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法政大学 vs 関東学院大学(関東大学リーグ戦G1部-2022.10.15)の感想

2022-10-23 10:38:29 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


かつてはリーグ戦最終節に秩父宮ラグビー場で行われ、黄金カードだった2チームの対戦。そのかつては何時のことだったかを調べてみた。私がリーグ戦Gの観戦を始めた1997年以降だと、まず1999年、2年置いて2001年から2007年までの7年連続、そして2010年。それ以後は最終節での秩父宮での対戦がない。「黄金カード」と言っても通じ難くなっているのは致し方ない。

時計を現在に戻す。開幕から2勝1敗で好調な法政に対し、関東学院は3連敗。最後の最後まで縺れた東洋大戦以外は完敗と言える内容で両校の明暗が分かれる。前年度5位の法政は上位校との対戦がこの試合で終わり、逆に前年度4位の関東学院の残る対戦カードは前年度上位校。順位がひとつ違うだけでも大きな違いだが、勝ちたい気持ちはどちらも同じように強いはずだ。

◆前半の戦い

観客席には黄金カードの時代を知る人達も少なからず居るはず。序盤戦は様子見も兼ねたキックが多い展開。だが、チャンスとなればBKにボールが展開される。法政はシンプルなように見えて間合いに独特のリズム感を持つパス回し。それに対し、関東学院はロングパスを使うなど変化をまじえたパスで攻める。このあたりは時代が変わっても両校に受け継がれている伝統だろうか。

さて、先制点を挙げたのは関東学院。11分、SO安藤が10mライン手前からの距離のあるPGを決めて3-0となる。関東学院の安堵も束の間、法政が関東学院陣内でのラックのターンオーバーを期に攻勢に出る。直後のスクラムで強力なプッシュを見せ、関東学院はたまらずコラプシング。法政はゴール前のラインアウトからモールを形成して前進し、HO石川が抜けてあっさりトライを返す。GKも成功し、法政が7-3と逆転。

このトライを期に法政に勢いが出るが、ラインアウトのミスやゴール前でのラインアウトを狙ったPKがタッチインゴールとなるなど、ややちぐはぐ。一方の関東学院も法政が看板とする「炎のタックル」(グランドレベルで観ると、その低さとしつこさがよく分かる。)に苦しみ攻めきれない。法政のタックルの狙いはもちろん相手の前進を止めることにあるのだが、ノックオンを誘うことでカウンターアタックの起点ともなっている。「こぼれ球」への反応は法政の方が速く、ルースボールの7~8割は法政が確保するような状況。

両チームともに決め手を欠く中で時計はどんどん進み、電光掲示の得点が動いたのは前半も終盤にさしかかった35分。ゴール前スクラムでの関東学院のコラプシングの反則で得たPKでスクラムを選択。ここで法政はスクラムを強力にプッシュし、No.8寺前がボールをインゴールに運び連続トライ(GK成功で14-3)。法政は畳みかける。直後のキックオフでラックでのターンオーバーからオープン展開の連続によりWTB坂田がトライを重ねる(GK成功)。両チームが攻めている時間はさほど変わらないか、むしろ関東学院がボールが持つ時間が長いものの点差が18点まで拡がる。

前半終了間際に関東学院は相手の反則から法政陣ゴール前でのラインアウトのチャンスを掴む。しかしながら、ここでも関東学院にミス(ノックオン)が出て前半終了。法政が「炎のタックル」の他にスクラムで圧倒的に優位に立っていたことも大きいが、関東学院にやや元気がないように感じられたことが気になった。



◆後半の戦い

点差こそ開いているが、関東学院は法政に圧倒されているわけではない。リードしていても3トライ(+3ゴール)で追い付く21点差以内なら安心できないのがラグビー。関東学院は「流れ」をミスで掴みきれなかった印象が強い。言い換えれば、流れを変えられれば試合をひっくり返すことは十分可能に見えたのが前半の戦いぶり。ペースを掴むためにも後半は先に点を取りたい。関東学院はメンバーを一気に3人替えて後半の戦いに臨む。

