大木昌の雑記帳

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パレスチナ“戦争”の実態

2023-11-17 09:21:39 | 国際問題
パレスチナ“戦争”の実態

最近のパレスチナ・ガザの状況についてグテーレス国連事務総長は、ガザが「子どもたちの
墓場になりつつある」と、その惨状と残酷さを訴えています。

私たちはテレビや新聞を通じてパレスチナで起こっている惨状を日々目にしていますが、私
は、あまりの残酷さを目にしてこのブログで書く勇気が出てきませんでした。

とりわけ、ガザ市の中心にあるガザ最大の病院、シファ病院は、電気、水、食料を絶たれた
状態で新生児や未熟児が多数入院しています。

現在、ガザの医療機関はすべて機能を停止しているので、新生児だけでなく一般の病人やけ
が人は何の医療も受けられないままただベッドに横たわっています。

こうした状況にあるシファ病院に15日未明、イスラエル軍が突入して占拠しました。

実際、新生児や特別なケアを必要とする乳幼児が日々亡くなっています。こうした子ども
たちの親の悲痛な気持ちを考えると私は言葉を失ってしまいます。

アメリカのABCテレビは、15日、イスラエル軍が突入したガザ地区の最大の病院、シファ
病院の医師の話としてICU=集中治療室で治療を受けている63人の患者のうち、7割近くに
あたる43人が医療用酸素が尽きたことで死亡したと伝えました(注1)

イスラエル政府は、シファ病院の地下にはハマスの指令所があり、そこには武器があった
と主張し武器の映像を世界に向けて発信しています。

しかし、ハマスは、この映像はイスラエルが作成した安っぽいプロパガンダ画像だと全面
的に否定しています。武器については、イスラエルが持ち込んだ物であると言っています。

米国安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、イスラエル軍の突入の前日、
ハマスがシファ病院を含む複数の病院やトンネルを人質拘束などで軍事利用していること
を確認したとし、「国際法違反だ」と記者団に語っています(『東京新聞』2023年11月
16日)。

さらに彼は、突入した15日には「イスラエル軍がこうした施設を隠れみのとして利用
するハマスの能力を取り除きたかったことは理解できる」と述べました。

同日、バイデン大統領も「先にハマスが病院の下に司令部を隠し置くという戦争犯罪を
起こしているという状況がある。それは事実であり、実際に起きたことだ」とハマス側
を非難しました。

こうしたイスラエル擁護のコメントがアメリカから発せられることで、イスラエルの言
動にお墨付きを与えるという構図が、日本を含めて世界のメディアに流されています。

いずれにしても、新生児や病人のいる病院を攻撃することこそ「国際法違反」であり、
さらに人道的に許されない行為です。

WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は15日、ジュネーブで開かれた記者会見で、
「到底、容認できない。病院は戦場ではない」と強い言葉でイスラエルを非難しまし
た。

いまもシファ病院の医療従事者と連絡が途絶えていることを明らかにしたうえで彼は、
「国際人道法の下では医療施設や医療従事者、救急車、そして患者は、あらゆる戦争
行為から守られ、保護されなくてはならない」と訴えました。

WHOによりますと、ガザ地区の36の病院のうち26の病院が建物の損傷や燃料切れな
どのため閉鎖され、地区全体の病床数も3500床から1400床まで大きく減っているとい
うことです。

テドロス事務局長は「医師や看護師は、誰が生き、誰が死ぬのか、不可能な決断を迫ら
れている」と述べ、医療施設への攻撃の停止と支援物資の搬入の必要性を強く訴えまし
た。

ところで、アメリカとイスラエル側から発せられる映像や言動の真偽について、私はか
なり疑いをもっています。

というのも、これまでアメリカは何回も虚偽の作り話を戦争に利用してきた“実績”があ
るからです。

たとえば1990年、イラクによるクウェート侵攻の際、「クウェートの少女」の話がメデ
ィアを賑わしました。15歳の少女がボランティアをしていた病院にイラク兵が入ってき
て、保育器の赤ん坊を投げ捨てていったというのです。

実はこれはヒルアンドノウルトンというPR会社が仕組んだ嘘の話だということが、後
の取材によって明らかになりました。戦争反対と言っていた若者たちが「イラク許すま
じ」とデモを起こすほどの意識の変換が、メディアの情報操作で可能になったわけです。
アメリカをはじめとする多国籍軍の参加する戦争に突入するのを支持する傾向になりま
した。これが湾岸戦争の始まりです。

