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弾力的な労働時間制・適用除外者等

2018-01-11 | 日記

弾力的な労働時間制・適用除外者等

変形労働時間制

 労基法32条の法定労働時間よりも労働時間が多い週・日もあれば,少ない週・日もある場合には,変形労働時間制を採用することは,時間外割増賃金請求に対する抗弁となり得ます。もっとも,恒常的に法定労働時間を超える残業がある場合には,変形労働時間制を採用しても時間外労働時間数を抑制することはできません。法定休日に労働させれば休日割増賃金の支払が,深夜に労働させれば深夜割増賃金の支払が必要となることに変わりありません。
 変形労働時間制を採用する場合には,労使協定の締結・届出等や,各日の所定労働時間の特定が必要となります。所定の手続を怠った場合は,変形労働時間制は無効となり,原則どおり労基法32条の法定労働時間が適用されることになります。労基法上の適法要件となっている手続を取らずに法定労働時間を超える所定労働時間のシフト制を採用している事例,労働者代表の選任手続が適切になされていないため労使協定が無効になりその結果として変形労働時間制も無効となっている事例,各日の所定労働時間の特定がなされていないため変形労働時間制が無効となっている事例,変形労働時間制を採用すれば週40時間を超えて労働させなければ1日何時間労働させても時間外労働にはならないと誤解されている事例等が散見されます。無効な変形労働時間制を採用しても,時間外割増賃金請求に対する抗弁にはなりませんので,変形労働時間制を採用とする場合は,弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談下さい。

フレックスタイム制

 フレックスタイム制は,労使協定の定める1か月などの単位期間について,一定の時間数労働することを条件に,始業・終業時刻を個々の労働者が自ら決定する労働時間制です。
 フレックスタイム制では,始業・終業時刻を自由に選択できる時間帯(フレキシブルタイム)と,必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)を定めるのが一般的です。
 フレックスタイム制で時間外労働となるのは,清算期間内における実労働時間が清算期間における法定労働時間の総枠を超えた場合です。

事業場外労働のみなし労働時間制

 事業場外労働のみなし労働時間制が適用される場合,通常は所定労働時間内(所定労働時間が8時間の場合は,8時間以内)で当該業務が終わる場合は,所定労働時間(8時間)労働したものとみなされます。通常は所定労働時間を超えて(例えば,10時間)労働することが必要となる場合については,所定労働時間ではなく,当該業務の遂行に通常必要とされる時間(10時間)労働したものとみなされます。法定休日に労働させれば休日割増賃金の支払が,深夜に労働させれば深夜割増賃金の支払が必要となることに変わりはありません。
 「労働時間を算定し難いとき」という要件を満たすかが議論されることが多いですが,事業場外労働のみなし労働時間制の適用要件を満たしたとしても,通常所定労働時間を超えて(例えば,10時間)労働することが必要となる場合には,当該業務の遂行に通常必要とされる時間(10時間)労働したものとみなされますので,議論の実益がある場面は,当該業務の遂行に通常必要とされる時間を超えて労働させたような事例に限定されます。
 他方,通常必要となる労働時間労働したものとみなして時間外割増賃金を支払ってさえいれば,「労働時間を算定し難いとき」という要件を満たさない等の理由から事業場外労働のみなし労働時間制の適用が否定されたとしても,発生した時間外割増賃金のほとんどをカバーすることができますので,残業代の追加支払のリスクを相当程度抑制することができます。

裁量労働制

 労基法上の裁量労働制には専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があります。いずれも労基法で定める要件を満たせば,実労働時間にかかわらず,みなし労働時間が1日の労働時間となるため,時間外割増賃金の請求に対し抗弁となり得ます。法定休日に労働させれば休日割増賃金の支払が,深夜に労働させれば深夜割増賃金の支払が必要となることに変わりはありません。いずれも適用対象業務が限定されており,労基法所定の要件を満たさなければ効力が生じません。
 裁量労働制のみなし労働時間は所定労働時間みなしとすることが多いですが,実態に合ったみなし労働時間とすることをお勧めします。これは単に労基署対応が楽になるというだけの話ではなく,追加で残業代を支払わなければならなくなるリスクを相当程度軽減することができるという民事上のメリットがあります。例えば,実態として一日平均10時間労働しているような場合に,裁量労働制が要件を欠き無効と判断された場合,所定労働時間みなしだと1日当たり2時間分の時間外割増賃金が未払となってしまいますが,1日10時間みなしであれば,発生した時間外割増賃金のほとんどをカバーすることができるというメリットがあります。

