大木昌の雑記帳

政治 経済 社会 文化 健康と医療に関する雑記帳

2017年衆院選(2)―小池戦略の成功と挫折―

2017-10-28 07:17:36 | 政治
2017年衆院選(2)―小池戦略の成功と挫折―

2017年の衆院選は、表面の現象だけをみると、自民284、公明29、立憲民主党55、希望の党50、
共産党12、維新11、社民2、無所属22、という結果に終わりました。

しかし、今回の選挙には、以下に述べるように、単なる当選議員の数以上に、日本の将来にとって非常に重
大な意味が含まれています。

自民党は当初、民進党と希望の党が、本当に1本化したら自民党はかなりの数を減らし、政権交代もあり得る、
あるいは、政権交代まではゆかなくても、安倍政権は退陣せざるを得なくなる、との危機感がありました。

民進党は、10月3日に立ち上げたばかりの立憲民主党への参加者、希望の党への合流組、無所属の3グループ
に分かれました。

野党の分裂という「敵失」があったことも自民党に有利に作用し、メディアは公示後の早い段階で自民党が
300をうかがう情勢、希望の党は100議席、立憲民主党は30議席前後の議席と予想していました。

しかし結果は、上に示したように、自民圧勝、立憲民主党躍進、希望の党の失速(または敗北)でした。

自民党から見ると、“最大の功労者”は小池百合子・希望の党代表と前原誠司・民進党代表ということにな
ります。自民党幹部は以下のように言ってはばかりません。
    
    小池と前原には足を向けて寝られない。負け戦を勝つことができただけではない。最大野党の民進
    党を解体して野党連合を破壊し、再び自民党長期政権の道筋をつけてくれた。立憲民主がいくら議
    席を増やしても、左派政党は国民の広い支持を集めることはできないから恐くない。功労者の小池
    と前原の2人なら喜んで自民党に迎え入れてもいい(注1)

メディアでは、今回の希望の党の失速が、あたかも小池氏の「排除」と「さらさらない」の言葉が決定的な
原因のように報道していますが、それはきっかけにすぎないと考えるべきでしょう。

むしろ、小池氏は選挙期間中に、自民党との連携について問われ、それは選挙結果次第だと答え、自民党と
の連携も視野に入れていることを匂わせていました。

また、憲法改定に関して安倍首相からも希望の党を改憲勢力とみなしていることを示唆する発言がありました。

小池氏の政治的立ち位置について、希望の党の設立会見で小池氏は、希望の党を「日本のこころを守っていく
保守」と答え、そのほか「改革保守」「寛容な保守」などとも表現しています。いずれにしても希望の党は保
守、それもかなり右寄りの保守政党であることははっきりしています。

それは、小池氏が希望の党からの立候補を望む民進党系の立候補者に課した協定書10項目には、(2)安保
法制は憲法に則り適切に運用。不断の見直しを行い現実的な安保政策を支持(4)憲法改正支持、の二項が含
まれていることからも分かります。

また、選挙において、九州ブロックの比例代表の優先第一位に極右と言ってもよい中山成彬氏を置き、当選さ
せたことにも現れています。

以上を考えれば、希望の党は結局、自民党の補完勢力あるいは第二自民党以外の位置づけは考えられません。

希望の党が失速したのはやはり、「排除」「さらさら」と言う言葉の問題よりも、改憲と安保法制推進という、
この政党の危うさを有権者に見透かされたことが、本質的な理由だと思います。

小池氏が意図して民進党を分裂させたのかどうかは分かりませんが、以下に、小池氏がどのような読みと狙い
をもっていたのかを検証してみましょう。

まず、小池氏は今回の選挙で、本気で政権交代を目指したのかどうか、という点です。もし、本気だとしたら、
自ら首相候補として衆議院選挙に立候補していたはずです。

選挙に出るか出ないかの判断をギリギリまで延ばしていたのは、世の中の風の流れを読んでいて、かなり早い
段階(多分、例の「排除」発言以後)どうも希望の党の情勢が芳しくないと読んだので、立候補しなかったの
ではないでしょうか?

もし、圧倒的に有利な風が吹いていたら、恐らく立候補していたでしょう。選挙後に、“私は最初から立候補
せず都知事の仕事に専念すると言いってきた”、との趣旨の発言を繰り返していますが、どうもこれは、後付
けの言い訳のように聞こえます。

次に、もし政権交代を狙うなら、過半数の233人以上の候補者をたてなければ、本気度を疑われるので、か
なり無理をして、何とか235人の候補者を擁立しました。しかし、民進党からの合流組を除けば、ほとんど
素人をかき集めた、という感じでした。

この際、小池氏は、民進党の大部分を取り込むことができれば、彼らがそれぞれの地盤でもっている支持層、
組織、そして100億から140億円とも言われる民進党の政党交付金(小池氏は否定していますが)、そし
て連合の応援・支持を手に入れることができると考えたと思われます。

それに加えて、都知事選と都議選で見せた小池ブームの風は、東京はいうまでもなく、全国的に吹いている、
との思い込み(実は“おごり”)があったはずです。

もちろん、小池氏には、自民党と並ぶ保守党勢力を結集し、自ら女性初の首相になることも視野に入れていた
と思われます。

つまり、小池氏は前原氏に、あたかも希望すれば民進党の全員が「希望の党」の公認を受けることができる、
との確約ではなく印象だけを与え、前原氏を彼女の筋書きに引き入れることに成功しました。

一方、前原氏は、インタビューで民進党の全員が希望の党から公認されることになっていたのか、と問われて
「そうしたかった」と答えています。つまり、口頭でも書類上でも、何の確約もないまま、民進党の両院総会
で、安倍政権の一強と倒すために、あたかも全員が希望の党の公認を受けられるかのごとく、言ったことが判
明しました。

また、『テレビ朝日』の番組のインタビューで前原氏は、「希望の党」との合流の意図を、「自衛隊や日米安
保を否定する政党と選挙協力を行うことはできない」、と語っています(注2)。

