戦略なき「新成長戦略」 ―本当の目玉は原発・兵器輸出とカジノ建設―
第二次安倍政権は,その出発時点からアベノミクスの経済政策の一つとして「三本の矢」を強調してきました。
「第一の矢」は貨幣供給を増やす金融政策,「第二の矢」は財政出動(公共事業への支出拡大),「第三の矢」が成長戦略です。
アベノミクスの評価,この「成長戦略」の成否にかかわっています。
政府は6月24日,産業競争力会議が示した新成長戦略案に基づいて「新成長戦略」と「経済財政運営と改革の基本方針」
(骨太の方針)を閣議決定しました。
戦略の理念は「少子高齢化による人口減少社会」を踏まえて,日本経済の「稼ぐ力の強化」が目標です。この場合の「稼ぐ力」
とは,はっきり言えば「企業にとって有利な」という意味です。
「成長戦略」とは本来,これからの日本を支え成長させてくれる産業をどのように創出し,成長させてゆくかの戦略のはずです
が,以下に見るように,今回の「新成長戦略」にはそのような戦略はまったく見られません。
ではとりああえず「新成長戦略」の中身を見てみましょう。「新成長戦略」は「日本産業再興プラン」と「戦略市場創造プラン」
と二つからなっています。
「産業再興プラン」の主な項目の一つは,「時間ではなく成果で評価する労働時間制度」の創設です。これに関しては,前回の
ブログの記事で詳しく書いたように,「成果主義」の名のもとに「残業代ゼロ」政策の推進が中心です。
現在は年収1000万円以上の所得制限を設けてはいますが,経済界などは早くも対象の拡大(それ以下の年収にも)を求めて
おり(『朝日新聞』2014年6月25日),所得制限も順次外され,やがてほとんどの勤労者を対象とした残業代のカットに進む
可能性があります。
勤労者の収入が減ることは,結局国内市場をせばめることになり,回り回って企業の成績を押し下げるので,これが長期的に
成長戦略となるかどうかは,
疑わしい政策です。
これと並行して外国人技能実習制度枠を拡大し,期間も3年から5年に延長するなど,外国人労働者の積極的な受け入れると同時
に,「国家戦略特区」で,外国人家事支援人材に新たに在留資格を与えることも盛り込まれています。
これらは少子化に伴う労働力不足を安い外国人労働者によって埋め合わせようとする政策で,これについても前回の記事で問題
点を指摘しておきました。
二つは,法人実効税率(国税と地方税)を現在の34.62%から数年のうちに20%台まで引き下げることです。これは,日本企業の
国際競争力を高めると同時に,海外企業の誘致するねらいがあります。しかし,法人税を軽減すれば,その分の財源をどこかに
確保する必要があります。
政府は携帯電話やパチンコの景品交換にも課税したらどうか,という意見まで出されています。いずれにしても,企業を優遇した
分,庶民に負担させようという意図が見えます。
三つは農業の規制改革で,農業協同組合、農業生産法人、農業委員会の3点セットで農業改革に取り組むことなどを柱に、規制
に守られた農業に,企業的要素を積極的に導入することです。
それによって「農業が競争力と魅力ある産業に生まれ変わる」ために「守りから攻めの農業への転換」を目指すとしています。
しかし,農業に関連してTPPの早期妥結も盛り込まれています。TPPが導入されれば外部から安い農産物が入り,当然,
日本の農業は大打撃をうけます。
静岡大学の土居英二名誉教授は「TPPに関しては農業機械など農業関連産業も含めると,経済波及効果は年間十五兆円のマイ
ナスになる,とし,TPPと同時に農業を成長産業に掲げることに疑問を投げかけています(『東京新聞』2014年6月17日)。
これは,ごく常識的な見解だと思います。
なお,当初の改革案で、全国の農協を指導する司令塔を担う全国農業協同組合中央会(全中)を「廃止」することを考えていま
したが,選挙への影響を心配する自民党の反発が強く、「廃止」を撤回し全中を「新たな制度に移行する」というあいまいな
表現で決着させました。
四つは医療改革で,通常の保険診療の他に,保険対象外の高額な「自由診療」を併存させる,いわゆる「混合診療」を認める
ことがうたわれています。
これも,成長戦略とは呼べません。しかも自由診療の導入は,医療における所得格差をますます助長することになります。
五つは,年金積立金管理運用独立法人の運用見直し。これについては前回の「年金は百年安心ですか」で書いたように,問題
