「善人なをもて往生をとぐ。いはんや悪人をや。」(悪人正機説)で有名な歎異抄を梅原猛が解説した”誤解された歎異抄”を読んだ。歎異抄は親鸞の言葉を親鸞の曽孫であり弟子である唯円が書き留めたものである。親鸞の始めた浄土真宗はその後、日本最大の宗教となる。梅原猛の解釈によると親鸞の根本思想は二種廻向と二種の浄土であり、悪人正機説は付属的なものである。
1.往相廻向と還相廻向
極楽浄土へ行って還ってくる。大乗仏教の考え方に拠れば、一度極楽浄土へ行って悟りを得、菩薩となって後、この世へ戻ってきて苦しんでいる人を救済しなければならない。
2.真仏土と化身土
極楽には二種類あり、他力念仏の行者は真仏土へ行けるが、自力の徒は化身土で500年間留まったのちに真仏土へ行くことができる。自力の善行を積んで自分で作った善によって極楽往生しようとする人は阿弥陀様にすがる心が欠けており、すべてを阿弥陀様におすがりする他力本願の人だけが正真正銘の極楽浄土(真仏土)へ行くことができる。
3.真宗に地獄はなく、現世が地獄のようなもの
親鸞の説いた”教行信証”には地獄がない。キリスト教や往生要集には地獄があり、天国へ行ける人と地獄へ行く人が区別されるが、浄土真宗では念仏さえ唱えればすべての人が極楽浄土へ行ける。
4.親鸞は聖徳太子の生まれ変わり
親鸞の作った和讃のうち「皇太子聖徳奉讃」で、聖徳太子は衆生を救済するためにインドの勝鬘夫人、中国の南岳慧思(えし)、百済の聖明王など次々と生まれ変わり、救世観音が太子の化身であるとする。救世観音は親鸞に法然のもとへ行けと命ずることから親鸞は聖徳太子の生まれ変わりと考えていたと結論づける。
ここからは梅原猛の考え。
人間は永劫の流転を続ける。人間に子孫がある限り遺伝子は次々に結合を繰り返し永遠に生き続ける。すなわちDNAレベルでは不死となり、これによって梅原猛は無神論を克服したという。
雑学として、司馬遼太郎がどこかで言っていたが、占領時GHQは悪人でも天国に行けるという悪人正機説を唱える浄土真宗を危険思想とみたらしい。
うちは四国なので真言宗だと思うけど、違うかもしれない。いわゆる葬式のときだけ宗派で、基本的には無宗教という一般的な日本人である。また、自分は基本的に無神論者である。神、超常現象、占い、スピリチュアル、前世など非科学的なものはファンタジー小説などと同等のEntertainmentの一種として信じていない。にもかかわらず、最近、死についてよく考える。身近に思いがけず他界する人がいたことや聖徳太子、人麻呂、宗教本、神社関係の本、”おくりびと”や”最高の人生の見つけ方”などの所為だと思う。
このごろ近所の掲示板に報恩講という張り紙をよく見かけるが、これは親鸞の命日10月28日の法要の連絡とのことらしい。張り紙には浄土真宗とは書かれていなかったので、何の宗派かわからなかったが、今回の歎異抄でネットサーフィンをしているうちにわかった。