自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

メディアは、なぜ真実を伝えないのか? 我々は知らぬ間にメディアに洗脳されている~アベノミクスの誤りを例にして

2016-12-05 20:42:51 | 自然と人為

 マスコミが報道するポピュリズムとは大衆迎合主義ということを指している。大衆は愚かなのか? メディアの情報操作によって愚かにさせられているのか? この「大衆迎合」という報道が、日本国憲法の根幹である国民主権を嘲笑っていることに、我々は気がつかない。
 一方では著作権のような古い象がいて情報公開を拒んで自己利益を貪り、一方では国民主権のような基本的人権を気にしない大衆が増えるのは、メディアによって情報が操作されて我々が洗脳されているからだ、と私は思う。

 以前、このブログで一般には理解しがたい言葉、(浜田宏一(4)「経済は分かっているかもしれないが、経済学を分からないでしゃべっておられる」)を紹介したが、そのアベノミクスの理論的責任者である浜田氏が経済理論の誤りを認めた (2)。しかし、アベノミクスをこれまで大きく宣伝してきたメディアは、このことを取り上げないし、解説もしない。
 経済学理論の前に現実があるのは当然のこと。しかし、経済学の大家とされ政府やメディアに重用される学者は現実を知らない。現場から理論を組み立てることを学問として軽視している。メディアも政府に関係する学者を「安全な権威」として扱い、真実を知ろうとしない。

 一方、ファイナンシャル・プランナー(FP)として現場で仕事をしてきた天野統康氏は経済学者という権威を持たず政府やメディアに重用されていないが、理論が現実を無視していることを指摘し、「お金に支配された民主主義」(動画)について解説している。
 これまでの経済学では、金融経済と実体経済が分離されていない。
フィッシャーの交換方程式
  通貨供給量×流通速度=実体経済の商品量×実体経済の商品価格
 しかし、著書「円の支配者」で知られているヴェルナーの交換方程式(動画:天野統康)では、
  実体経済向け信用創造量×流通速度=実体経済の商品量×実体経済の商品価格 
 金融経済と実体経済を分離して考えないと、いくら金融緩和(通貨供給量を増加)しても物価に影響を与えないし、物価上昇率2%の目標は達成されないことの意味が分からないということだ。アベノミクスの誤りをズバリ指摘している。

 私の敬愛する京都大学名誉教授・本山美彦氏も、世界経済を牛耳る「金融権力」について誠実に問題点を指摘し、「リベラリズム・福祉国家」から、『機会の自由』を最上の価値とする「新自由主義」への動きを解説している。 参考: 金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス著者 本山美彦
 アメリカは金持ちが尊敬され、自分を守るために銃を持つことを認める人が力を持つ、歴史が浅く文化が未熟で干からびた国だ、と私も思う。そのような資本主義・民主主義社会を主導しているのは、政府やIMF、世界銀行などにいる共産主義嫌いの『人脈』により合意されている『ワシントン・コンセンサス』だそうだ。これにより民主主義がお金で支配されているので支配者を「金融権力」と言うが、その実態は経済学理論では触れられていないことと、お金を使うものの複式簿記は教えられるが、お金をつくるものの複式簿記(?)があるのかないのか、あるにしても市場側にいる我々と通貨を創造する中央銀行(日本銀行)では借方と貸方が逆になるのではないか? いずれにしても政府から独立している彼らを規制する方法がないので、我々には「金融権力」というものが意識化されない。

 「資本主義の限界」の著者、木下栄蔵氏は、私のシステム論に近いシステム工学が専門だ。物事には「正」と「反」があり、正・反を論じて「合」に止揚(論理アップ)するのが弁証法だが、この現実の問題を点や線ではなく全体のシステムの問題として取り扱い、数学的手法を含めて根拠のある論理で説明しようとするのがシステム学的手法なので、システム学には考え方として経済学も含まれる。木下氏は最適化(線形計画法)の双対問題の考え方を導入し、経済には「正の経済」と「反の経済」があるとしている。これまで我々が貨幣を使う日常の経済は供給と需要がバランスするのを正常として、需要に供給が追い付かない(供給<<<需要)とき、バブルの発生と考えてきた。
 第2次世界大戦後、アメリカは世界の警察として世界の戦争に加担してきたが、戦争は生活の場を廃墟にするので需要が生まれ、戦争は絶対悪だが、資本主義が行き詰ったら戦争で回復させるという考え方がある。このように、需要が経済を活性化することを常識としてきたこれまでの経済を「正の経済」とする。しかし、過剰供給に需要が追い付かない場合(供給>>>需要)、「反の経済」が生まれる。この場合の供給とは通貨のことで、量的金融緩和やマイナス金利に見られる中央銀行(アメリカのFRBや日本銀行)の金融政策が原因となる。
    