山積みです。
六つは,学童保育の充実や「子育て支援員」の資格創設で女性の就労を促す。学童保育の充実はあまりにも当然で,あえて成長
戦略というほど大げさな政策ではありません。
さらに,「子育て支援員」の資格創設が,どれほど女性の就労を促すかは疑問であり,まして成長戦略に挙げるほどのことでは
ありません。
政府は所得税の配偶者控除や,専業主婦などを対象で社会保険料の負担が少ない「第三号非保険者」の見直しなども検討してい
ます。
このため,家庭によっては負担が増す可能性があります。
もし本当に,女性の就労を促すなら,出産などで一旦休職しても,本人が希望すれば,以前と同じ条件で職場復帰ができること
を保障するよう制度化することの方がはるかに効果的です。
労働問題に詳しい関西大学の森岡孝二名誉教授は「現状では三年も育休すれば職場に席がなくなる。政府の方針と現実が乖離し
ている」と述べています(『東京新聞』2014年6月17日)。
こうした本質的な問題を放置していては,実効性がありません。
最後にロボット技術の活用を広げ製造分野を拡大することです。しかし,これらは既に長い間実施されていることであり,あえて
成長戦略として打ち出すほどの内容はありません。
こうして並べてみると分かるように,「第三の矢」とか「成長戦略」という言葉だけは立派ですが,年金基金の運用の変化にして
も,混合医療にしても,子育て支援にしても,それらは,ほとんど成長戦略と関係ないことです。
また,医療や農業の規制緩和は,これまで何回も登場する成長戦略の「常連」です。そして,年金基金の株式投資への運用変化は,
安倍政権が人気のバロメーターとしている株価のつり上げには役立つかもしれませんが,国民の大切な年金の原資を危険にさらす
可能性さえあります,
しかし,これらの,成長戦略とは言えない「戦略」をかき集めなければならないほど,政府の「成長戦略」には手詰まり感があり,
中身がない空っぽの内容なのです(注1)。
はっきりしているのは,残業代カットと法人税の減額にはっきり見られるように,徹底して企業優遇,労働者の冷遇政策です。
これでは,低賃金によってもたらされた,「賃金デフレ」は解消しないどころか,ますます深刻になります。
それでは,政府が本当に狙っている,経済成長の目玉は何かといえば,原発と武器の輸出とカジノの合法化です。
原発輸出については,このブログの「原発輸出の危険な罠」(2012年11月6日)で詳しく書いていますが,日本は既にベトナムと
輸出契約を結んでおり,さらにトルコ,ヨルダン,リトアニア,最近ではインド,インドネシアと交渉中です。
ここで注目すべき点は,日本の原発は,日本の企業単独で製造しているわけではない,という実態です。日立はアメリカのゼネ
ラルエレクトロニック社(GE)と,東芝はアメリカのウェスティングハウス社と提携しており,それに部分的に三菱重工業も
参加しています。
原発輸出の魅力は,何といってもその金額の大きさです。現在,日本で稼働している原発は安くて2000億円,最新のものは4000
億円台です(注2)。
以前,民主党政権の時,30年以内に原発を廃止するとの方針を公表したとき,アメリカ側から強烈な圧力がかり,日本はすぐに
撤回しました。
実は原発輸出で儲けようとしているアメリカも,日本と協力しなければ原発ビジネスを維持・推進できないという事情があった
からです。
しかし,原発は未完成の技術だし,使用済み燃料や高濃度放射性物資の処理については全く解決の見通しがありません。
まして,輸出した原発に事故が発生して放射能が飛散した場合,輸出国である日米の原発メーカーはどこまで責任を持てるのか
が不明です。
次に,武器輸出です。安倍政権は今年の4月にこれまでの「武器輸出三原則」を破棄し,新たに「防衛装備移転三原則」を設け,
積積極的に輸出をしようとしています。
事実,6月16日からパリで開かれた兵器。防衛装備品などの国際展示会(ユーロサトリ)に,日本から13社が初参加し,
「日本パビリオン」が設けられました。
日本企業が出展する主な企業と武器・防衛装備は,三菱重工業(新型装輸装甲車,戦車用エンジン),川崎重工業(地雷探知機,
戦闘機の射撃訓練時に使う空対空の小型標的機,四輪バギー),日立製作所(橋を架けることができる「機動支援橋などの車両」