つまり民進党のリベラル派を排除する必要があった、と言っているのです。

ここまでは、小池氏の目論見は、あと一歩で大成功の所まで来ていました。ところが、例の「排除」発言がき
っかけとなって、事態は急変しました

例えは適当でないかも知れませんが、今回の小池氏の言動は、民話「いなばのしろうさぎ」を想起させました。
しろうさぎは、海を渡るため、数を数えるからと二ワをだまして向こうの陸地まで並びに並ばせ、あと一歩で
陸に到達できるところでワニに、だましたことをついうっかり口にしてしまいます。それに怒ったワニたちが、
白うさぎの毛皮を剥ぎとって丸裸にしてしまいます。

小池氏は、枝野氏に代表される民進党のリベラル派を切り捨て民進党を保守党に転換しようとし、実際、あと
ほんの少しで成功するところまで来ていました。

しかし、つい、おごりか傲慢か、油断からか、「排除します」という本音がとびだしてしまい、追い風の流れ
は強い逆風となってしまいました。

枝野氏に代表されるリベラル勢力を「排除」して、民進党を実質的に保守党に改変しようとしたのです。

その後の運命は、いなばのしろうさぎと同じで、有権者と立憲民主党に手ひどいしっぺ返しを食らってしまい
ました。

(注1)『BLOGS』2017年10月23日 16:00 http://blogos.com/article/254237/
(注2)『テレビ朝日』「鳥羽慎一モーニングショー」(2017年10月26日)。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017年衆院選(2)―小池戦略の成功と挫折―

2017-10-28 05:53:52 | 政治
2017年衆院選(2)―小池戦略の成功と挫折―

2017年の衆院選は、表面の現象だけをみると、自民284、公明29、立憲民主党55、希望の党50、
共産党12、維新11、社民2、無所属22、という結果に終わりました。

しかし、今回の選挙には、以下に述べるように、単なる当選議員の数以上に、日本の将来にとって非常に重
大な意味が含まれています。

自民党は当初、民進党と希望の党が、本当に1本化したら自民党はかなりの数を減らし、政権交代もあり得る、
あるいは、政権交代まではゆかなくても、安倍政権は退陣せざるを得なくなる、との危機感がありました。

民進党は、10月3日に立ち上げたばかりの立憲民主党への参加者、希望の党への合流組、無所属の3グループ
に分かれました。

野党の分裂という「敵失」があったことも自民党に有利に作用し、メディアは公示後の早い段階で自民党が
300をうかがう情勢、希望の党は100議席、立憲民主党は30議席前後の議席と予想していました。

しかし結果は、上に示したように、自民圧勝、立憲民主党躍進、希望の党の失速(または敗北)でした。

自民党から見ると、“最大の功労者”は小池百合子・希望の党代表と前原誠司・民進党代表ということにな
ります。自民党幹部は以下のように言ってはばかりません。
    
    小池と前原には足を向けて寝られない。負け戦を勝つことができただけではない。最大野党の民進
    党を解体して野党連合を破壊し、再び自民党長期政権の道筋をつけてくれた。立憲民主がいくら議
    席を増やしても、左派政党は国民の広い支持を集めることはできないから恐くない。功労者の小池
    と前原の2人なら喜んで自民党に迎え入れてもいい(注1)

メディアでは、今回の希望の党の失速が、あたかも小池氏の「排除」と「さらさらない」の言葉が決定的な
原因のように報道していますが、それはきっかけにすぎないと考えるべきでしょう。

むしろ、小池氏は選挙期間中に、自民党との連携について問われ、それは選挙結果次第だと答え、自民党と
の連携も視野に入れていることを匂わせていました。

また、憲法改定に関して安倍首相からも希望の党を改憲勢力とみなしていることを示唆する発言がありました。

小池氏の政治的立ち位置について、希望の党の設立会見で小池氏は、希望の党を「日本のこころを守っていく
保守」と答え、そのほか「改革保守」「寛容な保守」などとも表現しています。いずれにしても希望の党は保
守、それもかなり右寄りの保守政党であることははっきりしています。

それは、小池氏が希望の党からの立候補を望む民進党系の立候補者に課した協定書10項目には、(2)安保
法制は憲法に則り適切に運用。不断の見直しを行い現実的な安保政策を支持(4)憲法改正支持、の二項が含
まれていることからも分かります。

また、選挙において、九州ブロックの比例代表の優先第一位に極右と言ってもよい中山成彬氏を置き、当選さ
せたことにも現れています。

以上を考えれば、希望の党は結局、自民党の補完勢力あるいは第二自民党以外の位置づけは考えられません。

希望の党が失速したのはやはり、「排除」「さらさら」と言う言葉の問題よりも、改憲と安保法制推進という、
この政党の危うさを有権者に見透かされたことが、本質的な理由だと思います。

小池氏が意図して民進党を分裂させたのかどうかは分かりませんが、以下に、小池氏がどのような読みと狙い
をもっていたのかを検証してみましょう。

まず、小池氏は今回の選挙で、本気で政権交代を目指したのかどうか、という点です。もし、本気だとしたら、
自ら首相候補として衆議院選挙に立候補していたはずです。

選挙に出るか出ないかの判断をギリギリまで延ばしていたのは、世の中の風の流れを読んでいて、かなり早い
段階(多分、例の「排除」発言以後)どうも希望の党の情勢が芳しくないと読んだので、立候補しなかったの
ではないでしょうか?

