演劇知

劇的考察譚

映画「コーダあいのうた」考察

2022-03-30 10:29:36 | Weblog
映画「コーダあいのうた」考察

「映画館ならでは」との前評判を聞き鑑賞。後半から涙がとめどなく溢れる。以下考察。内容に迫る箇所あり。

*********

タイトルはChildren of Deaf Adultsと音楽用語で「楽曲において独立してつくられた終結部分」という意味をもつ「coda」のダブルミーニング。主人公のルビーが聴覚障がい者一家から独立した健常者であることを意味する。

テーマは障がい者と健常者の狭間にいる主人公の自己同一性の確立。またヤングケアラーの苦悩もそれに付随する。

障がい者を可哀想な描写・神聖化した描写といった「高尚」なものにせず、下世話な描写や感情の醜い描写といった「下劣」な部分もしっかりと織り込んでいる。

台詞に頼らない「言葉」の放出…表情や身振り・手や息の破裂音で「言葉」を観客に伝える。

湖で飛び込むシーンについて、ルビーの本音を表せる場所として湖が選択されている。湖の対比としての海。海は仕事の場であり本音を出せる場ではない。

合唱を父親が聴くシーンで音がフェードアウトし、父親のフランクの「音のない世界」に入る。感動のシーンに没入させない手法はブレヒトに通ずるものがある。映画館ならではの演出。

映画「ドライブ・マイ・カー」考察

2022-03-30 10:27:27 | Weblog
映画「ドライブ・マイ・カー」考察

観なければなぁと元々思っていたところ「ドライブ・マイ・カー観ましたか?ぜひ語りたいです」という子の連絡を受け鑑賞。数年ぶりに演劇の知識を呼び起こす。以下考察。内容に迫る箇所あり。

***********

■テーマは「コンテクスト(個々が使う言葉の文脈)の擦り合せ=コミュニケーション」。戯曲「ワーニャ伯父さん」の象徴的な台詞を随所に散りばめ、多言語の演者の集う舞台を下敷きにして「コンテクストの擦り合せの難しさ」「取り返しのつかない後悔への向き合い方」「自分と相手の気持ちを受け入れることの強さ」を主人公に問いかけさせ、登場人物を再生に導く物語。

◯演劇について
作品上の稽古法(文章を一度音声として認知。その後会話として発せることで演者に会話の新鮮さと感情をダイレクトに感じさせる。その後、そこで得た感覚を舞台表現として再構築していく手法)は滝口監督が実際の現場で行っている手法。作品内、高槻は余計な感情が入ったり無意識に台詞のタイミングを図ろうとしているためこの稽古法に苦戦する。中盤、イとジャニスのシーンで公園という「実際」の中で演技をすることで、役者と役と相手の役者と相手役…四者の情緒が一体となった「実際の会話」が生まれる。

◯家福について
ワーニャ伯父さんのテキストに自身の感情を開いた結果、テキストのもつ力に家福の後悔(妻から逃げていたこと)の念が増幅し家福を支配。ワーニャを演じることができなくなってしまった。
家福は演劇では相手やテキストと向き合う方法や態度を理解・実践しているにも関わらず、現実では妻の音に向き合うことができていないというアイロニー。虚構と現実のインバース。
高槻をワーニャ役にしたのは復讐半分(ワーニャの台詞がそのまま不貞行為の贖罪となる)、高槻の役者としての若さに興味をもち成長を促す半分であると推測。
車の座り位置によりみさきへの信頼関係が見て取れる。(後部座席から前へと移動)

◯音について
性行為の後の物語は娘を失った後の音の絶望を具現化したもの。音の内なる声を感覚的に拾い上げる、自身の「巫女」としての儀式。
高槻と思しき人物との不貞行為も音の内なる声を拾い上げるための儀式。家福では続かなかった物語の結末を紡ぐ。
音のくも膜下出血は家福に不貞行為に対して罰してほしいという気持ちの結果。

◯みさきについて
ドライバー、家福の再生を助ける「運ぶもの」。ラストシーンで傷が消えていたのはトラウマの克服。韓国に居たのは映画祭の家福のパートナー?イ・ユナの演技に魅了され、韓国での新たな道を見つけた?イ・ユナの付き人?

◯高槻について
「浅はかさと若さ」の象徴。
最終稽古の鬼気迫る演技は人を殺めるという一線を越えたからこそできたもの。赤い車体のサーブ900ターボでの家福との会話は音の巫女的性質を垣間見た高槻だからこそ言えた?

◯象徴的なシーンについて
 以下頭に浮かんだ象徴的なシーンを思いついたままに。
・ベテラン日本演者3人は文句を言うことで仲を紡ぎ、高槻とジャニスは表面上の好意のみで仲を紡ぐ。
・チェーホフのポドテクスト(サブテキスト)の理念を、作品の「登場人物の本当の心の声」と重ねるメタ構造。
・チェーホフの有名な言葉「出された拳銃は打たれなければならない」→スマホのシャッター音の伏線。高槻の破滅の引き金となったスマホのシャッター音。
・手話が最も雄弁に言葉を「語る」という、監督のアイロニー
・音が運転したときのサーブ900ターボの走行音とみさきが運転したときのサーブ900ターボの走行音との差。音の走行音は不規則で雑味が多く、みさきの走行音は規則的、静かで心地良い。
・トンネルを抜けた後の雨音・眠りから覚めたあとの雪の無音は家福の心理を表す。
・冒頭の「ゴドーを待ちながら」は、期待しているものの訪れを待ち望んでいる家福の心情を表す。
・やつめうなぎの女生徒の話は、贖罪の気持ちを晴らしたい音の気持ちのメタ構造。
・サーブ900ターボ内の家福と高槻の会話「他人の心を覗き込むなんて、それはできない。しかし自分自身の心であれば、努力さえすれば、覗き込むことができるはず。やらなくちゃならないのは、自分の心と上手に正直に折り合いをつけていくこと」が今作のテーマの一つの解答。しかしその事実を導いた高槻はその若さ故、逮捕・拘束される。
・性交中の音の無心の表情はまさにファム・ファタム(魔性の女性)。村上春樹作品には悉く登場している。

送る辞するの指導から本番

2022-03-18 18:56:02 | Weblog
2年ぶりの記事。

3月になり、ありがたいことに「送るを辞する」を指導する機会に恵まれる。これまで現場にはいたが、それに絡むことは全くできなかったのだ。話をいただいたときは即座に




うほッ♪コントみたいなシチュエーションじゃないッ♪


と思った。色々面白いことができるのかなぁ…やってやれるかなぁ…爪痕残せるかなぁと当初は思っていたのたが、どっこいそうはいかず。主任からわたしたちのチームのメンツがかかった非常に重要なミッションであることを告げられる。

メンツがかかっているならやむなし。「送る辞する」の読み手の子が書いてきた文章をちょこっと大人の力でキメラ化して制限時間5分MAXの壮大な作品を仕立て上げる。

ここから読み手の子とわたしとの4日間の格闘が始まる。初読を終え、抑揚がない棒読みをどうするかが最大の課題となる。主任にも厳しい言葉で発破をかけられる……フフッ、確かにそう言うでしょうよ。しかしわたしには晴海時代の「朗読と語り」があるのだァ。そしてわたしの子達と12年間継ぎ足しで作ってきた秘伝の発声法があるのだァァァァ。

初日。熱血指導。






子「よくわからない





そりゃそうだよね!継ぎ足し過ぎて味が濃くなりすぎてるよね!びっくりしちゃうよね!