-模型展示-,富士通(次世代野外訓練用システム-模型,パネル展示-),東芝(気象レーダー-パネル展示-),NEC
(民生用の無線機,顔認証機)です。
慶応大学の金子勝教授は,安倍政権の経済政策について海外では「兵器と原発輸出だけだ」と報道されている,と述べていますが
(『東京新聞』2014年6月12日),以上の記述からも,納得できます。
集団的自衛権を容認し,武器と原発の輸出に力を入れる安倍政権は,非常に危険な領域に踏み込んでしまったという印象をもちます。
そんな中,6月18日,カジノの運営を合法化するための「統合型リゾート施設を推進する法案(IR推進法案)が衆院内閣委員会
に提出され審議入りしました。
その理由として,このようなリゾート施設は観光を促進し地域経済の振興に寄与する,というものです。
一部のマスメディアは,その経済効果は1兆円にのぼる,などと書いていますが,それは非常に甘い考えです。アジアにはシンガ
ポールやマカオのようなカジノがすでに存在し,それらと競争して勝つのは至難の業です。
なにしろ日本はカジノ経営のノウハウがないので,それを海外から学ぶことから始めなければならないのです。
それよるも,ギャンャンブルも成長戦略の一つに加えるというのはいかにも安易で,不健康な発想です。
こうして,客観的にみてみると,安倍政権の成長戦略は,企業の優遇と労働者の賃金カット,産業としては,武器と原発輸出と
いう危険な分野,そしてカジノ解禁に集約できます。
以上,「新成長戦略」の骨子を中心に安倍政権の経済政策を見てきましたが,全体を通して,理念の貧しさ,アイディアの枯渇,
一言でいえば,政治集団としての自民党と政策集団としても官僚の思考の「劣化」が強く印象付けられます。
(注1)
『北海道新聞』電子版(「社説」 2014年6月17日)http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/545805.html
(注2)マイナビニュース http://news.mynavi.jp/news/2013/03/15/100/
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第二次安倍政権は,その出発時点からアベノミクスの経済政策の一つとして「三本の矢」を強調してきました。
「第一の矢」は貨幣供給を増やす金融政策,「第二の矢」は財政出動(公共事業への支出拡大),「第三の矢」が成長戦略です。
アベノミクスの評価,この「成長戦略」の成否にかかわっています。
政府は6月24日,産業競争力会議が示した新成長戦略案に基づいて「新成長戦略」と「経済財政運営と改革の基本方針」
(骨太の方針)を閣議決定しました。
戦略の理念は「少子高齢化による人口減少社会」を踏まえて,日本経済の「稼ぐ力の強化」が目標です。この場合の「稼ぐ力」
とは,はっきり言えば「企業にとって有利な」という意味です。
「成長戦略」とは本来,これからの日本を支え成長させてくれる産業をどのように創出し,成長させてゆくかの戦略のはずです
が,以下に見るように,今回の「新成長戦略」にはそのような戦略はまったく見られません。
ではとりああえず「新成長戦略」の中身を見てみましょう。「新成長戦略」は「日本産業再興プラン」と「戦略市場創造プラン」
と二つからなっています。
「産業再興プラン」の主な項目の一つは,「時間ではなく成果で評価する労働時間制度」の創設です。これに関しては,前回の
ブログの記事で詳しく書いたように,「成果主義」の名のもとに「残業代ゼロ」政策の推進が中心です。
現在は年収1000万円以上の所得制限を設けてはいますが,経済界などは早くも対象の拡大(それ以下の年収にも)を求めて
おり(『朝日新聞』2014年6月25日),所得制限も順次外され,やがてほとんどの勤労者を対象とした残業代のカットに進む
可能性があります。
勤労者の収入が減ることは,結局国内市場をせばめることになり,回り回って企業の成績を押し下げるので,これが長期的に
成長戦略となるかどうかは,
疑わしい政策です。
これと並行して外国人技能実習制度枠を拡大し,期間も3年から5年に延長するなど,外国人労働者の積極的な受け入れると同時
に,「国家戦略特区」で,外国人家事支援人材に新たに在留資格を与えることも盛り込まれています。
