「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

早稲田大学vs法政大学(2013年度春季大会)の感想

2013-05-31 00:14:06 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


春季大会も5週目。今までずっとAグループの試合を観てきたが、BグループやCグループの戦いも気になる。どの試合を観に行くか迷ったが、結局ニッパツ三ツ沢で行われる早稲田対法政(Bグループ)に落ち着いた。この対戦は、大学選手権以外では観ることができない「交流戦」の中でも目玉カードのひとつであることは間違いない。春季大会は公式戦とはいうものの、勝ち負けに過度にこだわる必要はなく、各チームはやりたいことを思いっきり試すこともできる。PGで3点ずつを刻んでいく必要がなければ、法政や早稲田のような攻撃型のチームはより本領を発揮しやすいはずだ。

しかし、何故かこの試合を前にしたワクワク感が薄いことも事実である。つい2週間前に観た2T(帝京と筑波)対決では、帝京が優位なことはわかっていてもテンションの高まりがあったし、実際に時間が経つのを忘れさせてくれるくらいの熱戦になった。比較するのはよくないと思いつつも、この2チームの戦いにそこまでのレベルが期待できるだろうか?というのが偽らざる気持ち。とくに入替戦を経験するなど低迷状態にある法政には、かつての輝きが失われている。早稲田にしても、そこそこのチームではあるが、2Tとの力の差はじわじわと拡がっていく状況にある。

とはいっても、BK主体のランニングラグビーを信条とするチーム同士の激突。「2T対決」とは違った面白さがあるはずだし、両チームには大学チャンピオン経験チームとしての意地を見せて欲しい。競技場に辿り着くまでにいろいろあって座席に座るのがキックオフの5分前になってしまったが、伝統のジャージを纏った両チームの選手達を見たら自然にテンションが高まってきた。

◆法政のメンバー表を見て

対抗戦Gのウォッチャーではないので、早稲田のメンバーについてはわからないが、法政のメンバーには感じるところが多々ある。中でも注目はHB団のコンビだが、中村と加藤に落ち着いたと見るべきか。首脳交代の影響もあるのかも知れないが、今期はチームリーダーとして法政再建の柱になると想われていた猪村が21番のジャージを着てベンチを温める状況になっている。猪村が試合中にCTBからSOにポジションチェンジした瞬間、チームに1本芯が通った状態になったのを目撃しているだけに、この状況になっているのは解せない。チームにとって、テストなのか決定事項なのかをじっくり見極めたいところ。



◆前半はキックオフ早々から乱戦模様

バックスタンドから見て左から右に弱い風が吹く中、風上に陣を取った法政のキックオフで試合が始まった。早稲田の自陣からのアタックに対して、まず法政がオフサイドを犯す。そして、続く早稲田のアタックではグランド全体を大きなため息で包み込むようなノックオンが起きる。ここから早くも両チームにミスが続発の乱戦模様となり、以後、法政は反則の多発(最終的に16個を記録)、早稲田は夥しい数のノックオン連発に悩まされることになる。さらに、早稲田には壊滅状態のラインアウトというおまけまで付いてしまった。

そんな両チームが落ち着かない状況の中で、開始3分に法政があっさり先制点を奪う。早稲田の2回目のノックオンで得た早稲田陣10m付近のスクラムから法政はオープンに展開。今度は法政にパスミス(緩いゴロパスになった)が起きるが、これが結果的に早稲田の守備陣形を乱す形となる。パスを拾ったFB森谷が早稲田のディフェンスをかわしてゴールラインを超えた。アンラッキーな面があったとは言え、早稲田は集中を欠いていたとしか言いようのないプレー。

早稲田のノックオン病の連鎖が止まらない。6分には法政のタッチキックに対して自陣からクイックスローで攻めるもののまたしてもノックオン。オープンスペースでボールをうまく拾われ、早稲田は早くも法政に2トライ目を献上する。ハンドリングエラーの多発に、早稲田の自陣からの攻めはキック主体に変わる。そして敵陣に入ったところでオープンに展開。この状況のなかで、少しずつだが早稲田が「らしさ」を取り戻しつつあるように見えた。ただ、法政の一次防御でのタックルが機能したこともあり、早稲田は継続してもなかなか有効なゲインができない状況が続く。

試合がやや落ち着いたかに見えた20分、早稲田にまたしても痛いミスが出る。オープン展開で受け手は何人も居る状況で放たれたパスが、何と法政のNo.8堀の胸にすっぽりと収まる。堀はそのままゴールポスト直下までボールを持ち込み法政のリードは21点に拡がる。こうなれば、法政は相手が目を覚ます前にどんどん加点するだけ。しかしながら、法政もたたみかけることができない。早稲田がノックオン病なら法政はペナルティ病。26分にはとうとう「不正なプレー」でSH中村にシンビンが適用されてしまった。

イエローカードで法政に動揺が走ったことと、早稲田がSO間島に代えて水野を投入(SOにはCTB小倉が回り、水野はCTBに入る)したことが功を奏したこともあり、早稲田が反撃を開始する。31分、法政陣の22mライン手前のスクラムから左右に揺さぶりをかけ、最後は小倉がショートサイドを走りきってゴールラインを超えた。これで早稲田が一気に勢い付く。リスタートのキックオフに対するカウンターアタックから細かい繋ぎを主体とした攻めで前進を図り、最後はWTB廣野がノーホイッスルトライ。GKも成功して21-14と法政のリードは僅か7点に縮まってしまった。