管理監督者

 労基法上の管理監督者に該当する場合は,労働時間規制の対象から除外されるため,時間外・休日に労働させても時間外・休日割増賃金を支払う義務はなく,深夜労働時間を把握して,深夜割増賃金を支払えば足ります。
 管理監督者は,一般に,「労働条件の決定その他労務管理について,経営者と一体的な立場にある者」をいうとされ,管理監督者であるかどうかは,労働条件の最低基準を定めた労基法の労働時間等についての規制の枠を超えて活動することが要請されざるをえない重要な職務と責任を有し,これらの規制になじまない立場にあるといえるかを,役付者の名称にとらわれずに,実態に即して判断されることになります。
 管理監督者性に関する裁判例としては,店長の管理監督者性を否定した日本マクドナルド事件東京地裁平成20年1月28日判決が著名ですが,『労働事件事実認定重要判決50選』146頁以下において,西村康一郎裁判官(東京地裁民事19部)は,「総店長」の管理監督者性を肯定した高裁レベルの判決であることぶき事件東京高裁平成20年11月11日判決を中心に検討しています。

【『労働事件事実認定重要判決50選』158頁(西村康一郎裁判官(東京地裁民事19部)】
 「管理監督者性が認められた裁判例は少ないのが実情であるが,肯定例の内容をつぶさにみると,いずれもさほど特異な例とは思われないし,行政通達で具体化された内容をみても,同様の印象を抱く。使用者側としては,どうせ管理監督者性は認められないから,などと過度に萎縮する必要はないものと思われるし,仮に管理監督者性が認められないとしても,裁判所に対し,企業の中での当該管理職の立ち位置を具体的に示し,その待遇としても十分なものが与えられていることを示すことは,付加金支払義務の関係においても意味のあることと思われる。使用者側としては,その意味で,企業内での当該管理職の序列なども十分立証して,裁判所の説得を試みるべきであろう。」

【ことぶき事件東京高裁平成20年11月11日判決】
 「管理監督者とは,一般には労務管理について経営者と一体的な立場にある者を意味すると解されているが,管理監督者に該当する労働者については労基法の労働時間,休憩及び休日に関する規定は適用されないのであるから,役付者が管理監督者に該当するか否かについては,労働条件の最低基準を定めた労基法の上記労働時間等についての規制の枠を超えて活動することが要請されざるをえない重要な職務と責任を有し,これらの規制になじまない立場にあるといえるかを,役付者の名称にとらわれずに,実態に即して判断しなければならない。
 前記2に認定した事実によれば,第一審被告(昭和39年○月生)は,平成8年4月に第一審原告に入社し,平成13年ころには前任者のAに代わって第一審原告の総店長の地位に就いた者であって,総店長に就任後は,①第一審原告において代表取締役である甲野(大正9年○月生)に次ぐナンバー2の地位にあったものであり,高齢の甲野を補佐して第一審原告の経営する理美容業の各店舖(リプル店を含めて5店舗)と5名の店長を統括するという重要な立場にあり(第一審被告もその陳述書(〈証拠略〉)において,各店舖の売り上げを伸ばすにはどうすればよいかを考える立場にあり,各店舗の店長達と目標や改善策を協議した結果を甲野に報告していたことを自認している。),②第一審原告の人事等その経営に係る事項については最終的には甲野の判断で決定されていたとはいえ,第一審被告は甲野から各店舗の改善策や従業員の配置等といった重要な事項について実際に意見を聞かれていたのであり(平成17年4月のリプル店の開店に際しても,甲野はリプル店の開店計画について第一審被告の了解を得た上で初めてその計画を実行に移している。),③平成16年11月以降は毎月営業時間外に開かれる店長会議に甲野とともに出席しており,④その待遇面においても,店長手当として他の店長の3倍に当たる月額3万円の支給を受けており,基本給についても平成16年4月に従前の基本給から1割が減額されて39万0600円となったとはいえ,少なくとも上記の基本給の減額前においては他の店長の約1.5倍程度の給与の支給を受けていたのであるから,第一審原告において総店長として不十分とはいえない待遇を受けていたということができるのである。
 これらの実態に照らせば,第一審被告は,第一審原告の総店長として,名実ともに労務管理について経営者と一体的な立場にあった者ということができ,労基法に定められた規制の枠を超えて活動することが要請されざるをえない重要な職務と責任を有していて,これらの規制になじまない立場にあったものと認めることができるから,労基法41条2号の管理監督者に該当するものと認めるのが相当である。これに反する第一審被告の主張は採用できない。
 なお,第一審被告のリプル店における勤務の実際については,前記2に認定したとおり,通常は,リプル店の営業時間に合わせて,平日は午前10時,土曜日と日曜日は午前9時に出勤(出店)し,午後7時半に退社(退店)していたことから,第一審原告ヘの出退社時間についてリプル店の営業時間に拘束されていたようにも受け取れるが,このことは,第一審被告がリプル店においてその店長(B)や他の従業員と同様に顧客に対する理美容業務をも担当していたことからくる合理的な制約であるから,第一審被告が管理監督者に該当するとの上記の判断を左右するものではないというべきである。」

