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考証が中途半端じゃない、と感じた時代小説である。
Bで何気なくめくってみて、書き出しの「いきのよいのは、焼け死んだ犬猫に群らがる烏ばかりだった。」に惚れて450円で入手し読み出した、わたしにとって初めての作家である。
内容は表題の示すとおりで、江戸時代に活躍した力士、雷電の話。、かたりべとして、市井の商人(助五郎)が登場する。
浅間山の噴火による飢饉とか江戸の火災など史料を踏まえた、展開である。著者の初めての時代小説とのことであるが、内容が充実していて通俗時代小説のように生半可ではない。
どのくらい事実に基づいているかは判らないが、8割程度は史実ではないだろうか。
かといって、一般読者に疎外感を与えるような古文書の引用はないので安心して読める。
わたしにとって、つらく感じたのは相撲の取り組みの実況風の記述であった。
TVで格闘技の放映がよくなされている昨今、文章だけで記述されるのは、正直つらかった。
作者とわたしは、同年代である。この年代でこれだけの考証を踏まえて、時代小説の書ける作家はまずあるまい。いままで飯嶋和一を知らずにいたのを恥ずかしく想う。
飯嶋和一『雷電本紀』河出文庫 2004/05/20 2刷
2005/04/19 ものずき烏 記
(参考)
2005-07-15 飯嶋和一:始祖鳥記