梅毒感染が拡大、女性は倍増 妊娠中なら胎児に悪影響も
冨岡史穂
2016年2月16日05時30分
梅毒に感染する人が近年、急増している。特に女性は、2015年では前年の2倍に増えた。妊娠と時期が重なれば、赤ちゃんに感染して先天的な梅毒になる恐れもある。厚生労働省は予防を呼びかけている。
梅毒は、「梅毒トレポネーマ」という細菌による感染症で、主に性行為で広がる。性器や唇などにしこり、ただれが起き、進行すると全身に赤い発疹ができる。重症化すると、まひなどを起こすこともある。
国立感染症研究所(感染研)のデータによると、日本の感染者は1948年には22万人近かったのが、治療薬の開発などで激減。90年代以降は1千人を下回り、ほぼ横ばいが続いていた。しかし、2010年から増加傾向に転じ、昨年は2600人を超えた。
中でも女性の増加が目立つ。15年10月時点では前年同期比の2倍の574人にのぼった。このうち76%を15~35歳が占めている。
若い女性に感染が増えると、妊娠している場合、胎盤を経由した胎児への感染が心配される。流産や死産を招く危険に加え、生まれた赤ちゃんが先天性の梅毒になる可能性もある。
先天梅毒の赤ちゃんは、神経系の障害や肝臓の病気を持っていることが多い。東京慈恵会医科大教授の石地尚興(たかおき)さん(皮膚科)は「発見の時期にもよるが、赤ちゃんの梅毒の治療は難しい」と話す。
厚労省が標準とする妊婦健診では、妊娠初期(13週まで)に1回、梅毒を含めた性感染症の有無を調べることになっている。その時点で感染がわかれば、妊婦が薬を飲むことで、赤ちゃんとともに完治できる。だが、妊娠中期(14週)以降に性交渉で感染することもある。妊婦が自身で検査を受けない限り、赤ちゃんの感染に気づくのは困難だ。
また、経済的な事情などで妊婦健診を一度も受けない女性もいる。厚労省は「感染リスクを知ってもらうことが最大の予防策」として、女性を意識したピンクのポスターを新たにつくった。パートナーと一緒に検査を受けることや、コンドームを適切に使うことなどを呼びかけている。
なぜ梅毒の感染は増えているのか。欧米やカナダ、豪州、中国でも増加が報告されている。
感染研の大西真・細菌第一部長は「細菌の感染力が急に強くなったり、薬が効かなくなったりしたという報告はない。同性間、異性間を問わず不特定多数との性行為が増えていると推測するしかない」と語る。
日本では女性の増加が目立つとはいえ、感染者の8割近くは男性だ。かつては同性間の性的接触で感染する男性が大半だったが、12年からは異性間の接触が増えているという。
東京医療保健大学の渡會睦子准教授(公衆衛生看護)は「男性は今の自身の安全だけでなく、パートナーと将来の自分を守るという意識を持つことが重要だ」と訴える。
渡會さんらが、13年2月から14年12月までに性感染症の郵送検査(有料)を受けた男女計1万6千人余りを対象に実施した調査によると、男女ともに15~19歳と40~50代の二つの年齢階層で、陽性の割合が高かったという。「安全なセックスの重要性を理解していない大人が多いことを示している。大人が認識しなければ、子どもたちにも伝わらない」と指摘する。
感染を防ぐには、コンドームの使用だけでは万全ではない。病原菌は、性器の接触のほか、口や肛門(こうもん)などあらゆる粘膜からうつるためだ。理論的にはキスでの感染もありうるという。
渡會さんは「決まったパートナー以外と性行為をしないことと、お互いを守るために一緒に検査に行こうと言える関係性を築くことが大切だ」と話す。
主な治療は、ペニシリン系の抗菌薬を一定期間飲むことだ。適切な治療を受ければ完治する。ただ、適切な治療には正しい診断が必要になる。近年までは「忘れられた疾患」とも呼ばれるほど患者は減少し、診療経験を持つ医師も減っている。慈恵医大の石地さんは「医師が見逃せば、感染の増加を食い止められない」と危惧する。(冨岡史穂)
梅毒患者が2千人超え 99年以降初、若い女性に増加
福宮智代
2015年11月27日23時45分
今年の梅毒患者の数が、感染症法で届け出が義務づけられた1999年以降で初めて2千人を超えたことが、国立感染症研究所のまとめでわかった。10月28日時点で2037人。特に若い女性で増えているという。妊娠中に感染すると死産や胎児に障害が起きる可能性があり、厚生労働省は注意を呼びかけている。
梅毒は、主に性的接触で病原体の細菌が感染し、陰部などにしこりや潰瘍(かいよう)ができる。抗菌薬で治療できるが、放置すると全身に発疹ができ、重症化し死亡することもあるという。