もし、圧倒的に有利な風が吹いていたら、恐らく立候補していたでしょう。選挙後に、“私は最初から立候補
せず都知事の仕事に専念すると言いってきた”、との趣旨の発言を繰り返していますが、どうもこれは、後付
けの言い訳のように聞こえます。

次に、もし政権交代を狙うなら、過半数の233人以上の候補者をたてなければ、本気度を疑われるので、か
なり無理をして、何とか235人の候補者を擁立しました。しかし、民進党からの合流組を除けば、ほとんど
素人をかき集めた、という感じでした。

この際、小池氏は、民進党の大部分を取り込むことができれば、彼らがそれぞれの地盤でもっている支持層、
組織、そして100億から140億円とも言われる民進党の政党交付金(小池氏は否定していますが)、そし
て連合の応援・支持を手に入れることができると考えたと思われます。

それに加えて、都知事選と都議選で見せた小池ブームの風は、東京はいうまでもなく、全国的に吹いている、
との思い込み(実は“おごり”)があったはずです。

もちろん、小池氏には、自民党と並ぶ保守党勢力を結集し、自ら女性初の首相になることも視野に入れていた
と思われます。

つまり、小池氏は前原氏に、あたかも希望すれば民進党の全員が「希望の党」の公認を受けることができる、
との確約ではなく印象だけを与え、前原氏を彼女の筋書きに引き入れることに成功しました。

一方、前原氏は、インタビューで民進党の全員が希望の党から公認されることになっていたのか、と問われて
「そうしたかった」と答えています。つまり、口頭でも書類上でも、何の確約もないまま、民進党の両院総会
で、安倍政権の一強と倒すために、あたかも全員が希望の党の公認を受けられるかのごとく、言ったことが判
明しました。

また、『テレビ朝日』の番組のインタビューで前原氏は、「希望の党」との合流の意図を、「自衛隊や日米安
保を否定する政党と選挙協力を行うことはできない」、と語っています(注2)。

つまり民進党のリベラル派を排除する必要があった、と言っているのです。

ここまでは、小池氏の目論見は、あと一歩で大成功の所まで来ていました。ところが、例の「排除」発言がき
っかけとなって、事態は急変しました

例えは適当でないかも知れませんが、今回の小池氏の言動は、民話「いなばのしろうさぎ」を想起させました。
しろうさぎは、海を渡るため、数を数えるからと二ワをだまして向こうの陸地まで並びに並ばせ、あと一歩で
陸に到達できるところで、ワニにだましたことをついうっかり口にしてしまいます。それに怒ったワニたちが、
白うさぎの毛皮を剥ぎとって丸裸にしてしまいます。

小池氏は、枝野氏に代表される民進党のリベラル派を切り捨て民進党を保守党に転換しようとし、実際、あと
ほんの少しで成功するところまで来ていました。

しかし、つい、おごりか傲慢か、油断からか、「排除します」という本音がとびだしてしまい、追い風の流れ
は強い逆風となってしまいました。

枝野氏に代表されるリベラル勢力を「排除」して、民進党を実質的に保守党に改変しようとしたのです。

その後の運命は、いなばのしろうさぎと同じで、有権者と立憲民主党に手ひどいしっぺ返しを食らってしまい
ました。

(注1)『BLOGS』2017年10月23日 16:00 http://blogos.com/article/254237/
(注2)『テレビ朝日』「鳥羽慎一モーニングショー」(2017年10月26日)。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017衆院選―立憲の思想「民主主義は暴走する」―

2017-10-20 07:53:36 | 政治
2017衆院選(1)―立憲の思想「民主主義は暴走する」―

小池百合子東京都知事の目論見は、9月28日までは、予想以上にうまく行っていたように見えました。

「どんな手段を使っても安倍政権を打倒する」「そのために選挙では自公と1対1の対立構造」を確立する必要がある、との理屈で、
前原民進党代表は、両院総会で民進党議員全員が希望の党の公認を得て立候補することを提案し了承されました。

この結果110名もの民進党系の議員と出馬予定者が小池氏に膝まづいて、公認を乞う事態が出現したのです。しかも、安保法制と
憲法改正に同意するという誓約書への署名という「踏み絵」を踏まされて。

この時点が、小池氏にとっても前原氏にとっても、絶頂でした。

しかし、29日の小池氏の「排除」発言を境に、小池氏の勢いは大失速し、前原氏とともに両者の目論見はにわかに狂い始めました。

加えて、10月12日、立憲民主党からの候補者の応援に出た民進党の小川敏夫民進党参院会長は、小池代表が課した「踏み絵」に猛反
発し、「民進党は解党しない。民進党を守り、再びリベラル勢力を結集する」と発言しました(注1)。

ただし、この民進党の再結集に、枝野氏は立憲民主党の旗を立ち上げたからには、この旗を守ってゆく、民進党の最結集には応じな
い、と明言しています。

参議院の民進党が「リベラル勢力を結集する」と発言した裏には、このままで行くと、前原前民進党代表に、100億円を超える党
の財産(政党助成金)を持ち逃げされるのを防ぐために前代表を解任してしまいたい、との狙いもあるようです。

これとは別に、今回無所属で立候補した前民主党代表の岡田克也氏は公示前に自身のブログで、「(分散した野党を)しっかりと一
つにしていく接着剤、中軸としての役割を無所属議員が果たしてゆきたい」「これからの野党、大きな塊をつくっていくことを見据
えて良い人材をたくさんのこしたい」と書いています。とりあえずは、政党と言う形ではなく、「岡田ネットワーク(仮称)」とし
て同士を結集してゆくようです(注2)。

こうなると、いわゆる「野党」勢力としては、「希望の党」「立憲民主党」「岡田ネットワーク」、「社民」「共産党」、「自由党」、
そして非自公の無所属議員、という構成になります。

今回の衆院選後に、実際の当選者がどのような勢力分布になるのか分かりませんが、当初、は100人を超える当選者を出すと言われ
ていた「希望の党」は、その後、失速して現有勢力の57人を確保できるかどうか、というレベルに下がり、さらに直近(10月18日)
の予想では、後発の「立憲民主党」と野党第一党」を争う47議席前後にまで落ち込んでいます。

これからあと3日のうちに何が起こるか分かりませんが、野党第一党は「立憲民主党」になる可能性もかなりあります。

民進党から希望の党に乗り換えた「合流組」のある候補者は、テレビのインタビューで、「立憲民主党から立候補したほうが100倍
良かった」と語っており、希望の党からの立候補が逆風にさらされていることを物語っています。