これらは少子化に伴う労働力不足を安い外国人労働者によって埋め合わせようとする政策で,これについても前回の記事で問題
点を指摘しておきました。
二つは,法人実効税率(国税と地方税)を現在の34.62%から数年のうちに20%台まで引き下げることです。これは,日本企業の
国際競争力を高めると同時に,海外企業の誘致するねらいがあります。しかし,法人税を軽減すれば,その分の財源をどこかに
確保する必要があります。
政府は携帯電話やパチンコの景品交換にも課税したらどうか,という意見まで出されています。いずれにしても,企業を優遇した
分,庶民に負担させようという意図が見えます。
三つは農業の規制改革で,農業協同組合、農業生産法人、農業委員会の3点セットで農業改革に取り組むことなどを柱に、規制
に守られた農業に,企業的要素を積極的に導入することです。
それによって「農業が競争力と魅力ある産業に生まれ変わる」ために「守りから攻めの農業への転換」を目指すとしています。
しかし,農業に関連してTPPの早期妥結も盛り込まれています。TPPが導入されれば外部から安い農産物が入り,当然,
日本の農業は大打撃をうけます。
静岡大学の土居英二名誉教授は「TPPに関しては農業機械など農業関連産業も含めると,経済波及効果は年間十五兆円のマイ
ナスになる,とし,TPPと同時に農業を成長産業に掲げることに疑問を投げかけています(『東京新聞』2014年6月17日)。
これは,ごく常識的な見解だと思います。
なお,当初の改革案で、全国の農協を指導する司令塔を担う全国農業協同組合中央会(全中)を「廃止」することを考えていま
したが,選挙への影響を心配する自民党の反発が強く、「廃止」を撤回し全中を「新たな制度に移行する」というあいまいな
表現で決着させました。
四つは医療改革で,通常の保険診療の他に,保険対象外の高額な「自由診療」を併存させる,いわゆる「混合診療」を認める
ことがうたわれています。
これも,成長戦略とは呼べません。しかも自由診療の導入は,医療における所得格差をますます助長することになります。
五つは,年金積立金管理運用独立法人の運用見直し。これについては前回の「年金は百年安心ですか」で書いたように,問題
山積みです。
六つは,学童保育の充実や「子育て支援員」の資格創設で女性の就労を促す。学童保育の充実はあまりにも当然で,あえて成長
戦略というほど大げさな政策ではありません。
さらに,「子育て支援員」の資格創設が,どれほど女性の就労を促すかは疑問であり,まして成長戦略に挙げるほどのことでは
ありません。
政府は所得税の配偶者控除や,専業主婦などを対象で社会保険料の負担が少ない「第三号非保険者」の見直しなども検討してい
ます。
このため,家庭によっては負担が増す可能性があります。
もし本当に,女性の就労を促すなら,出産などで一旦休職しても,本人が希望すれば,以前と同じ条件で職場復帰ができること
を保障するよう制度化することの方がはるかに効果的です。
労働問題に詳しい関西大学の森岡孝二名誉教授は「現状では三年も育休すれば職場に席がなくなる。政府の方針と現実が乖離し
ている」と述べています(『東京新聞』2014年6月17日)。
こうした本質的な問題を放置していては,実効性がありません。
最後にロボット技術の活用を広げ製造分野を拡大することです。しかし,これらは既に長い間実施されていることであり,あえて
成長戦略として打ち出すほどの内容はありません。
こうして並べてみると分かるように,「第三の矢」とか「成長戦略」という言葉だけは立派ですが,年金基金の運用の変化にして
も,混合医療にしても,子育て支援にしても,それらは,ほとんど成長戦略と関係ないことです。
また,医療や農業の規制緩和は,これまで何回も登場する成長戦略の「常連」です。そして,年金基金の株式投資への運用変化は,
安倍政権が人気のバロメーターとしている株価のつり上げには役立つかもしれませんが,国民の大切な年金の原資を危険にさらす
可能性さえあります,
しかし,これらの,成長戦略とは言えない「戦略」をかき集めなければならないほど,政府の「成長戦略」には手詰まり感があり,
中身がない空っぽの内容なのです(注1)。
はっきりしているのは,残業代カットと法人税の減額にはっきり見られるように,徹底して企業優遇,労働者の冷遇政策です。
これでは,低賃金によってもたらされた,「賃金デフレ」は解消しないどころか,ますます深刻になります。
