いーちんたん

北京ときどき歴史随筆

2012年3月の記事一覧表

2012年03月31日 18時40分56秒 | 月別 記事の一覧表

2012年3月の記事一覧表:

2012.3.1.   ようやく仕事終了 

 

中国ドラマ『北京愛情故事

 「愛情か、パンか」。北京で奮闘する地方の若者たちの甘くも切なく、切実な愛の形。

記事の一覧表:

2012.3.1.    1、北京砂漠で奮闘する80后の生き様  
2012.3.2.    2、典型キャラ「鳳凰男」
2012.3.3.    3、「鳳凰男」の手付金の「見切り発車」
2012.3.4.    4、持ち家は信用の証
2012.3.5.    5、愛とパンの交換


中国ドラマ『北京愛情故事』 記事の一覧表

2012年03月06日 15時12分48秒 | 中国ドラマ『北京愛情故事』


中国ドラマ『北京愛情故事

 「愛情か、パンか」。北京で奮闘する地方の若者たちの甘くも切なく、切実な愛の形。

記事の一覧表:

    1、北京砂漠で奮闘する80后の生き様  
    2、典型キャラ「鳳凰男」
    3、「鳳凰男」の手付金の「見切り発車」
    4、持ち家は信用の証
    5、愛とパンの交換


ドラマ『北京愛情故事』5・愛とパンの交換

2012年03月05日 16時06分25秒 | 中国ドラマ『北京愛情故事』
石小猛の会社の社長は、常に彼にいうのだった。
「今どきの大学生の待業率が、こんなに高い中、おまえを雇ったのは、同郷のよしみだ」、と。

社長に命運の首根っこをつかまれたような石小猛に、呉Diは憎々しげにいう。
「個人企業の社長ってのは、いつだってそうだ。社員の運命のすべてを握っている。
おまえもさっさとあんな会社、やめて転職しろ」

しかし社長のいうことは、事実である。
大学を出ても就職できない人があふれている中、雇ってくれるところがいくらでもあるわけではない。
「院にいくには金がないし、いい職場にいくにはコネがないからなあ」
と、石小猛はため息をついた。

大学院へ進学する学費は決して安くない。
本科でさえ、4年間も1枚のパンツをはいてかつかつの経済状況で卒業したのだ。

これ以上、学生を続ける条件はない。
中国の場合は、学位が上になるほど、給料基準は高くなるから、将来は元が取れる仕組みになっているのだが。。。




完全に望みを絶たれ、絶望する石小猛。


ところが石小猛は、社長が愛人にしている秘書と話しているところを盗み聞きしてしまう。
社長は石小猛を追い込むためにわざと8万元のボーナスも差し押さえて支給せず、首にしかけるような体裁にしたというのである。

社長は石小猛の家に食事に呼ばれた時、程峰が沈氷に熱い視線を注いでいるのを見て
石小猛に自分の女を差し出すことを引き換えに受注を取るように仕向けている、と言ったのだ。

あまりにも非情な意図のために躍らされていた自分に呆然自失となる石小猛。


そしてついに程峰の父親までが乗り出してくる。
息子が沈氷に思いを寄せており、初めて本気で惚れていることを知った大徳グループの社長は、息子に内緒で石小猛を呼び出す。

恋人・沈氷と別れる代わりに、取引をしよう、という。
広告の受注だけでなく、大徳グループの重役のポストも用意する、というのだ。

生涯、どんなに努力しても届かないだろう、雲の上のようなとてつもない権力と富を突きつけられた。
今の自分は、たった38平方メートルのアパートのために、
ぼんぼん息子の友人や自分の雇い主におもちゃのように弄ばされたばかりではないか。

現実の途方もない絶望感、目の前に見せられたあまりに魅惑的な「ケーキ」。。
そのギャップに押しつぶされそうになった石小猛は、「愛」より「パン」を選ぶことを決めたのだった。


つまりは、恋人・沈氷と二度と会わないことと引き換えに大徳グループの役員のポストを手に入れた。

しかし自分をそのように仕向けた程峰、その父親、広告代理店の勤め先の社長を深く怨み、
人の心を金で買い取った彼らに血の復讐を誓う。
のし上がり、成り上がり、破滅に追い込むまで決して手を緩めない、と。。。



・・・・と、以上が、ストーリーの軸ラインである。
貧富の差が激しさを増す社会の中で、「愛」と「パン」の取引を突きつけられたら、
「あなたは悪魔に魂を売りますか」?



さて。
青春ドラマである「北京愛情故事」ですが、
その中で年上世代の準主役二人が、強烈な個性で脳天をハンマーパンチでっす。
この二人が観衆に残した印象は、圧倒的。

それが呉Diの兄・呉魏と彼のアメリカ時代の恋人・呉媚。

**********************************************************

まずは呉魏(譚凱・演)から。

んもおお、「熟女」世代(だはー!)としては、主役クラスの「子供」たちよりは、
このちょい悪系の濃おおお厚おおおおお!なキャラのほうがひかれまっす!
以下、ちょっとリキ入りますが、あしからず!


       

       
       


証券ディーラーである呉魏は、証券界で負け知らずの相場荒らし。
軍隊スパルタ式のチームを抱え、夜討ち朝駆けで相場を押して押して押しまくります。

呉魏「今いくらだ?」
部下「16元2です!」

呉魏「もう少し待て。16元4でまずは5千離せ」
部下「深動能の連中が5万捨てようとしています。買いますか、老大(兄貴)?」

呉魏「もう何回も同じことを聞くな。拾え。向こうが捨てるだけ、すべて拾うんだ」

   

   

二階から圧倒的なカリスマ性で部下らを叱咤激励。

「今、大引けまであと40分ある。今日の相場にはもう大きな波乱はないだろう。
明日の3時の大引けの前まで、誰も半歩たりとも会社を離れることは許さない!
外部の誰とも連絡を取るな。

今回の点石成金社との対峙は、絶対に持久戦になるだろう。
明日のこの時間、最終的な勝敗の結果が出るはずだ。

おまえたちはもうこのためにすでに90時間以上、奮戦している。
絶対に最後の瞬間になって、失敗することは許さない!

明日、やつらは大規模な反撃に出てくるはずだ。
最後の断末魔のあがきを試みるだろう。

おまえたちは敵に一かけらたりとも、生還のチャンスを与えてはならない。
情け容赦なく、一気にかみ殺せ!

歴史は一度ならずとも我々に示している。
敵への瞬間の憐憫の情が、自分への致命的な一撃になることを!