なにしろ、地元で訴えるにしても、まずは、思想・信条を曲げて「希望の党」に移った言い訳から始めなければならないからです。

いずれにしても、選挙後、これまで安保反対、憲法改定反対を叫んでいた、旧民進党の議員は、首班指名で誰を書くのか定まっていま
せん。万が一、小池氏が念頭に置いている自民党の石破氏あるいは橋本聖子氏を総理候補に書くよう言われたとき、彼らはどのように
対応するのでしょうか。

さらに深刻なことに、安保法案と憲法改定に反対を唱えてきた旧民進党議員は、これらの問題で自民党と見解を同じくする希望の党に
入ったことについて、外に向かっては色々理由を述べて言い訳をするでしょうが、自分自身の心の内をごまかすことはできません。

朝日新聞のアンケート調査に、希望の党が擁立した235人のうち、226人が回答しました。そこで、安倍政権が安保関連法を成立
させたことへの評価を聞いたところ、「希望の党」への合流組以外は69%が「評価する」「どちらかと言えば評価する」という評価
寄りの立場でした。

これに対し、民進党からの合流組で評価寄りだったのは10%にとどまり、71%が「評価しない」「どちらかと言えば評価しない」
と答え、否定的な立場を示しました。合流組とそれ以外で、正反対の評価になった形です(注3)。

つまり、内心では、大部分の合流組の民進党系の立候補者は今でも安保関連法案には反対なのです。だからこそ、これまで自民党では
なく民進党から立候補して議員活動をしてきたのです。

それもで、安保法案と憲法改定に賛成することを認めたうえで立候補する、というこの矛盾を、これからも心のうちに抱えたまま、政
治家を続けるのでしょうか?普通に考えれば、政治家としてはこの変節は「死」にも等しいのではないでしょうか?

ところで、現段階では、選挙の結果がどうなるのか分かりませんが、どうやら自公合わせて300議席は突破しそうな情勢です。

『朝日新聞』は、自公が圧勝すれば、安倍政権は憲法改定論議を加速させる、と書いています。ただ、公明党は、野党第一党が納得す
る状況になったら、という条件を付けています。

もし、憲法改定に前向きな「希望の党」が第一党になったら、その時、安倍政権が一挙に憲法改定に突き進む可能性は十分あります。

この意味で、希望の党と立憲民主党のいずれが野党第一党となるかは、日本の今後の進路を決める重要な問題となります。

ところで、各社の最近の世論調査をみると、安倍政権の支持示よりも不支持の方が4~5ポイント多くなっています。

それでも、投票率が低ければ、固定的な支持層が厚い自公は優位であり、しかも小選挙区制のもとでは死に票が多くなる野党に不利で、
自公が議会で圧倒的に優位に立つことになります。

理由はどうあれ、現行制度のもとでは、結果として数が多い方が権力を握ることになります。最後は多数決によって決める。それが民
主主義のルールだからです。

しかし、この民主主義のルールに問題ないのだろうか?

小林よりのり氏は、10月14日、新宿における立憲民主党の”伝説の”応援演説で、ドイツのナチス党の党首、独裁者ヒットラーでさえ、
民主主義のルールにのっとって選挙で勝ち、権力を掌握したことを指摘しました。

続けて、小林氏は、「民主主義は暴走する。だから憲法が権力を縛る必要がある」と強調しました。つまり、原理的には、民主主義は
独裁的権力を生むこともあり得るのです。これは、今回の選挙において非常に重要な問題提起だと思います。

現行の憲法は、主権在民、すなわち国の主権者は国民であり、この憲法が国権を縛る構造になっていますが、自民党の「改憲草案」では、
国民が国の権力を縛るのではなく、逆に国の権力が国民を縛る構造になっています。

この観点から小林氏は、単なる民主ではなく、「立憲」民主であることが重要だ、したがって、枝野氏が「立憲民主党」を立ち上げたこ
とは非情に重要だ、とも述べました(注4)。

確かに枝野氏は、「民主党」に戻るのではなく、「立憲」民主党を立ち上げたのです。たとえば、集団的自衛権を認めた安保法案は、憲
法違反であることを訴えています。

改憲がどうなるかは、選挙結果に大きく影響されますが、単純な獲得議席だけでなく、与野党の再編も重要な要素です。

改憲推進派は自公と維新の会、希望の党が中心です。

他方、改憲反対勢力にも再編は必至です。立憲民主党、共産党、社民党は今後も改憲に関しては協調してゆくと思いますが、その他に、
今回は無所属で立候補した民進党の当選者および、希望の党から立候補した民進党の合流組のうち何人かは立憲民主党に移籍したり、あ
るいは新しい会派を結成して連携してゆくことも考えられます。

いずれにしても、民進党の分裂、希望の党の登場で、政界再編成は避けられません。

この事態を隣国はどうみているのでしょうか?

韓国の『中央日報』は、安倍首相、小池氏、前原氏を保守派のリーダーで改憲派とし、「誰が勝とうが右向け右」「今回の選挙戦は『日本
政治の保守化、右傾化をさらに浮き彫りにする舞台』との分析がある」と報じています。 中国も、安倍首相は北朝鮮にたいして圧力ばか
りを強調しているが、どこ出口を見いだすのかわからない、また日本の右傾化に強い警戒感を示して(注5)。

選挙の投票日まであと3日。日本はどんな判断をくだすのでしょうか。



(注1)Nifty ニュース 2017年10月14日 09時26分
https://news.nifty.com/article/domestic/government/12136-420715/
(注2)http://blog.goo.ne.jp/kokkai-blog/e/3705e741c36ed6882902d3a0c4d4ff2c

(注3)朝日新聞 デジタル 2017年10月14日20時30分
    http://www.asahi.com/articles/ASKBF5VM2KBFUTFK00V.html?ref=nmail
(注4)youtube https://www.youtube.com/watch?v=sKAls7bXlN8

(注5)『日本経済新聞』電子版 2017年10月19日 18:07
   https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22454670Z11C17A0000000/?n_cid=
NMAIL005


