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切れるの別れるのッて、そんな事は、芸者の時に云うものよ。……私にゃ死ねと云って下さい。
湯島天神でお蔦が主税(ちから)に言う泉鏡花「婦系図」の有名な台詞である。ところが、青空文庫の「婦系図」を探したが、この台詞が出てこない上に、湯島天神にさえ二人は行ってない。泉鏡花の師匠である尾崎紅葉の「金色夜叉」で、熱海の海岸を散歩する貫一がお宮を蹴飛ばす場面と同じくらい有名なのになぜだ、と調べたら、「婦系図」原本にはなくて、後日、泉鏡花が二人の別れの場面を取り上げて書き直した戯曲「湯島の境内」で新たに作られたもので、その後何度も舞台化や映画化されて有名になったらしい。「湯島の境内」も青空文庫に載っている。
一昨日の金曜日、湯島天神の梅まつりに行った。上野アメ横の藪蕎麦で鴨南蛮そばを食べてから、湯島天神まで10分ほどを歩いた。藪蕎麦は「婦系図」にもその名がみえるが、小説の藪蕎麦はどこの藪蕎麦かはわからない。上野アメ横の鴨南蛮そばは鴨肉が肉厚でそこそこ美味いがしょうゆ味が強すぎるので、松江の八雲庵の鴨南蛮そばのほうが好みだ。
「婦系図」の映画の題名にもなった「湯島の白梅」が雪の中、満開だった。雪の湯島天神は広重が名所江戸百景に描いているが、もちろん今は鳥居の先に不忍池は見えない。もうひとつの浮世絵は同じ広重の銀世界十二景である。
亀戸天神や大宰府と同じ菅原道真を祀った天神さんなので、季節がら、合格祈願の絵馬であふれていた。