おれは一つの結果しかいらない。 成功だ!」

「それから覚えておけ。みなの今回の犠牲には、
おまえたちの想像を遥かに超えた見返りを用意している。

皆もわかっているはずだ。必死に踏ん張るのは、俺のためではないと。
ほかの誰のためでもない、自分のために、
自分の前途のために、夢のために、
そしてますます近づいてきた名車、豪邸、美女のためだと!」




解放軍製の軍隊ふとんで合宿生活。




ジャンクフードを食べまくってがんばります。
転がっている缶は、中国版リゲイン「紅牛--レッド・ブル」。24時間戦います!


阿修羅のごとき迫力っす。

      

      

成功あるのみ!


そして、成功の打ち上げパーティでは。



成績のよかった社員2人に賞品授与。
キーを二つ取り出す。



新車でござる!

離職率の高い中国では、社員に社用車を個人使用に与えてやることはよくあります。
会社の車だけど、普段からプライベートに使ってもいい自分だけの車。

ガソリン代、保険代、車検代、修理メンテナンス代、駐車代すべてが会社もち。
会社の名義なので、事故を起こしても、すべて会社の経費で処理。
その代わり、辞職するときは、車をおいていけ、というわけだ。

辞職した時の生活の質が、がたりと下がるように設計し、離職に歯止めをかけようとするのである。

***************************************************************

他の俳優とは違う、異色のオーラを出している譚凱は、経歴も異色。

今年39歳の譚凱が、俳優業を始めたのは、なんと30歳から。
しかもそれまでは、広告代理店で高給取りのデザイナーだったのである。

中央戯劇学院の舞台美術科を卒業し、新卒で入った代理店で96年当時、7000元の高給をもらった。
「当時、長安街沿いのほとんどの看板広告はうちのやったものでしたよ」

しかし夜討ち朝駆けのハードな仕事のため、プライベートな生活もなく、自分を取り戻す時間もなく、
そんな生活に疑問を感じるようになり、俳優業に転職したのだという。

今は体重70kgのスリムな譚凱だが、辞職当時は85kg。
5年間の接待漬けの生活のなれの果てであった。
それからジムに通い、半年で20kgの減量に成功したのだという。

こういった異色の経歴が、独自の濃厚なキャラを作り出しているにちがいない。

偶然ながら、気が付いてびっくりしたことがある。

それは、私が好きな時代劇ドラマ『大明王朝』の中で、
私が気に入っていたキャラの高翰文も彼が演じていたことを知ったのだ。

ははあ。おぬしだったのか、である。

『大明王朝』は、2005年の作品。32歳だった彼は、今ほどアクは強くなく、
アラフォーとなった今、一段と濃いいいいキャラとなっていたというわけである。

おもわず彼の『微博』もフォローしちゃったっちゅーの。
今後も活躍が楽しみな俳優っすー。

サイドストーリーである彼のプロットに惹かれた観客は、私だけではなかったようである。(こちら

「譚凱の演じる呉魏は、利益を追求する商人(正確には証券ディーラー)であり、
眼中にあるのは、金と勝利でしかない、全身から銅臭のする人間だ。

ところが、弟の呉Diに接する時は、おちついた慈愛の心を見せる。
血のつながらない弟が、自分の想い続けてきた昔の恋人・伍媚を愛した時、
兄として彼は、愛する人を弟に譲ることを選んだ。

たとえ、長年の立身出世の努力が、昔の恋人を取り戻すためだったとしても。
ドラマの中の呉魏はよき兄であり、よき恋人だ。

彼の一挙一動がネットで熱い論争を呼び、ネットで呉魏への熱愛の声が続出。
『完璧な恋人』と定義された。」

ほおお。そうかいそうかい。皆同じことを思ったかい、と私も満足なのであった。
がは。


次に呉魏の昔の恋人・伍媚(=莫小棋・演)も迫力っす。

ドラマの中では、兄・呉魏がアメリカ留学時代につきあっていた恋人であり、
呉Diの務める会社の営業部長でもある、という役どころになっている。

呉Diは、アメリカ系のエアコン・メーカで営業マンとして働く。
ある日、営業部長が異動となり、アメリカ本社から転属となった新しい上司が赴任してくる。
それが、伍媚である。


   



・・・・ところで、この伍媚の髪型、はっきりいってめっちゃへん・・・と、どうしても気になる。
こういう髪型で営業やる、って、日本だったら、絶対にありえないー。

あとナポレオンの軍服のようなスーツも。。。。
どうやらこれは、スタイリストさんの手配したものではなく、彼女の自前の服のよう。

というのは、ドラマと関係ない場面で劇中で見た服を着ているのを見たから。
中国ドラマでは、衣装が俳優さんの自前であることはけっこう普通なようだ。

ということは、この髪型もナポレオンの服も、
初対面で相手を強烈な印象でノックダウンする先制攻撃のカウンターパンチであり、
「どや」とまずは、第一印象で上に立つことを重視するキャラなんだと思われる。

そういう個性もこのドラマの役柄と重なる部分があり、地で行ってる感じがしないでもない。
それも含めて、かっこええわ。男前や。

閑話休題。

さて。営業部長として就任した伍媚。
大口受注が取れる可能性のあるクライアント趙処長の元に営業にいくが、部下である呉Diが遅刻したために、
ライバル会社に先を越され、興味を持って貰えない。
「処長」とつくからには、政府機関だということをあらわしている。
官僚が相手である。

そこを伍媚は、ライバル会社の接待現場を抑えるため、呉Diに車を追跡させてついていく。

「商戦の第一原則。最後の最後まであきらめない。」
「商戦の第二原則。ひたすら、面の皮を厚く。ゲームで重視されるのは結果。過程を気にする人は誰もいない」

レストランで趙処長とライバル会社の営業部長・湯銘の食事への場面に偶然出くわした顔をして、
「縁とはこういうことをいうんですのね」と、ちゃっかり同席してしまう。



その日は、ライバル会社が蟹料理のフルコースを用意していたが、伍媚は申し訳なさそうにいう。
「ごめんなさい。実は私、仏教に帰依しているので、毎月の1日と15日は、絶対に生臭を食べられないんです。」

それを聞いたライバル会社の湯営業部長は、
「まさかダイエットのために肉を食べないというのではないでしょうね。
そんな必要はないですよ。今でも充分に悩殺ボディじゃないですか」と冗談をいう。

ところがそこでクライアントの趙処長が、
「あなたは、おわかりになっていませんね。信仰のある人というのは、
1日と15日は、絶対に肉に手をつけてはいけないのです。

それに私も伍さんと同じです。
もし彼女が今日言い出さなければ、私も遠慮して言い出せないところでした。」
といい出したのである。

これを聞いた湯部長は、唖然とする。
「ま、まさか趙処長も仏教に帰依されているとは・・・。知りませんでした。
なんてこと・・・。」

趙処長は苦笑いする。
「いえ。あなたのせいではないですから。でも今日は同志がいてよかった。」と
伍媚をやさしく見つめた。

「いや。これは申し訳ない。それでは、今日の蟹のフルコースはとんでもないことになってしまいましたね。
私の配慮が足りませんでした。いや、恐縮恐縮」
と湯部長は大慌てである。

