いーちんたん

北京ときどき歴史随筆

麗江・歴史9、禾氏、故地を懐かしんで昆明と名付ける

2013年08月18日 17時49分11秒 | 雲南・麗江の旅
南詔軍は、さらに北上し、金沙江の東側にある吐蕃の拠点5城を攻め落とし、
勝利をゆるぎないものとした。

そこまで先制してようやく安心した帰り、鉄橋城まで戻り、
さらに元来た道を戻って、金沙江にかかった鉄橋を渡り終えると、吐蕃兵が長しえに渡ってこれないよう、橋を切り落とした。
こうして南詔と吐蕃の同盟関係は、橋の下落とともに金沙江の流れの彼方に消えていったのである。


鉄橋城の近く、金沙江の畔には、周囲を断崖絶壁に守られ、難攻不落と謳われた梅氏ナシ族の城、梅醋斗半空和塞がある。
行きは、老君山の西側の道なき道を苦労して進んできたが、大勝利を収めて帰ってきた帰り道にもはや同じ道を行く必要はない。
堂々と金沙江沿いの正道を行きたい。
ところが、半空和塞はちょうどその道中をふさぐように建っており、梅氏酋長は部隊の通過を許さず、これを阻止した。

梅氏としては、関係が吐蕃に近かったこともあり、素直に南詔に汲みされることに抵抗があり、
しかも今、情勢がどういうことになっているのか、自分たちがどういう立ち位置にいるのか、よくわかっていなかった。

尤氏一行らは、再び部隊を老君山の裏側への抜け道を案内し、山の後ろから城を急襲、
数万のナシの人々を捕虜とし、梅醋斗半空和塞を陥落させた。


次に南詔は、かの禾氏ナシ族のことも気になった。

禾氏は半世紀ほど前、Er海の東側に入植、次第に強大になったため、危機感を感じた南詔が再び金沙江の北側の故地に追い返した。
禾氏が今、拠点とする昆明城(現在の塩源)一帯では、のちの名のとおり、塩がとれ、さらには鉄も産出し、
もはや牧畜だけに頼ることなく、二大産業で再び豊かになりつつあった。

その勢力を放置したままでは安心できぬ、と感じた南詔側は、
出兵ついでに今度は、Tuo良樹の渡り口から羊の皮の浮き袋に筏を渡して金沙江を渡り、一気に昆明城を攻め、
城内の官僚1000戸を捕虜にした。




麗江古城。とってもオサレな銀細工のお店。




こうして南詔は吐蕃を金沙江の向こう側に追い返し、
ナシ三大をそれぞれ手中に掌握した。

自ら懐に飛び込んできた尤氏を中心にナシの故地が運営されることになった。

これまで最も吐蕃に関係が近かった梅氏については、
いくら鉄橋を惜しげもなく切り落として、金沙江の藻屑と消したとはいえ、
いくら金沙江の流れが速く、波が荒く、危険だとはいえ、羊の皮の浮き袋で渡れないことはない。
梅氏をこのままかの地に住まわせておけば、いつ何時再び吐蕃側と内通するやもしれず、到底安心はできない。
そこで南詔は、梅氏6000戸をDian(さんずい+真)中地方、つまりは雲南の中央地区、つまりはEr海よりも南に強制移住させた。

次に禾氏らの経営していた昆明城(今の塩源)であるが、
戦略的産物である塩と鉄を握っているこの場所は、手に入れたからには、断固として南詔朝廷の直営にしたい。
禾氏ナシ族には、ここから出て行ってもらうよりほかはない。

ちょうど遥か東南の拓東城(まさにその名のとおり、東方の開拓)で二王子城の建設が始まっている。
禾氏の民には、その建設に加わってもらう、と決定した。
遥か遠くのフロンティア、当時の人々にとっては、地の果てとも思える地へ飛ばされたのである。
こうして禾氏5000戸は、拓東城に強制移住させられた。

禾氏の人々は、故郷を忘れることができず、自分たちの手で新たに建設した城も故郷と同じ「昆明城」という名で呼ぶようになった。
それが今日の雲南省の首都・昆明の由来だという。
昆明には、なんと遥か北から来たナシ族が深く関わっている。



ちなみに中国では、古来より強制移住が頻繁に行われたが、
強制移住させられた人たちが、故地と同じ名前を新地につけることも頻繁に行われ、歴史記載に大いなる混乱を来たしている。



このような下地作りを経てついに793年、南詔は唐に回帰する。
吐蕃もこの時期、ウィグルとの戦いに戦力を削がれ、南詔の離反懲罰に軍を派遣することができず、
南詔の唐回帰は、このまま定着した。

以後、南詔の貴族は、子弟らを成都に留学させることが、ステータス・シンボルとなったという。



・・・・・と、以上が西南交易ルートがきわめて高い価値を持っていた唐代までの攻防である。

この後、まもなく海運技術が向上し、交易の中心が海上に移ることにより、長距離の陸上交易の必要がなくなる。
西南ルートもただの地元や近距離を中心とした交易路となり、中央政権にとっては、それほど重要ではなくなってくる。



     

伝統的家屋の門構え。




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