「熱闘」のあとでひといき

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中央大学vs東海大学(2013年9月29日)の感想

2013-10-01 01:00:11 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
第3節を迎えて、やや荒れ模様の展開となっている今年の関東リーグ戦G。対抗戦G校の仕上がりや今年はとくに元気がありそうな関西Aリーグのことが気になるこの頃ではあるが、毎週どちらが勝つのか予想を立てるのが難しい試合が続くのはやっぱり楽しい。勝敗が絡んでくると、実際に試合会場に足を運ぶ前に妄想に耽るのも楽しいし、また、帰りの電車あるいは車の中で「感想戦」に思いを馳せるのもまた楽しい。勝ち負けがすべてではなくても、勝因、敗因をどうしても分析してしまう。

しかしながら、今シーズンでここまでの生観戦は開幕戦の法政vs立正戦のみ。その翌日の2試合が台風で吹き飛ばされてしまったことで、次週の4試合は観戦できず。ネットのお陰でいろいろな情報は手に入れることが出来るようになったとは言うものの、どんな試合内容だったのかがかえって分からないというジレンマに陥ってしまうのがもどかしい。

そんななかで組まれた第3節の2試合。法政に勝って順調なスタートを切った日大に対し、流経大にパワーで屈した拓大、今期の注目株である大東大を接戦の末下しひと味違うところを見せた中央大に対し、勝つには勝ったが不安いっぱいの東海大といった具合で、どちらも観に行きたい。実際は、シーズン前は筑波大vs早大とダブルヘッダーが組まれている拓大vs日大を観に行くつもりで居た。しかし、緒戦の各校の状況からひとつ閃いたことがあり、中央大vs東海大の試合が組まれているキャノングランドに足は向かっていた。ちなみに、閃きとはちょうど一週間前に法政と日大の出場メンバーを観たときと同じものだ。

◆中央大と東海大の対戦に対する想い

中央大と東海大の対戦ではとくに強く印象に残っている試合がある。それは東海大が1部復帰2年目にして大きく飛躍を図ろうとしていた2001シーズンで、場所は前橋の県営ラグビー場。伏線は1週間前の大東大戦にあった。法政、日大、関東学院に3連敗の後、大東大に勝利して残り試合を3連勝すれば4位が見えると言う状況。上位校の一角を崩したことで意気上がる東海大の選手達の喜び様は今もはっきり覚えている。

しかし、すぐ1週間後に地獄が待っていた。勢いから見れば勝てる相手だった中央に惨敗を喫することになる。試合前から何となくそれまでチームにあった覇気が消え、まるで別のチームを観ているような状況だった。正に燃え尽き症候群のような状態。序盤戦は東海が優勢だったものの、ミスを重ねてペースを失い、逆に勢いを得た中央大のアタックが炸裂し、終わってみれば大差という試合だった。結局、東海大の2001シーズンは2勝5敗の7位で、入替戦でも冷や汗ものの残留(拓大に残り時間僅かのところで逆転トライを決めて29-26と辛くも勝利)というおまけまで付いた。

時は流れ、東海大は優勝を重ねるトップ校となったのに対し、中央大は永らく6位がほぼ定位置という低迷状態が続いている。そういったイメージから、開幕前はあまり魅力を感じなかったこのカード。しかし、今年は両チームの状況から見て、何かが起こりそうな予感がする。それが、先に書いた「閃き」だった。

◆キックオフ前の雑感

去年からリーグ戦Gの試合で使われるようになったキャノングラウンドだが、本当にいい競技場だと思う。観客席は少なめだが、ゆったりした感じがグッド。芝生の状態も素晴らしく、ゴージャスな気分に浸ることができる。こんな会場で試合ができる選手達が羨ましくも思えてくる。そんな中で、まずは両チームのメンバーを確認する。

東海大の今年の看板はなんと言っても小原、石井、近藤と揃った黄金のバックスリー。しかし、どんな優秀なランナーでも、ボールが回ってこなければ宝の持ち腐れだ。今シーズンの東海大は、強力だった第3列の100キロトリオが卒業したこともあり、FWはパワーダウンしている。また、HB団から後ろに控える3人にボールを渡すプロセスにも課題があるように見える。ここをどうやって乗り切るか。だが、それ以前に立正大に猛追を許してしまったディフェンスの綻びがあり、さらに春のセブンズで露呈したチームとしての精神的な脆さがある。中央大は元来精神的なタフネスを信条としていたチームだけに東海大にとっては不安な部分ではある。

中央大に関しては、未だに春シーズンに観た唯一の試合(立命館との定期戦での惨敗)の印象が尾を引いている。もちろんそのときとはメンバーも違っているのだが、大東大に勝ったことがチーム状態の改善によるものかに注目したい。BKメンバーを眺めれば、羽野や高といった突破役が居ることはもとより、バランスのよさの面ではむしろ東海大を上回っているように見える。となると、やはり勝敗の鍵を握るのはFW。昨年までのチームのイメージからだと運動量やまとまりの面で不安がある。そう考えると、やっぱり最後に笑うのは東海大かなと思ってしまうのだが、果たして結果は如何に。