「お詫びに、まずは私が罰の一杯を飲みましょう」と
酒を注ぎ、自分で飲み干そうとするのを、伍媚が再び遠慮深げにいう。
「湯部長、私たち、今日は肉を食べてはいけないだけでなく、お酒も一滴も触れてはいけないんです」

と、「私たち」呼ばわりで、趙処長を自分の陣営に絡め取る。

「え・・・・。」とそのまま、固まる湯部長。
「そ、それなら、蟹のフルコースは全部とりやめて、精進料理のフルコースにしましょう」と慌てて言う。

すると、ウェイトレスが、
「申し訳ありません。すでにご予約いただいた蟹フルコースのキャンセルはできません。
それから当店には、精進料理のフルコースはありません」という。

「え・・・・。」と、再び固まる湯部長。趙処長も視線を泳がせる。
そこで伍媚は、遠慮気にいう。
「実は近くの精進料理店のフルコース、ちょうどまだキャンセルしていませんでしたので、
もしよろしければ、いかがですか。
湯部長は、蟹フルコースを無駄にしてはいけませんわ。召し上がらないと」
と見事に趙処長の身柄をさらっていったのである。

こうして最終的に伍媚は、大型受注の契約を取り付けることに成功する。

伍媚が本当に仏教に帰依しているわけなどなく、事前調査でクライアントが仏教に帰依していることを知り、
その情報をうまく活用したということである。

ところで、これも今どきのトレンドをあらわしていて、リアルだ。
政府高官や金持ちは、酒池肉林も思いのままの身分であるからこそ、堕落した人間だと世間に軽蔑されるのを恐れる。
そこで、自らを律する仏教に帰依することで、世間の尊敬を得たいという気持ちもあるのだろう。

「肉は食べません」と言い出す人は、わりと多いのだ。

1日と15日に肉を食べないというのは、中国仏教の作法である。
ラスト・エンペラー溥儀の手記だか、溥傑の手記だか忘れてしまったが、母親が1日と15日は肉を食べない、という場面が出てきたような気がする。
解放前、上流階級の、特に年配の女性は、そういう習慣を守る人が多かったらしい。

仏教の祖国インドでもそうだが、菜食主義者は、肉体労働者にはあまりいない。
あまり体を動かさなくともよい上流階級の人が多い。

インド料理も、上級カーストが元々、イラン系の遊牧民の流れを汲むために、乳製品や肉食が多く、カロリーが高い。
だから菜食にでもしないと、体を動かさない身では、健康を保てないということだろう。

同じように中華料理も食用油たっぷり、炒め物にもラードをこってり使うなど、
経済的に余裕があればあるほど、成人病の危機は迫りやすい。
月に2回ほど肉なし日を作ることは、きわめて合理的な金持ちの習慣といえる。


趙処長の伍媚への態度の豹変は、
「フェロモンむんむんのポリシーもあまりなさそうな女性かと思っていたら、
自らを律する強い生き方の信念を持っているとは」という、好感である。

しかも自分が仏教に帰依していると、カミングアウトしてしまった以上は、
「機嫌のいい時にしか、戒律を守らない日和見な、ちゃらんぽらん仏教徒」と、
若くて美しい女性に思われたくがないためにも、余計に蟹は食べれない、という心理に追い込んで行っているのである。


さて。伍媚と呉Diの二人はその後、恋人同士になる。
このプロットももろに今どきのトレンドである。
「男前」な、亭主関白な、独裁者的な年上の女性上司と、チェリーボーイの男性部下の恋愛。
女性に陣地を奪われまくっているのに、「強さ」を求められて萎縮気味の男たちにとっては、
「ついて行きたい」女性として、共感を得た。

最近の北京映画祭でも妖艶なセクシードレスで登場した莫小棋。

   

今回の「北京愛情故事」が、出世作になったといわれている。

莫小棋の経歴もまた異色である。

北京出身、8歳で両親に連れられてオーストラリアへ渡り、若かりし頃「ミス・シドニー華僑」を受賞している。

しかも金融会計学の修士まで持っており、芸能界で屈指の「高学歴」。
ドラマの中で披露する英語は、もちろんネイティブのように流れるがごとくよどみない。

確かにこの「男前」な姉御役は、あまりにもはまっており、
中国国内で演じられる女優もあまり多くはないのではないか、と思わずにいられない。




監督の陳思成いわく、「北京愛情故事」という名前は、
日本のドラマ「東京愛情故事(東京ラブストーリー)」から来ているという。

80后のかれらの世代は、
90年代に中国の地上放送で放映された「東京ラブストーリー」をみて青春を過ごした。

「高度成長期の東京と今の僕たちは似ている」と監督。

私からいわせると、それは違うだろー!!と、つっこみたくなるが。
「東京ラブストーリー」は、バブルの能天気な日本の天真爛漫なお話だ。

このドラマは、それに比べ、底なし沼に引きずり込むような深い闇をかかえている。
似てるわけがねええーー!!、って。

***************************************

ところで、このドラマには、リアルでの恋愛関係も生まれたようだ。

主役&監督の陳思成と主役の冬(+にんべん)麗(+にんべん)亜(+女へん)(以下、Tongliya)が、
カップルとして結ばれたのである。

   

ドラマの中と同じように、陳思成がTongliyaに猛アタックした結果らしい。

ところで、Tongliyaの経歴を調べてみると、なんと彼女は錫伯(シーボー)族なのである。
憧れのシーボー族!

私が一番書きたいのは、清朝時代のことなのだが、
シーボー族は世界で唯一、日常生活でまだ満州語を使っている民族である。
新疆ウィグル自治区で暮らしており、清朝の資料の整理のため、多くが北京の学術機関にも招聘されている。

Tongliyaも中国語、満州語、ウィグル語の3ヶ国語を話せるのだという。
また地元の舞踊団の出身なので、元々は西アジア系のエキゾチックなダンスを得意とする。

シーボー族は、元々モンゴル系の民族の一系統だというが、
彼女の顔立ちを見ていると、イラン系の血が濃厚なウィグルやカザフ族系の混血がありそうだ。
そういうことも含めて、私は興味津々で注目してしまう。

Tongliyaのブログには、シーボー語(つまりは満州語にきわめて近い言葉)で
新年の挨拶などもあり、げーん、と一人感動していた。

  

