永遠に…

始まりあるもの必ず終わりがある。永久に続く事を願ったとしても…。
この瞬間だけでも残しておきたいものとして。

2001パリ発東京行き episode Ⅲ

2008-06-25 21:28:50 | Alice’s wonderland

出会い 1
それは、梅雨末期のように、止む事なく降り続いてた雨の日の事だった。
満員電車に乗れば、人の多さに輪をかけて、湿度を増す雨。
電車が揺れるたびに、有美の足を濡らす傘。
前に座ってる男(似た歳だろうか)の持ち物らしい。
手でどけたいのだが、片手はつり革、片手はバッグでふさがりなんともしようがない。
男は、読書の夢中で、傘が有美を不快にしてる事など気がつきもしていない。
暫くして、やっと降りる駅に着き、有美はほっとした。

しかし、運命という言葉を信じるのなら、この時からそれは始まっていたのだった。
お昼になり、雨の中、学食へ有美は急いでいた。
教育棟を曲がれば辿り着くという時、傘が飛んだ。
有美はといえば、ぬかるんだ小さいじゃりの敷かれた道に突っ伏していた。
声をあげる事も出来ず、ただただ、びっくりしていた。

「ごめん、僕もうっかりしてたよ」
何が起こったのか、瞬時に把握できてなかった有美だが、その声に反応して、顔を上げると、そこには見た事のある顔が…。
「あなた!」
「?」
「なんなのよ……」
腹も立つし、悔しいしで、有美は知らず知らずのうちに、涙が出ていた。
だって、お気に入りの服も泥がつき、体中が雨でびしょぬれになったのだから。
びっくりしたのは、その男の方だった。
「どうしたの?」
「あ…ごめん、それじゃ、どこへも行けないよね」
「僕の下宿傍だから、家へ来て…」
びっくりした有美だが、親友の可代は今日は休講で学校へ来ないし、こんな格好で何処へもいけない。
頼れる人もいないので、その男の好意を受ける事にした。
初対面(会ったというわけでもないが)の男を信用する気になったのには、理由があった。

そこで、初めて男の名前を聞いた。
神澤和史、同じ大学の工学部、同じ年だった。
有美より年上だと思ってただけに、ちょっと笑ってしまった。
単純といえば、そうなのだが、これが有美と和史の出逢った6月の出来事だった。

よくよく話すと、同じ講義を受けているがわかったのだが、何故知らなかったかと言えば。
和史が、講義に出てなかったからとか。
広い校内とはいえ、何処かでは、きっとすれ違っていたかもしれない。
そんな事を話ながら、二人の中は、急接近したのだった。
共通の物が、それを後押しもした。
あの雨の日、和史が読んでいたのが、広瀬正の「マイナス・ゼロ」だった。
もしかしてと、思ったとおり。
その後、和史の部屋に「時の門」「夏への扉」等を見つけた時に、有美は確証したのだった。



「お疲れさま~」
「お先に~」
定時を過ぎたロッカールームには、そんな声があちこちで聞こえていた。
これからアフター5を楽しむのか、朝とは違う服を着て帰る者、まだ残業で帰れない者、それぞれだった。
「有美、今日は?」
「私は、また残業~美香は敬明くんと?」
鏡をじっくりのぞいて化粧直しに余念のない美香は、照れ笑いをしながら言った。
「今日はね、ほら、新しく出来たイタリアンのお店に連れてってくれるの」
「あ~あ~良いわね~~」
私には関係ないかという顔をしながら有美は、さっさと行ってらっしゃいという手ぶりをした。
「有美も早く見つけなよ」
「SE課の真一くんは? 有美好みの3枚目じゃん」
「ヤダってば。それに私の好みは3枚目じゃないわよ。2枚目半!」
「有美の好みは、よくわからないわ」
と、言い残して、美香はロッカールームを出て行った。

さて、もう少し進めておかないと、明日も残業になるから。
そう心の中で思って有美も部屋を出た。
すると、さっき話しに出た真一が目の前に居た。
偶然だろうけど、あまりのタイミングに、有美は笑い声を立ててしまった。
それを不審に思った真一。
「何か顔にでも付いてるのか?」
と、有美の顔を覗き込んだ。
それこそびっくりして一歩後ずさりした有美。
「違う違う、気にしないで」
そう言って足早に去ろうとしたのだが、逆に真一の方が一歩踏み出して来て、動くに動けない状態になってしまった。
「ちょうどいいや、金木さん、明日は残業?」
「いえ、今日で片付くようにしてるから、定時の予定です」
「それなら、帰り俺に付き合ってくれないか」
「え?」
「そんなに驚く事もないでしょ」
「驚きますよ~」
「まさか、今まで誰にも誘われた事ないとか?」
「失礼ですね、谷さん」
「それじゃ、明日5時半に」
「勝手に決めないで下さいよ…」
そう、有美が言い終わらないうちに、谷は去って行ってしまった。
大声で呼んだら、かえって他の人に知らせるようなものだから、言うに言えなかった。

有美より入社は1年先輩だが、あちこちで色々な事をしてたらしく。
実年齢は、有美の3つ上になる。
どちらかと言えば、明るくて職場を和ませる存在でもあった。
女性社員への人当たりも良いので、人気もあり。
影のうわさでは、もてるらしい。
有美は、好みのタイプではないので、今まで一度もそういう感情で見た事はなかった。
でも、どうして私を誘ったのだろう。
まさか・・・まさかね!?