序盤の楽勝ムードはどこへやら?の法政だったが、前半終了間際の40分に再び早稲田のミスに乗じて得点を奪う。自陣を瀬にしたスクラムというピンチの状況で陣地挽回を狙ったキックが早稲田陣22m付近で転々とするところを早稲田の選手が処理に手間取る。法政がこのボールをうまく拾い、最後はWTB今橋がゴールラインを超えた。GK成功で28-14と法政がリードを拡げる形で前半を終了。シンビンなどがあってムードが悪くなりかけていた法政にとっては勝利に向けての貴重な追加点となった。



◆後半は一方的な展開に

早稲田に勢いが出てきたとは言っても、ノックオン病から脱することができているわけではない。法政はこのまま守りに入らずに攻め続けて勝利を掴みたいところ。しかし、ラグビーはわからない。たったひとつの不用意なプレーから、法政は殆ど敵陣にすら入れないくらいに一方的な展開となってしまうのだから。早稲田の深く蹴り込まれたキックオフに対し、ボールをタッチに蹴り出せば問題ない状況だった。誰もがキックと想った瞬間、パスがオープンに放たれた。観客だけでなくボールを受け取った選手も唖然となるような中途半端な展開となり、インゴール付近からボールをタッチに蹴り出すのがやっとの状況。法政は後半開始早々からピンチに陥ってしまった。何か閃くものがあったのかも知れないが、独り善がりと見られてもしかたないプレー。

5分、早稲田は法政のミスを見逃さず、ゴール前スクラムから左右に揺さぶりをかけてFB滝沢がゴールラインを超えた。GKは失敗したが法政のリードは9点に縮まり、早稲田の逆転は時間の問題のように思われる状況となる。ただ、エンジンがかかってきた早稲田も波に乗れない。ノックオン多発症に加えて、ラインアウトも壊滅状態のため、自陣に攻め入られることはないものの得点を奪うこともできない。早稲田ファンにとってももどかしい状況が続く中で時計はどんどん進んでいく。

確かにミス多発もあるが、早稲田のアタックで気になったことは、何故か攻め急いでいるように感じられたこと。法政は個人対個人のディフェンスでは強さを見せるものの、組織的な防御は苦手とするチーム。早稲田も帝京のように丁寧な継続ができれば、必ずディフェンスに穴があく。そこを一気に攻めれば得点は確実に増えていく。また、パスをすぐに内に返すことを繰り返していたことも気になった。人数が多いところを攻めてくれたことで法政はかなり助かったはずだ。シェイプも中途半端で、(帝京のように必ず4人単位ではなく)3人で行ったらタックルに遭ってボールを失うことになる。

9点をリードしているとは言え、敵陣に行けない状況の連続では、法政はいつ逆転されてもおかしくない。とにかく肝心なところで反則が多い。法政はリーグ戦Gでは反則が少ないチームだったはずだが、オフサイドポジションで相手のパスを捕球してしまう(シンビンになってもおかしくない)プレーには観客席からも失笑が聞こえる。スタンドからは「レフリーとコミュニケーションを取れ!」という「アドバイス」も飛ぶのだが、それ以前の問題。そもそも帝京や筑波や東海の選手ならオフサイドの位置にはいない状況であることをじっくり考え直す必要があるだろう。

ゲームも終盤にさしかかった34分、早稲田は法政陣22m付近のラインアウトを起点とした連続攻撃からCTB水野がトライを奪いGKも成功。28-26となり、法政が前半の貯金を使い果たすのも時間の問題というところまで来てしまった。法政ファンから待望の声が高まる中、遂に猪村がピッチに登場するが、足を痛めたFB森谷と交替という形。森谷が大丈夫なら猪村は出場しない可能性もあったわけで、残された時間から考えても疑問の余地が残る交代劇だった。そもそも残り時間も殆どなしでは力の出しようもない。

そして、リスタートのキックオフでは、法政は殆ど抵抗できずにあっさりとトライを奪われ、28-33と遂に逆転を許してしまった。残り時間が僅かとなったところで、法政が最後の力を振り絞って怒涛の攻めを見せるものの、早稲田の方が役者は上。結局そのままノーサイドとなり、早稲田の大逆転勝利という形で戦いは終わった。法政にとっては何とももったいない惜敗、そして早稲田にとってはほろ苦い勝利といった内容。帝京を相手にこれだけミスをしたら、前半で勝負は決まってしまうし、最終的には3ケタに近い失点になっているだろう。春だからまだまだ(できていない)ではなく、春なのにこんなに(差が付いてしまっている)を感じずにはいられない両チームの闘いぶりだった。



◆試合の後で想ったこと

Aグループの戦いを先に観ているからかもしれないが、帝京に勝てるのは帝京だけという時代になりつつあるように感じる。1部リーグで優勝争いができるチームを3つ持つチームの実力の高さには計り知れないものがある。早稲田も法政も選手が全体的にスリムに見えてしまうフィジカル面はさておき、プレーの確実性や戦術に対する理解度でも遅れをとっているように見えてしまうのだ。それくらい、帝京は先行しているし、同じくAで戦っている筑波も戦力アップしている。東海、流経はもとより、苦戦を強いられている拓大にしても、現状での最高レベルを春の段階で実体験できることは財産になるはず。

この試合を観戦していて気になったのは、「法政は今年Bでよかった」という声が聞かれたこと。確かにファン心理としてはわからないでもない。でも、それでいいのだろうか。今だからこそ、百草グランドに赴き、強くなるためにはどうしなければならないかを実地で学ぶ必要があるのではないだろうか。普段着の帝京から学べることはいくらでもある。例えば、トイレに貼ってある「尿チャート」(体調管理は尿の色を観察して、自分自身で意識してやれと促している)を見ただけでも、敏感な選手なら彼我の取り組みの違いを感じるはずだ。