Tongliyaの通称は、幼名の「YY」(ヤーヤー)、その延長で「Y爺」(ヤーイエ)とも呼ばれるという。

中国語の「爺」は、「だんな」というくらいの尊称なのだが、
女性に「爺」をつけるのは、つまりは「男前」というほどの意味だ。

何が「男前」なのかといえば、Tongliyaはドラマのスタッフらで遊びに行った時など、
必ず争うようにして、自分が皆の分をおごるのだという。

中国では、女性は男性におごってもらって当たり前という社会常識の中、特に「男前」に映るわけである。
陳思成が惚れたのも、そういう「男前」なところもある、ということだ。

そのあたりも遊牧民族のシーボー族の女の子らしいのかしら、などと何でも結び付けて連想したくなってしまう。

「爺」の「大物」といえば、範氷氷(ファン・ピンピン)こと、「範爺」(ファンイエ)だろう。

  

中国のトップ女優だが、自身でプロダクションを開業してからは、その「男前」ぶりに
並み居る男たちが、脱帽だという。

芸能ニュースによると、
フォーブス2011版ランキングの発表によると範氷氷の年収は5100万元。
芸能人の中では9位。
自身の経営するプロダクションの社員の年収も合わせると、1億元前後になるという。

主力チームは15人ほど。
専属メイクアップアーティストが最近結婚した際は、30テーブルの食事代をすべて彼女が支払った、
ボーナスにはノートパソコンを全員にプレゼントした、など数々の伝説を残す。
スケールでかくて、かっこええ、と思う。

・・・・・・以上、「北京愛情故事」の世界にはまり込んでしまったので、
延々とお付き合いいただきました。


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ドラマ『北京愛情故事』4・持ち家は信用の証

2012年03月04日 21時11分05秒 | 中国ドラマ『北京愛情故事』
なぜ「持ち家」がないと、永遠に「安定」がないのか。

これにはいろいろな社会制度も絡んできて、さまざまな要素を説明しなければならないが、
一つ一つ見ていこう。

まず中国という国は、広すぎて犯罪逮捕率があまり高くないということを念頭においておかねばならぬ。
つまりは悪いことをした人が、逃げおおせてしまう確立が高い、ということだ。

そんな中でもせめて捕まえやすいのが、地元出身の人間だ。
家族、親戚、友達がすべてそこにおり、小さいころからの思い出やコネクションがすべてそこにある。

地元で犯罪を起こして、どこかよその土地に逃げたとしても、家族会いたさに戻ってくる可能性も高いし、
人生の大切な人たちに会えなくなるというのは、とてもつらいことだから、犯罪を起こそうという気持ちも少なくなる。

見知らぬ土地に逃げても、守ってくれるほどの親しいグループがなければ、たれこみもされやすい。
だから悪いことは、よそではやっても地元ではやらない人がほとんどだろう。

法人の経理担当者は、地元戸籍の人に限る、という法律があるのもそのためだ。
お金を扱う人間がよそ者では、おちおち安心もできないというもの。





工事現場に入り込み、内装の夢を描く。


次によそ者であっても、持ち家があるということは、その家を「抵当」として見ることができる。
金を持ち逃げしても、裁判で家を差し押さえることにより、その損失を補填することもできるだろうし、
それだけの経済力があるから、けちなことはしない、という財力の証明、本人の信用にもなる。

結婚に際しても財力の保証になる。
何しろ、今どんなに高給取りであっても、明日は首になるかもしれないのだ。


多くの人は体力、精神力が衰え、メタボで成人病に蝕まれるようになる40代半ばくらいでリストラに遭う。
どれだけ給料基準が下がっても、再就職できれば、まだいいほうだ。
そのまま再就職できずに、一気に「リタイヤ」生活に突入してしまう人が、あまりにも多い。

無職になった人に医療保険は効かないし、ましてや奥さんや家族の分などはまったく利かない。
ガンにでもかかれば、医療費だけでマンションの1軒分くらいは簡単にふっとぶ。

だからせめて持ち家でもなければ、「おちおち安心して眠ることもできない」のである。



さらに前述の「収入の不安定さ」、「明日の収入への不安」のために、
「たとえ、動けなくなっても」、「何もしなくても」収入となる投機をしたがる。

何しろ人生で一番稼げるのは、30歳ー42歳くらいのせいぜい12年程度だ。
それ以前は「死なない程度」しか稼げないし、40代半ばを超えたら、ゼロに近くなる可能性も高い。

「老後」がひどく長いのだ。

その縁(よすが)を不動産投機に求めたがる。
さまざまな思惑に駆られてどうしても不動産を買おうとするため、「買い値」がやたらと高くなってしまうのだ。




公共バスで帰る二人。


世界的に見ても、先進国であれ、発展途上国であれ、20年借りれば、その部屋を買い取れるくらいの価格になっている。
年間家賃が、買い値の1/20程度。それが相場だろう。


ところが今の北京は、買い値があまりに物価より高くなりすぎている!
つまり40-50年貸さないと、その物件を買い取れないくらいの値段になっているのだ。
ほぼ一生貸し続けたとしても、元手がとれない・・・

しかもその間に汚されて内装をしなおしたりしなければならないから、なおのこと。


したがって、部屋を貸しに出すことは、まったく儲けにならないのだ。
さらに通常、アパートの管理費、冬の暖房代、家具、家電製品、その修理費は大家の負担になっている。
それを差し引いたら、儲けはあまりにもかわいそうな額になる。

たとえば、120万元ほどする物件であれば、その貸し値は月3000元程度だ。
さらに毎月の管理費が200-500元ほどかかり、一冬の暖房費は3000元(暖房の入る期間は4ヶ月ほど)。

そこで世情の動向により少しでも家賃の市場相場が上がれば、すぐに追い出されてしまうわけである。
あるいは、自分が住みたくなった、子供が住みたくなった、といった理由で簡単に追い出される。

近い例でいえば、オリンピックの前に家賃が高騰し、日本人社会でも皆が「追い出されラッシュ」。
つまりは、最初から利益率が低すぎるから、店子を大事にしないのだ。


石小猛が「おちおち安心して眠れない」、「漂」(さまよっている)感を強く持つのも、
あまりにもしょっちゅう追い出されるからだ。

2011年の春節に各都市で「新政策」が発表されて、この1年でだいぶ地価はおちついた。
不動産購入は地元の戸籍を持っている人が2軒まで、外地戸籍の人は、地元で5年以上納税してきたという証明を提出して1軒まで、と決められた。

つまり投機のために買うことが難しくなったのである。
実施されて1年余りがたった今、買い値はだいぶ下がり、賃貸価格は30%ほど上がった。

買い値と賃貸の価格バランスが、やや世界水準に近づいたことになる。
借りる側としては、あまりいいことではないように見えるが、雇用される側の給料がかなり上がってきているので、前よりは楽なのではないだろうか。