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

前原氏の幼児性と無責任―「希望」へ移った民進党議員の無念と苦渋―

2017-10-15 08:30:43 | 政治
前原氏の幼児性と無責任―「希望」へ移った民進党議員の無念と苦渋―

今回の民進党解体劇(ただし、衆議院だけで、参議院では民進党は存続している)は、見るも無残な「茶番劇」でした。

今年の9月28日に開催された民進党の両院総会で、代表の前原誠司氏は、小池百合子氏が代表を務める「希望の党」と
の「合流」を提案し、了承されました。

この時、前原氏は安倍一強を倒すために、「名を捨て実取る」と説明、その時には、民進党議員は民進党に籍を置いた
まま、全員が希望の党の公認を受けて立候補し、民進党としては公認を認めない、との説明でした。

民進党の議員からすれば、大きな反自民勢力を作って安倍政権を打倒する、という大義のために苦渋の選択として前原
代表の言葉を信じて、了承したのです。

ところが、翌日になると事態は一変します。つまり、小池氏は、民進党との「合流」ということではないし、民進党の
候補者を全て受け入れる気は「さらさらない」と断言。

さらに、安保法制と憲法改定(改正とはいえない)に賛成することを受け入れる、という「踏み絵」に賛同できない人
は「排除」する、とまで踏み込んだ発言をしました。

これでは約束が違う、と多くの民進党議員は動揺しましたが、この時点では選挙公示日まで10日余りしかありません。

十字架を踏むキリシタンほどの深刻な苦渋ではなかったかもしれませんが、多くの民進党議員と民進党から立候補を予
定していた人たち、合計110人ほどは、泣く泣く「踏み絵」に署名をしました。

ところで、9月28日の両院総会に先立つ21日、前原代表と小池代表との話し合いが行われて、この場で、安倍政権を倒す
ために民進党と希望の党が一緒になって協力することで二人は合意した、とされています。

ただし、この時、前原氏は民進党議員の全員が希望の党の公認を受けて立候補できる、との「感触」だけで両院総会に
「合流」を持ち帰ったのです。

この両院総会の様子を、後に立憲民主党を立ち上げた枝野氏はインタビューで、全員が希望の党の公認を得ることができ
る点について、前原氏は非常に強い確信と何らかの確かな担保があると思わせる口ぶりで話した、と言っています。

だからこそ、当然、もめると思われた両院総会で前原氏の提案が、枝野氏も含めて全員一致で了承されたそうです。

ところが、何の担保もないどころが、小池氏は「最初から全員を受け入れるとは全く言っていない」「さらさらない」と
全否定しました。

前原氏は、一つの政党が事実上解党に近い状態になるという重大な局面で、全員が公認されるかどうかを小池氏に確認し
たはずです。

もし確認していなかったとしたら問題外ですし、もし確認したとして、それを文書に残さなかったとしたら、政治家とし
て、あまりにも幼稚としか言いようがありません。

あるいは、小池氏の巧みな話術に、前原氏がうまく乗せられてしまったのかも知れません。

いずれにしても、前原氏の政治家としての能力がいかに未熟であるかを物語っています。

もし、小池氏の、「全員を受け入れるとは全く言ってない」という言葉が本当だとすると、前原氏は民進党の両院総会で、
皆を騙したことになります。

前原氏は、小池氏が実際に「排除」を始めて、多くの民進党議員が公認から外されたとき、「想定の範囲内」と言っての
けています。

もし言葉通りなら、前原氏は、当初から「排除」があることを分かっていたということになり、これは、民進党の議員に
たいする裏切り、詐欺的行為であり、犯罪的ですらあります。

「想定の範囲内」とは、単なる前原氏の開き直りなのか、自分が言ってきたことの矛盾にも気づかない、幼稚さの表れで
しょう。

いずれにしても、もう前原氏の言葉を信じる人はいなくなるでしょう。

私の推測では、小池氏と前原氏の一致点は、リベラル派を潰して第二保守政党を立ち上げ、キャスティング・ボード握り、
うまくゆけば自民の一部と連携して小池氏が首相の座を奪う、という点にあったのではないでしょうか?

しかし、小池氏の評判はあっという間に落ち、目算が狂ってしまいました。政権選択を叫んでいた小池氏が、自ら衆議院
に立候補し、首相候補として立ち上がらなかったのは、「負け戦」を避けたからだと思います。

ところで、民進党から希望の党に移った議員たちは、自分たちの思想・信条の変節をどのように思っているでしょうか?

2015年7月、国会内の衆院特別委員会で政府・与党が安保法案を強行採決に踏み切ろうとすると、野党席から怒号が
飛び交い
民主党(後に民進)など野党議員の多くが委員長席に詰め寄りました。

岡山4区で希望の公認を得た前職、柚木道義氏はその一人でした。柚木氏は「強行採決反対!」と書かれたプラカードを
掲げ、与党の国会運営に抗議しました。

「あの行動は今も正しかった」。7日午後5時過ぎ、倉敷市内で街頭演説した柚木氏は声を張り上げました。

民主党など野党は衆院採決時、採決に応じませんでした。柚木氏は当時、「民主主義は死んだも同然。廃案を諦めない」と
の談話を出しました。

希望の党は公認にあたり、10項目の「政策協定書」を作成し同意を要求しました。そこでは安保法制について「憲法にの
っとり適切に運用。不断の見直しを行い、現実的な安保政策を支持」との文言がありました。表現は多少柔らかくなってい
ますが、原案段階では現行の安保法制の容認を求めており、希望側の本音がはっきり表れています。

10月6日夜、柚木氏ら4区の出馬予定者の公開討論会で柚木氏は、協定書を参加者に示しながら「憲法違反の運用はしない、
と書かれている」と理解を求めました。

また、討論会後に取材に応じた柚木氏は「違憲の疑いがある部分は、法改正する。何の矛盾もない。時間をかけて丁寧に説
明したい」とも語っています。どことなく「引かれ者の小唄」のようで、痛々しい弁解です。

民進から希望に移った前職、小川淳也氏(香川1区)も安保法制の衆院可決後、自身のブログに「憲法違反の疑いが強い安
保法案。憲法を無視し、国民を軽視する安保政策の大転換」と書き込んでいます。

