ある「世捨て人」のたわごと

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エルナン・コルテス・・・アステカ帝国の征服者(2)

2014年12月28日 | 好きな歌

功罪と評価[編集]

 
エルナン・コルテス

コルテスはアステカ文明を完膚なくまでに粉砕し、その文化に全く理解を及ぼさなかった。また、コルテスはキリスト教徒、それも敬虔なるカトリック信徒であったがために、インディオの社会が持っていた人身供犠などの「野蛮」とされる側面のみをあげつらい、インディオの習慣を廃止させることに成功したが、コルテスの略奪行為に依るものであったことが明らかにされるのは後世のことであった。

もっとも、コルテス以外のメキシココンキスタドーレスたちも同様であり、インディオに対する略奪行為を咎める者はほぼ皆無であった(中南米での虐殺・虐待を告発したコンキスタドーレスも存在したが、激しい批判を受けたため、少数に止まっている)。事実、彼らは征服先で黄金を略奪し、インディオの大量虐殺を行った。そして多くのインディオ女性を強姦し、さらには征服が一段落したのちは征服者としての政治的経済的な力でこれまた多くのインディオ女性を妾として所有した。コルテス自身も、インディオ女性のマリンチェを妾として寵愛し、彼女との間に生まれた子供にマルティンと名付けており、現在も末裔がメキシコにいる。

かつてはコルテスの行為に関しては、インディオたちを人身供犠などを掲げる残酷な旧来の宗教の因習や鞏固な身分制から解放した、宣教師によって福音に接することが出来た、などと肯定的に捉える見解が大半を占めた。だが、スペイン人による隷属と搾取は、先住民の文化・伝統・宗教を徹底的に粉砕し、先住民は白人入植者たちに奴隷の様に使役されるという状況に置かれた。このため現在では、コルテスの行為は文化破壊行為として批判的に受け取られている。

そして、新たな隷属と搾取の先にあったのは、インディオ自身によるスペインからの独立運動に他ならなかった。16世紀後半にはスペイン政府が直接統治に乗り出したため、コンキスタドール(とその後継者たち)が度々反乱を起こしたが、小規模な物に過ぎず、独立にまでは至らなかった。18世紀から19世紀にかけて多発したインディオの反乱は後にメキシコ独立の原動力とはなった。だが、メキシコ合衆国の実権を手にしたのは、かつて略奪と虐殺を繰り返したコンキスタドールの子孫に過ぎなかった。インディオの社会的立場の向上は20世紀にならなければ実現し得なかったのである。

コルテス一行を評してナワトル語で書かれた『コディセ・フロレンティーノ』には「餓えた豚のように黄金を欲した」と記されている。また、コルテスの封じられたバジェ・デ・オアハカ侯の侯爵位は、正妻の子マルティンが継いだ。その後、男系は絶えたが、女子相続人を通じ現在までバジェ・デ・オアハカ侯爵は存続している。

日本語文献[編集]

  • コルテス征略誌 黄金の帝王モンテスマの最期 モーリス・コリス 金森誠也訳.大陸書房 1976 のち講談社学術文庫 
  • コルテス メキシコ征服者の栄光と挫折 寺田和夫編訳 世界を創った人びと 平凡社,1978.8.
  • 大航海時代叢書 第2期 12.征服者と新世界 コルテスほか 伊藤昌輝ほか訳. 岩波書店,1980.10.
  • 冒険者たちの世界史 ラルース版・劇画 6 アズテクの黄金 コルテス,デ・ソト ミシェル・ド・フランス編集 榊原晃三訳 タイムライフブックス, 1983.8.
  • メキシコ征服 アステカ帝国と征服者エルナン・コルテス・真実と虚構 山瀬暢士 バーチャルクラスター ブッキング (発売), 2003.4.

脚注[編集]

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  1. ^ 裏面はフランシスコ・ピサロ
  2. ^ 「世界探検全史 下巻 道の発見者たち」p61 フェリペ・フェルナンデス-アルメスト著 関口篤訳 青土社 2009年10月15日第1刷発行
  3. ^ 「図説 ラルース世界史人物百科Ⅱ ルネサンス - 啓蒙時代」p76 - 77 2004年10月25日第1刷 フランソワ・トレモリエール、カトリーヌ・リシ編 樺山紘一日本語版監修 原書房
  4. ^ 「物語メキシコの歴史」p33 中央公論新社 大垣貴志郎 2008年2月25日発行
  5. ^ 「ラテンアメリカを知る事典」p172 - 173 平凡社 1999年12月10日新訂増補版第1刷
  6. ^ フランソワ・トレモリエール、カトリーヌ・リシ編著、椛山紘一日本語版監修『ラルース 図説 世界史人物百科』Ⅱ ルネサンスー啓蒙時代 原書房 2004年 79ページ

関連項目[編集]


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