演劇などという表現サバンナに踏み入れた経験のない子の警戒心をいかに解いていくか…こうなったらピエロになるしかない。道化となったわたしはアホみたいだけど効果絶大の発声とアホみたいだけど効果てきめんの滑舌を、それはそれはアホみたいに実演する。見様見真似でやってくれる読み手の子。

最初は戸惑っていた読み手の子も、何をやれば自分の声が変わっていくかを感じ取れた様子。よし、これはいける。

2日目を過ぎてから劇的に表現が変わっていく。コツを掴んだようだ。言葉の粒立てをメモすることで何回読んでも変わらない品質を維持することができている。褒めることでさらに楽しく、そして自由に表現をしていく読み手の子。

主任のOKももらうことができ、いよいよ本番前。緊張する読み手にわたしから最後のアドバイス。



「演台に立つ前、緊張したらわたしの目を見なさい。緊張が解けるから。」


というのも、奇しくもわたしが当日のマイク用意担当。頷く読み手。これですべての準備は整った。

そして本番………読み手の名前が呼ばれる。わたしは颯爽とマイクを用意。慎重に位置を整えながらも、最後のアドバイス通り読み手を見る。さぁ緊張を解こうよ。目と目を合わせようよ。

読み手の子をキリッと凝視する。






老眼で目が合わないや



ここにきて己の老いを実感したんだ。動いているものにピントを合わせられないんだ。ごめんね。カッコつけてあんなこと言わなきゃよかったね。


「送る辞する」が始まる。読み手の子はこれまでやってきたすべての技術を存分に発揮。一度も噛むことなく完璧に披露する。時間も5分ジャスト。

多くの方にお褒めの言葉をいただく。読み手の子本人からも微笑ましいほどの達成感を感じる。子と過去最高の「送る辞する」にしようと誓ったミッションは十分な結果を出すことができたのだった。

ありがとう読み手の子。

そしてありがとう。すべての「朗読と語り」を受講してくれた子たち。


近況

2020-08-12 17:52:39 | Weblog
 春先からばたばたしておりましたが、ようやく落ち着いてきました。

 3月の修了公演を成すことができず、そのまま新天地に進むこととなりました。修了公演一本目は「春と修羅」という宮沢賢治の同作をベースにした作品でした。プロジェクターを駆使した壮大なパネルゲームを展開する予定でした。下の代の作品は「ラテラルシンキングパズル」という推理モノでした。男子が多くワイワイと楽しく稽古をしていました。公演に向けて準備してきた子たちにさよならを伝えることができませんでした。悲しい限りです。いつか、再び集結し、この時のことを話せたらなと思います。そして現役っ子のことを思うと…残してきた子たちは果たして大丈夫か…新しく出会うはずだった子たちはどういう子たちだったのか…このコロナ禍で演劇を行うことができるのか…心配や失意、疑問が尽きることはありません。残れるよう最大限の尽力をしたつもりではありますが力が及びませんでした。今その当時を振り返っても悔しい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいになります。大人のドタバタに付き合わせてしまい本当に申し訳ない。新しい指導者の元、楽しく演劇を行うことができていることを心から祈ります。他に類のない貴重で可能性のある場です。今後の発展と素晴らしい人材の輩出を期待しております。そしていつの日か戻れることを信じて新天地で頑張っていきたいと思います。
 
 改めて、恩師から引き継いでから凡そ14年間が立ちました。教育演劇を創作し子どもたちと共に作品を創作してきた経験・記憶は一生の宝です。そして自分をも成長させてくれた環境に心から感謝します。
 そんな私はこれまでの立場と少し変わりましたが、幸運にも演劇に携われる環境にいることができています。今の子たちと何ができるか、再び教育演劇を創作していこうと思います。



 今回のコロナは演劇の有用性を考える機会になりました。この状況下で商業演劇で闘っている諸先輩方や後輩たちは本当にすごいと思います。商業演劇を続けるためには費用の確保が絶対となります。世間では経済を回すと言われていますが、多くの大企業・中小企業が苦しんでいるのですから演劇団体も御多分に漏れず苦しいはずです。いや、苦しんでいます。その中で未来を信じ活動をしている演劇人を心から尊敬します。演劇団体はお客様からお金を受け取り、その対価として感動を与えます。物の受け渡しのないこの等価交換は奇跡的であると思っています。どうかこの奇跡がこれからも続けられるよう、状況の改善がなされることを祈ります。


 もう一つ最近思ったこと。演劇の四要素は俳優・戯曲・観客・舞台空間です。リモート演劇が行われ、人と人が出会う舞台空間の必要性がなくなりました。2018年にはロボット演劇が行われており、人間の俳優の必要性がなくなりました。人工知能が書いた戯曲が2021年に上演される予定であり、人間が書く戯曲の必要性がなくなりました。残る要素は観客だけです。人が観る以上、これはなくなることはないだろうと思いますが…配信内容をAIが分析し、戯曲を書く要領で感想を書くということが行われるかもしれません。人間が関わる四要素全てを失った演劇を演劇と呼んでいいのか、それは新しい芸術表現なのかもしれません。表現の形は少しずつ変わっていきます。演者同士・演者と観客・観客同士が時空間を共有する演劇が今後も残ることを心より祈ります。

 なんだか祈ってばかりです。演劇の起源は神への祈りです。祈りは演劇的な行為です。

亡き王國とは5

2019-03-24 23:59:32 | Weblog


最後は本番当日のわたし。文字通りの舞台の裏側。思ったことややらかしたこと。


10:00
劇場入り

10:30
ラストシーン・他諸々返し開始

13:30
休憩兼当日パンフレット作成
皆が休憩中に当日パンフレットを刷り折り込む予定であったが、有志が集まってくれた。戸が開き「折り込み隊でーす。ご飯食べ終わりましたんでー」と来てくれたときは泣きそうになった。その後皆が手伝ってくれて素晴らしいスピードで終了。