香川では昨年の参院選で、共産公認の野党統一候補の応援に汗を流したのが民進党県連代表だった小川氏でした。地元の市
民団体が主催した安保法制の反対集会にも参加しました。

今回、希望の党からの出馬に関して、7日午後1時過ぎ、高松市内の公民館で行われた国政報告会で「政治信条や姿勢はい
ささかも変わらない。新党が極端な立場を取れば、ブレーキ役を担う」と力説しました。

そして、報告会を終えた小川氏は取材に、「安保法制は慎重に運用すべきで、あり得ない政策ではない。ただ、もう一度議
論しなくてはいけない」とも語りました。

報告会に参加した無職男性(78)は「希望の政策と小川さんの考えには食い違いがあるように見える。選挙戦の中でよく
説明を見極めたい」と語っています(注1)。

柚木氏も小川氏も、どうにも説得力のある弁明をしているとは思いません。両者の弁明は痛々しすぎます。

森友・加計問題で安倍首相を追及していたのは玉木雄一郎氏、宮崎岳志氏、今井雅人氏、福島伸享氏、大西健介氏らはそろ
って希望の党に移りました。

彼らは果たして希望の党のなかでも変わらず疑惑追及の声を上げ続けられるのだろうか。

元民進党幹事長代理の玉木雄一郎氏は自身のブログで、自らの主張を曲げてまで別の党に移るつもりはありません」と述べ、
さらに安保法案のうち「武力攻撃事態法」の中には、やはり違憲の疑義がぬぐいきれない部分があることも認めています。

しかし、今回、希望の党に移ったのは、自民党と1対1の対決構造を作り政権交代を実現するために、前原氏の決断に従った
と、自身のブログで書いています。

しかし前原氏は、本来なら共に政権交代を目指す立憲民主党の立候補者を落選させようと刺客を送っています。この現実を見
ると、玉木氏の言い訳もむなしく響きます。

原口一博氏(佐賀1区)は「一寸の虫にも五分の魂」がある、と言い、希望の党の公認を受けながら、公認を拒否し無所属で
出馬することを決意しました。

彼は「とんでもない詐欺に引っかかって身ぐるみ剥がれたような思いを抱える仲間が少なくありません」とツイートしていま
す(10月6日)(注2)

この言葉に共感している、希望の党に乗り換えた民進党の前議員と新規の立候補者はかなり多いのではないでしょうか?

彼らに待っているのは、有権者の厳しい目と審判だけでなく、政治家として、また人間として、心のうちで湧き上がる無念と
と苦渋の葛藤です。もう、彼らの声に耳を傾ける人は空く成る成るでしょう


(1)『琉球新報』2017年10月9日 11:33 https://ryukyushimpo.jp/mainichi/entry- 590297.html
  毎日新聞2017年10月8日 09時33分(最終更新 10月9日 11時33分)
  https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171008/k00/00e/010/134000c

(2)『MAG2News』20177.10.13
http://www.mag2.com/p/news/298800?utm_medium=email&utm_source=mag_news_9999&utm_campaign=mag_news_1013
玉木氏のブログ(10月3日)
https://ameblo.jp/tamakiyuichiro/entry-12316145342.html

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
8月はほとんど雨の異常気象でした。この間、トマトはまったく収穫できなかったのですが、9月に入り、日照が戻ると、
 今度は、驚くほど多くの実を付け始めました。写真は、1回の収穫で、5キロありました。異常気象に対応してトマトは
 大急ぎで子孫を残そうとしたのかも知れません。

      


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「小池旋風」は吹き続けるのか?―策士 策に溺れる―

2017-10-08 09:46:30 | 政治
「小池旋風」は吹き続けるのか?―策士 策に溺れる―

小池百合子東京都知事は、9月28日、安倍首相の臨時国会冒頭解散をうけて翌日には、自ら代表となって、
新党「希望の党」を立ち上げることを宣言しました。

安倍首相は、野党の態勢の整っていないし、新党の準備も出来ていないので、今、選挙を行えば「勝てる」
と楽観的に考えていました。

しかし、この「希望の党」の立ち上げによって、にわかに雲行きが怪しくなってきました。

というのも、新党立ち上げの直後の9月29日、民進党代表の前原氏と小池氏の話し合いの結果、民進党と希望の党が「合流」
して、一大勢力として政権交代を実現する、という方向で合意した、と報じられたからです。

自民党内には、今をときめく小池百合子の人気と、民進党の組織、資金、連合の支持が一緒になれば、安倍政権は危うくな
る、との心配が広まりました。

実際、メディアには、「合流」の文字が踊り、本当に希望の党を中心とした、勢力が安倍一強内閣を倒せるのではないか、
という雰囲気を盛り上げていました。

小池氏との会談の後、前原代表は、民進党の両議院総会で、民進党が全員、希望の党に移り、民進党としての公認は認めない、
との方針を説明しました。

この総会で前原氏は、間違いなく全員が希望の党に移籍できることを小池氏との間で話がついている、と説明し、それならば
政権奪取も可能かもしれない、という期待を多く民進党議員は思ったようです。

このため、総会は大いに荒れるだろうとの予想を裏切って、何の反対もなく前原氏の方針が了承されました。

ここまでは、全て小池百合子氏の思惑通り、さすが百戦錬磨の策士の面目躍如でした。

ところが、小池氏は29日の会談終了後、記者団に「私たちの政策に合致するか、さまざまな観点から絞り込みをしたい。全
員を受け入れることは、さらさらない」と、選別を行う考えを示したのです。

つまり、安保法制と憲法改正という方針を認めない人は公認しない、とメディアに語ったのです。

この選別は、のちに「絞り込み」とも言い換え、さらに決定的な「排除」という言葉も飛び出しました。

この時点では、前原氏・民進党と小池氏との関係は、はっきりと、小池氏が上に立ち、前原・民進党の議員および立候補予定
者は、小池氏および希望の党の前にひれ伏して、公認をお願いするという状況になりました。