勝敗にこだわる必要はない春季大会だが、実はけして軽く見ることはできない恐ろしいシステムではないかという想いを強くしている。今後、AからCまでのグループ間の格差は確実に拡がっていき、やがて「リーグ統合」が唐突に発表される日が来るかも知れない。秋のリーグ戦では3位以上を目指すことが現実的かつ切実な目標となるだろう。
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帝京大学vs筑波大学(2013年度春季大会)の感想

2013-05-15 01:29:19 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


関東大学ラグビーの春季大会も3週目となり、流経対拓大、日大対法政といったリーグ戦ウォッチャーにとっては見逃せない対戦カードが組まれている。しかし、正直なところを告白すると、今の時期で観ることができる最高レベルの試合をじっくり観たいという気持ちの方が強くなった。そんなわけで足は自然に百草の帝京グランドに向かっていた。

「大学選手権決勝の再現」といった期待感はさておいても、百草の帝京グランドでラグビーを観ると得るものが多いことも自然に足が向かった理由のひとつ。ここで試合を観る都度に、時としてラグビー感が変わってしまうくらいに刺激的な気持ちになる。だから、百草園駅からは急坂登りになる徒歩での訪問も苦にならない。というのは少し無理があるが、肉体的には多少きつくても、急勾配の坂を登り切ったときに、前方に開けた視界の中に高台の上にある帝京グランドを見いだしたときにはホッとした気分になる。

住宅地の中をしばらく歩いてラグビー部の寮の前を通り過ぎ、最後の坂道を上り詰めたらいよいよグランドに到着だ。そんな頃だった。午前中の練習を終えて寮に向かう帝京大学のラグビー部員達とすれ違ったのだが、全員が笑顔で挨拶をしてくれた。それも、ごく自然に。おそらく、選手達にとっては普段から当たり前のようにしていることなのだろう。これでチームに対する好感度がアップしないわけがない。帝京というと部員が厳しく管理されているチームというイメージを抱きがちだが、細やかな目配りができるように指導されているとみた方がしっくりくるような一コマだった。

◆キックオフに向けて高まる緊張感。

最前列の確保を目指していつもより早めに座席に座り、両チームのアップの状況を眺めながらキックオフを待つ。帝京のメンバーは流経大戦からSHが荒井から流に替わったのみで、おそらくこのメンバーが現状のベストということになのだろう。翻って、筑波はメンバー表にお馴染みの名前が少なく、どこまでやれるか?といった期待の中にも不安の入り交じったようなメンバー構成。リザーブに登録された竹中が注目選手だが、久々となる試合で健脚を見せてくれるだろうか。

ここに座ると、どうしても2週間前に観た光景、すなわち最後までの緩むこと無く正攻法で攻め続けて76-19で流経大に圧勝した赤いジャージの選手達のイメージをぬぐい去ることができない。水色のジャージのチームも白いジャージのチームと同じ目に遭ってしまうのだろうか。逆に、もし筑波がこのメンバーで帝京と渡り合うことができれば、秋から冬に向けての楽しみが確実に増えることになる。キックオフが近づくにつれて意気上がる両チームの状態を見ていると、自然に緊張感が高まってくる。大学日本一を狙うチーム同士のオーラが既にピッチ上で激突している。



◆帝京のキックオフで試合開始

トップリーグチームへのチャレンジを強く意識した「スタンディングラグビー」を標榜する帝京がキックオフから猛然と筑波に襲いかかる。ペナルティを得ても速攻で仕掛けるのが本日の決まり事のようだ。そんな帝京の猛攻を受けて開始早々から筑波は自陣ゴールを背に防戦一方の展開となる。そして3分、ファーストスクラムが筑波のアーリープッシュとなったところで、帝京はFKからタップキックで攻めてPR1の森川がインゴールに飛び込んだ。あっさりと帝京が先制点を奪ったことで、「2週間前の再現」が現実味を帯びてくる。

しかしながら、筑波もすかさず反撃する。7分、自陣10m/22mでの帝京ボールラインアウトで、ボールが後ろに流れたところをFWの選手がすかさず拾って大きく前進し、パスを受けたNo.8山本が激走してゴールラインを超えた。GKは不成功に終わるが5-7となる。筑波はさらに10分、自陣10m/22mの位置でのスクラムからオープンに展開し、ライン参加したFB山下がビッグゲインした後、ラストパスをWTB久内に渡す。GKも成功して12-7と筑波が逆転に成功した。グランドレベルでの観戦のため状況はよくわからなかったのだが、おそらく帝京のDFにできたギャップをうまくついた形で山下がラインブレイクに成功したように見えた。久内はその後も巧みなステップワークでたびたび帝京のDFを攪乱するシーンを見せた。卒業した彦坂、ベンチ入りの竹中、そして福岡とも違ったタイプの新たなトライゲッターの誕生は筑波にとって明るい材料。

しかし、このままガタガタと崩れてしまわないのが帝京で、すぐに体勢を立て直す。「スタンディングラグビー」を標榜するだけあって、激しく縦に、横にとボールを動かして攻め続ける。だが、筑波も殆ど組織を乱されることなく粘り強いディフェンスで応戦。引き締まったゲームは時間が経つのを忘れさせてくれる。だが、22分に筑波に残念なプレーが出る。自陣22m内でのラインアウトからオープンに展開するもののノックオンを犯し、そのボールを拾った帝京のCTB権が難なくトライを決めて逆転に成功する。数的にはむしろ不利な状況で無理に展開する場面でも無かっただけにもったいない失点だった。

