行きはヨイヨイ帰りは吹雪の中、自転車に乗って”Elizabeth the Golden Age”を観てきた。ケイト・ブランシェット主演”Elizabeth”の続編である。前作が、少女が即位して女王の威厳を備えるまでの成長を描いていたのに対し、続編は、メアリー・スチュアートとの確執、愛人ウォルター・ローリー卿との関係や無敵艦隊との戦いを通して、公と私の間で揺れる心の葛藤や女王の孤独を描いている。
エリザベスとメアリー・スチュアートの関係がはっきりしなかったので系図を作ってみた。括弧の数字は即位年である。エリザベスと並ぶ二人はいずれもヘンリー8世を父親にする異母兄弟である。スコットランド女王であるメアリー・スチュアートは、系図にあるようにエリザベスの伯母マーガレット・チューダー(ヘンリー8世の姉)の孫にあたりイングランドの王位継承権も持つ。エリザベスを妾の子呼ばわりして自分がイングランドの正式な王位継承者であることを公言していた上、彼女はフランス王妃でカソリック信者で、スペイン王フェリペ2世の支持を受けていたため、エリザベスにとっては非常に危険な存在だった。史実ではエリザベス暗殺未遂事件に関与したという証拠が見つかったため処刑される。
ネタばれだけど映画では、危険なメアリーの処刑に踏み切れないエリザベスに決断させるため、暗殺の首謀者(実はフェリペ2世の手先)がメアリーにエリザベス暗殺指示の手紙を書かせた後、暗殺を未遂に終わらせ、その手紙を根拠にエリザベスにメアリーの処刑を決断させる。そしてメアリーの処刑を口実に、スペインのフェリペ2世は無敵艦隊(Armada)にイングランド攻めを命じるのだ。
無敵艦隊は、”見果てぬ夢”の回に書いたようにドン・キホーテの作者セルバンテスも食料調達の官吏として関わっていた。無敵艦隊の顛末は、ネタ本の”物語 スペインの歴史”岩根圀和著に詳しく書いてある。戦力的に優位だった無敵艦隊がなぜイギリス海軍に敗れたのか。その原因のほとんどは総司令官の能力にあったようだ。
本来、無敵艦隊の総司令官はレパント海戦の勇者サンタ・クルス侯爵アルバロ・デ・バサンが務めるはずであった。しかし、1588年イギリスに向けて出撃する年にサンタ・クロス侯爵が死去したため、海戦の経験のない優柔不断のメディナ・シオニア公が急遽後任の総司令官に任命されたのである。一方、イギリスは海賊あがりのフランシス・ドレイクが艦隊を指揮していた。ドレークは射程の長い大砲を使ったヒットエンドラン戦法や火船(爆薬を満載し火をつけた船)を突っ込ませたりする戦法で無敵艦隊を潰走させた。
比較的史実に忠実なので当時のイギリス周辺の歴史の勉強になる。映画の出来は女王の葛藤の描き方がありきたりで活劇場面も今一つだった。人間の描き方、戦闘場面などすべてが昔の”ベン・ハー”や”スパルタカス”や”エル・シド”にははるかに及ばない。
エリザベスは遺言で自分が処刑したメアリー・スチュアートの子供を後継に指名し、ここにチューダー朝は終わりスコットランドのスチュアート朝にイングランドは統合される。
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