・・・・以上、延々と石小猛が「持ち家」に執着する理由を書いてきたが、

沈氷はそんな彼に

「北京にとどまることができたら、そりゃあもちろんそれに越したことはないけど、
もし無理なら家に帰りましょうよ。私は故郷も悪くないと思うわ。
両親もいて、おいしいものもたくさんあって。親しい友達もたくさんいるし」

と天真爛漫にいう。


しかし石小猛は、もうこの都会の生き残りレースにのめりこんでしまって後戻りできない。

「もう帰れないよ。北京にいる外地人で、故郷を思わない奴がいるだろうか。
それでも誰も帰れない。帰ることは負けを認めることだ。それは絶対にできない。
今回負けたら、一生胸を張って歩くことができない。おれたちを馬鹿にした奴らを見返してやる」

「石頭、そんなこといわないで。あなたはそんな人じゃなかったわ」と沈氷。


この二人は彼女が彼を「石頭」(シートウ)、つまり「石ころ」と呼び、
彼は彼女を「Y頭」(ヤートウ)、つまりは「娘っこ」と呼び、なかなかかわいい。

石小猛がしゃがれた声で、「Y頭--!」と搾り出すように呼びかけるセリフは、
よくバラエティ番組でも物まねの対象になっており、「鳳凰男」の「決めセリフ」と化しつつある。




石小猛を追い込んでいく社長。


閑話休題。

案件を成功させた暁には、8万元のボーナスを約束された石小猛だが、
大事なプレゼンの朝、公共バスで人助けをし、肝心の広告企画のデッサン画を紛失してしまう。

そのためにクライアントがへそを曲げてしまい、後からデッサン画をもういちど書き直して提出しても、
状況を変えることはできなかった。
社長は、彼に8万元のボーナスは取りやめ、と無情にも告げた。

6万元の「頭金」を月末までに振り込むよう、マンションの開発会社からは催促の電話がかかってくる---。

追い詰められた石小猛に社長は、次のチャンスを与える。
それは程峰の父親の会社・大徳グループの年度広告の大口受注である。

その仕事を取ってくることができれば、ボーナスは20万元、
さらに企画部長・年俸30万元に昇格させるという。

石小猛が、大徳の御曹司と親しいことを知ってのことであった。
そこで程峰に推薦を頼むが、普段から父親や会社との関係が悪い程峰は友人のために受注を勝ち取ってやることができない。

それどころか、父親と喧々諤々の大喧嘩をやらかし、どこの代理店を使っても、
おまえの推薦するところだけは、断じて使わない! とまで言われて薮蛇にしてしまうのであった。

さらに悪いことには、二つの案件を失敗させたとして、
社長は石小猛に「会社から呼び出しがあるまで出勤しなくてよい」と言い渡す。


完全に首とは言っていないが、石小猛は崖っぷちに追いやられる。




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ドラマ『北京愛情故事』3・「鳳凰男」の手付金の「見切り発車」

2012年03月03日 16時06分25秒 | 中国ドラマ『北京愛情故事』
「鳳凰男」石小猛は、同郷のよしみということもあり、
雲南出身の社長の経営する小さな広告代理店で、広告デザイナーとして働く。

そこで重要な案件のデザインを任され、成功したら8万元のボーナスを出す、といわれる。

石小猛は、その8万元をあてにして、「見切り発車」でマンションの購入を決め、
手付金を払い込んでしまう。

五環路外の(つまりはかなり郊外)、わずか38㎡の小さなマンションだが、
これで恋人を故郷から呼び寄せることができる、と喜ぶのである。




ネオンの見える屋上から「おれは残ってみせるぞー!」と叫ぶ。


彼の購入するのはいわゆる「期房」。つまりはまだ建設中で数年後にしか入居できないマンションである。
資金を集めつつ建てていくので、建ってから買う「現房」よりかなり割安となる。

手付金は5万元。社会人になって3年の彼がかき集めた貯金は全部で3万元。
足りない分の2万元は、程峰が貸してくれた。

次に今月末までに「頭金」の6万元を払い込めば、そこからは毎月2400元のローンを20年間返していくことになる。
この部分は、毎月の給料から余裕をもって出せる金額なので、
問題は、この「手付け金」と「頭金」の捻出である。
程峰から借りた2万元と頭金6万でちょうど8万。ボーナスの額と一致するから、
そのお金を当て込んで手付金を払いこんでしまったというわけだ。

普通はこの金額が結構な額になるため、なかなか持ち家を手に入れることができない。

これは不動産バブルを抑制するため、数年前に決められた政策である。
確か最低でも全額の15%を頭金で支払わないと、ローンが組めないと決められた。
頭金さえない人までマンションころがしゲームに参戦できないようにしたのである。

3年働いて貯金が3万元、というのは、まあまあ妥当だろう。
だいたい1ヶ月に1000元ほど残したことになる。

働き始めなら、月給が大体2-3000元程度。
家賃と食費を抜いて1000元残れば立派だ。



ここで認識しておかなければならないのが、彼らがまだ大学を出て3年という設定だ。

今の中国企業の最大の特徴は、「自社で人材を育てる気もなければ、そのリスクも犯したくない」ということだろう。

つまりはせっかくお金をかけて人材を育成しても、育った頃には転職されてしまい、
他人のためにお金をかけて人材を育てるようなことになってしまう。

したがって
・新米の、まだ育っていない人材は、死なない程度の「生かさず、殺さず」の給料しかやらない。
こっちでは、試用期間がやたらと長いのも特徴。半年、1年はあり、その間は「月給」といわない。
「生活手当て」のみ。生きるためのぎりぎり程度。
まさに徒弟制度のごときである。

・それでも後ろ足で砂をかけられるようなやめ方をされたくないから
(顧客を根こそぎ持っていかれてやめられる、会社のお金をもってドロンされる、
 ライバルに企業秘密を手土産にもって転職される、ほかの従業員まですべて根こそぎ持っていかれる、などなど)
なるべく縁故で採用したがる。

・即戦力になる人材には、限界まで高給を出す。
・使えなくなったら、ばっさり切る!




石小猛と同郷の社長


このドラマの主人公らは、ちょうどまだ「徒弟期間」で、
即戦力となるほどには人材としての「市場価値」が出てきていない。

しかしこのままでずっと一生いくのかというと、まったくそんなことはない。
これが、30歳前後になると、ある日、どかーん!と豹変するから、そこを見間違ってはならない。

その時期の半年、1年くらいで急に世の中から、人材としての「市場価値」を認められるのだ。
そうなると、いきなり「がん」!と給料は上がる。

すると、半年から1年以内にマンションの頭金も払ってマイホームを手にいれ、車も購入できる。
その「入場券」ができたことで、「結婚市場」へのパスポートが手に入り、数ヶ月であっという間に嫁もついて結婚できるのである。



面白かったのは、知り合いの中国人女性が、
「行き遅れているのは、女性が多いわ。私の周りで結婚相手がいないと嘆くのは、女性ばかり」
と嘆いていたことだ。

決してそんなことはない!
結婚できないのは、圧倒的に男が多い!