労基法上の労働者

 割増賃金の支払について定めた労基法37条が適用されるのは,労基法9条の「労働者」ですから,労基法上の労働者に該当しない個人事業主等は,労基法37条に基づき残業代を請求することはできません。他方,契約形式が請負や業務委託だったとしても,注文主等と「個人事業主」等との間に使用従属性が認められれば,「個人事業主」等は労基法上の労働者と評価され,労基法37条に基づき残業代を請求することができることになります。
  労基法上の労働者に該当するかどうかは,労基法上の労働者性に関する裁判例のほか,昭和60年12月19日付け労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」を参考に,仕事の依頼,業務の従事の指示等に対する諾否の自由の有無,業務遂行上の指揮監督の有無(業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無等),拘束性の有無,代替性の有無,報酬の労務対償性,事業者性の有無(機械,器具の負担関係,報酬の額等),専属性の程度等の要素を考慮して判断することが多いです。

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所
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労働時間

2018-01-11 | 日記

労働時間

労基法上の労働時間

 労基法上の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。そして,労基法上の労働時間に該当するか否かは,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって,労働契約,就業規則,労働協約等の定めの如何により決定されるべきものではありません。
 労働者が,就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ,又はこれを余儀なくされたときは,当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても,当該行為は,特段の事情のない限り,使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ,当該行為に要した時間は,それが社会通念上必要と認められるものである限り,労基法上の労働時間に該当します。
 労基法上の労働時間に該当するかが争われることが多いのは,仕事をしたかどうかに争いのある始業時刻前・休憩時間・終業時刻後の在社時間,手待時間,移動時間,教育訓練の時間等です。

【三菱重工長崎造船所事件最高裁平成12年3月9日第一小法廷判決】
 「労働基準法…32条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,右の労働時間に該当するか否かは,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって,労働契約,就業規則,労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」
 「労働者が,就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ,又はこれを余儀なくされたときは,当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても,当該行為は,特段の事情のない限り,使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ,当該行為に要した時間は,それが社会通念上必要と認められるものである限り,労働基準法上の労働時間に該当すると解される。」

労働時間の認定

 労働時間は,原則として,「一日の労働時間の開始時刻から終了時刻までの拘束時間-休憩時間」で,一日ごとに認定されます。
 タイムカード,ICカード等の客観的な記録がある場合は,原則としてタイムカード,ICカード等の客観的な記録を基礎として,一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間が認定されます。自己申告制を採用し,日報等が存在する場合も,原則として日報等を基礎として一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間が認定されます。
 ただし,タイムカード,ICカード等の客観的な記録や自己申告の内容が,実際の一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間と大きく乖離している場合には,これらを基礎として一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間を認定することはできません。必要に応じて実態調査を実施し,所要の労働時間を補正するなどして,適正に実際の一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間を管理しましょう。
 タイムカード,ICカード等の客観的な記録も自己申告された日報等も存在しない場合であっても,日記等により一応の労働時間の立証がなされたのに対し使用者が有効な反証ができないと,日記等の証明力の低い証拠だけで労働時間が認定されることがあります。

通勤時間の労働時間性

 通勤は,労働者が労働力を使用者のもとへ持参するための債務の履行の準備行為であって,使用者の指揮命令下に入っていない労務提供以前の段階に過ぎませんので,通勤時間は労働時間に該当しません。
 高栄建設事件東京地裁平成10年11月16日判決においても,労働者が会社の提供するバスに乗って寮と就業場所を往復していた時間について,「寮から各工事現場までの往復の時間はいわゆる通勤の延長ないしは拘束時間中の自由時間ともいうべきものである以上,これについては原則として賃金を発生させる労働時間にあたらないものというべきである」と述べており,単に通勤方法について一定の拘束を受けていたというだけでは,使用者の指揮命令下におかれているとは認めていません。

直行直帰の移動時間の労働時間性

 直行直帰とは,いったん会社に出勤してそこから使用者の業務命令により作業現場や得意先などの目的地に移動するのではなく,会社を経由することによる無駄を省くためなどの理由から直接自宅から目的地に移動し,目的地から直接自宅に移動することをいいます。
 通常の直行直帰の時間は,実際の労務提供は目的地で開始されるものであること,目的地までの移動は準備行為と考えることができること,移動時間中の過ごし方を自由に決めることができることなどから,使用者の指揮命令が及んでおらず,労基法上の労働時間には該当しないと評価することができます。
 もっとも,作業現場等への移動自体が業務といえるような場合には,労基法上の労働時間と評価されますので,安易に直行直帰を認めるべきではなく,恒常的に直行直帰を認めるのが適切かどうかについて個別の検討が必要となります。

