1月上旬の土曜日の午前12時頃。アイリのマンションで、タケルとアミとマキが話し込んでいた。
「ドジっ子戦略・・・確かに、その恋愛攻撃力は高くて・・・大人の男性も魅了されたりするんだよね。素晴らしい恋愛攻撃力なんだ。ドジっ子戦略は・・・」
と、タケルは言う。
「だけど、ドジっ子戦略が恋愛攻撃力が高すぎるからこその弱点があるんだ」
と、タケルは言う。
アイリとアミとマキは、息を飲みながら、そんなタケルを見つめている。
「ドジっ子戦略の弱点・・・それは、「大人の女性を求めている男性は、落とせない」ということなんだ」
と、タケルは言う。
「大人の女性を求めている男性・・・」
と、アイリは言葉にする。
「確かに、ドジっ子は、かわいい・・・でも、大人の男性は、結婚相手として、大人の女性を選ぶもんだ。例えば過去に結婚の経験があれば、なおさら・・・」
と、タケルは言葉にする。
「ドジっ子は、かわいいけど・・・大人の女性を求める、大人の男性からすれば・・・妹的、あるいは、娘的にかわいく感じちゃうんだよね」
と、タケルは言う。
「なるほど・・・確かにわたしも、マミちゃんのこと、妹的に可愛く感じていたわ」
と、アイリ。
「確かに・・・マミちゃんは、妹って感じだもんねー」
と、マキ。
「まあ、私の実の妹なんだし・・・そう感じるのは、当たり前なんだけど・・・だから、マミは、これまで、あまりうまく恋愛が出来なかったってこと?」
と、アミは、タケルに聞いている。
「マミちゃんがこれまで、どういう恋愛をしてきたか・・・僕は知らないけれど、ドジっ子戦略に落ちる男性は、大人の男性じゃない・・・子供だってことさ」
と、タケルが指摘している。
「マミちゃんの相手は自然、子供に限られるから・・・まだまだ女性もリード出来ないし、奪い合う恋だからね。だから、あまりうまくいかない恋になるんだ」
と、タケルは説明している。
「与え合う「大人の愛」、奪い合う「子供の恋」・・・それ、ショウコさんに教わった話だったわね」
と、アイリ。
「そうだ。恋愛に対する素敵な知恵だよ・・・子供は経験が少ないから奪い合う恋しかできない。唇を奪う、ハートを奪う、処女を奪う。奪う恋しか出来ないんだ」
と、タケル。
「だから、「子供の恋」は、奪い合う恋になっちゃうんだね」
と、タケル
「逆に大人は経験があるから、愛を与え合うことが出来る。見返りを求めない「無償の愛」をお互い与え合えるのが、「大人の愛」なんだ」
と、タケル。
「その知恵を元に考えれば・・・マミちゃんがこれまで、経験してきた恋愛は、「子供の恋」だったことが、すぐにわかる」
と、タケル。
「確かに、マミのこれまでの恋の相手は・・・若い男の子達ばかりだった・・・」
と、アミ。
「まあ、いずれにしろ・・・バレンタインデーまでに、マミちゃんに自分に自信を持たせる、っていうミッションだけど・・・」
と、タケルはアミを見ながら言葉にする。
「マミちゃんに恋のターゲットを作って貰わないと・・・そうしないとマミちゃんも、燃えないんじゃないかな?」
と、タケルが言うと、
「確かにそうねー・・・女は好きな男が出来て始めて動き出すもんだし・・・」
と、マキ。
「マミちゃん、気になっている男のひととか、いないの?」
と、アイリ。
「うーん、最近、あまり、男の話はしてないわねー」
と、アミ。
「まあ、そのあたりは、恋愛参謀として、僕が直接マミちゃんに聞いてみるよ。とにかく、二人で話してみないと、マミちゃんの今すら、わからないから」
と、タケルは腹をくくったようだ。
「マミちゃんに好きな男性がいなければ・・・いずれにしろ、もう、マミちゃんは、ドジっ子戦略を卒業すべき時期に来ている・・・」
と、タケルは言う。