・・・・しかし家も車もない男を女たちは「男」と見ていないのだ。
彼らは「結婚相手」の範疇に入らないというのだから、なんと厳しい。。。


ドラマの主人公らは、「徒弟修業」からまだ抜け出しておらず、
「市場価値」がつかない「おたまじゃくし」として、もがいている。

そんななか、石小猛はマイホームの計画を早まりすぎた。
最初にはまってしまったのは、「手付金」というスパイラルだ。
手付金として支払った5万元は、もしその後6万元の頭金を払うことができなければ、返ってこないという契約になっている。

汗水たらして必死にためた3万元と、さらに友人への借金の2万元。。。
それを一瞬でどぶに捨てる、ということを石小猛はどうしてもできなかった。
もしこの5万元が流れたら、次にマイホームの夢までは、この先あと何年かかるかわからない。。。

そのプレッシャーのために、彼はどうしても頭金の6万元以上のお金を作り出そうとして、追い込まれてゆくのである。




沈氷に建てかけのマンションを見せにいく。


そんな危ない橋を渡りながら、必死の形相の石小猛を見て、友人の呉Diは「持ち家がそんなに大事かな」と首をかしげる。


すると石小猛は「おまえには、賃貸住まいの悲哀は永遠にわからないよ」という。
呉Diは金持ち兄ちゃんからもらったマンションに住んでいるからだ。

石小猛は借家住まいを「根無し」、「安心して寝ることすらできない」、「漂」(さまよっている)と表現する。

「借家住まいでもいいじゃない」という沈氷に対し、彼は断固としていう。
「君は北京に長く住んでいないから、まだわからないんだ」と。

「ぼくは北京で4年間大学に通い、そのまま就職して合計7年も北京で暮らしている。
自分ではすっかり北京人になった気分でいたが、それはただの思い違いでしかない。
この街でお金も持ち家もない人間は、永遠にいつまでたっても『外地人(よそ者)』だ。

たとえ壁と同じ色の服を着て道端に立ち、一言も口を利かず、身じろぎもせずにいたって、永遠に誰かが『暫住証』の提示を求めてくる。
『安定』という二文字は永遠に自分には縁のない言葉でしかない」。


『暫住証』は、北京戸籍以外の人が北京に長期滞在する時に手続きする証明書のようなものである。
特に資格というほどのことは必要はなく、誰でもほぼ出してもらえる。

「『暫住証』の提示を求めてくる」というのは、つまり「怪しい」と思われて詰問口調、
罪人扱い口調を受けるという「屈辱」のニュアンスが含まれているのだろう。




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ドラマ『北京愛情故事』2・典型キャラ「鳳凰男」

2012年03月02日 16時06分25秒 | 中国ドラマ『北京愛情故事』
このドラマには、いくつかの今どきの流行キャラが登場します。

・「富二代」: 金持ちの二代目。自分の努力なしに生まれた時から裕福な環境にあり。
    これまでの中国で目にするお金持ちは、「爆発戸(成金)」しかおらず、
    お金はあっても教養や立ち振る舞いが下品で、人々に軽蔑されていました。
    いよいよその親の世代の子供たちが成人し、新たなカテゴリーが増加したわけです。

・「拝金女」: 愛よりも金を選ぶ女性。

そして、このドラマで初めて知ったカテゴリーが「鳳凰男」でっす。

このドラマの中では、石小猛がこの典型的なキャラとして描かれています。

   
沈氷と石小猛のカップル。


「百度百科」で検索すると、「鳳凰男」を次のように定義しています。
――――――「山の中から飛び立った金の鳳凰」。

つまり貧寒の出身(特に農村出身の男性を指す。経済の発展していない地方の小さな町の出身も含む)。

苦労して大学に受かり、卒業後に都市の残り、仕事・生活する男子。
生活の残酷な現実と艱難辛苦のため、深い傷を抱える。

このために家庭環境のよかった人にはないl苦労をいとわない精神と上に上りたいという猛烈なガッツがある。
それが立身出世には、よい影響をもたらす。


鳳凰男は「鶏小屋から飛び立った金の鳳凰」である。
農村の自然の生活環境を離れても、なお多くの農村の素朴な考えや伝統的な考えを残しており、
都会で身近にいる都市の女性を選び結婚しても多くの考えが合わず、離婚に至ることもある。

鳳凰男の特徴:

1、聡明で努力家
優秀だからこそ「鳳凰」。
苦労を経てきた人は、成人してからもさまざまな困難にも打たれ強い。
責任感が強いが、なにか問題にぶつかると、偏った考えとなることが多い。

2、鳳凰男のすべてのものは、自分の手で努力・奮闘して得てきたものである。
逆に大都市の富裕な家庭の出身者を見下している。

3、古い世代では都市部でも同じように、常に質実剛健な生活習慣を乱さない。
貧乏人と自分より下のレベルの人に対する恐惶がある。

4、性格形成: 農村育ちが都市に入ると、コンプレックスを抱えることは避けられない。
それを粉飾するために、性格が得てして自己肥大気味。  

5、好んで「孔雀女(都会育ちの女性)」と結婚したがる。 

ネットで鳳凰男に対する不満を大声で張り上げるのは、「孔雀女」の70女らが中心。
つまりは都会育ちの1970年代生まれ女性たち。

才気あふれる優秀なところを見込んで鳳凰男と結婚したはいいものの、
劣等感と優越感のギャップが激しく、「難伺候(ご機嫌とりが非常に難しい)」、と不満をぶちまける。
さらにはあまりにも親を大事にしすぎるし、女性を見下し、大家族主義。

つまり「鳳凰男」と「孔雀女」の結婚というのは、数は多いが、
圧倒的なリスクもはらんでいるということらしい。

都会と田舎の差が、あまりにも大きい中国では、その双方の結婚というのは、
もはや国際結婚くらいの受け止め方が必要だということだろうか。



さて。このドラマの中で「鳳凰男」として描かれているのは、石小猛(張澤・演)である。

このドラマの大きなテーマのひとつに「愛とパンの間の選択」があるが、
石小猛は、その二つのジレンマの中で自滅へ突き進む。


将来の設計が狂い、苦悩の図。

まずはその「鳳凰男」としての「貧乏ぶり」が、どう描かれているかというと、

・故郷の雲南には、大学4年間で、最後の年に一度帰っただけ。
 「あの頃の列車代はどんだけ高かったか」

つまりは2000年から2004年ごろのことである。
物価がうなぎ上りな現在、唯一20年くらい前からあまり値段が変わらないのが、
列車の運賃である。
逆にどんどん安くなっていっているのは航空券だが、それでも高いので、ここでは触れぬ。

北京から雲南の昆明なら、38時間の硬座で320元。この値段はあまり変わっていない。
しかし人々の収入は、雲泥の差がある。
2000年ごろ、北京の住み込みウェイトレスの月給は200元が当たり前だったが、今は2000元も普通だ。
つまりは収入が10倍になったということであり、当時の300元がいかに大変なお金だったかがわかる。

この大学時代たった一度の帰省で石小猛は幼馴染の沈氷との交際を発展させ、
これ以後、二人は遠距離恋愛を数年以上も続けてきたことになっている。

金持ちボンボンの程峰が
「たった一回の帰省で決めたのか! どんだけ効率ええねん」
とつっこみを入れていますが、これも「省エネ」努力??