手待時間の労働時間性

 使用者の指示があれば直ちに作業をしなければならず,使用者の指揮監督下に置かれている時間を「手待時間」といいます。手待時間は,現実には仕事をしていない時間ですが,使用者の指示があれば直ちに作業をしなければならない点で使用者の指揮命令下に置かれているため,労基法上の労働時間に該当します。使用者の指示があれば直ちに作業をしなければならない点で,使用者の指揮監督から離脱し,労働者が自由に利用できる時間である休憩時間とは異なります。
 労基法でも,作業時間と手待時間が交互に繰り返される断続的労働について,労働時間規制の例外としていますが,手待時間も労基法上の労働時間に含まれることを前提としていると考えられます。
 手待時間と休憩時間の区別については,場所的拘束の有無や程度,使用者の指揮命令の具体的内容,実作業の必要性から生じる頻度や実作業に要する時間等の判断要素を踏まえて,個別具体的に判断していくことになります。

緊急対応のための待機時間の労働時間性

 緊急対応のための待機時間についても,それが使用者の指揮命令下に置かれているか否かにより,労基法上の労働時間に該当するか否かを判断することになります。
 自宅での待機時間については,待機中も制服の着用を求めたり仮眠を禁止したりするなど,待機中の過ごし方を強く拘束されている場合や頻繁に緊急対応しなければならないような場合でなければ,労基法上の労働時間には該当しないものがほとんどと考えられます。

研修や勉強会の時間の労働時間性

 研修や勉強会の時間は, 純然たる自由参加で,社員が参加しなくても何の不利益も課されず,業務に具体的な支障が生じないようなものであれば,研修等に要した時間は労基法上の労働時間には該当しません。
 他方で,
 ① 使用者が研修への参加を義務付けている場合
 ② 使用者が参加を義務付けないとしても不参加の場合に賃金や人事考課等で不利益を受けたりする場合
 ③ 使用者の義務付けや不利益を受けることがなくても研修の内容が業務と密接な場合
 ④ 研修を受けないと業務に支障が生じる場合
等の場合には,使用者の指揮命令下に置かれているものとして,労基法上の労働時間と評価される可能性が高くなります。

一般健康診断の労働時間性

 一般健康診断に関し,「健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払については,労働者一般に対して行われるいわゆる一般健康診断は,一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり,業務遂行との関連において行われるものではないので,その受診のために要した時間については,当然には事業者の負担すべきものではなく,労使協議して定めるべきものであるが,労働者の健康の確保は,事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると,その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」とする通達が存在します。同通達は,一般健康診断に要する時間が労基法上の労働時間には該当しないという理解を前提としているものと考えられます。
 一般論としては,一般健康診断に要する時間は,労基法上の労働時間には該当しないことがあるとは思いますが,業務命令により一般健康診断の受診を命じたような場合は,労基法上の労働時間に該当するとも考えられ,一般健康診断に要する時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかは,事案ごとに判断していくほかないものと思われます。
 なお,労働者が使用者が行う一般健康診断を受診せず,他の医師等の行う健康診断を受けた場合(安衛法66条5項参照)は,労働者は使用者の指揮監督下に置かれていないものとして,その受診時間は労基法上の労働時間には該当しないものと考えられます。

喫煙時間の労働時間性

 喫煙には業務性がないのが通常ですから,喫煙時間は労基法上の労働時間ではありません。もっとも,所定労働時間におけるトイレ休憩と同様,最小限の喫煙を黙認している職場もありますし,喫煙のため業務を離脱した時間の立証は困難がことが多いですので,仕事の合間に喫煙をしていたとしても,まとまった時間,仕事から離脱したような場合でない限り,所定の休憩時間を超えて労働時間から差し引いてもらうのは難しいのが実情です。
 喫煙の管理として,例えば,喫煙する際は必ずその旨及び行き先を明示することを労働者に義務付けたり,1日当たりの回数や時間の上限を定め,これに大きく逸脱した場合には,職務専念義務違反として注意指導や懲戒処分などのペナルティを課すなど,喫煙のルールを設定することが考えられます。

接待ゴルフの労働時間性

 日本では,ゴルフを通じた社交が企業文化として根付いているため,使用者が労働者のゴルフ代や旅費を負担し,参加を奨励することが多く行われています。
 接待ゴルフといっても主な目的はゴルフのプレーであることから,仮に,使用者から参加を義務付けられていたり,会社が費用を負担していたとしても,プレー中に労働者が使用者の指揮命令下に置かれているとはいえないのが通常です。ゴルフのプレー中に具体的な商談が予定されていて特定の労働者が必ず参加しなければいけないような場合でない限り,接待ゴルフの時間は労働時間に該当しないものと考えます。

 

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