その際、民進党系の立候補者には、安保法制と憲法改正に賛成すること、選挙費用は自分でまかない、そのうえ党に100万
円の献金をすることなどを含む10項目について了承する「誓約書」にサインすることを求めています。

ここまで、小池氏の戦略はことごとくうまく行き、小池旋風は飛ぶ鳥を落とす勢いで吹いていたかのように見えました。

ここまでは、小池劇場の第一幕です。

しかし、その裏で、小池旋風の勢いがやや弱まり、小池氏が放った言葉が、少しずつ世間の反感を呼び、副作用としての逆風が
吹き始めました。

「さらさらない」「排除」に続いて、たとえば、衆議院選に立候補するか否かを問われて、私は当初から出ないと、日本語で言
ってきたでしょ
、と切り替えしています。

なぜ、ここで「日本語で」と言わなければならないのか意味不明です。いかにも上から目線で物を言う態度が表に出てしまった
た言葉でした。

上から目線といういみでは、小泉進次郎氏が、小池さんは国政に出るべきだ、という発言に対して、「進次郎さんは、キャンキ
ャン
とはやし立てていますが」、これも人を「小馬鹿」にした上から目線の言葉です。

こうした言動は、言葉の問題かも知れませんが、それでも、小池氏の人間性にたいする評価に大きなマイナスに作用し始めてい
ることは確かです。

小池氏を政治の世界に引き込んだ、細川護熙元首相は、「小池さん、なんか女帝っぽくなってきて」(『毎日新聞』2017年10月
4日 東京夕刊)と、小池氏の強引な手法に失望を隠せません。

しかし、逆風は、もっと本質的な場面でも吹き始めました。その逆風は二つの大きな「誤算」から吹いています。

一つは、希望の党の執行部(小池、細野、若狭)が排除した旧民進党の議員のうち、枝野幸男前民進党副代表が10月3日に新党
「立憲民主党」を立
ち上げたことです。

どうやら、希望の党の執行部は、民進党議員の大部分が希望の党から立候補するか、無所属で立候補するか、のいずれかだと思
っていたようですが、これは明らかに小池氏にとって「誤算」でした。

しかし、枝野氏が新党を立ち上げたことにより、希望の党からの立候補を拒否した人たちが、立憲民主党への参加を表明しまし
た。現段階(10月7日)では、60人超の立候補予定者が参加を表明しています。

この誤算には、さらにいくつか別の誤算がありました。まず、民進党の大きな支持団体である「連合」が、小池氏の「排除」に
怒り、組織として希望の党を支持することはない、との態度を示したことです。

「連合」は選挙の際の票としても重要でしたが、ビラを貼ったりする選挙運動の人手としても重要な存在でした。

次は、足下の都政における「都民ファーストの会」の創立当時からの主要メンバーだった、音喜多駿氏と上田令子氏が、小池氏
の都政運営の在り方に疑問を感じ、離党届を出したことです。

二人が記者会見で曝露した小池氏の都政運営の実態に対する批判は、かなり辛辣なものでした。

まず、都政に専念すると約束したのに、この段階で国政へ手を伸ばすことは納得がゆかない、との不満は大きかった、と述べて
います。

小池氏は、それまでの自民党支配下の都政が「ブラックボックス」(決定のプロセスが秘密にされていること)を批判し、情報
公開こそが「一丁目一番地」のはずだったのに、自分が知事になってからは、重要な決定事項、たとえば代表の決定、などに関
して、2~3の幹部だけで決めてしまったことを挙げています。

また、メディアなどで自由な発言をすると、幹部からそれを押さえる言論統制をしたり、パーティー券の販売ノルマを課したこ
となども、クリーンなイメージが売りだった、小池氏の独裁的なやり方に不満を持ったようです。

こうした小池氏の政治姿勢を批判したうえで、現在の希望の党は、選挙目当ての「野合」だと、断じています。

こうした、足元で起きていることも、小池氏のイメージを悪くし、小池旋風を弱める一因となっています。

小池氏は、キャッチコピーで人々の目を本質から外し、さまざまな策を繰り出してきましたと言う意味で、「策士」であること
は間違いありませんが、本性は隠せず、余計にはっきりと出てきています。

「策士 策に溺れる」といった様相を呈しています。

私個人として、どうにも合点がゆかないのは、小池氏は今回の衆議院選を、安倍一強政権を倒す政権選択選挙だと言い続けてき
ました。

しかし、同じく、安倍政権を倒すことを重要な目標とする立憲民主党が結成されると、希望の党は直ちに、その候補者に「刺客」
をたてることを発表しています。安倍政権を倒すなら、まず第一に自民党の候補者に徹底して「刺客」と送るべきでしょう。

ここには、明らかな矛盾があり、小池氏と希望の党に一貫性はありません。

こうした矛盾に満ちた言動をどう理解したらいいのでしょうか。

この問題も含めて、小池氏が希望の党と立ち上げた本当の目的は、日本からリベラル勢力を排除し潰してゆくことにあったので
はないか、と解釈するとよく理解できます。

小池氏の問題は、内容が示されていないことです。例えば、都議選では「東京大改革」と謳いながら、東京の何を改革し、どの
ような都市にするのかの内容は、全く語っていません。

同様に、国政に関しても、昨今の街頭演説で「改革を進めるチャンス」と言いながら、何を改革し、日本をどのような国に導く
のか、といった最も重要な点については示していません。つまり、本当は語るべき内容がなく、ただ「風」を吹かせて選挙に勝
つことが最大の戦略のように見受けられます。

今回の選挙でどんな結果が出るかは分かりませんが、私たち国民としては、表面を吹いている風に惑わされることなく、本質を
見抜く必要があります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不可解な衆議院解散―2/3をもつ与党はなぜ?―

