熊澤良尊の将棋駒三昧

生涯2冊目の本「駒と歩む」。ペンクラブ大賞受賞。
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本因坊戦

2010-06-09 19:14:22 | 文章


6月9日(水)、曇り。

昨日、奈良で「本因坊戦」が始まりました。
小生は囲碁は全くやりませんが、スタッフは顔見知りの方も多いので、午前中の比較的閑散な時間に
行ってこようかと思っています。

昨日夜、福井から電話がありました。
「何でも・・」に預けていた盤駒の撮影が終わって、スタッフが返却に来たそうです。
番組で付いた値段は幾らか知りませんが、「盤」の見立てはベラボウに安い値段だったそうです。
その時はよく聞こえなかったので、改めて理由を聞くと、盤の4つの側面それぞれにある3つの葵紋のうちの1つづつが「直されている・・」という見立てが、その理由だそうです。

誰が見立てたのかは知りませんが、それは全くの見当違い。
あの盤の葵紋の内、1つ(4面それぞれに1つずつある)は、普通の蒔絵ではなく「平文(ひょうもん)」か「截金(きりがね)」という特殊な技法で加装されているのです。

普通の蒔絵は、漆の表面に細かく砕いた金粉を蒔いて描くのですが、「金平文」や「「截金」は、金の板を模様に切り抜いて、それを漆で貼り付ける技法です。
「平文」や「截金」は平たい板の表面で光を反射させるので、輝きは金そのもの。「ピカーッ」と輝きます。
それに対して「普通の蒔絵」は金粉なので、光が乱反射し比較的輝きは鈍い。
あの盤は、その「鈍い輝き」と「鋭い輝き」を対比させて、視覚的な効果をより高めるべく、特に手が込んで作られたものなのです。

「金平文」や「截金」は、金そのものの輝きで特に光らせたいところに使われるのですが、「金平文」は面として使われることが多く、込み入った模様の「葵紋」にそれが使われています。
「截金」は細い線の模様、これができる人は極めて少なく、現役は人間国宝と聞きます。
普通は、金箔7~8枚を重ねて貼り付けて薄い板にしたものを用いるのですが、あの盤はその何倍かの厚い板が使われています。
ですから、小生の見立てでは「金平文」だろうと思っています。
将棋盤にのような厚い「金平文」を使った家紋は、小生は他に知りません。
名古屋の徳川美術館にも無いと思いますし、「金平文」や「截金(きりがね)」の技法を知らないと、見立てを誤ってしまうことになります。

「金平文」で仕上げた4つの「葵紋」内の1つは、少し浮き加減になっているものが1つあります。誰かが盤を抱えるとき、着物の繊維に引っ掛けてしまったのでしょう。
これは修復可能です。
それを見た人は、「あれは、後から誰かが手を加えて、元の別の紋を手直ししたものだ」と、自分の知識の範囲内で、そのように思いこんだのでしようが、影響の大きい公器のテレビなのですし、ましてや他人の財産に値段を付けるのですから、謙虚で無ければなりません。
もちろん、誤診は許されることではありません。

出品者こそ大迷惑。視聴者も惑わされれて影響大。
しっかりした権威のあるその方面の専門家によって判断されてしかるべきで、責任ある放送を望む次第。

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