その後も、筑波が粘り強いディフェンスで抵抗し続けるが、帝京優位は動かない。30分、帝京はPK.からの速攻で筑波陣のゴールに迫るものの、筑波が渾身のタックルでタッチに押し出して一旦はピンチを逃れる。だが、直後のラインアウトからのタッチを狙ったキックがノータッチとなり、帝京は得意とするカウンターアタックから一気に攻め上がる。パスを受けたWTB久田が走りきってゴールラインを超えた。帝京はたたみかける。リスタートのキックオフからのカウンターアタックで怒濤の連続攻撃からフィニッシュはエースのWTB磯田。この強力な2連発で26-12と帝京のリードは14点に拡がる。

かつてはFWのボールキープによる「停滞」を批判されたことを完全に忘れさせるくらいにボールを動かすチームになった帝京。そのアタックは3段式(あるいは4段式)のロケットを連想させる。初期段階(1段目と2段目)ではFWでボールキープをしながらポイントを動かし、相手のDFが薄くなったところで一気にロケットの3段目が点火する形でBKがスピードアップして攻める。攻撃のテンポが良く、しかもどんどんスピードが上がっていくため、3段目に点火された段階でほぼトライが約束されたようなものだ。とにかく、FW、BKに限らずパスを受ける段階でレシーバーがトップスピードになっている。難しいことはやらず、そのためミスなく確実に速くボールを動かせるラグビーは脅威。筑波がよく持ちこたえたといった印象が強い前半の戦いだった。



◆後半はさらにテンポアップした帝京

帝京優位とは言え、点差は2T2G差の14点。筑波は後半での逆転を期し、プレー中に足を痛めたFB山下に替えて竹中を投入した。これで筑波が迎撃態勢を整えたかに見えた後半だったが、帝京はキックオフからさらにテンポアップして攻め立てる。5分、筑波が帝京陣内に攻め入りながらラックでターンオーバーを許し、帝京は素早いボールの繋ぎで最後はWTB磯田がゴールラインまで走りきった。31-12と帝京のリードはさらに拡がる。磯田は、ボールを持った段階で前方が開けていたら「走る距離は関係ない」といった韋駄天ぶりを見せて本日も大活躍だった。

しかし、筑波も簡単には引き下がれない。リスタートのキックオフでLO藤田が魅せた。そう、藤田と言えば大学選手権の東海大戦で逆転勝利を収める原動力となった「キックオフに強い」インパクトプレーヤー。浅めに蹴られたボールをジャンプ一番で奪取に成功して前進を図る。ただ、筑波はその後のボールキープに失敗して逆襲を許し、最後は帝京のFL杉永がゴールラインを超えた。ボールを失った後のカウンターアタックには注意しなければならない。それは十分にわかっていても止められないのが帝京の怖さといえる。

38-12とリードが拡がっていく中で、続くリスタートのキックオフでも藤田が頑張りを見せた。今度は後ろにタップするような形でマイボール獲得に成功する。高いボール保持能力を持つ帝京に対しては、深いキックオフは相手に得点をプレゼントするようなもの。浅めに蹴ってボール奪取にチャレンジするなどの工夫が対戦チームに求められる。筑波の藤田と目崎のLOコンビは随所で光るプレーを見せた。帝京のアタックに耐えた後の15分、筑波は帝京の反則で掴んだ帝京ゴール前でのラインアウトでモールを押し込みトライを奪う。17-38とまだまだ点差は大きいがFWで取れたことは大きな自信になるはずだ。

自慢のFWで取られたことに対して、帝京FWのハートに火が付いた。22分、帝京は筑波陣のゴール前でのスクラムを押し込んでスクラムトライを奪う。GKは失敗したが43-17と帝京のリードは26点に拡がり、ここで勝敗が決した。また、筑波のNo.8山本が反則の繰り返しでシンビンを適用されたことも筑波にとっては痛かった。帝京は35分にもPKからの速攻で後半からSO朴に替わって出場した前原がトライを奪い48-17で試合を締めくくった。



◆試合後の感想

やはり帝京は強い。70点以上取った流経大戦に続き、本日もトリプルスコアに近い圧勝。それも「シンプル・イズ・ベスト」の模範を示すような正攻法で攻め続けての勝利。パワーアップだけでなく戦術に磨きをかけていく時間が十分すぎるくらいにあることを考えれば、5連覇も難なく達成できそうだ。また、5が6になり、8になりの状況になっても不思議はないくらいにB、Cチームも充実している。春に公式戦ができたことで、大学ラグビー界は、体勢の整った強豪チームはより強くなっていき、土台作りに四苦八苦のチームはなかなか力を上げることができないといった格差の拡がりがより顕著となっていくような気がする。

さて、健闘及ばず完敗だった筑波。とても惜敗とは言えないスコアだが、さりとて数字ほどの惨敗という印象も薄い。力の差はあっても手応えは十分に感じさせる戦いだったと思う。現段階では帝京の圧倒的な攻撃力を辛うじて止めることができているといった状況には違いないが、希望がないわけではない。試合前はFWのセットプレーで苦戦必至とみていたわけだが、スクラム、ラインアウトは健闘していた。また、ディフェンスでも簡単には突破を許さない粘り強さも見せた。身体を張った泥臭さが筑波の魅力。では、どこに差があったのか? 一番それを感じたのは、攻撃態勢に入ったときのFWの動きの部分だった。

帝京のFWはアタックの場面では素早く4~5人でユニット組んで攻撃態勢を作ることができる。SHからボールをもらう位置が絶妙で、また、ランでパスを受ける場面ではほぼトップスピードになっている。しかしながら、筑波のFWは止まった状態でボールをもらう場面が多かった。また、せっかく塊を作って動くことができているのに、パスを受ける体勢が中途半端で有効なアタックに繋がらない(観ている方にはもどかしい)場面も多かった。当然、FWがボールを持った段階で停滞からターンオーバーされてしまう状況が増える。チャンスボールを確実に得点できたかできなかったかの差は、このようなFWの初期段階での動きの差に原因がありそうだ。筑波はBKの豪華なランナー達を活かすためにも、アタックの局面でのFWの効率的な動きに磨きをかけることが必要と思われる。