「マミチャンは、大人の女性にならなければ、いけないんだ・・・」
と、タケルが言う。
「「与える愛」をしあえる、大人の男性、大人の女性の仲間入りが必要だってことなんだ」
と、タケルが言う。
「「与える愛」か・・・タケルくんは、それが出来るから・・・大人の女性に人気なのね」
と、アミが言う。
「ん?アミちゃん的に説明すると、それ、どういうこと?」
と、タケルはアミに振る。
「いつも私達の気持ちを最初に考えて、わたしたちが気分よくなるように、なるように、動いてくれるじゃない、タケルくんは」
と、アミは説明する。
「まあ、そうだね・・・それが大人の男の基本だからね」
と、タケル。
「それこそが、タケルくんの「与える愛」ってことじゃない?」
と、アミ。
「そうか・・・確かにそれタケルくんの「与える愛」そのものよね」
と、マキ。
「タケルは、大人の男そのものだもの・・・それが出来ていて当然だわ・・・」
と、アイリ。
「まあ、そういうことさ・・・でも、今回のミッションの骨格が、これで見えたよ・・・マミちゃんが「奪いあう恋」から「与える愛」が出来るようになること。これだ」
と、ニヤリと笑顔になるタケル。
アイリもアミもマキも、その言葉に笑顔になるのだった。
1月上旬の土曜日の午前12時20分頃。マミは、ミサトとミウが待つ、カフェ「アルカンシェル」に戻ってきていた。
ランチをこのカフェで取ることに決めた3人は、ミサトがペスカトーレ、ミウがペペロンチーノ、マミがカルボナーラをチョイスした。
「で、どうだったマミ・・・あの男性、独身だった?」
と、ミサトがまず聞く。
「うん。独身だって・・・彼女もいないんだって・・・」
と、言いながら、マミは少し落ち込んでいる表情。
「どうしたの、マミ。落ち込んでいないで、話しちゃいなさいよ」
と、ミウが言ってくれる。
「うん・・・若い頃に一度結婚してたんだけど、その女性を交通事故で亡くしてるらしいの・・・それ以来頑なに彼女を作ろうとしないんですって・・・」
と、マミは言葉にする。
「ふーん・・・昔のおんなが忘れられない、かー」
と、ミサト。
「全力で恋した女性が亡くなった・・・記憶は美化されるし、ちょっと強敵ね。その亡くなった元の奥さん」
と、ミウ。
「うん。わたしもそれを考えていて・・・でも、でもね。そのシンイチさんって言うんだけど、その彼、すごく魅力的で・・・」
と、マミは、今日だけで3回も彼に恋に落ちたことを2人に話した。
「そんなに、魅力的なの・・・彼・・・」
と、ミサト。
「ふふふ。マミが3回も恋に落ちるなんて・・・これは運命の恋かもね。だってマミって、これまで受け身の恋ばかりだったじゃない」
と、ミウ。
「そうね。マミって、いつの間にか若い男性に恋されていて、告白されてつきあい始めるんだけど、クラッシュ!のパターンが多かったもんね」
と、ミサト。
「だって、せっかく告白してくれたから・・・それでつきあってみるんだけど、結局、相手がわがままで・・・」
と、マミはもじもじ言う。
「マミは、男性に人気あるのよ・・・わたしも受け身の恋が多いけど・・・マミ程は告白されないもの・・・」
と、少しため息をつくミウ。
「ミウは大人の女性の雰囲気を持っているもの・・・男性が自信ないのよ、全体的に・・・素敵な大人の男性が、そのうちミウを見つけてくれるわ」
と、ミサト。
「その点、ミサトは自分から正々堂々声をかけるものね」
と、ミウはミサトを褒める。
「そ。わたしは、女性は恋するからこそ、楽しいのって、思ってるから、行く派なの」
と、ミサト。
「そういうミサトがうらやましい・・・どうしたら、ミサトみたいになれるの?」
と、マミ。
「うーん、でも、これは性格なのよ・・・マミには、マミの恋愛の仕方があるんじゃない?」