14:30
「Hexe」「Tempest」開場

14:45
「Hexe」「Tempest」開演
プロジェクター滑車装置一部損傷。おぉ…だが想定内。

15:21
「Hexe」「Tempest」終演
予定より6分押し。おぉ…しかしこの6分は想定内。お客様には申し訳ない。そのまま「亡き王國」開場へ移行。

舞台裏へダッシュ。34人+1人の円陣。伝えたいことは山ほどあったのだが上手く口から出てこず。泣きそうになる。人生最大級の無声音の円陣で気合いが入る。

15:30
「亡き王國」開演

ど頭の映像。パソコンが凄い考え事をしている。映像が動かない。やばい!どうする?映像カットするか?それとも信じて待つか?
永遠とも思える時間だが…7秒くらいだろうか…動くことを信じた。ここでパソコンに思い切り考えてもらい、後の影響がないように…

と待っていると映像が動く。うぉぉぉぉぉぉ良かったぁぁぁぁぁぁぁ!



アトランティスシーン、じゃんけんが大将戦にもつれ込み思わず「おぉぉぉぉー!!!!!」と唸る。更に探偵ゲームシーン、ゲネに続きホノカイオスが反逆者に。こちらも思わず「おぉぉぉぉー!!!!!」と唸る。お客様と演者がノってくるのが分かる。

序盤、エレベーターシーン。諸所の都合、扉オープンの効果音で大砲を鳴らしてしまう。


「どーん」





そっと、そっと目を閉じる。




ごめんと思う。

34人でエレベーターに乗り込むということで「破壊的衝撃がエレベーターに響いた」という解釈になれば…なればいいじゃんと思う。

今回の最大の戦犯はわたし。故に皆は何も気にせず思いっきり芝居をしておくれ…

と思う。

物語は続く。


狼の登場。サイドスポットの様子がおかしい。狼を照らし出すはずが何故かシルエットになる…照明がズレて狙いが外れたか…しかしそれはそれで格好いい。悪魔的シルエット。以下七つの大罪のメンバーがシルエット登場となる。

リンポポがランニングマンしている。ちょっと笑った。

アルベール二世、金まき過ぎ。

蛇の腹見せシーン。台詞がぐちゃっとなり、腹見せのフリが来ない。このまま終わりか…と思ったが、自らTシャツめくり腹を見せにいった!ちょっと笑った。

ハリーファ、最後の長台詞をどこまで言えるか大会。ゲネよりちょっと長めに言えた。

ジェンガ、倒れないことを神様に祈る。祈りは届く。

エルのアウト音をミスる。なべをアウトだピョン。


役名イニシャルのアナグラム。指名の一番手、論ノ谷(ろんのたに)を論田(ろんでん)と間違える。ちなみに論田は「Tempest」のキャラ。「論」が一緒だったので完全な誤認識。「そんな子はいませんトリトン!」との総ツッコミ。ミス、本当に申し訳なかったがちょっと笑った。トリトン、ミス三犯。死刑。



「super cali fragilistic expiali docious」の鎖に胸が熱くなる。


文集。皆が台詞を言うその姿に泣きそうになり、泣く。

17:25終演
予定を20分オーバー。お客様、本当に申し訳ない。開演前のアナウンス「上演時間は1時間…45…ふ…ん…」と言い澱んだ通りになってしまった。

17:55
第一回大入り。本体解散。

18:30
開宴

20:00
第二回大入り。ご縁がありますようにと5円の交換。初めて聞いた想いや、これからの想い、皆が皆と交わる姿に感無量。





大変長い振り返りとなりました。

これにて「亡き王國」の振り返りは終了。後日映像編集に入ります。

改めてご来場誠にありがとうございます。そして演者の皆様、本当にお疲れ様でした。今後わたし達は同志です。34人の同志ができて嬉しいです。

今後色々あると思います。最善はそのまま前進を続けることです。が、万一何かあったとき、ぼんやりとでいいので振り返ってみてください。たまには良いのではと思います。

伸ばし、差し出したその手をきっと握り返してくれます。それは皆さんが思い描く誰かの手かもしれませんし、ひょっとすると自分自身の手かもしれませんね。



7色×5本=35の虹は消えますが確かにそこにあります。



以上。

亡き王國とは4

2019-03-23 18:14:30 | Weblog
役にまつわるエピソードを抜粋。後半の17人。さぁ、行こう。


○犀・ナヒヤーン・ミッキー
圧倒的松岡修造。犀はもうこれに尽きる。ミッキーに関しては「super cali fragilistic expiali docious」の伏線として出そうと決めていた。配役は、よく夢と魔法の国にいるから彼女に設定。最初「リッキー」という名でいこうとしていたが、「あ、そういえば『み』から始まるじゃん。」と、そのままミッキーとなる。


○鞘・兎・チヅール
かつてアイドル役をしていたので、その逆のお婆さん軍医に。兎は見た目。動物の兎というよりもワーナーブラザーズの「バックスバニーのぶっちぎりステージ」の方。若い子は知らないと思うが、結構ぶっちぎっている兎なのだ。実際彼女自身も結構ぶっちぎっているし。


○四万十・ドゼー・マナカーン
マナカーンは彼女が飼っているペットのピー太から。ピー太と泣き叫ぶ顔がリアルで思わず笑ってしまう。四万十は弱いキャラであるが、そんな彼女が鎖の先頭となり亡くしたものを掴もうとする…そんなラストを書きたく設定。


○醍醐・蠅・シノタウロス
ミノタウロスを出したかったので、名前を確認していたところ「ミノ」の「io」と母音が合っていたので設定。結果蠅とモンスター被りしてしまったので本当に申し訳ない。蠅は昨年の聖ロカの天丼。醍醐は今までの役の反対として。


○千草台・江戸川さん・イズン
頑張りやの設定はそのまま、彼女が進路と公演の二刀流で頑張っていたから。江戸川さんは見た目飼育員で一番説得力あるのは誰だろうと考え設定。実はアトランティスシーンの名前で最初に思いついたのがイズン。それから暫くイズンが頭から離れなかった。


○千歳・ガブリエラ・ユウカリオン
普段マスク被り体調悪くしてる姿を多く目にしていたため、星見上げて首をやってしまうユウカリオンに。千歳は話している時の目のまっすぐさがとても印象的で、この子に熱い真っ直ぐな台詞を言わせたいと思った故設定。