・社会人になってからの3年間。1元のバス代を節約するため、毎朝バス1駅分歩いた。

・大学の4年間、パンツ1枚で通した!
 未だに後輩らの間で伝説になっている、と友人の呉Diがからかっています。

・・・・・だから鳳凰男、すさまじすぎるっちゅーの。。。

ドラマの誇張か、と思う人もいるでしょうが、実際、こういう人います!
こういう衛生観念も含めて、都会育ちの「孔雀女」と結婚すれば、家庭生活にさまざまな問題が起きることは、推して知るべしですなあ。




石小猛の恋人・沈氷は、今どきには珍しい清純派の女性として描かれている。


・今どき、携帯電話もなし

石小猛の恋人が雲南から出てくるというので、友人のために程峰が北京西駅に車を出してやる。

ここでも3人の経済力の差が設定されている。
程峰はパパが買ってくれたTPOに合わせた各種高級車を取り揃えており、
呉Diも質素ながら、お兄ちゃんに買ってもらったエコノミー車あり。

あるいは自分で買った車かもしれないが、お兄ちゃんが買ってくれた持ち家あり、
今後、どんなに金の要り用があっても「打ち出の小槌」を持つ気楽さから
稼いだお金を貯金せず、車にまわすこともできるというもの。

「鳳凰男」石小猛は、車なし、アパートも賃貸。


さて。
出迎えの北京西駅では、改札が2つあるので、
それぞれに携帯で連絡を取りつつ、二人が2つの改札で手分けして待ち構える。

程峰「彼女の携帯番号は何番だ?」
石小猛「携帯を持っていないんだ」
程峰「なにー?? 外星人(=宇宙人)か??」

・・・・今どき、携帯も持たずに北京まで来る、ってどういう生活でしょう?
昆明で幼稚園の先生をやって、そこまで貧乏でもないはずですが。

おそらく家と職場の往復で、あまり必要ないと感じていたのでしょうか。
必要ないことにはお金をかけない、そんなところも質実剛健なしっかり者の面が伺える。


沈氷が作った二人の夕食。トマトと卵の炒め物、青野菜と豚肉の炒め物、酸ラー湯系のスープ。
今どきの子供のいない若夫婦の質素な夕食の一典型ですかね。


・「本当に古墓派から出てきたの??」

林夏は、女友達として沈氷を北京の町に連れ出してやる。
時間の自由の利く、林夏の雑誌社の仕事を沈氷がうらやましがると、

「毎日、セレブのゴージャスな生活ばかり見せ付けられて、大変よ。
それと比べて自分の給料が低すぎて、そのギャップの中で心のバランスを崩し、『敵の陣門に下る』人も続出。
少しでも心に隙間があると、大変なことになるわ」という。

それを聞いて沈氷はきょとんとして「敵の陣門って?」
「なんでわからないの。少しでも容姿がきれいな女の子なら、
楽していい暮らしをする方向に流れていってしまうってことよ」

さらにきょとんとする沈氷。
「あなたって本当に古墓派から出てきたの??」
それでもきょとん。
「古墓派の小龍女を知らないの??」


沈氷の俗世離れぶりに感動する林夏。


・・・私も「古墓派の小龍女」、初耳でした。

さっそく「百度」ってみると、

「金庸の小説《神雕侠侣》の中に出てくる小龍女が、古墓派。この流派は、古墓の中で生活し、
長年外界から隔絶されているために、俗世間のことを知らない。」
・・・ということらしいです。

今どきの80后にとって、金庸の武侠小説は子供の頃からもっとも親しんできた世界観。

「あなたみたいに世間の垢にまみれない女性って、男の人は好きでしょ?」
と林夏は、素直に感動する。

沈氷は、世の中国人男性らの理想の「天女」として描かれておりますな。
この世の中は「拝金女」だらけ。そのおかげで嫁取りもままならない。

どこかにこんな女性はいないものか、と。
ああ。悲哀だわ。。。




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ドラマ『北京愛情故事』1・北京砂漠で奮闘する80后の生き様

2012年03月01日 22時04分12秒 | 中国ドラマ『北京愛情故事』
本日はミーハーに中国で話題になっているドラマについてー。

『北京愛情故事』、なんと36集シリーズです。

中国国内であれば、各無料動画サイトでオンラインで見ることができますが、
1集45分で36集は。。。はい。2徹してしまいました。

見終わったあとは、もうへろへろ。ドラマの世界が頭の中をぐるぐる回っております。
だから時間がない時に,ドラマを見始めてしまうのは、恐ろしい。。。

今回は仕事が一段落したところだったので、思わず手を出してしまいました。。。


どれくらい「話題」になっているかというと、
検索エンジン「百度」で、アルファベットで「Bei」まで打つと、
下から出てくる候補ワードの一番上に「北京愛情故事」が出てくる!
はやっ!