と、ミサト。
「わたしの恋愛の仕方か・・・」
と、マミはゆっくり考えこんでいた。
3人はランチを終えると、カフェ「アルカンシェル」出て、隣にある花屋「華可憐」に入っていった。
マミが、
「こんにちわ」
と、照れながらシンイチに挨拶すると、
「あ、マミちゃんか、ちょうどよかった」
と、シンイチは奥から歩いて出てくる。
「お礼に花でもあげようと思ってたんだ・・・今から、花束作るから、ちょっと奥で待っててくれないか?ご友人の方々も・・・」
と、シンイチはミサトやミウにも、言っている。
「よかったじゃない。素敵な大人の男性に花束貰えるなんて、なかなか無いことよ」
と、ミウがマミに言うと、マミは真っ赤になる。
「ほーんと、よかったわね。帰りに寄って」
と、ミサトも笑顔だ。
「今、お茶出しますから」
と、森田ユキも笑顔だ。
道明寺シンイチは、早速、いくつかの花を選び出すと、慣れた手つきで花束を作り始めた。
赤いバラを中心に、ピンクのカトレアや白いシンビジュームなど、珍しい花も加えて、かすみ草で周りを飾って花束を作ってくれた。
「はい。マミちゃん、これ・・・財布を拾って貰った、せめてものお礼だ」
と、素敵な花束を渡されたマミは、素直な笑顔で、喜んだ。
「真っ赤なバラの花言葉は、愛情だけど・・・特に他意はないんだ。ありがとうのお礼だよ」
と、シンイチは笑顔で言った。
「ありがとうございます。わたし、こんな美しい花束を大人の男性から貰うの・・・初めてです」
と、赤いメガネをずり上げながら、もじもじしながら、マミは言った。
「こちらこそ、ありがとう。また、ちょくちょく来なよ。サービスさせて貰うから」
と、シンイチは言った。
「はい。そうさせて貰います。マンションも近いんで・・・」
と、マミは言うと、ミサトとミウに帰る意を目で伝えた。
「お邪魔しましたー」「お茶美味しかったです」「また、来ます」
と、ミサトとミウとマミは、それぞれ言うと、「花可憐」を後にした。
「他意はないって、言われちゃった・・・」
と、マミは少しションボリしながら、口にする。
「何よー。まだ、今日、彼に出会ったばかりじゃない・・・」
と、ミサト。
「そうよ・・・恋は編み物と一緒。少しずつ編み目を増やしていけばいいのよ・・・」
と、ミウ。
「それに、少なくとも、彼はあの時、マミを女性として意識したってことじゃない」
と、ミウが続ける。
「そうよねー。そうでなければ、あんなこと、わざわざ言わないもの・・・」
と、ミサトも、少し驚いたように続ける。
「そっか。そう思えばいいのか・・・」
と、マミ。
「でもさー・・・男性って時々わからなくなるのよね・・・なんでそんな行動をとるの?って、わからない時が多いから」
と、ミサト。
「うん、わかるわかる・・・男性って基本自己中で、わがままだから・・・」
と、ミウ。
「男性のことをしっかり理解している、大人の男性が、マミの恋愛には、必要かもね・・・」
と、ミウが言う。
「あ、それ・・・」
と、マミが、赤いメガネをずり上げながら、もじもじ、する。
「お姉ちゃんが、大好きな男性が・・・私の恋をサポートしてくれることになってるんだよね・・・」
と、マミが恥ずかしそうにしながら、言う。
「え?マミのお姉さんって、あのアミさん?」
と、ミサト。
「アミさんの大好きな男性だったら・・・相当ポテンシャル高いんじゃなーい?」
と、ミウが言う。
「うん、この間、ちょっと会ってきたけど、素敵な大人の男性でした・・・シンイチさんとは、また違ったタイプの・・・」
と、マミ。
「なによ、マミだけ・・・たくさんの素敵な男性に囲まれちゃってー」
と、茶々をいれるミサト。