 参考: 日米欧の経済停滞は「資本主義の限界」なのか?(日刊SPA!)(1)(2)
 「反の経済」はどうして生まれ、20年もGDPの伸びが止まった失われた時代が続いているのだろうか? 一つには3種の神器と言われた生活を変える商品が行きわたって新しい需要が伸びないこと、もう一つにはデジタル化が進み供給と需要と流通の構造が変化していることが考えられる。その上、政府は「経世済民」で国民の間にお金が循環する政策を採用しないで、アベノミクスのような富裕層にお金が貯まる金融緩和に熱心なことが「反の経済」を生む。金融緩和をしても通貨は国民の生活には渡らないで格差が拡大するだけだ。まずは、国民が安心して生活できるように、「経世済民」の気持ちを支配者が取り戻すことが必要だ。内戦が終了した江戸時代初期の保科正之の再評価が今こそ必要だ、と私は思う。江戸時代は資本主義もなければ民主主義もない。ただ、支配者が名君であれば民は安心して生活できた。明治維新は民主主義革命ではない。日本が資本主義に侵略されたという点に気が付かねばならない。

 これまでグローバル経済を批判してきた水野和夫氏は、資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書,2014年)等、多くの著書を発表している。 参考: 【特別対談】内田樹×水野和夫 資本主義の限界とニッポンの未来
 アメリカでは、トランプが大統領になったら最初にTPPを廃止すると宣言した。慌てて安倍首相がトランプに会いに行ったり、TPPに参加することを国会で強行採決した。何故、日本の財界はそこまで日本の制度を破壊するTPPが必要なのかと思ったが、すでに1兆1900億円のTPP対策予算の消化のためか? と言われている。税金は国民生活の改善のために使って欲しい。お金は「麻薬」のようなもので、民間の銀行がお金を貸し出すことでお金はつくられ、借りた人は借金漬けで働き、少しでも多くの収入の可能性がある話を聞くと、お金では買えない幸福があることを忘れてしまう。お金は格差が拡大しないように、国民のために自然災害に備え、老朽化施設を改修し、福祉や教育、地方や生きていく原点の農業を大切にするために使うべきだ。儲けるために農業をやる人はいないように、儲けるためにビジネスに励む時代でもない。儲けとは関係のない技術や流通を含めたシステムの変革という夢のために人は働くべきだ。
 「宵越しの金は持たない」のは、江戸庶民のその日暮しのやせ我慢にしても、「金は天下の周りもの」。この言葉は華僑の知恵にとどまらず、「経済的合理性」を示し、お金を貯めるのではなく循環させることで経済は活気を取り戻す。しかも、国債は政府にとっては借金だが、国民からすると資産だ。税金は国民のお金だ。
 アメリカに従うことが日本を繁栄させることだと思っているのか、専用機を乗り回し、税金を無駄遣いして国民のために使わない政府を国民は怒るべきだ。

 日本のTPPに熱心な安倍政権の悪事に比べれば、韓国の朴大統領のお友だち「スキャンダル」なんてよくあること。「なんで退陣騒動か?」と分からない。それは、トランプ次期大統領がTPPを日米2国間のFTAに切り替えると宣言しているが、韓国は「韓米FTA(自由貿易協定)締結以降、暮らしが成り立たなくなった農民たちが、デタラメな政治に怒っている」ことを日本では報道しないからだ。私もブログ「日清戦争・東学農民戦争の120年」で、「東学農民」のことを知った。
 とにかく事実をマスコミが報道しないので、我々は洗脳され易い。アンテナを張って、真実はどこにあるのか考える習慣が、ますます必要な時代になってきた。

 参考: ドイツ経済学者・政治家:‘アメリカ衰退の模倣はやめよ! NATOを脱退せよ!
      至る所で、マッカーシズム発生
      EU、国民に、自らの洗脳のために、資金拠出させる案に賛成投票
      年金カット法案、国会延長があっさり可決+カジノ法案審議入


初稿 2016.12.5 更新 2016.12.6



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