○茶間・バラクーダ先輩・ナカヤス
どれか一つ反対の役を書こうとしていたのだが、結局どの役も噛み付く方面にいってしまった。彼女の普段話すスピードが速いから…かな…きっとそのイメージがそのままバラクーダにいってしまった。アトランティスシーンの役名に関してはもうそのままやん、楽やんと設定。


○天塩・マクトゥーム・モモコイラ
犀の熱血さとはまた違った、少し空回った熱血漢を書きたく天塩を設定。本番の姿がアマゾン探検できそうなワイルドさだった。モモコイラはたまたま見た白目の写真がとんでもない破壊力だったから。今思い出しても…が、後日「そんなに白目得意じゃない」と聞きわたしはすっかり騙されたのだった。


○ピリカフラノ・大森さん・タナベロス
かつて遅刻してきた時、こっそり入ってきて何食わぬ顔で座るという大業を成し遂げた。タナベロスのやることはこれしかないと。金に執着するピリカフラノのシーンは何度見ても本当に面白い。お客さんの笑うツボ・余地をしっかりと押さえ演技していると思う。素晴らしい。


○富士・ピエトロ・イワタイタン
普段話したとき控えめな印象から一転、しっかりと己を持ち、心持ちが強い印象を受けた。そこから富士と反対のイワタイタンを設定。言葉遣いを汚くしたので大丈夫かなと不安であったが、無事今公演ののファースト笑いを取ってくれた。


○兵知安・アルベール二世・クラタイオス
どの役も金持ち。これは今回の配役のアンチテーゼでもあり、彼への挑戦であった。さぁどうする?何を見せてくれる?と期待。結果三者三様の演技を作ってきたくれた。意外に男前の演技をするんだよなぁ。色気シーンは今後の人生で更なる高みを目指してほしい。


○遼河・トビエイ様・ヒビキュラ
ヒビキュラは遼河と反対のポンコツ役。なおヒビス、ヒビッキー、ビキスとヒビキュラの名が最後の最後まで決まらなかった。なんかプリキュアみたいじゃない?トビエイ様は最初の立ち稽古で完成品を見せてくれた。実はトビエイ様、わたし自身もイメージがフワっとしていたが、初日のあの瞬間一発で決まった。


○リンポポ・豊島さん・カーリン
昨年が強気で冷静な役であったので今回はその逆のファニーでポップな役に。後半リンポポの一言で物語が動くのだが、物事を進めるのは左脳思考と右脳思考との兼ね合いであると思う故。豊島さんは一転根暗な感じに。カーリンの「行けー!」が完全に応援団長。


○漣水・トランプ・アーカリ
アーカリは書物の神。神のトップバッターの説得力があるメンバーをと設定。実際相当の読書家であるし。トランプは英語まじりの台詞なのだがクセが尋常でない。尋常じゃなさ過ぎて稽古段階で何を言ってるか分からないときもあった。漣水は清らかさと強さを見せてくれた。


○六角・孔雀・ホノカイオス
ホノカイオスは医学の神。メスのような切れ味の「リョウスケンティウスー!!」を見せてくれた。六角は本当はもっと嫌で使えない奴になる予定であったが、いかんせん嫉妬の國の他メンバーが自由過ぎてサポート役が必要になり控えめに。孔雀は格好良い。こちらも本当はコウモリになる予定だったので…今考えると恐ろしい。


○論ノ谷・毛沢東・ミヨス
ミヨスは破壊の神。普段控えめな彼女だが、この子も内側に相当なエネルギーを持っている。まさに破壊の神ではと。毛沢東は本人「マジカー」となっていたが、ひな壇に立つその姿は凛々しかった。論ノ谷は本当はもっとズタボロになる予定であったが…衣装用意できずごめんね。


○星河・蛇・リョスケンティウス
リョウスケンティウスは水の神。最初はズキスという名前であったが、もっと攻めた名前にしたかったのでこの名前に。以前の芝居でシャツのボタンを一つずつ開けていったところから彼が蛇になった。「シャー」とアホみたいな台詞回しだったがちゃんとやってくれてありがとう。星河は果たしてオーダー通り…に書けたのか…まだまだわたしの修行が足りずか…決め台詞「行こう」がとても良い。




34×3=102役。頑張ったなぁ…

続く。

亡き王國とは3

2019-03-23 13:37:36 | Weblog
配役について。基本的に 1.希望 2.反対 3.やってほしい の3役で構成。

役にまつわるエピソードを抜粋。まずは前半の17人分、さぁ行こう。


○旭・ピンポンパールちゃん・マヒロス
神は実際のヘリオポリス九柱神。マヒロスは粘土の神。その中から一番粘土っぽい子を設定。表情がコロコロ変わる。ピンポンパールは今公演アンケートで一番難題だった「いちごちゃん」から。むかつかせるようにとの演出をしたが、きちんとアイドルだった。


○阿武隈・ピラニア夫人・ミュカ
ミュカは天空の神。メンバーの中で一番天空を羽ばたいていそうだなと思い設定。ピラニア夫人は未亡人枠。メンバーの顔を見て一番未亡人が似合いそうな子…というのは冗談で、アンケートにハッピーキャラとアンハッピーキャラとあったことから。


○荒・芝さん・ハッタス
ハッタスは豊穣の神。メンバーの中で一番温かみのある台詞回しができることから。前回のお母さんのイメージも。芝さんは彼女のエチュード中に垣間見える一瞬の狂気を見て、これを膨らませたらどうなるかと思い設定。


○砂子・江青・ラー
半年前からこんにちは。情報が少なかったことからあえての普通キャラ砂子に。ラーは太陽神、神違いだがエジプトの太陽神ラーと彼女のお名前から。稽古最初の江青を見た瞬間、この役を当てて良かったとガッツポーズ。


○石筵・押上さん・ナミコス        
ナミコスは冥府の神。石筵・押上さんの逆の役をと。石筵は…わたしとしては彼女自身しっかりした人だなと思っていたが周りから彼女はちょっと変わっているという言葉を受け設定。押上さんは動ける人が良かった。結果あまり動くことはなかったのだが…


○糸依・クロマグロ・ノブチス
魚のトップバッターとして、被り物をした時に正当性がある人が良いと思い任命。ノブチスは般若顔。かつて能面クイズ「面」で見せてくれた表情があまりにも強烈で鮮明であったため、その姿をもう一度みたいと思い般若顔の賢者へ。糸依の「約束だよ」は彼女の人柄も相成り。


