備忘録として

タイトルのまま

「あの世」の思想

2008-12-29 07:59:23 | 他本
”日本人の「あの世」観”梅原猛によるとアイヌや沖縄に残るあの世観は縄文時代の原日本人が持っていた「あの世」観であるという。
1.あの世はこの世とはあべこべの世界である。天国も地獄もない。
2.死ぬと魂は肉体を離れ、あの世で神になり先祖といっしょに暮らす。
3.人間だけでなくすべての生き物に魂があり、あの世へ行く。
4.あの世へ行った魂はやがてこの世へ帰ってくる。

葬式は仏教の専売のようになっているが、そもそも仏教は葬式専門の宗教ではなく葬式の風習に原”あの世”観が色濃く残っている。
1.死人に着物を左前に着せることや夜送り出す通夜は、時間や空間があべこべであることによる。
2.死ぬことを”お陀仏する”と言うが、本来仏教では悟りを開いた人が仏になり、死んで仏にはならない。
3.針供養、人形供養などに名残がある。
4.再生は、天照大神の岩戸の話や歌舞伎で同じ名を襲名することなどに残っている。

梅原猛が「あの世」観を具体的に示した上で主張したかったことは、
。”キリスト教や仏教などの高等宗教は本来日本人が持っていた生命の思想を歪めてきた。人間は動植物と共生することを忘れ、自然を征服することを文明の進歩だと考えた。地球上のすべての生命は個を犠牲にすることで種の存続をはかるという精妙な知恵に学び、人間も生命の永遠の循環運動の中に自分を置き、人間の未来を長いスパンで考える”という思想である。”地球を食いつぶす人間の文明と自然破壊は行き着くところまで来ており、人間の文明を発生の原点に立ち戻って考える必要がある。”

同本に宮沢賢治の世界観についての論文があり、日本の仏教がどのように日本古来の思想と結びつきインドや中国の仏教とは異なる独自のものになってきたかということが述べられ、さらにその仏教観に基づく賢治の世界観は人間や動植物が一体となり時空(あの世とこの世)をも超えたものであると説く。賢治の世界観は梅原の主張する思想と同じようだが、賢治の思想のすべてが明らかになってはいないという。


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