよ。いくら、女性の気持ちがわからないと言っても、それくらいはねー」

と、僕は言う。

「だったら、何か自分に合う、スポーツくらい見つけておいたら、どうだ?・・・それにスポーツをうまくなる秘訣は、トレーニングしてそのスポーツにあった体型にすることだ」

と、ガオは言う。

「パパは、テニスが下手だったと言うけれど、テニスをするには、体重があり過ぎた・・・それだけのこと、なんじゃないのか?」

と、ガオは言う。

「まあ、それは・・・そうだとは、思うけど・・・」

と、僕も言う。

「まあ、強制はしないけど・・・スポーツマンになっておくと、女性に近づける可能性は、高まるけどな・・・」

と、ガオは言いながら、話題を別に変える。

「それより・・・パパは、昨日の夜から、今朝にかけて、エイコちゃんと何回エッチしたんだ?」

と、ガオはニヤリとしながら聞いてくる。

「えーと、昨日の夜、3回で、今朝、2回かなあ・・・お互い、かなり燃えちゃって・・・」

と、僕が言うと、

「さすが、パパ・・・パパおっきいしな・・・」

と、笑うガオ。

「ま、エイコもそこは、喜んでくれたけど・・・」

と、僕らが、くだらない話をしているところへ・・・。


真っ青な顔をしたイズミが帰ってくる。


「どうしたイズミ・・・そうだ、未來ちゃんのところへ、電話したんだよな・・・どうだった?」

と、僕が聞くと、

「俺、どうしたから、いいか、もう、わからない・・・」

と、血を吐くような表情で言うイズミ。


鎌倉の夜は静かに更けて行った。


つづく

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