「だったら、こうしない?今回の報告も含めて、3人でその男性と会うのよ・・・私たちの意見も話したほうが、マミの恋愛うまくいく気がするんだけど」
と、ミウが提案。
「そうね。そうしましょうよ。素敵な大人の男性は、皆で共有しないと」
と、ミサトが喜ぶ。
「うん。わかった。今度連絡とってみる・・・」
と、マミが納得した顔で言う。
「そのひと、鈴木タケルさんって言うの・・・」
と、マミがぽつりと言う。
「鈴木タケル・・・さん」「鈴木タケル・・・ねえ」
と、ミウとミサトは繰り返した。
「・・・と、言うわけなんです」
と、土曜日の夕方、マミはマンションから携帯で、タケルと連絡をとっていた。
「なるほど・・・君の友人二人も、今回のミッションに協力してくれるのか・・・それは頼もしいな」
と、鈴木タケルは電話の向こうで話してくれた。
「じゃあ、明日のランチは、そのカフェで食べよう。一応作戦は出来たから、その打ち合わせをそこで、しようぜ」
と、タケルはニヤリとしながら、笑顔で話している。
「それにマミちゃんの方から、恋愛ターゲットを作ってくれたようだし・・・その相手も見ておかなきゃ、いけないもんね」
と、タケルは言う。
「だが、君の友人もなかなか頼もしそうだなあ。確かに、全力で恋した女房が亡くなったとなりゃあ・・・強敵だぜ、それ。今回のラスボスって、ところだなー」
と、タケルは言う。
「はあ・・・」
と、マミ。
「マミちゃん、君は、そのラスボスを倒すことに全力を注ぐんだ。もちろん、具体的なプランはもう出来てる。大船に乗ったつもりでいてくれ」
と、タケルは言うと、
「じゃ、明日11時半に、吉祥寺駅で待ち合わせしよう。南口改札の前で落ち合おう」
と、タケルは約束し、電話は切れた。
「明日・・・始まるんだわ・・・」
と、マミは、少しだけ不安な気持ちで、綺麗な夕焼けを見ていた。
(つづく)
→前回へ
→物語の初回へ
→「ラブ・クリスマス!」初回へ
「ドジっ子戦略・・・確かに、その恋愛攻撃力は高くて・・・大人の男性も魅了されたりするんだよね。素晴らしい恋愛攻撃力なんだ。ドジっ子戦略は・・・」
と、タケルは言う。
「だけど、ドジっ子戦略が恋愛攻撃力が高すぎるからこその弱点があるんだ」
と、タケルは言う。
アイリとアミとマキは、息を飲みながら、そんなタケルを見つめている。
「ドジっ子戦略の弱点・・・それは、「大人の女性を求めている男性は、落とせない」ということなんだ」
と、タケルは言う。
「大人の女性を求めている男性・・・」
と、アイリは言葉にする。
「確かに、ドジっ子は、かわいい・・・でも、大人の男性は、結婚相手として、大人の女性を選ぶもんだ。例えば過去に結婚の経験があれば、なおさら・・・」
と、タケルは言葉にする。
「ドジっ子は、かわいいけど・・・大人の女性を求める、大人の男性からすれば・・・妹的、あるいは、娘的にかわいく感じちゃうんだよね」
と、タケルは言う。
「なるほど・・・確かにわたしも、マミちゃんのこと、妹的に可愛く感じていたわ」
と、アイリ。
「確かに・・・マミちゃんは、妹って感じだもんねー」
と、マキ。
「まあ、私の実の妹なんだし・・・そう感じるのは、当たり前なんだけど・・・だから、マミは、これまで、あまりうまく恋愛が出来なかったってこと?」
と、アミは、タケルに聞いている。
「マミちゃんがこれまで、どういう恋愛をしてきたか・・・僕は知らないけれど、ドジっ子戦略に落ちる男性は、大人の男性じゃない・・・子供だってことさ」
と、タケルが指摘している。
「マミちゃんの相手は自然、子供に限られるから・・・まだまだ女性もリード出来ないし、奪い合う恋だからね。だから、あまりうまくいかない恋になるんだ」
と、タケルは説明している。