TO BE CONTINUED

2001パリ発東京行き episode Ⅲ

2006-09-01 23:07:45 | Alice’s wonderland
プロローグ 2

「2人の様子はどうなんだい」
それが気になるセイルは、つかさずティエナに尋ねた。

「別に普通よ、気にしないで、大丈夫だから」
本当は2人とも気にしてないような素振りで実はそわそわしてるように、ティエナには見えたが、それをセイルに言えるはずもなく。

「そんな所で話してないで、お入りなさい」
様子を察してか、家の奥からティエナの母が出て来て言った。

「こんばんわ、セイルです」
「いらっしゃい」と、ティエナの父が言った。

セイルが通されたのは、奥にある居間だった。
古代世界の出土品が並ぶ、一風変わった室内である。
ティエナの父、センディ・ゲラシは第4惑星の古代史、特に文明に関して調査・発掘が専門だった。
この室内の物は、彼の発掘したものの1部が飾ってあった。
考古学上あまり意味の無い、所謂『ガラクタ』と呼ばれる物であった。

セイルには初めて見るもの、または昔、学習記憶装置の中で見た事があるが、実物は初めてというものばかりだった。
それらの物に、なぜか圧倒されてしまい-ガラクタなのに-これから始まる事に対して士気が下がってしまう思いがした。

気がついて、持参した土産の今では珍しい天然醗酵のワインを差し出した。
「これは、珍しい一品じゃないか」
ゲラシの顔がほころんだ。
セイルも緊張が少しとけ、ほっとしたのが顔に出なかったかと、逆に緊張がぶり返してしまった。

その後、ティエナの母メナシネの手料理が並んだテーブルについた。
ほんとに、美味しい料理で、セイルは心から感嘆を発した。
「こんな美味しい料理、毎日食べられたら幸せですね」
「セイル…と呼ばせてもらっても良いですよね。アプチェさん」
「ええ、勿論、セイルと呼んで下さい」
「食べ終わったら、さっきの続きをしようじゃないか」
そうティエナの父は言うと、居間のソファーへ、ワイングラスを持って、もう座り込んでいた。
これは長期戦かなとセイルは思いつつ、同じくソファーへ移動した。

不思議なもので、同じ辺境地区での仕事が、共通点となり、話が弾んだ。
その中に入れない、ティエナが焼きもちを焼くくらい…。

「長居をしてしまいました。そろそろお暇を…」
「もう、そんな時間か。また来てくれたまえ」
「ええ、喜んでお邪魔します」
初めは行くをためらうくらい、苦手だったティエナの家が離れ難く感じるとは。
ゲラシ教授は、セイルの仕事にも興味を持ち、その仕事振りに満足していたようだった。

夜風にあたりながら、ティエナは少しだけセイルを送って行った。
「ねぇ。父と何の話をしていたの?」
「仕事の話だよ。それと君のお父さんの趣味をね、聞いてたんだ」
「僕の仕事も、興味深く聞いてくれたよ」
「そうなの、それなから良かったわ」
「母も、セイル、良い人ねって、言ってくれたし」
「今夜は、ありがとう…」
ティエナは、まるでセイルと話せなかった時間を埋め合わせするかのように、喋り続けた。
が、その声がふと、聞こえなくなった。
セイルがティエナの言葉を途切れさせていた。

「ごめん」
ティエナは、突然の事に、呆然としていた。
まだまだ、子供だったのかと感じたセイルだったが。
今度はティエナの方から、セイルに抱きついてきた。
背伸びをして…。

その後、二人は幸せな時間を過ごしたが。
セイルが、また辺境地域へ仕事で離れなければならない日が来てしまった。
ティエナの両親は、ティエナに厳しい事を言わねばならなかった。
セイルも、ティエナに先の約束をして旅発つ事は、出来なかった。
ティエナは、一人無力な自分を呪い、泣き崩れた。

半年後、辺境地区への定期便に、一人場違いな若い女性の姿があった。
だが…


有美は、劇場内の明かりが付き、人が立ち去った後も、席を立つ事の出来なかった。
座席から、滑り落ちるくらい、体の力が抜けてしまっていた。
昨日、会社のロッカールームで、他の課の同僚が話してるのを耳にしていたが、興味もなく聞き流していた。
今日は残業もなく、せかされる事なく駅への帰り道を歩いていた。
その時、ふと映画のポスターが目に止まった。
背景にアルプスのような山々、その麓に見えるドーム屋根の家。
その手前に見える、きんぽうげのような、黄色い花畑。
その中を走っている二人の男女の姿。
何かに惹かれるように、映画館の中へ、足が向いていた。

