怒りのブログ

憤りを言葉にせずになんとしようか。

夕凪の街 桜の国(双葉社)こうの史代

2005-08-19 22:12:30 | 教育書
ぺろりんさんのブログ、ぺろりん物語で、紹介されていたのでゲット。

アクションの休刊寸前に掲載された「夕凪の街」がもとになって「桜の国」が続編的に描かれ、今回の本にまとまっている。
書店ではダブル受賞作品、映画化決定として紹介され話題を広げている。

調子にのって「長い道」も購入、読んでみたが、やはりこちらの作品の方がよい。
漫画家は作品を重ねる毎に絵がうまくなるのが常だ。
この作品の方が絵も描けている。
そして画力アップより気になるのが、この作品の話(ドラマ)の厚みだ。
(けっして「長い道」がつまらないというのではない。
これも標準以上のウィットをもった生活漫画(我ながらへんなカテゴリ切り!)で、大いに楽しませてもらった。)

読んでいて三つの作品を思いだした。
一つは山止たつひこ(現秋本おさむ)の「回転」。
これは戦争を観念的にとらえている節があったのと、主人公の女性が戦争を理由に生活の中で恨み返しを妄想するような部分があったように思う。(今ひとつシーンを細かく思い出せないが、キーが似ていると感じたのだ)
一つは石坂啓の夏の戦争作品群。
これも戦争を下敷きにした作品だが、直接的な戦争体験を綴った物や、反戦を綴った物と比べた時、資料調査を大切にしたであろう部分や、作者の実感を表出させた部分を読み取れ、隔世の感をもつものだと思ったからだ。
そして今一つは、この夏に観た映画「父と暮らせば」だ。
これが一番イメージがかぶった。

ただ、映画は、主人公にとって、未来が開かれた形で繋がっていく話であったが、こちらは「やった!また一人殺せた。」という終わり方である。
もちろん「桜の国」には繋がるのであるが、原爆というものの傷は私たちにせまってくる問題なのだとしみてわかってくる展開になる。

薄い本でページ対価も安くないが、読むべき作品であろう。
たかの史代は雄弁な漫画を描くことができる作家である。
これからも期待したい。

(以下余談)
作品内によく用いられる風景画をみて、たかの史代は私の前任校の近くに住んでいることがわかった。
年齢も同じ。
なんか、そういったしょうもないところに反応してしまう私がいた。
こういうのを関係症候群というのである。

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