A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

全編「お囃子」をバックにしたマクレーもなかなか聴けないが・・・

2014-01-02 | CONCORD
Heat Wave / Carmen McRae & Cal Tjader

カーメンマクレーは好きな歌手の一人だ。御三家の中では一番聴いたしアルバムも持っている。このブログでも最初の頃はよくマクレーのアルバムを紹介した記憶があるが、此の所とんとご無沙汰、アルバムを聴く機会も減っていた。
というのも、彼女のアルバムは好きだったせいもあり殆どすべてがLP。最近はCD、さらにはIPhoneやIPadで聴く時間が多いので、自然と遠ざかっていたのかもしれない。

このアルバムはマクレーがConcordと契約をして2枚目のアルバムになる。Concordのアルバムを棚卸しているが、1982年の録音、この頃の物はまだまだLPがほとんどだ。

前作はジョージシアリングとのDuo。どちらも大物ミュージシャンであるが、両者とも契約直後でいきなり共演とは、意表をついたアルバムであった。Concordは契約ミュージシャンの共演アルバムを良く作るが、このマクレーの2枚目のアルバムも、これまた大物同士の共演となった。

丁度、お正月に相応しく日の出をイメージするジャケットだが、ヴァイブのカル・ジェイダーとのコラボアルバムだ。それも、ポンチョサンチェスを含むお囃子部隊を従えたジェイダーのグループとの共演である。
これまでのアルバムで、ラテンの曲やボサノバのリズムの曲はあったと思うが、全編ラテンのリズムというのもマクレーにとってはこのアルバムが初めてかもしれない。ただし、曲はべサメムーチョあり、スピークロウのようなスタンダードあり、スティービーワンダーの曲あり、そしてエリントンナンバーありで、マクレーがそれらをどう料理をしてくれるか聴く前から興味が湧く。

実は、このアルバムは、オーナーでありプロデューサーであるカール・ジェファーソンの自信作であったようだ。

ライナーノーツを書いているレナードフェザーが内輪話として冒頭で紹介しているが、このアルバムを制作中のジェファーソンからフェザーに、このアルバムのコンセプトや出来栄えについて何度も事前に電話が入ったそうだ。そして、最後にはこのアルバムは今まで200枚近く制作したアルバムの中でもベスト3に入るかもしれないとまで自慢げに語っていたらしい。そして、いよいよデモテープが届いてこれを聴いたフェザーは、カールソンにすぐ電話をし、君に電話をしなくちゃいけなくなったのは嫌だけど、「君は正しい!」と。

確かにこのアルバムは、レコーディングの機会に恵まれなかったり、反対にメジャーレーベルで思うようなアルバムを作れなかったベテランミュージシャンを起用し、オリジナル曲ばかりでなくスタンダード曲を織り交ぜ、普段着で気楽な演奏で、時によっては大物といえども伴奏に回ってサポートするというConcordの基本コンセプトはすべてクリアしている。さらにはラテン好きで別レーベルまで立ち上げたジェファーソン好みのラテンの味付けを一気にしたAll in Oneのアルバムに仕上がっている。

どの曲も甲乙付け難い証左として、フェザーが最後に語っているが、ジェファーソンから「どの曲が良かった?」という問いに対して、“Heat Wave”から順番に挙げていったら、「結局全部になってしまった」というおちがついている。



マクレーは70年代メジャーレーベルで大きな編成をバックに企画されたアルバムもあったが、マクレーの良さが必ずしも生かされている訳ではなかった。反対にグレートアメリカンソングブックに代表されるように、やはりマクレーの良さはピアノトリオをバックにじっくり歌い込むライブが一番かと思っていた所に、またもやジェファーソンの好企画でマクレーの良さを引き出されたアルバムが仕上がったようだ。

そしてこのアルバムがジェイダーのラストアルバムとなった。



1. Heat Wave            Irving Berlin
2. All in Love Is Fair         Stevie Wonder
3. Besame Mucho          Sunny Skylar / Consuelo Velázquez
4. Evil Ways             Sonny Henry
5. Do Nothin' Till You Hear from Me  Duke Ellington / Bob Russell
6. Love Ralph            Blane / Hugh Martin
7. Upside Down           Djavan Caetano Viana / Regina Werneck
8. The Visit             Ivan Lins
9. Speak Low            Ogden Nash / Kurt Weill
10. Don't You Worry 'Bout a Thing   Stevie Wonder

Cal Tjader (vib)
Carmen McRae (vol)
Marshal Otwell (p)
Mark Levine (p)
Rob Fisher (b)
Vince Lateano (ds)
Poncho Sanchez (per)
Ramon Banda (per)
Al Bent (tb)
Mike Heathman (tb)

Produced by Carl Jefferson
Recodhing Engineer : Phil Edwards
Recorded at Coast Recorders, San Fransisco, California in January 1982

Originally released on Concord CJ-189 (所有盤はユピテルの国内盤)

Heat Wave
Carmen McRae
Concord Records

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2 コメント

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「カル・ジェイダーのラストアルバム」 (コーラス好き)
2014-01-02 16:44:19
YAN様、あけましておめでとうございます。

さて小生はコンコード・レーベルにもカーメン・マクレーにも詳しくはございませんが、ラテンジャズが好きなこともありカル・ジェイダーにつきましては見かけるたびに買い集め、ほぼコンプリートに蒐集しておりました。ですがこの盤のことは存じませんでした。トリを飾るスティービー・ワンダーの名曲“Don't You Worry 'Bout a Thing”のYouTubeを聴かせて頂きましたが、この曲は世代を超えて聴かれておりますのでカーメン入門にはピッタリかもしれません。amazonで全曲試聴しまして個人的には美旋律の“Love”や心温まる感じの“UpsideDown”あたりに惹かれましたが、レナード・フェザーもナットクしたという出来栄えも頷けるような瀟洒な歌唱、ヴィブラフォンの清冽な響きがほどよい甘さを加味していてよいムードです。早速注文いたします。コンコード・レーベルの諸作についてYAN様ほど熱意と愛情とをもって掘り下げてくださる方は他に見当たりませんので、貴ブログの存在は貴重ですね。
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ラテンは聴かず嫌いで・・・ (yan)
2014-01-03 00:22:47
コーラス好き さん

こんばんは。

ラテンファンでいらっしゃいましたか。
私は、どちらかというと4ビート信奉者。一時Fusion系も聴きましたたが、ラテンはいわゆる「聴かず嫌い」です。
実際に聴けはライブでも楽しいし・・・少しじっくり聴いてみたいとは思っているのですが。

きっと凝り性なので、聴きだすと嵌りそうなので躊躇しているのかもしれません(笑)
Concordだけでも結構ありますし。

Concordも嵌ってしまいましたね。
最初は、ギター物とスコットハミルトンだったのですが・・・
段々増えていって、当時の輸入盤のバーゲンではあまり人気が無いレーベルでしたのでいつも割安だったのを集め始めました。

歯抜けでしたが、アルバム紹介をやりだして大分埋まりだしました。

あまり注目されないレーベルですが、思わぬ拾い物があります。参考にしていただき、お役に立てたようで嬉しいです。

ペッパーアダムス同様ぼちぼち続けてみます。

コメントありがとうございました。
また、よろしくお願いします。

YAN
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