「与え合う「大人の愛」、奪い合う「子供の恋」・・・それ、ショウコさんに教わった話だったわね」
と、アイリ。
「そうだ。恋愛に対する素敵な知恵だよ・・・子供は経験が少ないから奪い合う恋しかできない。唇を奪う、ハートを奪う、処女を奪う。奪う恋しか出来ないんだ」
と、タケル。
「だから、「子供の恋」は、奪い合う恋になっちゃうんだね」
と、タケル
「逆に大人は経験があるから、愛を与え合うことが出来る。見返りを求めない「無償の愛」をお互い与え合えるのが、「大人の愛」なんだ」
と、タケル。
「その知恵を元に考えれば・・・マミちゃんがこれまで、経験してきた恋愛は、「子供の恋」だったことが、すぐにわかる」
と、タケル。
「確かに、マミのこれまでの恋の相手は・・・若い男の子達ばかりだった・・・」
と、アミ。
「まあ、いずれにしろ・・・バレンタインデーまでに、マミちゃんに自分に自信を持たせる、っていうミッションだけど・・・」
と、タケルはアミを見ながら言葉にする。
「マミちゃんに恋のターゲットを作って貰わないと・・・そうしないとマミちゃんも、燃えないんじゃないかな?」
と、タケルが言うと、
「確かにそうねー・・・女は好きな男が出来て始めて動き出すもんだし・・・」
と、マキ。
「マミちゃん、気になっている男のひととか、いないの?」
と、アイリ。
「うーん、最近、あまり、男の話はしてないわねー」
と、アミ。
「まあ、そのあたりは、恋愛参謀として、僕が直接マミちゃんに聞いてみるよ。とにかく、二人で話してみないと、マミちゃんの今すら、わからないから」
と、タケルは腹をくくったようだ。
「マミちゃんに好きな男性がいなければ・・・いずれにしろ、もう、マミちゃんは、ドジっ子戦略を卒業すべき時期に来ている・・・」
と、タケルは言う。
「マミチャンは、大人の女性にならなければ、いけないんだ・・・」
と、タケルが言う。
「「与える愛」をしあえる、大人の男性、大人の女性の仲間入りが必要だってことなんだ」
と、タケルが言う。
「「与える愛」か・・・タケルくんは、それが出来るから・・・大人の女性に人気なのね」
と、アミが言う。
「ん?アミちゃん的に説明すると、それ、どういうこと?」
と、タケルはアミに振る。
「いつも私達の気持ちを最初に考えて、わたしたちが気分よくなるように、なるように、動いてくれるじゃない、タケルくんは」
と、アミは説明する。
「まあ、そうだね・・・それが大人の男の基本だからね」
と、タケル。
「それこそが、タケルくんの「与える愛」ってことじゃない?」
と、アミ。
「そうか・・・確かにそれタケルくんの「与える愛」そのものよね」
と、マキ。
「タケルは、大人の男そのものだもの・・・それが出来ていて当然だわ・・・」
と、アイリ。
「まあ、そういうことさ・・・でも、今回のミッションの骨格が、これで見えたよ・・・マミちゃんが「奪いあう恋」から「与える愛」が出来るようになること。これだ」
と、ニヤリと笑顔になるタケル。
アイリもアミもマキも、その言葉に笑顔になるのだった。
1月上旬の土曜日の午前12時20分頃。マミは、ミサトとミウが待つ、カフェ「アルカンシェル」に戻ってきていた。
ランチをこのカフェで取ることに決めた3人は、ミサトがペスカトーレ、ミウがペペロンチーノ、マミがカルボナーラをチョイスした。
「で、どうだったマミ・・・あの男性、独身だった?」
と、ミサトがまず聞く。
「うん。独身だって・・・彼女もいないんだって・・・」
と、言いながら、マミは少し落ち込んでいる表情。
「どうしたの、マミ。落ち込んでいないで、話しちゃいなさいよ」
と、ミウが言ってくれる。
「うん・・・若い頃に一度結婚してたんだけど、その女性を交通事故で亡くしてるらしいの・・・それ以来頑なに彼女を作ろうとしないんですって・・・」