◆B戦を観戦しながら想ったこと

A戦のあとにB戦が行われ、72-0と帝京Bの圧勝に終わった。帝京のBが強力なことはわかっているが、今日はそれ以外にも面白い発見があった。それは、AチームとBチームの差がどこにあるかと言うこと。AもBも、そしてCであっても同じラグビーができるのが帝京の強みであり、組織としての一体感を感じる部分。だが、AとBには当然のことながら違いがある。Bの選手のプレーはパワー、スキルそして正確さが僅かだがAの選手達に及ばない。逆に言えば、Bの選手でも足りない部分を克服していけばAに上がるチャンスが出てくる。どうすれば上に行けるかが明確になっていることで選手達のモチベーションを下げないチーム構造ができあがっている。

期待の竹中だが、B戦でも殆どボールを持つチャンスがなく、不完全燃焼に終わった。本人はAの最初から試合に出たかったようだ。後半からの出場ではゲーム感がつかめないといったようなことも口にしていた。また、B戦のハーフタイムでは選手達に檄を飛ばすなど存在感を示す。強力なライバル達の出現で安閑とはしていられないという気持ちの表れと観た。また、B戦ではしばしば「前を見ろ!」とか「頭を下げるな!」という指示がベンチから頻繁に飛んでいた。普段は関東リーグ戦Gの試合を観ている私だが、そんな指示が学生の応援席から出たのを聞いたことは殆どない。

ここでふと想った。もちろんすべてではないが、リーグ戦G校の選手達のモチベーションの在処に問題があるのではないかということを。とにかくプレーでミスが多いこともあるが、典型的なのはタックルの拙さ。高くて低く刺されないだけでなく、引き倒しからぶら下がりのだっこちゃんスタイルまで(激しく前に出てヒットする筑波や帝京とは)別次元のラグビーを観ているような印象を受けてしまう。これでは大量失点試合の続出も免れないだろう。Aグループの3校はこのレベルを体感できるからまだいいとして、問題はBとCに所属しているチーム。ぜひ百草グランドで自分達のラグビーを見つめ直す機会を持って欲しいと思う。緩まない帝京は鏡みたいなチームで、自分達の足りないところをはっきりと示してくれるはずだから。
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明治大学vs拓殖大学(2013年度春季大会)の感想

2013-05-06 23:13:02 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


関東大学ラグビーの春季大会の2週目は、私的注目チームでもある拓大(拓殖大学)の初陣での戦いを観るために明治大学の八幡山グラウンドに向かった。昨シーズン、僅か1年にして大幅なモデルチェンジを敢行し、そしてリーグ戦Gでは3位という成果も見せてくれた拓大。今シーズンは優勝戦線への参入も期待される状況になってきてはいるが、基本的には昨シーズン戦ったチームをベースにして地道にパワーアップしていくことが現実的なように思われる。そういった意味でも、強豪揃いのAグループでの戦いは厳しいものとなりそうだ。果たして、明治を相手にどこまで戦えるか。期待半分、不安半分といったところだが、お天気がいいこともあり、試合会場に向かう足取りは軽い。

◆まずはC戦から観戦

1週間前の百草園の帝京グランドでの体験はいろんな意味で衝撃的だった。まずは、リーグ戦Gのトップチームを全く寄せ付けずに全3試合で完勝以上の結果を残した帝京大の圧倒的な強さ。このことに対してはリーグ戦Gファンということもあり言葉もない。でも、それだけではなかった。帝京大という現時点でのトップチームの闘いぶりを観て、大学ラグビーの現状、抱える問題点から明るい展望まで、いろいろなことが見えてきたことでとても収穫の多い1日となった。

もうひとつ挙げると、それは、ひとつのチームを評価する上では、BやCといった下のカテゴリーのチームの闘いぶりを観ることが重要な情報になることに気づいたこと。帝京大のBチームが強力なことは昨年でもわかっていたのだが、Cチームも侮れない実力を持っている。いや、単に強いだけでなく、やろうとしていることがAチームと同じで、それができている。結果的に100点ゲーム近い一方的な内容なのに、緩むこと無く試合を進めている。このモチベーションの高さはどこから来るのだろうか。おそらく各チームで考え方が違うはずだから、一方的な内容になりがちなCチーム同士の戦いでも観る価値があるはずだ。

キックオフの10分前に試合会場に着いてびっくりした。C戦開始前の段階で観客席はホームチーム側を中心に8割以上埋まっている。やはり、人気チームに対するファンの関心が高いことを実感した。果たして、キックオフからホームチームが圧倒的な力を見せつける展開。拓大Cも身体の大きな選手達(最後に試合をしたBチームよりもむしろ大きいと感じた)を揃えて抵抗を見せるのが、Cチームとはいえ肩書き組を含む選手達がみせるパフォーマンスは圧倒的。あっという間にトライの山が築かれて前半は64-0。拓大はどうにかスクラムが通用しているだけという状態で、単純計算なら、試合終了時点で100点を大きく越える点差になっているはずだ。

しかしながら、後半に気持ちを切り替えてきた拓大に対し、明治の選手達に緩みが見えてくる。勝つこと以外にモチベーションを見いだすことが難しくなった状態になると、普段着のラグビーが見えてしまう。前半の終盤頃からだが、相手にプレッシャーをかけられたところで無理なプレーをしてピンチに陥る場面が散見され始める。彼我で個々の力の差があるのだから、確実に処理すればいいところでの(後工程を考えない)結果オーライのプレーは帝京なら絶対に許されないだろう。そもそもカテゴリ-が違っても、帝京の選手達にはそんなプレーを選択する発想すらないはず。後半は自らが招いたピンチにつけ込まれた形で3トライを許して24-17の「接戦」になってしまった。