◆前半の戦い/序盤戦で組織力の優劣が明白に

メインスタンドから見て右側に陣取った東海大のキックオフで試合開始。いきなりノット10mで東海大の入りの悪さは相変わらずと思わせるものの、大きな怪我に至らなかった。今シーズンはとくに序盤戦は蹴り合いの様相を呈することが多いが、果たしてこの試合もそうなった。ここで主導権を握ったのは中央大だった。常識的に考えれば、怖い怖いバックスリーが待ち構える状況でのキックは危険が伴うが、飛距離と正確性で中央大が一歩リードといった感じ。東海大は蹴り合いに付き合わされてしまっているような印象を受ける。

そうした蹴り合いの中でも、両チームのFWによる激しい攻防があるのだが、ここで組織力(準備されたプレーの有無)の優劣がはっきりした。と書くと、やっぱり中央大はダメなのかと過去の印象から思われてしまうかも知れない。しかし、今年の中央大は違う。いや、変化は劇的と言ってもいい。シェイプを有効に使い、無理をせずFWの塊でボールをキープする。片や東海大はまとまりよりも個々での対応に終始している。押され気味でもディフェンスに綻びが出ないのは個人の強さがあるから。中央のFWの選手達の動きの進化に、「今年の中央大は違う」ことにまずは感銘を受けた。

中央大はBKアタックも去年までとは明らかに変わった。飛ばしパスを使って広くワイドに展開するのが中央スタイル。その結果、FWのフォローが追いつかずWTBが孤立してターンオーバーされたり、浅いフェイズの段階でBKラインに並んでいるのはFWの選手ばかりと言う状況になってしまう。これでは持続的なアタックからトライまで持って行くことはできない。今シーズンはワイドな展開は封印してキックを有効に使いながら確実にボールを前に運ぶスタイルにモデルチェンジを図ったようだ。思い起こせば、拓大も昨シーズンから同じようなスタイルでステップアップしていった。しかし、中央大の強みはBKに拓大とは違って突破役が居ること。今年の中央大はかなり期待できそうだ。

話しをピッチ上に戻す。10分、まずは東海大がFWのパワープレーで先制点を奪った。中央大の反則からゴール前でのラインアウトのチャンスを掴み、モールを起点としてFWでボールを前に運ぶ。PR平野がトライを奪い、GKも成功して7-0となる。やっぱり中央大は東海大のパワーに屈してしまうのか?と中央大応援席は固唾を呑む。しかし、中央大も反撃。14分、東海大陣10mラインを越えた辺りの位置で得たPKのチャンスで中央大はショットを選択。正面やや右、距離にして約39mのPGをルーキーSO浜岸が鮮やかに決める。リーグ戦Gにおいて新たなスーパーブーツ誕生を告げる「黄金の一蹴り」だったことはあとでわかる。

両チームによる激しい攻防が展開される中で時計はどんどん進む。東海大もバックスリーがボールを持つとビッグゲインとなることがあるものの、後が続かずミスも多い。ただ、決め手を欠くというよりは、中央大の前に出るディフェンスを褒めるべきかも知れない。そんな中で、33分、ようやく得点ボードの数字が動いた。中央大の浜岸が正面24mのPGを難なく決めて6-7と中央大のビハインドは1点に縮まる。35分、今度は東海大が中央大陣でのラインアウトを起点としてFWでボールを前に運ぶがノットリリース。中央大の粘り強いディフェンスもあるが、東海大にとっては惜しいミス。結局、カウンターアタックの局面を除き、BK展開でバックスリーにボールが回る状況は殆どなく、時計はさらに進む。そして37分、中央大は浜岸が今度は右中間45mのロングPGを決める。ここで中央大応援席は確信を持った。浜岸のキックは安心して見ていられると。

9-7と逆転に成功したところで前半はそのまま終わるかと思われた38分、東海大にキックオフがダイレクトタッチとなる痛いミスがでる。センタースクラムから中央大は左オープンに展開して左WTB高が大きくゲインしたところで絶妙のチップキック。インゴールで東海大選手がグラウンディングに成功したかにみえたが、ボールを押さえたのは高だった。東海大にとってはアンラッキーだったのかミスなのかは分からないが、キックオフのミスが痛い代償となった形。浜岸は左サイドからのキックも鮮やかに成功させて16-7と中央大のリードで前半が終了した。結果的には、この追加点が効いた格好。