と、マミは言葉にする。
「ふーん・・・昔のおんなが忘れられない、かー」
と、ミサト。
「全力で恋した女性が亡くなった・・・記憶は美化されるし、ちょっと強敵ね。その亡くなった元の奥さん」
と、ミウ。
「うん。わたしもそれを考えていて・・・でも、でもね。そのシンイチさんって言うんだけど、その彼、すごく魅力的で・・・」
と、マミは、今日だけで3回も彼に恋に落ちたことを2人に話した。
「そんなに、魅力的なの・・・彼・・・」
と、ミサト。
「ふふふ。マミが3回も恋に落ちるなんて・・・これは運命の恋かもね。だってマミって、これまで受け身の恋ばかりだったじゃない」
と、ミウ。
「そうね。マミって、いつの間にか若い男性に恋されていて、告白されてつきあい始めるんだけど、クラッシュ!のパターンが多かったもんね」
と、ミサト。
「だって、せっかく告白してくれたから・・・それでつきあってみるんだけど、結局、相手がわがままで・・・」
と、マミはもじもじ言う。
「マミは、男性に人気あるのよ・・・わたしも受け身の恋が多いけど・・・マミ程は告白されないもの・・・」
と、少しため息をつくミウ。
「ミウは大人の女性の雰囲気を持っているもの・・・男性が自信ないのよ、全体的に・・・素敵な大人の男性が、そのうちミウを見つけてくれるわ」
と、ミサト。
「その点、ミサトは自分から正々堂々声をかけるものね」
と、ミウはミサトを褒める。
「そ。わたしは、女性は恋するからこそ、楽しいのって、思ってるから、行く派なの」
と、ミサト。
「そういうミサトがうらやましい・・・どうしたら、ミサトみたいになれるの?」
と、マミ。
「うーん、でも、これは性格なのよ・・・マミには、マミの恋愛の仕方があるんじゃない?」
と、ミサト。
「わたしの恋愛の仕方か・・・」
と、マミはゆっくり考えこんでいた。
3人はランチを終えると、カフェ「アルカンシェル」出て、隣にある花屋「華可憐」に入っていった。
マミが、
「こんにちわ」
と、照れながらシンイチに挨拶すると、
「あ、マミちゃんか、ちょうどよかった」
と、シンイチは奥から歩いて出てくる。
「お礼に花でもあげようと思ってたんだ・・・今から、花束作るから、ちょっと奥で待っててくれないか?ご友人の方々も・・・」
と、シンイチはミサトやミウにも、言っている。
「よかったじゃない。素敵な大人の男性に花束貰えるなんて、なかなか無いことよ」
と、ミウがマミに言うと、マミは真っ赤になる。
「ほーんと、よかったわね。帰りに寄って」
と、ミサトも笑顔だ。
「今、お茶出しますから」
と、森田ユキも笑顔だ。
道明寺シンイチは、早速、いくつかの花を選び出すと、慣れた手つきで花束を作り始めた。
赤いバラを中心に、ピンクのカトレアや白いシンビジュームなど、珍しい花も加えて、かすみ草で周りを飾って花束を作ってくれた。
「はい。マミちゃん、これ・・・財布を拾って貰った、せめてものお礼だ」
と、素敵な花束を渡されたマミは、素直な笑顔で、喜んだ。
「真っ赤なバラの花言葉は、愛情だけど・・・特に他意はないんだ。ありがとうのお礼だよ」
と、シンイチは笑顔で言った。
「ありがとうございます。わたし、こんな美しい花束を大人の男性から貰うの・・・初めてです」
と、赤いメガネをずり上げながら、もじもじしながら、マミは言った。
「こちらこそ、ありがとう。また、ちょくちょく来なよ。サービスさせて貰うから」
と、シンイチは言った。
「はい。そうさせて貰います。マンションも近いんで・・・」
と、マミは言うと、ミサトとミウに帰る意を目で伝えた。
「お邪魔しましたー」「お茶美味しかったです」「また、来ます」
