語り得ぬ世界

現実逃避の発展場 Second Impact
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防人の旅、時々妖怪_38【第2日13】

2024-03-08 07:26:21 | 珍旅道中記
見どころもツッコミどころも多い横浜市電保存館展示コーナーです。



12:53 市電最盛期は昭和30年代初期でした。それをピークに下降線。そのあたりがわかるパネル・資料展示です。



車両展示コーナーの陳列ケースにも腕章がありましたね。重複してるがな。まとめましょうね。文字が左始まりなので戦後のものですかね。



昭和30年代は横浜市電を含め都市部の路面電車(市電・私鉄とも)の黄金時代でもあり、世界的には厳しい東西冷戦期ながら日本は戦災復興が進む平和な時代にあって高度経済成長期に伴う栄光の時代でもありました。



しかしながら、それも束の間昭和30年代後半の路面電車は飽和期から衰退期に一気に進んでいきます。



車内吊りにもあった横浜開港100周年の「横浜開港百年祭」当時の写真ですね。横浜開港は安政6(1859)年です。それからわずか100年でここまで、関東大震災やいくたびかの戦乱を乗り越え発展してきた横浜・日本、そして先人たちのご努力がいかに凄かったかというのがわかります。
ちなみに、山下公園近くに『横浜開港資料館』があります。どちらかというと名称のとおり図書館に近い施設でして、横浜開港にまつわる古文書や資料、紙媒体などの文献が保存・公開されているようです。珍はまだ行ったことがありません。



路面電車は急激なモータリゼーションの進展により、中心市街地における渋滞要因として都市交通の王座から陥落し、それどころかいよいよもって廃止の憂き目に遭います。



「サヨウナラ」の「ウ」が時代と地域性を感じますけど、何となく切ないですな。



路面電車に替わって都市交通における主役となったのが地下鉄、バスですが、バスはもともと路面電車と並行する(補完する)形で発展してきましたが、路面電車廃止の代替手段はやはり地下鉄ですね。地下鉄開業が市電廃止と直結しているのは横浜市も大阪市も同じです。
地下鉄の歴史も古く、世界最古は英国ロンドン地下鉄が1863(文久3)年開業、日本最古は大正4(1915)年に東京駅地下の郵便物貨物専用線ですが、客車は昭和2(1927)年12月30日東京地下鉄道(東京メトロのルーツ)により上野-浅草2.2km(現在の東京メトロ銀座線)で開業しました。どちらかというと民間主導でした(大阪地下鉄は大阪市による官主導)。
ちなみに、日本最古の路面電車は明治28(1995)年開業の京都電気鉄道による伏見町(現在の伏見区中心部)-京都駅前とされていますが、京都市電としては明治45(1912)年6月開業が最初でして、京都市は大正7(1918)年京都電気鉄道(その後二条から岡崎まで延伸)を買収しています。そして、市民の存続運動もあったようですが、京都市はやはり地下鉄開業を見越して昭和53(1978)年全線廃止しました。そういえば珍母校は市電路線整備のために敷地をセットバックしたと聞きました(敷地は旧薩摩藩屋敷跡、地主は相国寺)。その名残はいまも建物の形状から覗うことができます。
なお、横浜市電は大正10(1921)年4月1日運行開始と_32で書きましたけど、実は京都市と同じく民間路線を横浜市が買収しています。もっとも古い路線は明治37(1904)7月15日横浜電気鉄道により神奈川-大江橋が開業していまして、それの買収を含め大正10年4月1日に横浜市電が開業したというわけです。



横浜市営地下鉄開業時のポスターです。タッチも気になりますけど、中には…



斉藤由貴も。若いね。しかもかわいー。「YOKOHAMA YUKI」はイミフですが(苦笑)彼女は横浜市南区出身のハマッ子です。このポスターは昭和60(1985)年の新横浜-舞岡全線開通時のものでして、斉藤由貴は19歳ですね。



このあたりは横浜市営地下鉄の資料です。チン鉄の珍には仇みたいなものですが(笑)



皮肉なもので、地下鉄ともかく、今やバスも人口減少や少子高齢化に伴う採算性や運転手人材不足などにより、まず地方部で存続の危機を迎えています。特に後期高齢者による自家用車の運転リスクが増大していて、それなりにバス・タクシー需要はあると思いますが、タクシーも担い手不足、行政による高齢者の路線バス・デマンドバス・デマンドタクシーなどの泥沼無限補助も限界に達しつつあります。また自然災害による鉄道路線の寸断を復旧ではなく代替バスで補う傾向が強いですが(被災鉄道区間・路線を廃止)それも早晩限界を迎えます。いよいよ地方部は国によって放棄されていくのでしょうか。地方過疎地域の鉄道路線が赤字になるのはわかりきっていたことだけに、鉄道存続は民鉄であるJRに丸投げするのではなく、地方自治体への支援も含めて国策だと思いますけどね。
その波はすでに都市部にも及んでいますよね。京阪バスなどの民間バス会社は不採算路線をどんどん廃止していってます。鉄道は自動運転化しやすいですが(それでもいろいろリスクは伴いますね)バスは自動運転へと進むしかありません。とはいえAIによる自動運転は都市部ではなかなか難しい面もありますね。
ちなみに、京都市も市電廃止後に市営地下鉄開業や市バス路線拡張を行っていますが、現在はオーバーツーリズムでジモティが市バスに乗れない事態も発生していますし、歴史ある街ですから掘ればいろんな文化財が出まくるわけで、地下鉄開業が遅れ、工事費もアホほど嵩んだことは記憶に新しいです。京都市域の路面電車としては嵐電(京福電鉄)が、大阪市域では阪堺電車が活躍していますが、各地でまだ市電を始めとする路面電車は健在ではあります。今となっては観光振興の重要なコンテンツでもありますね。昭和42(1967)年に全線廃止した金沢市(市電ではなく北陸鉄道金沢市内線)なんて市が支援するなりして残しておけばよかったのにねぇ。富山市(富山地鉄市内電車)を見てほしいですな。もったいない。
(つづく)
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