***********************************************************



このドラマは放送まもなく、あっという間に巷で話題をさらいました。
今、30歳前後を迎えるいわゆる「80后(80年代生まれ)」の悲喜こもごもを
リアルに描き、多くの人たちの共感を呼んでいます。

作品の監督を勤めるのは、青春ドラマの若手俳優・陳思成。

         

この作品で初の監督を勤め、なんと監督、脚本、主役、主題歌すべてをこなしています。

陳思成のこの作品にかける思いというのも、
この生き馬の目を抜く東京砂漠ならぬ「北京砂漠」で生き残っていくために奮闘してきた
自分と仲間たちのことを描きたいと思ったからなのだそうです。

北京で大学を卒業し、この都市に根付くことがどんなに厳しい競争か。
負ければ、地方に逆戻りするしかありません。

・・・・地方に戻るということが、どういうことか。

「蔚県」シリーズでも見てきたように
100年くらいは時間がとまり、ほとんどの人が昼間からぶらぶらと過ごし、
ひなたぼっこをしながら、ぼうっとうずくまって過ごすような生活。
まるで別の国にきたような違いがあることは、誰もが意識しているのでしょう。

帰るのは簡単ですが、一度帰ったら、再び北京でやり直すのは、きわめて難しくなります。
「行きはよいよい、帰りはこわい」。
何が何でも残ってみせる、とがんばる若者たちの物語です。

ドラマの中で「鳳凰男(後述)」の石小猛がビルの屋上から
「北京よー! おれはここに残ってみせるぞー!」
と叫ぶシーンがありますが、それは陳自身が実際に叫んだことのあるせりふなのだそうです。


ストーリーは、三男三女を中心に展開していきます。

三男と二女は、大学の同級生同士です。
ドラマの中では、「北京経済貿易大学」の大学生たちが卒業して数年後、となっています。

「北京経済貿易大学」という名の大学は実際には存在しませんが、
おそらく見る人に実在する「首都経済貿易大学」や「対外経済貿易大学」を連想してほしいとねらっているのでしょう。

「首都経済貿易大学」も「対外経済貿易大学」も、中堅どころくらいの大学です。

その昔、90年代にまだ就職の「分配」(国による就職先の指定)があったとき、
北京大学、清華大学に入ると、全国どこに飛ばされるかわからないということで、
全国でもっともいい大学でありながら、これを嫌い、あえて首都経済貿易大学を受験する北京の学生もよくいました。

というのは、この大学は「国立」ではなく「市立」のため、
就職先は必ず北京市内と決まっているからです。

今はもちろんそういう要素はなくなりましたが、
北京「市立」のため、今でもちょっとあかぬけたイメージがあります。

登場人物の一人である石小猛は「清華大学にわずか数点足りなかった」せいで、この大学になった、という設定です。
つまりは北京大学、清華大学の次くらいのグループに入るという位置づけです。

というわけで、主人公たちは中国の中でも、トップクラスに入る、優秀な大学を卒業した
志あふれた青年たち、という設定になっています。


         

程峰(陳思成・演)
典型的な「富二代」(金持ちの二代目)。
世の中のすべてをなめてかかり、金に物を言わせて次から次に女を落としては捨てる
破滅的な生き方から、皆に「瘋子(フォンズ、気違い)」と呼ばれる。

金はうなるほどあるが、母親が父親の浮気のために自殺した過去をもち、
物事すべてに対して投げやり。

友人の石小猛の恋人・沈氷に一目惚れしてから、すべての価値観が変わる。
初めて人を愛し、その強烈な情熱のために友人カップル2人の運命を完全に狂わせることになる。



         

石小猛(張澤・演)

田舎の優等生。仲間の中でもっとも優秀だが、もっとも家庭の経済事情が厳しく、
よくほかの二人に奢られたり、お金を貸してもらったりしており、
そのことをノートに書き付け、返済できる日を夢見る。

幼馴染の恋人・沈氷を田舎から呼び寄せ、小さなアパートを買って、暖かい家庭を築くことを夢見る。

だが、沈氷を北京に呼び寄せた瞬間、友人の程峰が彼女に一目惚れし、すべての歯車が狂い始める。



         

呉(けものへん+火、Di2)(李晨・演)

安定志向ののんびり型。
呉Diには、血のつながらない金持ち兄貴がいる。
親同士の再婚で家族となり、両親が交通事故でなくなった後、兄が学費を出し続けてくれた。

経済的な不安がないため、適度に努力し、あとは生活を楽しみたい、とがつがつを嫌う。

大学時代の恋人・楊紫Xiを成金男に取られる。



以上ー。男性登場人物三人の紹介でした。


次に登場人物女性三人。

        

楊紫Xi(楊Mi・演)

大学時代は同級生の呉Diとつきあっていたが、
小さい頃からの夢であった花屋を開くという目標のため、成金男に乗り換える。
高価なブランド品をいくらでも買い与えてくれる成金男は、金は惜しまないが、
彼女のことをはっきりと「おまえに求めているのは、売女の役割」と言い切り、対等な人格として扱わない。

その役どころは、典型的な「拝金女」。
金のある相手にほいほいと乗り換える現代女性に対する、中国男性らの恨みが凝縮された役どころ。



        

林夏(張韻芸・演)

北京の中流階級で育った太陽のように明るく天真爛漫な性格で常に周囲を照らす。
物語の最初では、プレイボーイの程峰の捨てられてビルの屋上から飛び降りようとする。

その後もいくら振り向いてもらえなくても程峰を愛し続け、
「我愛Ni、和Ni没関係(あなたを好きなのは、私の勝手だから)」と、ひたすら見守る。



        

沈氷(にんべん+冬 にんべん+麗 おんなへん+亜・演)
  
石小猛の幼馴染であり、恋人。幼稚園の先生。
雲南の山奥から恋人・石小猛に呼び寄せられて北京へやってくる。
控えめで料理がうまく、石小猛の友人らも含めて手料理をふるまう。

お金がないと彼女を幸せにできない、とあせる石小猛に対して、お金は二人でゆっくり稼げばいい、と説き伏せる。

程峰に一目惚れされたことから、すべての歯車が狂い始める。






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ようやく仕事終了

2012年03月01日 13時08分59秒 | 北京雑感
皆様、長らくブログの更新ができないまま、2ヶ月近くとなりました。
お久しぶりでございます。

年末年始、春節にかけ、30万字の技術本の翻訳をはじめ、
いくつもの大きな原稿が入り、正月も春節も返上で追いまくられておりました。
ようやくすべての仕事が終了し、一息ついたところです。

頭の中は明とアルタン・ハーンからはるか遠くの世知辛い現代にどっぷり漬かってしまい、
さてこれからどうやって戻るべえ、と思案しているところでございます。
地道に当時の資料を読み進めつつ、リハビリを繰り返して少しずつ戻っていくしかないのですが、
そんなわけで少しずつ戻る作業を始めているところです。

余興の代わりに少し胡同の写真を以下に。。。

去年の夏、久しぶりに胡同を歩きました。
胡宮の北辺りの地帯です。

   
まだ10年前と変わらないような雰囲気が残っているのだなあ、と懐かしい気分になりました。


道端に座り込んでいるおっちゃんは、廃品回収の人でした。
道路を占領して、堂々と商売しております。
右のばあさまは、ペットボトルの空き瓶の精算をしてもらっています。
廃品がたまれば、売りに来るのは、胡同に住むご老人にとっては大切な日常。
今どきトイレも外に行かないといけない長屋生活をするのは、老人が圧倒的に多く、
子供、孫の世代はとっくに新しく建ったアパートに引っ越してしまっていません。
あるいは外地から来た間借りの店子か。


戦利品の積み込み。見事なパッキング。

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