◆春季大会のキックオフ前の雑感

まずは、試合場で配布された拓大のメンバー表を眺めてみる。FWは第1列の2人とLOウヴェ、昨シーズンは控えだった石松以外のメンバーが入れ替わっている。期待はLOのルーサーと小柄な選手が多い拓大ではサイズがあるNo.8の篠崎。とはいえ、他校に比べれば今シーズンもサイズで苦労しそうだ。BKもSOステイリン、CTB松崎(昨季はWTB)、FB山本に昨季はリザーブだった山谷、塩倉らが加わった形で、全体でみても半分の選手達が入れ替わっている。

個々のパワーアップと平行して、コンビネーションに磨きをかけて得点力アップを果たしたい拓大。しばらくは試行錯誤を強いられそうな状況にあって、セブンズで活躍した山谷や攻撃の起点となるSH茂野の動きに注目したい。相手の明治はおそらく肩書き組を含む強力な陣容のはず。緒戦で筑波大に完敗した明治ではあるが、100点を超えたはずの大量失点で敗れたCチームの状態を見たら、Aチームは大丈夫なのだろうかという不安も抱かれる中でキックオフを待った。

◆前半の戦い

明治のキックオフで試合開始。拓大は自陣から昨シーズンから取り入れたと思われるシェイプを使って前進を試みるものの、なかなか明治のディフェンスを突破することができない。昨シーズンの課題でもあった、ペネトレーター不在は今シーズンも同じ状況。揺さぶりを交えてテンポ良くボールを繋ぐことでボールを前に運びたいところだが、ブレイクダウンで絡まれる状態では苦しい。ただ、岩谷の卒業で懸念されたSH茂野からの球出しは、とくに問題なさそうなのが明るい材料といえそう。

明治が押し気味の中で試合が進む。FW戦(とくにスクラム)はほぼ互角か、むしろ拓大が上回る状況だが、BKに能力の高い選手を揃えているのが明治の強み。拓大は接点での反則が多く、自陣22m内で明治ボールラインアウトというピンチに陥る状況が増えるが何とか凌ぐ。それにしても、自慢のはずのスクラムはもとより、モールを形成しても押し切れない明治を観るのは想定外。拓大FWの健闘が光るとは言うものの、原因はそれだけではなさそうだ。

膠着状態の中で14分、ようやく明治に得点が生まれる。継続してもなかなか敵陣まで行けない拓大にとっては、エリアを取るために蹴らざるを得ない状況。明治はカウンターアタックからの継続攻撃でNo.8園生がインゴールに飛び込んだ。やはり、前に力強くボールを運んでいく能力がある選手を揃えた明治に対して、スピードに乗ったアタックを許したら確実に失点を覚悟しなければならない。

続くキックオフで拓大は蹴り返しに対し、FB山本が巧みなステップワークで大きく前進して明治の反則を誘い、反撃のチャンスを掴む。しかしながら、明治陣22m内でのラインアウトではノットストレート。続くスクラムでも反則を取られてチャンスを逃すが、勢いの出てきた拓大は攻めつづける。22分には明治陣10m付近での相手ボールスクラムを押し込んでターンオーバーに成功し、連続攻撃から明治ゴールを脅かすもののノックオン。拓大FWの健闘も光るが、まさか明治がスクラムをめくられるシーンを観るとは思わなかった。

拓大が攻勢に出るなか、28分に明治が追加点を挙げる。拓大がこぼれ球を足に引っかけてボールが明治陣内を転々とした状況で、拓大選手がうまくボールを拾うことができれば間違いなくトライになる場面。ボール争奪戦で巧みに身体を使った明治のSH山口がボールを確保して一気に前進を図り、フォローしたFL大椙がパス受けて拓大陣のインゴールに到達。拓大としては、惜しいとしか言いようのないプレーだった。拓大のビハインドは14点に拡がる。

このまま前半が終了かと思われたが、拓大が粘りを見せる。35分、カウンターアタックから連続攻撃で前進を図りHO川俣がボールを前に運び最後は山谷がゴールラインに到達した。GKも成功して7-14となりこのまま前半が終了。拓大にとっては、後半での逆転、そして勝利に希望を繋ぐ貴重な得点となった。



◆後半の戦い

ウヴェを除いて強力な突破役が居ない拓大の生命線は、オープン展開を基調としてボールを素早く繋いで前進を図るランニングラグビー。そのために求められるのはテンポアップすることで、後半はベンチからそんな指示が出たのかも知れない。4分には自陣10m付近でのスクラムを起点としてFWでボールを前に運び明治陣のゴール前まで到達。サイドアタックを繰り返してボールを前に運び、最後はPR岡部がインゴールに飛び込んだ。GKは失敗したが、12-14とビハインドは僅か2点に縮まる。続く11分にはゴール前ラックからオープンに展開したところで、CTB渡邊がトライを奪い拓大は19-14と遂に逆転に成功。頼みのFW戦での劣勢もあり、スタンドの中央から右側に陣取った明治ファンからは重苦しい雰囲気が流れてくる。

しかしながら、形勢不利でも一発の強さで勝てるのが明治。逆転の興奮も覚めやらぬ15分、明治は拓大陣22m内で得たラインアウトからモール、ラックで前進を図り、最後はSH山口がウラに抜け出してボールをゴールに運ぶ。21-19と2点差ながら明治は再逆転に成功した。明治はたたみかける。20分、拓大陣22m付近でのラインアウトからオープンに展開し、ライン参加したFB田村がラインブレイクに成功して一直線でゴールポスト直下に到達。明治のリードは9点に拡がる。ここでも明治の一発の怖さが出た感じ。