◆後半の戦い/両チームによる激しい攻防でさらに見応えのある展開に

後半開始早々の2分、中央大はHWL付近でのラインアウトからFWでボールを前に運び、FB羽野がフィニッシャーとなる。今度は右隅から浜岸がGKを決めて23-7。やはり、東海大にとって、キックオフ直後は注意すべき時間帯なのだろうか。分かっていても失点してしまうことが、ファンにとってはもどかしいはず。それはさておき、ワンチャンスを確実にものにする術を中央大はいつ身につけたのだろうか。この得点で過去の中央大に対する(よくない)イメージはほぼ払拭されてしまった。中央大は8分にもPGによる追加点を狙うが、これは失敗に終わる。

ここで、東海大はSH尾崎に変わって期待のルーキー湯本を投入。点差から見て簡単に蹴ることが出来なくなったこともあり、東海大のアタックにようやくスイッチが入る。個々の強さを軸にしたパワフルなアタックはやはり脅威。ただ、残念ながらと言うべきか、東海大にはアタックに明確なプランが見られない。いや、バックスリーで勝負というプランはあるのだが、そこまでに至るプロセスが行き当たりばったりに見えてしまうのだ。中央大の前に出るディフェンスに対し、とにかく早くバックスリーへという意識が強まり、アタックにタメがなくなっている。また、小原や石井に対しては中央大もしっかりマークしており、必ず2人以上で対応する形ができている。

越えられそうで越えられない壁にぶち当たった状況の中での27分、東海大はWTB石井がようやくゴールラインを越えた。正に怒涛の攻めといった感じで、中央大にとっても体力的に厳しい時間帯に入っている。14-23の9点のビハインドならまだまだ逆転のチャンスはある。完全にスイッチが入った東海大に対し、応援席のボルテージも上がっていく。しかし、中央大も足が止まる状況にありながら東海大のアタックを止め続ける。34分の「PGで確実に3点」のチャンスもゴール前ラインアウトを選択。気持ちはあくまでも前で勝負だ。

そして終了間際の数分間、中央大は自陣ゴール前に釘付けとなり、東海大のアタックを反則で止めざるを得ないようなピンチに陥るが、最後までディフェンスに綻びが出ることはなかった。東海大がラインアウトからオープンに展開したところでノットリリースの反則を犯し、中央大がボールをタッチに蹴りだしたところで試合終了。中央大応援席が歓喜の輪に包まれたことは想像に難くない。それもそのはず、中央大が東海大に勝ったのは、私が観た2001シーズンの前橋での試合まで遡らなければならないのだから。

もちろん、この勝利は2001の時の勝利とは違う。明らかに準備が整い、戦術がはっきりしていた方が順当に勝利を収めたと言える。ただ、中央大の選手も喜ぶのは今日だけ。1週間で全く別のチームになってしまう例を何度も観てきているものとして、中央は次の試合を大切にして欲しい。優勝の2文字がちらつくような状況にはなっているが、足下をすくわれたら入替戦になってしまうのがリーグ戦Gの怖さだ。勝利を栄養剤として、しっかり気持ちを引き締めて欲しいところだ。

◆中央のMVPは?

この試合での中央大は全員がMVPといっていいくらいに15人の意思統一が図られた戦いを見せてくれた。難しい位置からのGKをことごとく決めた浜岸、最後尾から攻守両面で存在感を示した羽野、前線で身体を張り続けたFWの選手達。しかし、強いて1人ということになれば、私はルーキーSHの長谷川を挙げたい。SHはどうしても球裁きの善し悪しに目が行きがちだが、9人目のFWという重要な役割も担っている。FWの尻を叩きながら身体全体で指示を送り続けたとても新人とは思えない活躍ぶりがとくに印象に残った。スピードスターの藍好(住吉)をもっと観たい気もするが、FWを使えるSHは実はなかなか居ない状況を見ると、やはりスタメンは外せないだろう。2人が良きライバルとして競い合うことになるであろう中央大の前途は明るいと言えそうだ。

◆東海大に対する疑問と期待

準備が整っていた中央大に対し、東海大はこの試合に臨むにあたってどのような準備をしてきたのかという想いを禁じ得ない。バックスリー勝負とはいっても、一発では抜けないし、当然相手もマークする。中央大が恐れていたのは、フェイズを重ねられて人数が足りなくなったところで3人の誰かに突破を許してしまうというところにあったのではないだろうか。建て直しの鍵はFWとBKフロントスリーの連携だと思う。1敗したとは言っても、この先どう転ぶか分からないのが今シーズンのリーグ戦の状況を考えれば、気持ちの切り替えが大切だろう。まとめ役がいて連携が図られれば強いチームになるはずという個人的な想いを捨てきれないでいる。

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1 コメント

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中央大に期待 (黄色いクロックス)
2013-10-04 10:37:14
今年の中央大に期待しています。
粘り強く守り切る闘いははとても素晴らしいです。
東海大にも勝ち切れた守備力、忍耐力は流通経済大、日本大に通用するか、、、

選手たちには怪我なく頑張ってほしいです

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