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保守記事.101-209 この国現状

2016-10-19 17:43:07 | 記事保守

「バイバイ」笑顔の幼子、母は橋から落とした

山本奈朱香、田中恭太

2016年10月17日04時58分

■小さないのち 奪われる未来

 子どもへの虐待が後を絶たない背景の一つに「育児の孤立化」があるとされる。ある母子の悲劇を追った。

 「この子をこのまま置いておくわけにはいかない」

 不機嫌になっていく交際相手の男性の様子を見て、24歳(当時)の女性はそんな気持ちになっていった。

 3歳の一人娘は、別れた元夫との子ども。同居を始めた男性は、徐々に娘の存在をうるさがるようになっていた。この朝も不機嫌になってトイレに閉じこもると、ドアを殴って壊した。

 夕方、保育所に娘を迎えに行った後、まっすぐ帰宅せず、近所の実家に寄った。母に預かってもらいたかったが、娘が風邪気味でできなかった。

 午後8時前、自宅アパートに戻った。食器を片付けようと台所に行くと、娘が泣き始めた。眉間(みけん)にしわを寄せ、大きなため息をつく男性を見て、娘とアパートを出た。子どもを預けられそうな施設をネットで探したが、見つからない。「この子がいなくなるしかない」。そう思い詰めた。

 午後10時過ぎ。近くの川に架かる橋のそばに車をとめ、娘を両腕に抱いて橋の欄干に立たせた。

 車が通るたび、娘を欄干から降ろす。3度目、娘を抱く手を伸ばし、宙に浮く状態にしてみた。川面からの高さは4メートル以上。娘はにこっと笑い、突然こう言ったという。

「バイバイ」

 手を離した。ドボンという音が聞こえたが、その場を離れたくて車まで走った。自宅の前で車を止めると車内で少し泣き、部屋に戻った。

 翌日、橋の約1キロ下流で女の子の遺体が見つかった。3歳の誕生日を迎えたばかりだった。

 事件は2014年、日本海側の人口約8万人の地方都市で起きた。弁護士や親族らの証言、裁判記録、事件後に県がつくった「検証報告書」などをもとに、その経緯を追った。

 女性は21歳で娘を出産したが、夫の家庭内暴力(DV)もあり、娘が2歳のときに離婚した。その後、相談相手だったアルバイト先の男性と同居を始めた。

 女性は娘の発達に不安を抱えていた。周囲の子より遅く歩き始め、言葉もなかなか出ない。アトピーとぜんそくの持病もあった。かかりつけ医だった小児科医に「なんでうちの子は弱いの?」と何度も聞いた。予防注射はすべて受けさせていた。小児科医は「精いっぱい育児していたという印象」と話す。

 「育児に疲れてイライラする」。事件の2カ月前、女性は市役所を訪れ、泣きながら相談員に悩みを打ち明けていた。

 相談員は「1日1回、7秒間、抱きしめてあげて」と声をかけた。女性は言われた通り娘を毎日抱きしめてみた。娘は最初は喜ぶ様子を見せたが、育児のストレスは消えなかった。

 相談から約1カ月後。娘が発熱し、迎えに来るように保育所から電話がきた。だが女性は「もう無理」と泣きじゃくって電話を切り、引き取りを拒んだ。

 保育所から市に連絡が入り、児童相談所(児相)は娘を一時保護する方針を決めた。しかし、実家の祖母が保育所に向かい、娘を引き取ったため、保護の決定は取り消しになった。それから1カ月後、事件は起きた。

 法廷で女性は「橋から落としてしまうことしか考えられなかった。最低なママでごめんなさい」と涙を流しながら語った。

 この夏、女性の父親が取材に応じた。育児に悩んでいた女性に「焦るんじゃないよ。笑える時がくるから」と言い続けたという。どうにもならない時は「絶対に親に相談してくれるというおごりがあった」と悔やむ。女性が市に相談していたことは事件後に知った。「最優先は命。それだけを救いたかった」

 女性は懲役9年の判決を受け、今は服役中だ。両親への手紙には、常に謝罪の言葉が並んでいるという。

■自治体、対応追いつかず

 「子どもを見るだけでなく、親の気持ちを行政が受け止めないと、こういう事件は防げないかもしれない」。事件の担当弁護士は振り返る。

 虐待に詳しい西澤哲・山梨県立大教授(臨床福祉)は「女性が保育所の迎えを拒否したことを重く受け止め、子どもを保護するべきだった。『育てられない』という親を説得して同居を続けさせ、その後虐待死させてしまった事例はこれまでにもあり、児相はもっと専門性を高めるべきだ」と話す。

 事件後、市は相談員を増員し、子育て支援センターも増やした。一方、今年できた検証報告書で、県は児相の体制不備を指摘されたが、児童福祉司の人員は現時点で当時と変わっていない。今もこの地域では夜間に育児の悩み相談に対応する窓口はない。

 全国を見渡すと、進んだ取り組みもある。

 「子どもがかわいいと思えない。私は普通じゃないのでは」。福岡市の児相には、このような電話が子どもの寝静まった深夜にかかってくる。24時間態勢で臨床心理士らが待機し、虐待対応に加え、育児相談にも応じる。じっくり話を聞き、「そういう人もたくさんいますよ」などと助言すると安心する人が多いという。相談の約3割は夜間帯だ。

 厚生労働省は昨夏、虐待通告などを24時間受ける短縮ダイヤル「189」を設け、近くの児相に電話がつながるようにした。だが、その対応はまちまちで、夜間は緊急の虐待事案だけに対応し、通常の相談に応じる態勢までは整えられていない自治体も多い。(山本奈朱香、田中恭太)

     ◇

 〈児童相談所(児相)〉 都道府県と政令指定市に設置が義務づけられ、全国に209カ所ある。不登校や非行への対応のほか、父母の不在や虐待などにより養育困難な子どもの一時保護権限を持つ。市町村の育児支援や虐待対応へのサポート、里親さがしなども行う。15年度に全国の児相が対応した虐待件数は10万件超と10年間で約3倍に増えた。児童福祉司は約1・5倍の増加にとどまり、勤務年数は3年未満が4割超で、専門性の不足も指摘されている。



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