年間患者数は67年の約1万1千人をピークに減少。2001~05年は500人台で推移していたが、最近は13年1228人、14年1671人と増加傾向にある。今年は男性が1463人、女性が574人。女性は10年の124人の約5倍になり、男性より増え方が著しかった。今年の女性患者の76%は15~35歳だった。
厚労省は「リスクの高い不特定多数との性的接触は避け、コンドームを適切に使用して欲しい」と呼びかけている。(福宮智代)
隠さず話すよ、性のこと 「先生」は中絶・性病経験も 20・30代の授業人気
2015年9月10日05時00分
性感染症、妊娠、中絶――。現実に起こりうることを正しく知ってもらおうと、中絶や性病経験のある若者たちが全国の学校で性教育をしている。人気の秘密は「隠さず話すこと」。関心はあるけど、なかなか人には聞きにくい。そんな悩みにも答えてくれる。
各地の学校で性教育をするのはNPO法人「ピルコン」(東京都)。代表の染矢明日香さん(29)ら4人が7月下旬、東京都立川市の通信制高校サポート校「KTC中央高等学院」(本部・名古屋市)を訪れ、男女100人を前に授業をした。
「性感染症に感染したことがある陽子です!」。身近に感じてもらおうと、メンバーの筒井陽子さん(33)はまず自己紹介で経験を明かす。
「子どもを1人育てるのに3千万円かかると言われています。未就学児だと月7万円。セックスの先に妊娠、出産、子育てがあることを忘れないで」
保険会社の調査をもとに出産・育児にはお金がかかることを説明。望まない妊娠をしないために、コンドームやピルでの避妊を呼びかける。「排卵日が正確な人はいない。妊娠しにくい『安全日』はないよ」。だが、避妊も中絶もできずに出産を迎える女性がいるのも現実だ。「施設や里親に子どもを託すこともできる」と選択肢を紹介した。
男の子の「よくある悩み」については、勝部元気さん(32)が答えた。国立保健医療科学院の調査結果から、データを示した。
「日本人男性の7割は包茎と言われている。手でむければ大丈夫」。アダルトDVDの見過ぎにも注意を呼びかける。「あれはスーパーアクロバティックな技で現実とは違う。影響されないようにね」。教室から笑い声が上がった。
性感染症は、性経験のある高校生の10人に1人が感染しているとされる。実際に症状を紹介する画像を見せると、生徒たちは驚いた表情を見せた。
授業を受けた高校1年山本圭悟さん(15)は「普段はあまり聞けないことを教えてもらった。相手にも自分にも大切なことを学べた」。高校1年の木村汀奈(ていな)さん(16)は「10代で妊娠したら親にも迷惑をかけるし、学校にも通えなくなると思う。気をつけたい」。
この学校でピルコンが授業をするのは5回目。依頼した教務の鈴木ナターシャ幸さん(24)は、「彼女がいるのに『避妊って何?』『コンドームってどこで買うの?』という生徒も多い。望まない妊娠をする子もいる。親近感をもてる若い人に教えてもらえると説得力がある」と話す。
染矢さんは、慶応大3年生だった20歳の時、コンドームをつけないセックスを繰り返し、中絶した経験がある。妊娠後に慌ててインターネットで調べた。だが、情報が多すぎて、何が本当かわからなかった苦い記憶が活動の原点だ。2007年から活動を始めたピルコンには現在、助産師や会社員、学生など20~30代を中心に男女30人が属し、全国各地で子どもや保護者向けに100回、こうした授業をしてきた。
「性は日常生活にあるもので、いやらしいものでも恥ずかしいものでもない。隠さず話すことが正しい知識につながる」と染矢さんは言う。(貞国聖子)
■20歳未満、中絶2万件弱 2013年度、全体の1割
厚生労働省の調査によると、13年度の中絶件数は18万6253件。生まれてくる赤ちゃんの数の5分の1に相当する。このうち20歳未満の中絶件数は1万9359件。全体に占める割合は10.39%で、以前より高まっている。
日本性教育協会の11年の調査によると、性交経験がある高校生は女子22.5%、男子14.6%。このうち、「避妊をいつもしている」と答えたのは女子53.7%、男子53.2%にとどまった。
避妊をしない理由については「準備していないから」が男子で最も高く76.2%。男女ともに「たぶん妊娠しないと思う」が25%前後、「めんどう」が15%前後だった。一方で、「妊娠したら産むつもりだから」は、女子が19.3%だったのに対し、男子は4.8%だった。
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