逃げ切り体勢に入った明治に対し、拓大も粘りを見せる。29分にはHWL付近でのスクラムからFWがボールを前に運び、WTB塩倉がトライを決める。GK成功で26-28と拓大のビハインドは再び2点に縮まる。逆転勝利に向けて意気上がる拓大応援席のボルテージは、終盤に近づいた36分に絶頂を迎える。スクラムを起点とした自陣からのアタックでSOステイリンがウラに抜けて独走態勢に入りゴールに向けて一直線。しかしながら、GLまであと10数メートルというところで追走してきた明治の選手にボールを弾かれてしまい痛恨のノックオン。周りを複数の選手に取り囲まれる形になってしまい、パスができない状態になっていたのが残念だった。

結局、明治が拓大のアタックを凌ぐ形で、43分に山口がトライを挙げて熱戦に幕となった。試合内容は点差の通り互角。むしろFW戦で優位に立った拓大の方が押し気味に試合を進めた感があったが、明治の個人能力の高さ(巧さ)にやられてしまった。拓大としては何とも残念な敗戦ではあるが、対抗戦Gの上位校相手に接戦を演じることができたこと、そして勝てなかったことで得ることは大きかったのではないだろうか。



◆惜敗した拓大だが

拓大は本当に惜しかった。何よりも普段の試合なら一桁台で終わる反則(PK)が15を数えたことは誤算だった。スクラムやブレイクダウンでレフリーにアジャストできていればと思ったりもする。しかしながら、勝利の可能性も十分にあった善戦は、明治の不調によるところもあったように感じる。その後行われたB戦が100点ゲーム(14-116)になったことからもそう感じる。Aチームとさほど力の差が感じられない明治のBチームが奮起した面があるにせよ、拓大の選手層の薄さが露呈した格好。強いBチームの存在がAチームのレベルを押し上げることは帝京の例を見れば明らかで、その点が物足りなく感じられる。

そういったことは別にしても、拓大は壁にぶち当たっているような印象も受けた。昨シーズンの春に観た立教戦で感じたような、いい意味での初々しさ(新しいことに取り組む新鮮な感覚)が無くなっているのかも知れない。ウヴェも、主将としての責任感を強く感じているためか、100%の動きができていないように見えた。しかし、ここが拓大のさらなる飛躍に向けての頑張りどころだと思う。関東学院、東海、流経もこの壁を乗り越えたからこそ強豪チームになれた。東海と流経の壁は厚いが、ぜひ一山越えて欲しいと期待している。



◆明治と帝京を観て想ったこと

拓大の健闘は嬉しいのだが、その一方で明治の現状には複雑な感情を抱かずには居られない。率直に言ってしまうと、それは、かつては紫紺のジャージから醸し出されていたはずの威圧感が消えてしまったということになる。かつての明治なら、拓大は戦う前に敗れていたかもしれない。同志社がまだワインレッドのセカンドジャージを持たず、明治と国立で対戦するときは「紅白戦」になった時代から大学ラグビーを観ている(オールド)ファンの端くれとしては、一抹の寂しさを感じるのだ。

それと同時に、帝京や筑波の台頭に見られるように、大学ラグビーの佳き時代は確実に終わったとも言えそうだ。それは、各大学が独自のカラーを前面に押し出して戦うことが必ずしも大学ラグビーの強化には結びつかないことも意味する。少なくとも、世界で戦っていく上では、身体の強さと大きさに豊富な運動量が加味されなければならない。帝京はそれを確実に実行しているチームといえる。C戦のところでも書いたが、帝京では許容されない軽いプレーが明治には許されているとしたら、両チームの選手達のモチベーションに大きな違いがあることを感じずには居られない。

では、帝京が部員全体で高いモチベーションを保てるのは何故だろうか? それは日本選手権効果だと思う。トップリーグチームとの対戦を通じて、帝京の目標はベスト4以上で戦うことに定められたはずだ。そのためには、現状で満足せずにチーム全体で努力する必要がある。たとえCチームに所属していても、トップリーグのチームに勝つには何をすべきかを意識して選手達は練習に励む。だから、目標にそぐわないプレーをすることは許されないし、そんな気持ちにもならないはず。帝京をよいお手本として部員全員が一丸となって精進に励むチームが増えていくことで大学ラグビーのレベルが上がるのではという想いがより強くなってきた。
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ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)2013/ハープのアランフェス協奏曲に感動!

2013-05-04 01:33:57 | いろいろ何でも雑記帳


今年も「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」がやって来た。日本最大のクラシック音楽のイベントで今回のテーマは「パリ、至福の時」。有料公演が135もあるだけでなく、10以上の会場でフリー・コンサートも行われる。初日の今日は、丸の内界隈で「熱闘のあいまにひといき」と相成った。

JRの有楽町駅で降りて、まずはメイン会場の東京フォーラムに向かった。有料コンサートはホールAの「ボレロ」が入っている公演を狙っていたのだが、出遅れが響いてソールドアウト。やむなく、ホールAは夕方のドビュッシーの「海」と「牧神の午後への前奏曲」にして、午前の部はホールCの「アランフェス協奏曲」のハープ版が聴ける公演をセレクトした。(といっても、選択の余地がなくてこれだけだったのだが...)

ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」はクラシック音楽では珍しいギター協奏曲だが、スペインの作品の名曲中の名曲としてつとに有名で、ポピュラーヒットチューンにもなっている。でも、いつでも聴ける曲だからということで、いまだにレコードもCDを持っていない。マイルス・デイヴィスの『スケッチズ・オブ・スペイン』は持っているのに。果たして、ハープ版ではどんな演奏が聴けるのだろうか。期待と不安が相半ばといった感じでホールのシートに座った。

プログラムの1番目はルーセルのシンフォニエッタ。ルーセルは魅力的な交響曲作品他を残している人だが、この作品は初めて聴く。ロベルト・フォレス・ヴェセス指揮オーヴェウルニュ室内管弦楽団の好演もあって、隠れた名曲だと確認。次の2曲目はスペインの作曲家トゥリーナの「闘牛士の祈り」で、気分はパリから一気に情熱の国へ。弦楽合奏を堪能したところで、いよいよお目当ての「アランフェス協奏曲」だ。舞台中央の前方に据えられた黄金のハープがまるで尖塔のようにそびえ立つ。ハーピストは日本が誇る吉野直子。

この曲は情熱を湛えたギターソロで始まるが、ここでは上品かつ慎ましやかに始まった。ギターはコンチェルトでは主役の地位にあるピアノやヴァイオリンとは違い、音量でオーケストラと対抗するのが難しい楽器。それはハープもまったく同じで、「果たして、ちゃんと音が聞こえるだろうか?」という一抹の不安があった。しかし、そんな心配は無用。原曲自体もギターソロといろいろな楽器のソロの掛け合いといった形で進んでいくように作られている。

逆に慎ましやかに語りかけるハープだからこそ、聴く側だけでなく、演奏する側もテンション(注意力)が高まるようなところがある。これは新たな、かつ嬉しい発見だ。ソロイストも音量で勝負を挑むことは眼中になく、あくまでも丁寧かつ気品を保ちながら音を綴っていく。そして、「恋のアランフェス」として有名な第2楽章が始まった。オーボエのソロを包み込むようなハープの調べに耳を傾けていると、ことアンサンブルを作ることに関してはハープの方がギターよりも適役のようだということにも気づく。

同じ曲でありながら、ギターとハープではそれぞれ違った性格を持った曲としての味わいがある。原曲(ギター)の圧倒的な形ではなく、静かな感動を呼び起こすような形で演奏が終わった。殆どハプニングのような形とは言え、こんな新たな発見があるからライブ演奏は面白い。もし、録音されてバランスが調整された後の演奏からだったら気づかなかっただろう。ギターの情熱の再現なら、ベネズエラなどの南米の力強いハープ(アルパ)の方が向いていそうな気もするし、実際に聴いてみたい衝動に駆られる。と一瞬思ったが、やっぱりクラシック音楽作品として聴くならハープは「本家」の方が正解のようだ。



ランチの後は、夕方5時までフリーコンサートタイム。有楽町駅から東京駅に至るまでの丸の内エリア内に点在する会場を回りながら、いろんな音楽を無料で楽しめるのも「ラ・フォル・ジュルネ」の大きな楽しみ。クラシック音楽だって、ストリートでのバリアフリーの感覚で楽しんだっていいのだ。実際に、クラシック音楽が「現代音楽」だったころは、必ずしも静かに拝聴する音楽ではなかったという話もある。

午後の最初のプログラムは梶山彩沙フラメンコスタジオのメンバーによるフラメンコ。ギターと歌と手拍子(パルマ)の伴奏に乗って、ダンサー達による大輪の華が咲くとっても賑やかなステージ。ここでも新たな発見があった。それは手拍子で、叩く人それぞれの動きが微妙に違うのに、まるで一人で叩いているように聞こえること。おそらく、同じ音が出せるように練習を重ねているのだと思う。そうでなければ、二人でそれぞれの間を埋める形でのトレモロみたいな技は不可能だから。

情熱のフラメンコに酔いしれた後は、ピアノ(林聡子)とオーボエ(原田洋輔)とファゴット(羽山泰喜)の3人による演奏を聴く。曲はフランクの「ファゴットとピアノのためのソナタ」とプーランクの「オーボエとファゴットとピアノのためのソナタ」。フランス人に限らず、ラテン圏の人たちは楽器の組合せに対するこだわりを持たない人たちで、いろんな作品を残している。



珈琲タイムの後は再びメイン会場に向かう。地下の特設ステージではオーケストラと歌手による歌劇「カルメン」のリハーサルが行われている。オープンステージでは本番前に準備も全部見えるから面白い。しかし、この日1日だけでも3回以上「カルメン」に遭遇した。この曲に対する人気と想い入れの強さを感じさせる一コマだ。

サティの「3つのジムノペディ」とドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」「海」が演奏されたホールAは座席数5008のお化けホール。フェイサル・カルイ指揮のラムルー管弦楽団による演奏は、指揮者の名前の通りカル(軽)いタッチの演奏。というようなオヤジギャグはさておき、フランスらしさといっていいのか、オーケストラ自体が柔らかい響きに包まれているのが大きな特徴。そのことが如実に示されたのが、「牧神」と「海」の演奏だった。アンコールの「カルメン」序曲では、聴衆も手拍子で参加するという大きな盛り上がりを見せた。

さて、今日はまだラヴェルを1曲も聴いていない。「ボレロ」も「ピアノ協奏曲」も「クープランの墓」も空振りで、このまま帰るわけにはいかない。ということで最後に向かったのは「ツィガーヌ」がプログラムに載った演奏会場。原佳大(ピアノ)と原麻里亜(ヴァイオリン)の父娘デュオによる演奏だ。ラヴェルはクラシック音楽界ではもっともジャズに心情面で近づいた人で、ヴァイオリンソナタの第2楽章は、ずばり「ブルース」だ。ここでも、最後は「カルメン幻想曲」で長くて楽しい1日が終わった。
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