○猪名・ジョセフィーヌ・ナナミオン
ナナミオンはピグマリオンのもじり。彼女のダンスの力強さが大変素晴らしいと思いアンドロイドに。相手役に向かう移動距離が意外と長く、スピード優先のために端折ったが、本当はじっくりロボットダンスをしてほしかった。猪名は普段の彼女の反対をと。


○犬鳴・オキゴンドウ君・ルイディプス
ルイディプスはオイディプスのもじり。わたしとオイディプスを学んだもののうち誰が目潰ししたら面白いかなと思い任命。オキゴンドウはシンプルにお顔から。癒しのイルカに似ているなぁと思い設定。


○今切・ジュゼッペ・マオス
昨年上演した芝居は無表情でたんたんとする店員役であったので、今回は正反対にし、教皇の座を奪おうと野心に燃える枢機卿に。マオスは本当にただ単純に可愛く振舞う姿を見たかったから。


○伊呂波・ウミガメ後輩・ハマヤナ
ハマヤナはあわてんぼうのキャラ。以前彼女がスタッフとして作業していたとき、あわてて照明スイッチを押していたのが印象的だったのでそこから。ウミガメはシンプルに、甲羅を背負った姿が似合うなと思ったから。


○牛淵・ハリーファ・ナオス
ハリーファは歌舞いた芝居が一番似合いそうな人をと思い設定。実際背も高く腹から声が出ており、ボス感が六ヶ國一であったろう。ナオスはその反対、誰かのことを思う役として設定。牛淵はその中間。


○雨竜・ボナパルト・ヨシバルトス
ヨシバルトスはどこかでチラッと見た「優しくお母さんみたいな」という彼女へのコメントを見て母性溢れるキャラに。ボナパルトはその逆で強さと誇りと歌舞いた感じで。始めこの手のキャラは苦手かな?と思っていたが本番では見事に開花。


○江合・高輪さん・ピロイス
以前見た彼女の叫び口調の台詞回しが素敵だなと思いピロイスに。高輪さんは本来もっと爽やかな口調で喋らせようと思っていたのだが、あれよあれよとあんな感じに。何回やっても精度の落ちない「今さ!」は掛け値なしの賞賛。


○遠別・フランシスコ・マチス
昔エチュードで見た叫んだ姿とふにゃっとした姿にハマってしまいマチス・フランシスコに。フランシスコは最初苦労していたように思えたが、公演時には見事な子ども教皇に。遠別はぶりっ子キャラで、用意した衣装が見事過ぎる。喝采。


○老松・狼・サナトス
トリトンの一番手、劇的な台詞回しが一番似合う人をと思い設定。最初はただ普通に言ってもらう予定であったがたまたま彼女の後方にひな壇があり、そのまま乗って謳ってもらうことに。狼はシンプルに見た目。獲物を狩る鋭い眼光。


○小鴨・ジャック・イナダンテ
人を惹きつける台詞を発するには?という我々にとっての大いなるテーマを考え、わたしに相談してくれた。ゆえに手数多くツッコみを入れる小鴨とその反対のキャラ、全く喋らないイナダンテを設定。


○玉泉寺・驢馬・ミクス
基本推しへの愛の強さは皆強いのだが、彼女のそれは人一倍強いように見えた。それ故のミクス。驢馬はメンバーを見たときにゆったりとした台詞回しが似合う人。そしてお顔から。決して驢馬顔ってわけじゃないのよ。悪魔的驢馬顔。


続く

亡き王國とは2

2019-03-22 11:55:13 | Weblog


国を考える。国とは集団であり、人間が子孫を残していくための効果的なシステムである。目に見えないそれは巨大な幻想ともいえる。わたし達は巨大な幻想の中で生きているのですね。

集団が構成されることで七つの大罪的感情が生まれる。単純な好き嫌いよりも、この七つの大罪的感情は複雑であり繊細であろう。七つの大罪的感情が生まれる最低構成人数は三人と考える。一人目、対象だと一人目が認定する二人目、一人目と二人目を判定すると一人目が認定する三人目。この三人目にどう見られているかと一人目が勝手に推し量ろうとすることで七つの大罪的感情が生まれ、成長する。なお旧約聖書で主・カイン・アベルの関係で生まれた感情は嫉妬であった。

こうして七つの大罪的感情が膨張しイデオロギー・イズムが生まれる。集団の色が決まり、その集団が大きくなり、やがて国となり国の姿勢となる。過去の、そして最近の様々な外交問題も第三者にどう見られたいかという思惑が渦巻いていると思えて仕方ない。



と考える。これは基本的に友達関係や家族関係でもそうなのではと思う。三人目が集団の中の人間なのか、外の人間なのかで一人目の感情は変化する。ゆえに個の感情は難しく、その個が集まる集団の感情はなお難しくなる。わたしの最近の芝居のテーマである。

人生に戦わなければならないときが3回ある。1回目は受験、2回目は就職、3回目は家族を作る。このご時勢ですから3回とも戦わなくてもいいと思うのです。必ずやれってことでもないですし、戦わなくても十分に生きていけます。しかしいざやろうと腰を上げるともう大変。特に3回目は相手の意向もあることですから、己の努力だけではどうにもならず…これは本当に戦争と言えるでしょう。


「時々街中で、七つの大罪の動物達を見かけることが…」
「私という國境を守り抜き…」

という今回の公演の台詞が、上記のわたしの考えの全てであります。今公演は34人もいるのですから色々な感情が沸き起こるのは当然です。対象者や判定者が変われば、その時々で思いも変わります。嫌な気持ちになったりよく分からなくなることもあります。当然です。それでも結果一つの作品を創り上げることができたのですから、皆さんは本当に素晴らしいと思います。


○公演形態

34人全員に見せ場があり、全員が全員と絡む。端役というものを絶対創りたくなかった。結果8シーンという途方も無い量となる。お客様はきっとお疲れになったことであろう。申し訳ありませんでした。

ゲームのクリア→人生の課題のクリアという設定であり、ゲーム6種を設定。5種はすぐに決まったのだが、もう一つが決まらない。最初インディアンポーカーを考えていたが、クリア方法がどうにもまとまらず…というか見た目シュールだなと思い却下。

あれこれ考え椅子取りゲームに落ち着く。

戦争ゲーム→三者関係
椅子取りゲーム→満員電車の椅子取り
尻尾取り→相手のミスを見つけ奪い奪われる
カバディ→集団への信頼・集団の裏切り
ジェンガ→心を抜き取られる・テロ
氷鬼→出産

