自 遊 想

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ドイツの脱原発―素早い行動が生む果実

2012年05月27日 | Weblog

(朝刊より)
 ドイツが脱原発の道に回帰して、間もなく1年になる。
 10年後の22年までに17基の原発をすべて閉鎖する。そんなゴールを見すえて、産業界や社会が一斉に動き、新たな雇用やビジネスが生まれている。
 政府の明確な目標と計画のもと、素早い行動で果実を手にする――。脱原発に向けて、日本が学ぶべきことは多い。
 ドイツの変化を象徴しているのは産業界の動きだ。
 電力大手のエーオンとRWEは、英国の原発建設計画からの撤退を決めた。すでに合弁会社を設立していたが、今後の建設費増や原発事業のリスクを重視した判断だ。政府の電力自由化策に応じて、ドイツ国内の送電線部門も切り離した。
 電機大手シーメンス社も、原子力事業から完全撤退した。新しい送配電システムや蓄電の研究開発、洋上風力発電所への投資を進め、「グリーン企業」への変身を図りつつある。そこに新たな収益源を期待しているからだろう。
 注目したいのは、風力や太陽光、バイオマスなどの自然エネルギー普及による経済効果だ。ドイツ政府の推計では、ものづくりから流通サービス業まで約38万人の雇用が生まれた。
 ビルや住宅の断熱性を向上させて、エネルギー効率の高い街をつくる取り組みも広がっている。節電や省エネが生活に無理なくとけ込み、経済も活性化する好循環がそこに見える。
 福島第一原発の事故を受け、古い原発を中心に8基の運転が停止された。この結果、原発の発電量は昨年、全体の10%台に下落した。逆に約20%まで増えた自然エネルギーの比率を、20年までに35%水準に引き上げるのが政府の目標だ。
 ただ、予想以上の変化の早さは混乱も生んでいる。太陽光発電の買い取り価格の引き下げはその一例だ。
 自然エネルギーによる発電を固定価格で電力会社に買い取らせる仕組みは、その普及を支えてきた。しかし投資が過熱し、電気料金を通じて消費者の負担増を招いたため、買い取り価格を2割以上引き下げる予定だ。
 自然エネルギーを着実に広げるには、発電コストの変化をきめ細かく把握し、買い取り価格を点検していく必要がある。今年7月から買い取り制度が本格スタートする日本にとっても、他山の石となろう。
 脱原発への確固たる目標に自然エネルギーへの支援策をうまく組みあわせて、経済や社会の活性化につなげる。日本に必要なのはそんな発想と行動だ。

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