それでは,政府が本当に狙っている,経済成長の目玉は何かといえば,原発と武器の輸出とカジノの合法化です。
原発輸出については,このブログの「原発輸出の危険な罠」(2012年11月6日)で詳しく書いていますが,日本は既にベトナムと
輸出契約を結んでおり,さらにトルコ,ヨルダン,リトアニア,最近ではインド,インドネシアと交渉中です。
ここで注目すべき点は,日本の原発は,日本の企業単独で製造しているわけではない,という実態です。日立はアメリカのゼネ
ラルエレクトロニック社(GE)と,東芝はアメリカのウェスティングハウス社と提携しており,それに部分的に三菱重工業も
参加しています。
原発輸出の魅力は,何といってもその金額の大きさです。現在,日本で稼働している原発は安くて2000億円,最新のものは4000
億円台です(注2)。
以前,民主党政権の時,30年以内に原発を廃止するとの方針を公表したとき,アメリカ側から強烈な圧力がかり,日本はすぐに
撤回しました。
実は原発輸出で儲けようとしているアメリカも,日本と協力しなければ原発ビジネスを維持・推進できないという事情があった
からです。
しかし,原発は未完成の技術だし,使用済み燃料や高濃度放射性物資の処理については全く解決の見通しがありません。
まして,輸出した原発に事故が発生して放射能が飛散した場合,輸出国である日米の原発メーカーはどこまで責任を持てるのか
が不明です。
次に,武器輸出です。安倍政権は今年の4月にこれまでの「武器輸出三原則」を破棄し,新たに「防衛装備移転三原則」を設け,
積積極的に輸出をしようとしています。
事実,6月16日からパリで開かれた兵器。防衛装備品などの国際展示会(ユーロサトリ)に,日本から13社が初参加し,
「日本パビリオン」が設けられました。
日本企業が出展する主な企業と武器・防衛装備は,三菱重工業(新型装輸装甲車,戦車用エンジン),川崎重工業(地雷探知機,
戦闘機の射撃訓練時に使う空対空の小型標的機,四輪バギー),日立製作所(橋を架けることができる「機動支援橋などの車両」
-模型展示-,富士通(次世代野外訓練用システム-模型,パネル展示-),東芝(気象レーダー-パネル展示-),NEC
(民生用の無線機,顔認証機)です。
慶応大学の金子勝教授は,安倍政権の経済政策について海外では「兵器と原発輸出だけだ」と報道されている,と述べていますが
(『東京新聞』2014年6月12日),以上の記述からも,納得できます。
集団的自衛権を容認し,武器と原発の輸出に力を入れる安倍政権は,非常に危険な領域に踏み込んでしまったという印象をもちます。
そんな中,6月18日,カジノの運営を合法化するための「統合型リゾート施設を推進する法案(IR推進法案)が衆院内閣委員会
に提出され審議入りしました。
その理由として,このようなリゾート施設は観光を促進し地域経済の振興に寄与する,というものです。
一部のマスメディアは,その経済効果は1兆円にのぼる,などと書いていますが,それは非常に甘い考えです。アジアにはシンガ
ポールやマカオのようなカジノがすでに存在し,それらと競争して勝つのは至難の業です。
なにしろ日本はカジノ経営のノウハウがないので,それを海外から学ぶことから始めなければならないのです。
それよるも,ギャンャンブルも成長戦略の一つに加えるというのはいかにも安易で,不健康な発想です。
こうして,客観的にみてみると,安倍政権の成長戦略は,企業の優遇と労働者の賃金カット,産業としては,武器と原発輸出と
いう危険な分野,そしてカジノ解禁に集約できます。
以上,「新成長戦略」の骨子を中心に安倍政権の経済政策を見てきましたが,全体を通して,理念の貧しさ,アイディアの枯渇,
一言でいえば,政治集団としての自民党と政策集団としても官僚の思考の「劣化」が強く印象付けられます。
(注1)
『北海道新聞』電子版(「社説」 2014年6月17日)http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/545805.html
(注2)マイナビニュース http://news.mynavi.jp/news/2013/03/15/100/
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