そんな観客席の想いとは裏腹に、関東学院のミスが不利なスクラムを招くという悪い連鎖が止められない。キックが多ければ必然的にラインアウトも多くなる。ひとつ気になったのはラインアウトのポイントに向かうときにうつむき加減で歩いているFWの選手が散見されたこと。高校時代ならジョギングでないと怒られたはず。ルースボールをことごとく法政に拾われてしまったことも含めて意識の違いを感じた。

もちろん、関東学院にも何とか流れを変えようと奮闘している選手はいる。接点周辺でのファイトが前半よりも増え、身体を当ててボールを前に運ぶ動きに勢いがでてきた。5分、関東学院は法政陣ゴール前ラインアウトからモールを形成し、FL福見が抜け出てトライ。GKは失敗するが8-21となり2T2Gで逆転と、いよいよ反撃体制が整ったかに見えた。

が、本日の関東学院は集中力が続かない。カウンターアタックからのチャンスもノックオン、苦戦のスクラムではコラプシングとスタンドから溜息が漏れる場面が続き、波に乗ることができない。法政は17分に関東学院陣で得たPKのチャンスからショットを成功させて24-8とリードを16点に拡げる。反撃の芽を摘まれた形の関東学院にとって、この3点が重しのような形でのしかかりアタックでのミスが減らない。

試合も終盤にさしかかった33分、関東学院は法政陣ゴール前のアタックで21服部がラックからスッポリ抜け出てトライ。GK成功でビハインドは9点となり、残り時間からまだまだ再逆転は可能。関東学院は最後の力を振り絞って反撃する。しかしながら、ここでも自陣のスクラムでコラプシングを犯してしまい法政が(ショットは選択せずに)ゴール前ラインアウトからアタック。ここで痛いトライを献上し15-29(GK失敗)。

さらに43分、法政は自陣でのカウンターアタックからFB石岡が左サイドタッチライン際を快走。タックラーをかわして内側にフォローしたWTB坂田にパスを送る。パスを受けた坂田はゴールに向かって快走し、タックラーを巧みにハンドオフでかわしながらさらに内側を走っていた21北川にラストパス。法政らしいと言ってしまえばそれまでだが、この形なら絶対にゴールラインまで行くぞ!というDNAはしっかり受け継がれている。個人技と3人の意思疎通が図られた連携プレーが見事だった。

GKは失敗するが36-15で法政の勝利が決まった。スコアから見れば法政の圧勝だが、攻めている時間は関東学院の方がむしろ長かったこともあり辛勝の方が近い内容。勝敗を分けたのは、派手なプレーはなくても地道に相手をタックルで止め続け、ルースボールに素早く反応し、パスを確実に繋ぐプレーができたかどうか。「復活」への道程は法政が一歩以上リードだろうか。



◆試合後の雑感

法政の選手達のプレーを観て、まずやるべきことを確実にやることを普段の練習から心がけているように感じられた。ピッチから聞こえてくる声の多さも法政の圧勝。叱咤激励が飛ぶ活気のある練習風景が浮かんでくる。この試合の勝利により、3勝1敗での折り返しは大学選手権出場に向けて上々の出来。ただ、残りの対戦相手3校は前年度下位とは言え、体格面での不利は否めず厳しい相手と言える。今シーズンの持ち味をどこまで貫けるか(活かせるか)に着目したい。

関東学院がVを重ねていた頃のラグビーは、たとえそこが自陣インゴールだったとしても15人で確実にボールを前に動かしてゴールを目指す組織的なランニングラグビー。フロントローが余裕を見せてフィニッシャーになるラグビー(けして偶然ではない)は他に観た記憶が無い。そんなラグビーが可能なのも基本プレーがしっかりしていたから。狙いは分かるが軽く見えてしまうプレーが散見されるのが現在のチームと言える。東海大、日大、大東大との対戦を控える中で、相手に学ぶことが多かったと思われるこの試合での教訓を糧にして欲しい。

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