2017-10-01 06:11:43 | 政治
不可解な衆議院解散―2/3をもつ与党はなぜ?―

2017年9月28日は、日本の政治にとって、もう一つの大きな転換点になりました。

安倍首相は同日の臨時国会の冒頭、「憲法7条に基づいて」、内閣総理大臣の「専権事項?」と自称する伝家の宝刀を抜
いて、衆議院を解散しました(いわゆる7条解散)。

ここで「憲法7条」とは、天皇の国事行為を定めており、その第三項「衆議院を解散する」という規定を指しています。

ただし天皇が国事行為を行う際には、「内閣の助言と承認」を必要としています(憲法第三条)。この部分を利用して、
実質的に総理大臣が解散できることになります。

しかし、解散権が内閣総理大臣(首相)の専権事項であるとはどこにも書いてないし、解散する場合には、首相が不信任
されたり、国論を二分するような重要な問題に直面した時など、それにふさわしい理由が必要である、とされてきました。

つまり、三権分立という制度の下で、内閣(首相)が勝手に国民の代表である立法府(衆議院)を解散させてはいけない
という了解があるのです。しかし、安倍政権は、2回、大義なき「7条解散」を行っています。

今回の解散はいくつもの点で異常であり、憲法の趣旨に反していると思われます。

まず、今年8月の内閣改造後、新しい閣僚の決定後の国会で、首相と閣僚の所信表明も、質疑応答もありませんでした。

今回の臨時国会は、野党が憲法53条に基づく召集を要求してから3カ月余も放置した末にようやく開かれたものです。

しかし、臨時国会も正規の国会の場であるのに、何の議論もないまま、冒頭解散とは、「憲法を踏みにじり、主権者であ
る国民に背を向ける行為だ」。

安倍首相の冒頭解散の意図は明らかです。

森友学園・加計学園の問題をめぐる野党の追及の場を消し去り、野党、特に民進党の混乱(山尾議員のスキャンダルと離党
ドミノが止まらない)と、新党の選挙準備が整っていない野党の状況の隙を突こうという狙いです。

さらに、一旦は下がった内閣支持率もどうやら持ち直したことも、解散へのひと押しになったと思われます。

安倍首相には、「今なら勝てる」、勝てば官軍の「権力ゲーム」が先に立つ「自己都合解散」であることは明らかです。

民意を政治に直接反映させる民主主義の重要な場である選挙を、権力維持の道具としか見ない「私物化解散」でもある(以
上『朝日新聞』29日の社説)(注1)。

こうした事情を考慮したとしても、どうにも腑に落ちない点があります。

小泉元首相が、「なぜ、この時点で解散するのか分からない。今、2/3の議席をもっているのに」と発言しています。

まったくその通りで、現在、衆議院で既に「勝って」おり、選挙をすれば、減ることは考えられても増える可能性はまずあり
ません。

万が一増えたとしても、安倍首相が狙う、憲法改正の発議に必要な議席数は既に確保しているのですから、意味がありません。

私は、森友・加計問題というは、安倍首相にとって、一般に考えられているより、はるかに深刻な問題として感じているので
はないか、と考えています。

たしかに、野党も多くメディアも、今回の冒頭解散は、森友・加計問題隠し、と批判していますが、それについてあまり重大に
考えていないようです。

むしろ、民進党の混乱と新党の準備不足が大きくクローズアップされています。

しかし、森友問題についていえば、最近、大阪地検特捜部の捜査で、森友側と財務省側との間で値段の交渉があったことを示唆
する音声テープが存在していること、両者の交渉記録が存在していることが、明らかになりつつあります。

とりわけ、これまでパソコンにも一切の記録は残っていないと、国会で証言した、当時の佐川宣寿元理財局長の証言が偽証とな
る可能性が出てきました。

もし、これが立証されると、一連の森友疑惑が、単に、一官僚の勝手な判断で行われたという理屈は通らなくなります。

ここで思い出してほしいのは、安倍首相はかつて国会の場で、もし自分もしくは妻が森友問題に関与していたとしたら、首相の
地位だけでなく議員も辞職する、と発言しています。

自民党の二階幹事長は、今回の解散は、森友・加計隠しではないか、との批判に対して、「そんな小さな」問題などまったく関係
ない、と答えていました。

しかし、これらの問題は「小さい」どころか、安倍首相の議員および首相としての進退に関わる「大きな」問題だからこそ、あら
ゆる民主主義的なルールを無視して、批判を承知のうえで、敢て解散・総選挙を強行したのだと思います。

臨時国会を通常通り開けば、森友・加計問題が蒸し返されるのは目に見えており、しかも、さまざまな証拠から以前にも増して、
官邸(安倍首相も含む)が直接間接の関わっていた疑惑が明らかになりつつあります。

安倍首相は繰り返し、疑惑には「丁寧に説明する」と言っている以上、証拠を突きつけられて追及されれば、かなり窮地に追い込
まれます。

なによりも、昭惠夫人と加計氏が、なだ何も証言していないことが重大な問題です。

安倍首相の頭の中には、総選挙で自民党が勝てば、安倍政権だけでなく安倍首相個人の問題も承認されたことになる、との狙いが
あったのではないでしょうか?

安倍首相は、まず、臨時国会の冒頭解散を決め、その理由(大義)は、まるで取って付けたような意味不明なものでした。

つまり、消費税の値上げから得られる増収分の使い道を変更して、教育と子育てに充てる、というものです。

しかし、これらは何も衆議院を解散してまで国民に問う問題ではありません。通常国会でも、もし本当に緊急に決める必要があるな
ら、今回の臨時国会で提案すれば済むことです。

突然の解散・選挙という事態になって、議員は一斉に選挙運動に走り始めました。このため野党の追及も、ここで一旦はストップし
てしまいました。

ここまでは、安倍首相の思惑通りだったのですが、いざ、解散してみたら、想定外の事態が、こちらも突如、現れてきました。

いうまでもなく、小池新党の台風並みの強風が吹き始めてきたのです。

これについて、また別の機会に考えてみたいと思います。


(注1)電子版は、『朝日新聞』デジタル(2017年9月29日05時00分) 
http://www.asahi.com/articles/DA3S13156471.html?ref=nmail_2017 0929mo


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする