A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

アダムスが旧友サドジョーンズと行動を共にする転機になった一枚のアルバム・・・

2014-07-29 | PEPPER ADAMS
More Blues and The Abstract Truth / Oliver Nelson

1964年のペッパーアダムスは、ライオネルハンプトンのグループの一員としての活動でほぼ一年を過ごした。6月にレイクタホでルースプライスへの恋が一瞬燃え上がったものの、一週間のオフをとった後、再びハンプトンとのツアーは続く。

7月はシカゴからトロントへと今後は東部に移動した後、7月23日には海を渡ってフランスのアンチーブジャズフェスティバルに出演。その足で今度はヨーロッパを移動する。現地では、もう一本セシルペインのバリトンサックスが加わり、ダブルバリトンという珍しい編成になった。
これはアダムスのとっては初のヨーロッパ遠征だったかもしれない。スタンケントンオーケストラで長期間のツアーは駆け出しの時期に経験をしたが、久々にツアー生活に明け暮れた年であった。

久々にニューヨークに戻ったのは7月末。8月にはニューヨークで再びハンプトンとの仕事が続いた。このような日々を過ごしたこともあり、この年のアダムスはここまでレコーディングの仕事は一本も無かった。レギュラーグループを組んでいた時でも、レコーディングをクラブ出演の合間にこなしていたが、ツアーに出てしまうとそのような機会も無くなってしまう。経済的な心配はしなくてもよい一方で、仲間とのギグやレコーディングの無い日々に多少フラストレーションも溜まっていたのだろう。

8月でハンプトンの仕事は一区切りをつけ、秋になると久々にニューヨークでの活動を再開した。しばらくニューヨークを離れていたので生活リズムも狂っていた。ハンプトングループで一緒にツアーをしていたトランペットのビルベリーを誘って、旧友エルビンジョーンズとのギグで久々のセッションを楽しむと、だんだんニューヨーク生活のペースも戻ってきた。

週に何本かのギグをこなして、11月2日は久々にジョーンズ3兄弟とのセッションだった。トランペットのサドジョーンズを始めとして3兄弟とはデトロイト時代からのプレー仲間、ベースのジョージデュビビエを加えたクインテットでの演奏は懐かしさ以上に何か手応えを感じたのかもしれない。すぐ後にサドジョーンズとのクインテットを編成することになる。
前にコンビを組んだドナルドバードも同じデトロイト出身であったが、今度のサドジョーンズも同じデトロイト仲間。彼との付き合いが、その後それまで以上に密に続くとはその時は思いもしなかったろう。

そして、一週間後の11月10日にこの年初めてのレコーディングにサドジョーンズと一緒に呼ばれる。招集をかけたのはアレンジャーのオリバーネルソン、この日のレコーディングはネルソンのアルバム”More Blues and Abstract Truth”であった。
アレンジャーとして頭角を現してきたネルソンのセッション、普通のセッションとは違う事は容易に想像できたであろう。前作は3年前に録音、新生インパルスレーベルからのリリースであり、それなりに有名になっていた。その続編となると、おおよそのイメージは持って臨んだはずだ。

アダムスにとっては前年のモータウンへのレコーディング以来1年ぶりのスタジオ入りであった。ツアー中のハンプトンの演奏はプライベート録音はあるが、正式なレコーディングは残っていない。これも、一度は聴いてはみたい演奏だ。

ネルソンのこのアルバムは、有名なアルバム「ブルースの真実」の続編となるアルバム。前作ではエリックドルフィーやビルエバンスの参加でも有名だが、このアルバムではガラリとメンバーが入れ替わっている。
フロントラインはアダムスの他に、サドジョーンズとフィルウッズ、そしてテナーのフィルボドゥナー、トランペットのダニームーア、曲によってゲストにベンウェブスターがいい感じで加わる。ピアノのロジャーキャラウェイというのも面白い。ベースは後にサドメルにも一緒に加わったリチャードデイビス。ドラムのグラディーテイトは実はパーカッションでミンガスのタウンホールのコンサートにも出ていたが、その後本格デビュー、この頃からすでにスタジオの主となってきた時期での参加だ。
オリバーネルソン自身はこのアルバムでは演奏には参加せず、アレンジャーとしてだけの参加、プレーよりもアレンジャー業の方に重きを始めた頃だ。