またアメリカはイラクのフセインが大量破壊兵器を隠し持っているとの説を流し、ご
丁寧にも大量破壊兵器を制作したと称する塩ビ管を国防相がテレビで見せ、それを根
拠にイラクに侵攻してフセインを倒したのです(イラク戦争)。

しかしこの時もアメリカが主張する大量破壊兵器は見つからず、後に、この話は単に
イラクを攻撃するために作られた嘘であることが判明しましたのです。

今回も、あるシファ病院にいた女性が、ハマスの兵士がやってきて薬品などを奪って
いったと証言する映像がイスラエル側から配信されましが、ハマス当局によると、こ
の女性が話すアラビア語には明らかなイスラエルなまりがある、と指摘しています。

さらに今朝(11月17日)のテレビ朝日のニュースによれば、フランスのメディア
は、イスラエルの報道が疑わしい、としています。

といのも、これまでイスラエルはシファ病院の地下に指令室がありそこの武器もある
と盛んに喧伝してきたのに、その映像も証拠も提示していないからです。

ただ、病院への攻撃を正当化し、国際的な非難をかわすために何らかの映像を出さざ
るを得なかったのでしょう。

それでもバイデン大統領は何の証拠も根拠も示さず、シファ病院の地下にはハマスの
指令室があること、「これは事実だ」とメディアに語っています。

病院で撮影された動画には、医療用機器MRIの隣に袋に入った銃が少し映っている
だけです。おそらく、アメリカ以外のヨーロッパ諸国の中でイスラエル側の映像と主
張をそのまま信じている国はあまりないと思われます。

いずれにしても、現在進行している事実は、毎日数百人のパレスチナの人々が殺され、
武器をもたない200万人を超えるパレスチナの人々の命が危機に陥っていることです。

現在、国連のグテーレス事務総長、WHOのテドロス事務局長だけでなく、世界の多く
の市民が、イスラエルのガザにたいする攻撃に反対の声を上げつつあります。

アラブ諸国やイスラム教徒の多い国が、イスラエルを非難しパレスチナを支持すること
は十分理解できますが、最近は、この傾向はそれ以外の国でも国際的に強まってきてい
ます。

当初、ハマスの突然の攻撃に対しては、ハマスを批判していた人たちも、イスラエルの
容赦のない攻撃はイスラエルの「生存権を守る」「自衛権」水準のはるかに超えた、大
虐殺、民族浄化であるとイスラエル非難を強めています。

例えば、アメリカでは特に若い世代の間では次第にイスラエルを非難し、パレスチナを
支持する人が増えており、ニューヨークでは大規模なデモが行われています。

またイギリスでは土曜日ごとに30万人規模のデモが行われています。フランスでは、
イスラエルを非難し、親パレスチナを支持するデモが行われ警察と衝突して逮捕者が出
ています。

日本でも欧米ほどの人数ではありませんが、やはりイスラエルを非難するデモが行われ
ました。

こうした背景にはイスラエルがパレスチナ人を出口のない狭い空間に閉じ込め、水、燃
料、電気、食べ物など生きるために必要な物資の搬入を認めていなかった、という事情
があります。

これは、武器や爆弾による一般市民を殺すのではなく、生きる手段を奪ったうえで餓死
による緩やかな大量殺人で、これこそが本当の「人道の危機」です。

しかも、燃料の枯渇、電気のない状態で電話も携帯電話も使用できず、ガザで何が起こ
っているかを内部から発信することができず、外から連絡をとることができません。

こうなると、イスラエルはやりたい放題の軍事作戦を行うことができ、それはパレスチ
ナの人々にとって想像を絶する危機が迫っていることを意味します。

イスラエル国内では、世界一の諜報機関の「モサド」も気が付かないうちにハマスが周
到な準備をし、少なからずイスラエル国民が死亡し、外国人を含む220人ほどお捕虜
を出してしまったことは、ネタニヤフ首相の大失態であるとみなされています。

イスラエルの異常ともいえるガザ住民の殺戮は、ハマスの攻撃以前からネタニヤフ首相
の人気は低迷し続けており、そこにハマスの攻撃を防げなかったことに対する国内での
批判が加わったたことで激高し、自らの失態を覆すために前後の見境なくガザの住民を
殺戮しているというのが実態ではないかと思います。

大切なことは、何をおいても停戦を実現することです。そのために日本にできることは
あるはずです。

(注1)NHK NEWS WEB (2023年11月16日 14時55分)。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231116/k10014259511000.html
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シファ病院で手当てを受ける子供                                   シファ病院で医療用機器の後ろにあったとされる銃など(イスラエル側の画像)

出典 (注1)                                           出典(注1)


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