と大まかに人生の試練だなぁと思うことを。もしこれがインディアンポーカーだったらば…おでこの恐怖になるのか…何だその試練。


メイン筋を考え、次に話の土台であるアトランティスシーンを作る。ここは導入であり、また自由な空間にしたかったので良い意味で適当に、良い意味で適当に構成。が、結果20分というえらい長いイントロダクションになってしまった。反省。


続く

「Hexe」「Tempest」とは2

2019-03-22 08:45:31 | Weblog
公演中や稽古中に起こったことや思ったこと。今回、音響・照明・映像・影マイクの四刀流であった故、ブラック企業さながらの忙しさで逐一舞台をチェックできず。覚えている範囲で。



○「Hexe」

・ゲネ揃わずどうなるかと思ったが無事本番を迎えられ一安心。台詞もきちんと合わせてきており、その成果が結果として現れていた。


・当日場当たりできず一発目の映像オペレーション。人は過ちを犯すものだ。
一発目の、本当に一発目のボタンを押し間違える。一瞬だけ映写される

「旧約聖書「出エジプト記」22章18節」

…サブリミナルみたいでなんか怖い。これもソリッド・シチュエーション・スリラーか。


・稽古中ループ設定を切り忘れていて、効果音「ぎっくり腰」が永遠に鳴る。それに合わせて律儀にも、そして健気にも永遠に腰を抜いてくれる演者。ごめん、そしてありがとう。笑ったよ。



○「Tempest」

・妖精として舞台上に置いた人形、実際は映画「ゴーズトバスターズ」のシンボルキャラ。秋葉原で500円で見つけたのだ。だが…見た目そのままだと宜しくない…さてどうしようかと思っていたところ、東京ディズニーシー内にあるタワーオブテラーの「シリキ・ウトゥンドゥ」みたいにしたいなぁと思う。

しかしこの人形は真っ白。シリキ・ウトゥンドゥとは正反対。

目だ、せめて目を変えようとボタンを買い、縫い付ける。完成。













これじゃない感が尋常でない。でもファニーで良いか!とそのまま使用。


・影マイクのわたしと三良坂という役とで掛け合うシーンがあり、そこで三良坂に喰い気味に言われる台詞がある。前述の通りわたしは四刀流、操作しながら台詞を言うので舞台面を見られず。頼れるのは己の耳とこれまで培ってきた演劇人として感のみ。「パルクザール」という台詞の「バルク…」くらいで次の三良坂の台詞が来るのだが…本番。





「バ…」

はい!喰われた!もう喰われた!


ここは毎回戦いだった故、緊張感あり面白かった。


・一回目の暗転。映像をカットするためにお手製で作った「手元の紐を引っ張るとプロジェクターの光を遮る」システムを作動させる。

動かない。

お手製で作ったので外れたのだ。

いかん!

と急いで修復。その間…凡そ…10秒くらいかな…暗闇の中永遠と嵐の音。地上はだったらば間違いなく放送事故。皆様に多大なるご迷惑と不安をお掛けしました。


・小道具スタンガンはダイソーの100円マイク。安藤という役が最初に持つのだが…衣装と相成って、韓流スターが歌いだすみたいになっていた。


・ゲネプロ。風呂ヶ迫という役がスタンガンで制圧され、歩きながら倒れるシーンがあるのだが、別の役者につまずき所定位置まで届かずに倒れてしまった。おしいなぁと思い見ていたら…所定の位置に行きたかったのだろう…そこからビクンビクンしながら移動するという力技で頑張っていた。笑ったよ。


・稽古中。刈羽という役が高笑いするシーンがある。それはそれは見事な高笑いで警備員さんが来ちゃうんじゃないかと毎回怯えていた。過去そういったことがあったのだ。大人が大人に怒られるのは辛い。





以上。

亡き王國とは1

2019-03-22 00:12:47 | Weblog


2。「亡き王國」総勢34名の大芝居。

昨年の3月20日から漠然とテーマを考えていた。別れとなる修了公演、喪失の話を書こうと思った。


学生時代、友達を亡くした。彼女は明るく、周りに気を使い、責任感の強い子だった。まだSNSが無かった時代で、頻繁に連絡を取るわけではなかったが会えばいつでも楽しく話せた。悩みを話したり、悩みを聞いたりできた。


死んじゃった。暫く会わなかったある日、彼女の友達から連絡がきた。電話越しに聞くその子の言葉が頭に入ってこなかった。死とは何だ。白血病。元々体が弱く、定期的に薬を飲んでいたのだ。知らなかった。抱いていた彼女のイメージと異なっていた。

葬儀は北海道で行うと聞いた。そのときの自分には行くことができず、彼女との思い出はそこで途切れる。


振り返る。





会わなければ死んだも同然、とわたしは思う。死んだ人間、会わなくなった人間、わたしのスマホの電話帳には彼女の名前も、高校の友達の名前も等しく並んでいる。

現代はSNSで色々な人間と繋がっている。しかし本当に繋がるというのは眼前にすること、声を聞くこと、思いを伝えること、感覚として認識することだと思う。



大人数、34人でできること。手を繋ぎ一本の鎖となり、全員で亡くしたものを迎えにいく。今回の話の大筋はこうして決まった。


メイン役名は川の名前。34文字の言葉「super cali fragilistic expiali docious」を使おうと思っていたので、それぞれのアルファベットから始まる川の名前を考える。
「l」と「r」の違いをどうするか考え、「l」は中国のピンインで実際使われている川、「r」は日本の川に。問題は「X」。こちらも中国のピンイン、そして天の川の意味の星河(xinghe)に設定。

川は大海に集う。


続く。

「Hexe」「Tempest」とは1

2019-03-21 23:22:41 | Weblog


修了公演無事終演しました。ご来場ありがとうございました。

1で芝居を打ちたい子達が募り、「Hexe」「Tempest」の二本打つことができました。

時間がない中での脚本作り。上演時間や練習時間を考えるとストーリー重視の感動話は難しいかなと判断。20代好んで書いていた「SST(ソリッド・シチュエーション・スリラー)」で行こうと決める。これまで書いてきた作品のエッセンスと、彼・彼女達のやりたいことをミックスさせ創作。


各演目振り返り。

○「Hexe」
設定「魔女裁判」とルール「ワードウルフ」をミックス。「ワードウルフ」をどうやったら面白く表現できるかを考えていたが、同時上演の「亡き王國」でプロジェクターを使う予定だったのでお題を映写しようと決める。プラスして同音異義語のお題にし、仲間内で揉めさせる…という流れにする。