アルバムのコンセプトはまさに「ブルースの真実」の続編。ブルースアルバムというとブルース独特の泥臭さを感じるものだし、またそれが魅力だ。
しかし、時代を経てブルースもジャズに染まり、ロックの影響を受け変化をしてきた。60年代のジャズもハードバップ全盛期からの転換期。フリージャズからトラッドまでのまでの広がりの中でブルースが変わっていく道筋はいくつもあった。その中で前作と合わせてネルソンが導き出した一つの答えがこのアルバムであろう。

ネルソンのアレンジはビッグバンドでもカラッとしたスマートな黒っぽさが売りだろう。ロスに拠点を移してからは土地の影響を受けてか、よりアレンジに輝きをましたかもしれない。しかし、根っ子の黒っぽさは変わらなかった。
好きなアルバムであるロスでのビッグバンドのライブアルバムもそんな感じで、西海岸出身のアレンジャーとはちょっと風味が違う。

ブルースの解釈にしても、12小節のブルースコードの制約をとっぱらって自由にブルース風アレンジを展開しているが、安直なブルース擬きになっていないのが流石ネルソンだろう。そしてそのアレンジを作品に仕上げるプレーヤーの個性の引き出し方も流石だ。

前作の”The Blues and The Abstract Truth"ではドルフィー、エバンス、ハーバード、そして、リズムはロイヘインズとチェンバースと役者が揃っていた。今回はメンバーががらりとチェンジした。前作が有名なだけに、それと比較すると「あれ」と思うかもしれない。そもそも個性の違うプレーヤーを揃えたのだから結果は違って当然。ベースのチェンバースとデイビスは明らかに芸風が違う。明らかに60年代の新たなリズム感だ。ドルフィーとウッズも違う。もちろんアダムスの役割も、そして今回はベンウェブスターという全く芸風の違うソリストをゲストに加えているのもミソだ。



結果はというと、また新たなネルソンのブルース解釈ができたということだろう。同じ3管、4管編成であっても、並のグループとは違ったブルースサウンドがする。ソロを生かすアレンジであり、アンサンブルに合わせたソロの絶妙なバランス感がいい
プレーヤーとして参加したサドジョーンズは、きっとこのセッションで「アレンジャーとしてのサドジョーンズ」に何かきっかけをもらったのかもしれない。ベイシーオーケストラで没になったアレンジに、新たなアレンジを加えてサドジョーンズ&メルルイスオーケストラが始動を始めるのは年が明けた1965年からからだ。

そして、アダムスもこれを機に旧友サドジョーンズと行動を共にする機会が増えていく。

1.Blues and the Abstract Truth      Oliver Nelson 5:14
2.Blues O' Mighty            Johnny Hodges 6:48
3.Theme from Mr. Broadway        Dave Brubeck 5:49
4.Midnight Blue               Neal Hefti 4:06
5.The Critic's Choice           Oliver Nelson 2:21
6.One for Bob              Oliver Nelson 6:07
7.Blues for Mr. Broadway          Dave Brubeck 8:12
8.Goin' to Chicago Blues   Count Basie / Jimmy Rushing 4:37
9.One for Phil  *           Oliver Nelson 3:58
10.Night Lights *           Arnold Shaw 2:46

 *はLP未収録CDのみ。

Thad Jones (tp)
Danny Moor (tp)
Ben Webster (ts)
Phil Woods (as)
Pepper Adams (bs)
Phil Bodner (ts,english horn)
Richard David (b)
Roger Kellaway (p)
Grady Tate (ds)

Arranged by Oliver Nelson

Recorded on Novemnber 10&11, 1964



More Blues & Abstract Truth
Oliver Nelson
Grp Records

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