黄色い花畑のシーンから、始まっていた。
が…。

こんな映画観るんじゃなかった。
有美は、激しく後悔していた。
シチュエーションは違えど、まるで昔の自分を見ているようで。
そんなアンハッピィエンドとは、知らなかった。
知る由もなかったが…。

場内清掃係りが来たので、やっと思い腰を上げた。
館内から出る足取りは、まるで鉛の靴を履いているかのように重かった。

どうして、どうして、誰も認めてくれないの。
そうでなければ、あんな事には、ならなかったのに。
そうよ、そう。
誰だって、そう思うのに…。

映画のストーリーと現実の過去が、入り乱れ、わからなくなっていた。
家に帰り着くや否や。
冷蔵庫を開け、飲みかけのワインをグラスに注ぐのももどかしく、口飲みをしていた。
口からこぼれたワインが、滲んだ血のようにさえ見えた。

有美は苦しかった。
今まで、心の奥に沈めてきた、過去が一瞬にして吹き上がって来たのだから。
明日は、休みなのを良い事に、記憶を無くしてしまいたかった。


ふと、目を開けると、朝日、いや昼の光が顔半分を照らしていた。
目を細めても、見えないくらいにまばゆかった。
電気もつけっぱなしで、飲んだワインの瓶とグラスが、床に転がっていた。
残念ながら、酒に飲まれる程弱くない有美は、多少の事では記憶を無くす程酔えなかった。
それが、輪をかけて、有美の心をさいなんだ。

忘れてなどいない、決して忘れる事はない。
和史との長くない、でも、短くもない日々を、しっかりと思い起こしていた。

6月の土砂降りの雨の日に出会い。
2度の夏を過ごし、秋に消え去った思いを。

TO BE CONTINUED

遠い日の… その2

2005-04-22 23:01:56 | Alice’s wonderland

 君の季節   -君に送る詩-

夏の合間に
君は何を見つめているのかい
日に焼けた麦わら帽子
それとも海で拾ったさくら貝

たまにはこっちを向いてごらん
君の好きな夏の風が
やさしく吹いてるよ


夕立後の空を見つめ
君は何を考えてるのかい
虹色の世界
それとも去年死んだ小鳥のこと

たまにはこっちを向いてごらん
僕の好きな君が見たいから
そして笑い顔を見せておくれ


雨降り日曜日
君は窓に顔をつけて何を思っているのかい
雨にうたれた向日葵のこと
それとも明日のデートのこと

たまにはこっちを向いてごらん
君の好きなゲーテの詩が聞きたいから
僕のために聞かせておくれ


秋風が君を包む時
君は何んて悲しい顔をしてるのかい
何に悩んでいるの
それとも1人でいたい季節なの

たまにはこっちを向いてごらん
君の悲しみを話してほしいから
そして僕の腕の中で泣いてごらん






ひとり言 by ○○年前の有栖

そろそろ…

2005-04-17 02:11:43 | Alice’s wonderland

これでおしまいに。
1年間の編集が楽しかった。
(持ち回りで担当)

あの頃は家に居て、時間もたくさんあって、色々出来た時だった。
ネットも普及前で、こんなに時間も取られなかったし^^;

私の目標の1000冊読むも、この頃達成したはず…記憶が^^;
初めて文庫本を買った中3以降、1000冊読むのが目標だった。
当時、文庫本は大人のというイメージがあって、文字も小さかったし!?
一番最初の本は、クリスティー女史の「ABC殺人事件」。
本格推理小説とSFが主だった。
おこづかいで1ヶ月に買える本も数限られてたので、友達と貸し借りもよくしたものだった。
誕生日プレゼントに本をもらって、とっても嬉しかったの今でも覚えてる。
YUMIちゃんありがと~!
本にメッセージ書いてもらった1番最初だった。
勿論、今でも大切にあります。

本日のBGMは、Jim・Brickmanの「Sweet Dreams」

遠い日の…

2005-04-16 17:10:25 | Alice’s wonderland

○○ 風船 ○○

風船1つ飛んでった
私の手からするりとぬけて
遠い空へと飛んでった
見知らぬところへ飛んでった

もう戻ってこない
  私の風船
もっとしっかり
握りしめとけばよかったのに

風船飛んでって
誰かが拾ったかしら
私の風船戻らない
戻らない もう戻らない
  ポツリとひとり泣いた


☆★☆★☆★☆★

うん十年前、これを見て曲をつけようか迷ったと言って歌ってくれた。
詞には曲をつけられるが詩にはつけられないからと…。
サプライズなプレゼントに、照れるしかなかった私。

これを見てわかるのは世界でたった1人だけど…。
もし見たら、どんな顔するかしら。
それより覚えているのだろうか?