役名は四国の地域の名前。

○「Tempest」
設定「シェイクスピアの『The Tempest』」とルール「天秤問題」をミックス。天秤問題の表現に関しても等号不等号を映写することで解決。観客に分かり易くなったかなと。事前アンケートで「伏線が張られた作品」とあったので要所要所に犯人探しの伏線を張る。

役名は「The Tempest」の登場人物をモジって。「三良坂」の「三」は本当の偶然。自分でもびっくり。こういうことってあるんだね。



毎年やりたい役アンケートに突拍子もないことを書いてくる子がいるのだが、今回は控えめなの子が多いのか、設定に絡むような希望がなかったため比較的自由にやらせてもらえた。



短い時間で皆一生懸命に芝居作りをしていた。よく頑張りました。

内視鏡とは

2018-11-02 10:49:17 | Weblog
健康のためなら死んでも良いがモットーのわたしが今年の人間ドックで「F」ランクを出してしまった。しかも大層な紹介状が送られてきた。どうやら胃部に「ニッシェ」があるとのこと。調べてみると溝がありバリウムが溜まる状態。多くは胃潰瘍やらびらんが原因とのことだが、稀に胃がんが原因とのこと。

がんという現実を目の当たりにし、改めて「生きる」を考える。まだやることがあるだろうと内視鏡で詳しく調べることとする。

そして本日朝一で病院に駆け込み内視鏡を飲む。

「麻酔使いますか?」と選択できるとのこと。せっかく飲むのだからどれだけ大変か味わってみたいという無駄な好奇心が湧き上がる。

「麻酔無しだと辛いですか?」の質問に看護士の方が一言



相当辛いです

素直に麻酔を選択。


処置室に入り、ドラマさながらのピコンピコンする脈拍計をセットし、麻酔注射され内視鏡飲む。眠くなるとの事前情報あるもアルコールに強いとそこまで効果が出ないとのこと。日頃ビールで鍛えられてるわたしは麻酔の眠気をさほど感じることなく、内視鏡のぶっとさをダイレクトに喉で感じる。よだれが出るわ出るわ。

数分で終わり麻酔切れ待ち診断結果。



緊張の一瞬…がんだったときの心構えをしよう…

が、麻酔のためかビール2杯飲んだおおらかな感覚。


「では診断結果をお伝えします」











「胃は…とてもきれいです。」



うおおお!



「しかし問題が…」






え…






早食いです





…お?
 


「早食いが原因としてよくある軽い食道裂孔ヘルニアです。よく噛んでゆっくり食べましょう」



「はい。」



というわけで人生初の胃がんの疑いは食事指導で無事終わりました。

HEISEIとは

2018-07-01 12:26:47 | Weblog
引退公演を観にいく。時間を勘違いしたため一本目の夢音は半分しか観られず。申し訳ない。若さ溢れる作品でした。


HEISEI

既成脚本の脚色。シーンのカット、人物やラストを改変しているためもはやオマージュ作品と言ってよいか。

1960~1990年までの時代が色濃く反映されている作品のため、その当時の「匂い」を分かっていないと台詞が正当化されない。またネットが生活の一部となっている今の子達に、ネット創世記の独特の閉鎖感が分かるのかなと思っていたが、実際に観て驚いた。

まず先の「匂い」を演技の熱量できちんとカバーできている。役ではなく人間としてそこに立っていた。役の個性と役者の個性がガチっとはまっており、「あれ当て書きだっけ?」と思えるくらいだ。これは本当に奇跡的と言ってもよい。

何より空間を支配できていた。私はあの舞台空間に十数年携わっているがこれが出来ている子たちはあまりいない。会場は空間が広く観客席と舞台には実距離以上の空間がある。ただ大声を出せば届くというものでもなく、「観客に観られている私」を理解して演技しなければ届かない。能の「離見の見」「男時・女時」を感じる感覚に近いか。自分が同じ年の時にそれが出来ていたかと言われるとてんで出来ていなかったと言う他無く、見事に体現できていた彼・彼女たちは本当に素晴らしい。
特筆したいのが「太郎」。男役の「太郎」はその名前通り普遍性の象徴であると思う。今回女性が太郎を演じていたが、彼女の声質・雰囲気によって中性として観ることができ、なまじ男子が演じるよりも「語られない言葉」という台詞に説得力があるように思えた。

死体を実際に舞台上に出す、脚本のト書きをあえて台詞化する、神の国への移行にあえて反対し自決を図る等々脚色演出者の考えもよく分かった。そこまでいじるならば今の感覚にもっと合わせてもいいのではとも思った。

観客席の壁にゲリラ戦線の名前が張り出されていた。マスキングで貼られていたため、時間が立つごとに剥がれて落ちていくのだが、見事に終演と同時に全ての名前が剥がれ落ちた。もしあれが意図的な演出であったのならば本当に凄いと思う。時限的演出なんてなんとオシャレなんだろう。

1時間半の上演時間があっという間に過ぎていく、もっと観ていたいと思える芝居であった。わが子という贔屓目を抜きにしても料金が取れる芝居であると思った。

lab~すむ~後記とは

2018-03-25 10:12:16 | Weblog


長かった振り返りもいよいよ最後。

アクトオケの基本姿勢は前回のlab~六識~と変わらず。宜しければこちらから。

lab~六識~後記とは


で、ここからはこの二年間で考えたことや現場で思ったこと。


○今回特に芝居面では尾崎、制作面では剣持に大変お世話になった。二人には感謝してもしきれない。act orchはソロワークであるが、二人はそんなわたしに何も言わず、そっと、的確に、最大限の効果をもって力添えをしてくれる。女房役なんてとんでもない、かかあ天下です。本当にありがとう。


○若い子と表現をしていると、その子の「自信の無さ」が見えてくる。自信満々で偉ぶっている輩より圧倒的に良いのだが、なんというか演技への不安というか見せ方への自信の無さとかそういったものではなく、自分自身に対する自信の無さが見えてきてしまうのだ。

わたしとしては「あなたがそこに居て、そこで表現していることだけでそれは凄いことなのだ」と思う。声を大にして言いたいし、表現をする彼、彼女たちに掛け値なしの賞賛を与えたい。

勇気を持って飛び込んだact orchという表現の場、そこで演技に向き合う君たちは本当に素敵なんだと。その個性は誰にも揶揄されないのだと。

もっと自分自身に自信をもってほしい。


○大先輩であり師匠でもある竹田氏と飲んでいての一コマ。作風について、年を取ると創る作品のテーマが実生活に根ざしたものになってくる。それは自分の関心がそこに向かっていくということでもあるが、それ以上に次の世代に何を残せるかということでもあるのだ。厚かましいしお節介でもあるが、それでも下の世代よりも数十年先に生きてきた人間として何か残しておきたいという親父の小言なのである。

