●五感俳句060・質感=柔02・高井几董2011-10-31
○「やはらかに人分け行くや勝角力」(高井几董01)
季語(相撲・秋)
今のように年6場所になる前は「角力(相撲)」は秋の季語でした。力士が勝って観衆のなかを引き揚げていきます。喜ぶ観衆をやわらかく両腕でかき分けながら。
○高井几董(たかいきとう)(1741~1789)
代表句「裏店やたんすの上の雛祭り」02
季語(雛祭り・春)
京都の人。江戸時代中期の俳人。→与謝蕪村に師事し、天明期の代表的な俳人のひとり。蕪村没後、夜半亭をつぎ三世となった。酒を愛した。門人宮紫暁によれば、「酒無ければ句なし、句を得て又酒をたのしみとする」という風であったという。
●次元俳句060・超次元(彼岸)02・上村占魚・2011-10-30
○「形なき子を連れあそぶ秋の山」(『萩山』)(上村占魚01)
○季語(秋の山・三秋)
【鑑賞】:「九月十一日登校途上交通事故にて深死す。海城学園高校一年なりき。享年十五歳」の前書きがある句です。
○上村占魚(うえむらせんぎょ)(1920~1996)
○好きな一句:「ちちははに遠く銀河に近く棲む」02
○季語(銀河・初秋)
【Profile】:熊本県人吉市生まれ。東京美術学校卒後、女学校の美術教師などを務めたが辞任後は俳人の生活に終始。1937年から作句に志し、1943年上京後は→高浜虚子・→松本たかしに師事。1949年『ホトトギス』同人。たかし・虚子没後は自ら俳句の研鑚につとめ後進指導に当たる。1949年『みそさざい』創刊、主宰。
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上村占魚掲載句
03さらさらと羅みづのごとたたむ(羅・夏)〈方法・オノマトペ〉2012/5/24
●技法俳句059・比喩(直喩)=ごとく08・桜井博道・2011-10-28
○「桃啜るプールサイドに跼むごと」(桜井博道01)
季語(桃・秋)
秋の果実代表格の桃。その味、色合い、柔らかさ、なにより果汁のしたたるみずみずしさが、多くの俳句に詠まれてきました。甘い果汁をこぼさないように、慎重に啜る姿を「プールサイドにかがむようだ」と表現しました。
○桜井博道(さくらいはくどう)(1931~1991)
代表句「藪柑子夢の中にも陽が差して」02
季語(藪柑子・冬)
東京生まれ。1949年「寒雷」に入会し、→加藤楸邨に師事。1979年、→森澄雄「杉」創刊に参加。同年、現代俳句協会賞受賞。1980年、第12回清山賞受賞。
桜井博道掲載句
2011/12/08 03十二月八日味噌汁熱うせよ(十二月八日・冬)〈方法・歴史題材〉
2013/02/08 04フルート曲杉一本づつ雪ふらす(雪・冬)〈特集・楽器(フルート)〉
●方法俳句059・歴史題材04・京極杞陽・2011-10-27
○「秋風の日本に平家物語」(→京極杞陽03)
季語(秋風)
秋風が吹く日本列島ですが、この日本に平家物語という軍記物語がありました。秋風が琵琶法師の琵琶の音と重なるようです。この句と対をなす同作者の句に「春風の日本に源氏物語」04があります。
○色彩俳句059・白010・横山白虹・2011-10-26
○「石膏像の眼玉の白き文化祭」(横山白虹01)
○季語(文化祭・晩秋)
【鑑賞】:学校の美術室。白い身体のミロのヴィーナスやブルータスの目玉もやはり白。あちらこちらの学校でおりしも秋の文化祭の真っ最中です。
○横山白虹(よこやまはっこう)(1899~1983)
○好きな一句「磔像に四囲の黄落とどまらず」(『空港』1974)02
○季語(黄落・晩秋)
【Profile】:東京本郷生まれ。医学博士。九大在学中「九大俳句会」を創設、→吉岡禅寺洞の門に入り「天の川」を編集したが、1937年「自鳴鐘(とけい)」を創刊主宰した。1952年より「天狼」同人。現代俳句協会会長をつとめた。
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横山白虹掲載句
03雪霏々と舷梯のぼる眸ぬれたり(『海堡』1938)(雪・晩冬)〈五感149・湿感4〉2013/11/18