カクレマショウ

やっぴBLOG

カースト制のこと。

2006-05-18 | ■世界史
インドではいまだに「カースト」が根強く残っています。独立後に制定された憲法(1947年)でカーストによる差別は禁止されているのに、です。

カーストとは、3,000年以上も前に始まったとされるインド特有の身分制度です。「肌の白い」アーリア人が「肌の黒い」先住民族のドラヴィダ人を征服し、「白い」方がえらくて「黒い」方がえらくないという差別をしたのが始まりです。「カースト」という名前は、16世紀にインドにやってきたポルトガル人が、このインド社会の厳格な身分の区別を"casta"(血統、種族)と呼んだことに由来します。インドでは、カーストのことを、“生まれ”を意味するジャーティと言いますが、もともとの基本的な4つの区分(下記)を「ヴァルナ」と呼びます。ヴァルナとは、そのものずばり「皮膚の色」を意味します。

バラモン(司祭階級)
クシャトリヤ(軍人・貴族)
ヴァイシャ(商人・農牧民)
シュードラ(奴隷)

このうち、上位3つが支配階層つまり肌の白いアーリア人であり、彼らの隷属的な地位に置かれた最下層シュードラが肌の黒い先住民族でした。もちろん、この4つのヴァルナは「職業カースト」とも呼ばれる基本的区分に過ぎず、時代とともに各階層ごとに細分化、複雑化していきました。さらに、アウトカーストとか不可触と呼ばれる、カーストからはじき出された人たちが社会の最下層を形成するようになります。

カーストの特徴は次の3つにまとめられます。

1 同じカースト同士でしか結婚できない。
数百とも言われる細分化されたカースト同士でしか結婚ができません。だから結婚相手を探すのも大変で、新聞にお相手募集の記事が載っているという話を聞いたことがあります。もちろん自分のカーストが何であるかを明示した上で。

2 生まれた時から職業が決まっている。
鍛冶屋に生まれた息子は原則として鍛冶屋にしかなれません。軍人の息子は軍人。農民の子どもは農民。職業とカーストは密接な関係にあるからです。同じカースト内に属する職業であれば、ある程度は他の仕事でも認められるらしいですが。

3 他のカーストの人となるべく接しない。
同じカーストに属する者同士で「共同生活」を営み、そこでは「共餐」(食事を共にすること)の儀礼が行われます。食事については特に厳しい掟があり、上位カーストは決して下位カーストの人と食事を共にしない。インドの人が一般に「手」で食事をするというのも、誰が使ったかわからないもの(ナイフとかフォークとかの食器)を口に入れたくないという理由があるのですね。逆に言えば、同じカースト同士で食事を共にすることは、仲間意識を高めるための大切な儀式なのです。

私たちから見ると、およそ理解できないことばかりです。でも、ヒンズー教社会のインドでは、カーストという身分制度を厳格に守ることで、社会の規律が保たれてきたのです。

さすがに現代のインドでは、このような特徴もかつてほど厳しく守られているという訳ではなさそうですが、2006年5月17日付け朝日新聞に、インドの国立大学の定員の半数を被差別層の特別枠とする、という記事が載っていました。

カーストにより教育的にも差別を受けてきた人たちに高等教育を受ける機会を増やそうという狙い。ところが、この政策に学生たちが猛反発しているのだとか。要するに、そんなことをしたら、レベルの低い学生が増えて大学教育の質が下がる、というわけです。

インドに住んでいるわけでもなく、カーストに組み込まれてもいない私には、どっちが正しいかなんて言えません。ただただインドという国におけるカーストの根深さに感嘆するばかりです。

一つだけ気になるのは、この政策の背景には「政治家の思惑もちらつく」という点です。何でも「インドの政治家が選挙前に出す伝統的な政策の一つ」なんだとか。日本の教育基本法改正もそうですが、教育政策が政治の材料に使われるのだけはカンベンしてもらいたいものです。


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4 コメント

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Unknown (RICO)
2006-05-19 11:49:57
以前、「女盗賊プーラン」って本を読んだ事があります。あれを読んで、インドのカースト制に物凄く憤りを感じました。

同じ人間なのに、こういう差別があるのって悲しいです。
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カーストはひどいけれど。 (やっぴ)
2006-05-19 13:08:34
RICOさんこんにちは。

「プーラン」読めば、怒りはごもっともです。



かつて英国がインドを植民地とした時にも、英国人はカーストをはじめとする非人道的なインドの風習に憤りを覚え、それをやめさせようとしました。

しかし、ガンジーは「それはあなた方の仕事ではない」と言いました。インドのことはインドで決めると。それももっともな話だと思います。
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小さい頃から不思議に思っていたこと (れごまま)
2006-05-19 21:21:08
こんばんは。

肌の色による差別は世界中でありますが、どうして「白」が上で、「黒」が下なのでしょう・・・植民地支配の関係からだけでしょうか?どこかにひとつでも逆の考えをする地域があってもよさそうなのにと子供心に思ったものです。

映画『グッドナイト・グッドラック』のなかで、「Red」だ「Pink」だとののしりあいます。これはもちろん肌の色ではないですが、それを受けての「Yellowよりまし」と言う発言では「卑怯者よりまし」に「yellow」のルビがふってありました(笑)
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白黒論 (やっぴ)
2006-05-21 01:14:22
れごままさんこんばんは。



白が上で黒・黄が下、という構図は、「大航海時代」に始まるヨーロッパ人による植民地支配によって決定づけられたわけですが、人類は本能的にそういう構図をインプットされているのかもしれませんね。相撲でも白星、黒星ですし、白が善で黒は悪、というイメージもあります。



yellowはやはり「ずるい」とか「卑怯」というイメージなのでしょうか。第二次世界大戦下の米国の「黄禍論(yellow peril)」が思い浮かびます。「勤勉な日本人」がもたらす脅威が背景となっていますが、本質的には、そんなイメージが根底にあったのだと思っています。いや、今もあるのかもしれません。
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