帰ってきたウルトラマンには‘11月の傑作集’と呼ばれる4部作がある。
今から30年前の今日71年11月5日にOAされたのがこのEPで、それまで
怪獣としか戦わなかった帰ってきたウルトラマン初の侵略モノでゼラン星人と
いう宇宙人が登場する。
ウルトラマンとゼラン星人&プルーマの戦いは あくまで添え物で、純粋無垢な
聾唖の少年という天使の顔をした悪魔・ゼラン星人の策略に嵌った郷と伊吹
隊長のドラマだ。
このEPを担当したのがウルトラマンエースのメインライターだった市川森一で、
この作品を最後にエースの制作に移行するのだった。
MATの伊吹隊長の1人娘・美奈子が聾唖の少年・輝男を連れてMAT基地の
見学に来るのだが、その少年の正体こそゼラン星人。
輝男は聾唖学校の生徒で教会で美奈子と知り合い、美奈子は友達になるため
に簡単な手話まで本を買って勉強していると隊長は言うのだが・・・・
星人はテレパシーで郷秀樹に
‘怪獣プルーマが現れ、それを倒した時がお前の最期’
と挑発、それを受けた郷は逆上して思わず輝男に襲いかかり警備員から取り
押さえられて地下に隔離されてしまう。
‘心の優しい娘だから親として娘の善意を踏み
にじることはできない’
‘何事にも汚されない美しい友情’
‘あの子を何かの偏見で人をだましたり疑ったり
差別したりするような娘には育てたくない’
と隊長は思い込んでいるので郷の言う事を理解できないのだ。
ここに星人の狡猾な計画がある。
少年、しかも聾唖という障害を持った社会的な弱者に扮する事により‘汚れなき
純真無垢な存在’の仮面を被る事により隊長の娘に近づき隊長と対立させる事
によって間接的に郷を追い込むのだ。
孤立した郷は‘1人で戦うしかない’と決意し、隊長に
‘ウルトラマンがピンチに
陥ったらあの少年を捕まえてください’と告げて戦いに
赴き星人が予言した通り病院付近に怪獣プルーマが出現。
当然のようにMATの攻撃は通用せずに止むなく郷はウルトラマンに変身。
スペシウム光線が通じなかったプルーマに対しウルトラブレスレットで首を
切断、プルーマを倒して納めようとした時に突然ブレスレットがウルトラマンに
襲いかかる。
何者かがブレスレットを遠隔操作しているのがMATの隊員達にも ようやく
分かり、隊長も郷の言葉を思い出す。
輝男が入院している病院では美奈子が泊り込みで看病していたのだが、輝男
が姿を消したと言って病院内を探し続けていたので隊長は美奈子を避難させ
輝男を探し始めた。
そして霊安室で不気味な音を聞き侵入し何かの機会を操作している輝男を
発見したので声をかけると耳が聞こえないはずの輝男が振り向いて目から怪
光線を発射する。
辛うじて それをかわしてMATシュートを撃ち込むと輝男は苦悶の表情で喉
から血を滴らせながら前のめりに倒れて絶命、隊長が確認に行くと星人の正体を
現していた。
星人が死んだのでブレスレットは正常に戻りウルトラマンは助かった。
‘子供は純真だと思っているのは人間だけだ’と
次回作のエースで少年の姿をしたヤプールが差し向けたバキシムが老人達に
対して言うセリフだが、エースの世界の先鞭を付けた作品でもあるし悪魔は天使
の顔をして近づいてくるという恐ろしさが ひしひしと伝わってくる名作だろう。
おすすめブログ
@goo_blog
帰りマン31話のゼラン星人、こ奴のような壮絶な卑怯者は見た事がありませんよ(後にヤプールも同じ手を使いますが)。庇護の対象である身障者の少年に姿を変えてウルトラマン＝郷秀樹を罠にかけるという卑劣な手段。もし郷隊員と伊吹隊長との間に「信頼」が無ければゼラン星人の思う壺だった事でしょう。
娘である美奈子ちゃんを傷つけたくない隊長の心の葛藤もあったでしょうが、それ以上に郷との絆が深かったのが幸いしたと思います。
後に伊吹隊長は美奈子ちゃんに真実を話したようですが、何とか受け入れてくれた感じですね(後のMATに入隊したい発言は、この事件が影響しているのでしょうか)。
伊吹美奈子ちゃんを演じている大木智子さん。彼女は僅か半年後「仮面ライダー」60話でフクロウ男に拉致される女子高生(！！)の役で出演されてます。
カメラのアングルや立ち位置でそこそこの身長があるように見えるので(上げ底の靴も履いていたかもしれない)、長いこと本当の女子高生だと思っていた私はその事を知って腰抜かしましたよ！(笑)
私のように演技者に対して無頓着な視聴者を騙くらかせるかどうかの実験だったのか、単なる遊び心だったのか、実際ネットを見ると多くの方々が騙されているようで･･････(苦笑)。
後に石坂浩二さん主演のドラマ「ゆびきり」に出演した時には小学生に戻ってます。女の子は子供であっても「化けられる」という事ですね。
このEPは脚本が市川森一ですから、いかにもクリスチャンの市川氏らしい内容ですね。
子供など社会的弱者のふりをして暗躍するというのは後のヤプールのプロットにつながりますからね。
そして隊長と郷の絆が試されるというのもキリスト教で人類は神から試されているという思想が絡んでますから、なかなかのものですし最後に郷を救うというのはカタルシスがありますけど当時見ていてスッキリというよりホッとする結末でした。
なるほど大木智子さん、女子高生としての出演があるのですね。
ウルトラマンティガ劇場版では山田まりやが高校生役で出演してましたけど、さすがにムチャクチャ違和感がありましたよ。
それを感じさせない大木さん凄いですね。
それにしても31話のラストで走って来る姿、かわいかったですね。