竹田氏のSNS上での言葉。

でも君が大人になる頃、この世界が良くない方へ向かってませんようにとの願いを込めた作品です。おじさん達とおばさん達は物語を面白くするために最後まで必死こいてました。
人を笑わせるって死にものぐるいなんだよ。

これが今公演中常に頭の中を巡っていた。わたしは子どもはいないが気持ちはなんとなく分かる。心血注いだ現場で培われた繋がりの中で、この思いは子のそれと同じだ。

そして終わってからの竹田氏のSNS上での言葉。

乃木坂46時間TVまだやってるから寝るに寝れない。

これが終演後常に頭の中を巡っている。





これにて振り返り終了。次の場でまた。

lab~すむ~用語集とは

2018-03-24 10:13:30 | Weblog


毎度お馴染み用語集です。稽古場や本番であったこと名言や迷言をまとめています。

なお今回は尾崎健太郎が抽出、監修、編纂をしております。

それではどうぞ。




・ヤバスラセボン

なにかヤバイ事態が発生した時に発せられる。エスペラント語で≪ヤバイ≫という意味である。嘘である。実際、今回の芝居で一番ヤバスラセボンな事態は「おおくまの衣装忘れ」であったと思うが、人間、本当にヤバイときはこんなふざけた言葉、思いつきすらしない



・私の身長○人分

演出渡辺の頭の中がカレーの中でいっぱいすぎて、毎回バミリ用のメジャーを忘れてくるため、舞台スケールを自身の身長で測りバミるという事態に。見かねた剣持とボーイが、言ってもいないのにメジャーを持ってきてくれた。素晴らしき縁の下の力持ちたち。



・あんたは俺か!

主に、的確すぎる解釈をするボーイに発せられる言葉。ミドルワタナベとして、今後が期待されるばかりであるが、気をつけてほしい。その道を行くと、阿吽の呼吸ですべてを任されるようになるぞ



・カレーの試食

稽古場で毎回行われる試食会。公共施設にて、温められたカレーを食べることになるなぞ、誰が予想しただろう。毎回、「みんな!辛くない?どう!?どう!?」と聞くのだが、本番で実際に提供されたカレーは、試食のそれより数段階辛いものに仕上がっていた。あんた、なにを聞いていた?


・笑笑

稽古後の飲みにて、 過去公演参加者川合さんが参加してくれたことも嬉しかったのか、稽古時間よりも長い時間、居酒屋笑笑に居座る。剣持はその間に一度バイトに行き戻ってくる。私たちが無為な時間を過ごしている間、彼女はきっちり金を稼いでいた。ちなみに、その時の会計は数人で3万近くに登った。へらへらしていたおじさんたちが、伝票の到着とともに笑顔が消えた


・たなゴリくん

稽古場で待機する田辺の姿が、あまりに「はじめてペットボトルを見つけたゴリラ」に似ていると、主に過去チーム、未来チームがハマる。2日目だけで、5回はやらされる。すまない。田辺。こんなにこの言葉が流通すると思わなかったんだ。あんなに可愛らしいのに、ゴリラと呼ばれる17歳が不憫でならない。でもまたやってほしい。



・ポテチ持って帰るの面倒なんで、明日の稽古に持ってきてもらっていいすか?

稽古後、公園でお疲れ様会を終えた戀塚から発せられた衝撃的な一言。素直に従い、食べかけのポテチを翌日の稽古に持ってくる尾崎。「先輩ナメ枠」の筆頭はこいつだと確信した瞬間であった。



・おれは戀塚と打ち上げで相撲を取る!

内田による宣言。内田は先輩ナメ枠の後輩が大好きなのである。しかし、打ち上げでは意外と先輩をナメてこない戀塚に、ついぞ、相撲がとられることはなかった。DVDお渡し会に期待である。



・先輩、塩澤は、どうですか?

休憩時間、「推しは誰ですか?」「誰々ですか?」「いやいや、みんなかわいいよ、推しとかないよ〜」などとふざけた会話をしている最中、唐突に塩澤から発せられた一言。愛に飢えているのか?まるでラブコメの後輩マネージャーのようであった。



・その戸棚蹴ったのはわたしです!

本番中、起こされる演技をする濱田。何があったのかはわからないが、戸棚を蹴破る。千石に「この家を大切にしてくれた人にこの家を貸したい」という台詞があるのだが、どう考えてもこいつ大切にしてくれない



・締め出される内田

内田がタバコを吸えば、片平が鍵を閉める。それを「よしよし」という顔で見る内田。あんたらどうかしてるよ



・神が神頼みしちゃいけないでしょ

片平のキュイーン退場時の台詞。最終稽古で「笑いながら言ってみて」と演出がつき、本番を重ねるごとにそのボルテージが上がっていく。だいたい、このくだりに入ると、待機中の中園は、こちらを振り返り目を爛々と輝かせ、渡辺と尾崎は笑いながらガッツポーズを取っていた。



・もう次の段階にいきましょう

現在チームの誰かが台詞を止めたり、間違えてしまった時に片平のキュイーンにより用いられる便利システム。なにはなくとも、もちつきを犠牲とする形で芝居がつながる。冗談で言っていたが、どうやら一度本番で発動していたらしい



・カメラマンは尾崎先輩です

稽古場日誌にて、中園が書いた一言。声をかけらた瞬間「あ、やっとぞのから写真をお願いされるんだ…!」と思った気持ちは一瞬で天に召された


・配信

彩弥加が参加しているオーディションにて、日々おこなっていた動画SNS配信。これを肴におじさんたちは酒を飲む。視聴者は星(ポイント)を送ることができ、それが予選突破の条件なので、夜な夜な、共演者たちは彼女に星を送り続けた。最終的に、楽屋配信も行われ、延々画面に向かい喋り続ける彩弥加と、静かに体育座りをしながらご飯を食べる学生たち、という奇妙な構図が生まれた。別れの挨拶は「ばいちゅう」。



・けんちゃん、ちょっと場当たりとランスルーやっといて

カレーの仕込みでいっぱいすぎて、小屋入り前日に尾崎のもとへ届いた衝撃のLINE。頼むから演出してくれよ



・けんちゃん!あの演出あんた!?あれいいよ!!

小屋入り後の演出をすべて尾崎と先輩陣によっておこなった結果、打ち上げで出てきた衝撃の一言。あんた、演出としてのプライドはどこいった





以上。わたしも知らない用語ばかり。