と、ミサトとミウとマミは、それぞれ言うと、「花可憐」を後にした。
「他意はないって、言われちゃった・・・」
と、マミは少しションボリしながら、口にする。
「何よー。まだ、今日、彼に出会ったばかりじゃない・・・」
と、ミサト。
「そうよ・・・恋は編み物と一緒。少しずつ編み目を増やしていけばいいのよ・・・」
と、ミウ。
「それに、少なくとも、彼はあの時、マミを女性として意識したってことじゃない」
と、ミウが続ける。
「そうよねー。そうでなければ、あんなこと、わざわざ言わないもの・・・」
と、ミサトも、少し驚いたように続ける。
「そっか。そう思えばいいのか・・・」
と、マミ。
「でもさー・・・男性って時々わからなくなるのよね・・・なんでそんな行動をとるの?って、わからない時が多いから」
と、ミサト。
「うん、わかるわかる・・・男性って基本自己中で、わがままだから・・・」
と、ミウ。
「男性のことをしっかり理解している、大人の男性が、マミの恋愛には、必要かもね・・・」
と、ミウが言う。
「あ、それ・・・」
と、マミが、赤いメガネをずり上げながら、もじもじ、する。
「お姉ちゃんが、大好きな男性が・・・私の恋をサポートしてくれることになってるんだよね・・・」
と、マミが恥ずかしそうにしながら、言う。
「え?マミのお姉さんって、あのアミさん?」
と、ミサト。
「アミさんの大好きな男性だったら・・・相当ポテンシャル高いんじゃなーい?」
と、ミウが言う。
「うん、この間、ちょっと会ってきたけど、素敵な大人の男性でした・・・シンイチさんとは、また違ったタイプの・・・」
と、マミ。
「なによ、マミだけ・・・たくさんの素敵な男性に囲まれちゃってー」
と、茶々をいれるミサト。
「だったら、こうしない?今回の報告も含めて、3人でその男性と会うのよ・・・私たちの意見も話したほうが、マミの恋愛うまくいく気がするんだけど」
と、ミウが提案。
「そうね。そうしましょうよ。素敵な大人の男性は、皆で共有しないと」
と、ミサトが喜ぶ。
「うん。わかった。今度連絡とってみる・・・」
と、マミが納得した顔で言う。
「そのひと、鈴木タケルさんって言うの・・・」
と、マミがぽつりと言う。
「鈴木タケル・・・さん」「鈴木タケル・・・ねえ」
と、ミウとミサトは繰り返した。
「・・・と、言うわけなんです」
と、土曜日の夕方、マミはマンションから携帯で、タケルと連絡をとっていた。
「なるほど・・・君の友人二人も、今回のミッションに協力してくれるのか・・・それは頼もしいな」
と、鈴木タケルは電話の向こうで話してくれた。
「じゃあ、明日のランチは、そのカフェで食べよう。一応作戦は出来たから、その打ち合わせをそこで、しようぜ」
と、タケルはニヤリとしながら、笑顔で話している。
「それにマミちゃんの方から、恋愛ターゲットを作ってくれたようだし・・・その相手も見ておかなきゃ、いけないもんね」
と、タケルは言う。
「だが、君の友人もなかなか頼もしそうだなあ。確かに、全力で恋した女房が亡くなったとなりゃあ・・・強敵だぜ、それ。今回のラスボスって、ところだなー」
と、タケルは言う。
「はあ・・・」
と、マミ。
「マミちゃん、君は、そのラスボスを倒すことに全力を注ぐんだ。もちろん、具体的なプランはもう出来てる。大船に乗ったつもりでいてくれ」
と、タケルは言うと、
「じゃ、明日11時半に、吉祥寺駅で待ち合わせしよう。南口改札の前で落ち合おう」
と、タケルは約束し、電話は切れた。
「明日・・・始まるんだわ・・・」
と、マミは、少しだけ不安な気持ちで、綺麗な夕焼けを見ていた。
(つづく)
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