まちと表現、そして劇場  Town, expression, and theater

横浜を拠点に演劇公演を見て回るとともに、地域の芸術文化、まちづくり、ビジネス、歴史など幅広く取材する中で……山田ちよ

「分かりやすさ」がよい方向へ

2010年12月31日 00時54分06秒 | OFF演劇時評
山下幼稚宴 クリスマス・ミュージカルコメディ『ミラクルエンジェル』、ミュージカルコメディ『君に天使を』/相鉄本多劇場/12月18日(土)夕・夜観劇
東京で旗揚げしたオリジナル・ミュージカル集団の山下幼稚宴は、2008年から相鉄本多劇場のクリスマス・シーズンを定位置にしている。今回は、過去に上演した作品を交互に上演した。どちらも、若い男が突然、なぞのカルチャーセンターに連れてこられ、奇妙な講師たちの授業を受けるうちに、自分の抱える問題に気付かされたりする、という展開は共通している。タイトルから分かる通り、なぞの講師たちは天使、という設定だ。(写真は天使のイメージ)
『ミラクルエンジェル』は前に見た。なぞの講師たちが、それぞれアピール度の高い衣装や態度で登場し、歌って踊って笑わせて、というエンターテイメントな特色が印象で、小劇場集団(毎回、あちこちから俳優を集めていて、プロデュース集団的な側面もあるようだ)としての一定のレベルを保っていると感じた。ただ、ストーリーが少しつかみにくいな、と感じた。ほかの作品も見たことがあって、この集団はつくり手が「何か訳分からなかったけれど、面白くて楽しかったね」と感じてもらえればいい、という姿勢なのだろうか、とも思った。
しかし今回、2本とも、話が分かりやすかった。実は同じ設定であるだけでなく、『君に天使を』で恋人同士だった男女が、その後結婚して、生まれた子どもが成長した時に起きるドラマが『ミラクルエンジェル』というつながりもあった。私は、先に『ミラクルエンジェル』を見て、2度見たことで全体像がよく分かったので、『君に天使を』も理解しやすかったのだろうか、とも考えた。
しかし、終演後、メンバーで作曲担当の山下大輔と話したら、「分かりやすくなったことで、自分たちのやりたいことに近づいた」と言っていた。やはり「分かりやすくなった」のは確かだったのだ。
「分かりやすい」と一言で言ってもいろいろある。また、「分かりにくい」部分をつくることで観客を引き付ける表現方法もある。つまり、「分かりやすくなる」ことが、マイナスに働くこともある。
山下幼稚宴の場合の「分かりやすさ」は、物語の全体をつかみやすくした、というところにあると思う。つまり「歌と踊りで楽しませ、笑いの要素もあり、作品全体で言いたいこともしっかり理解できる」という方向性が鮮明になった、ということだ。説明ぜりふがダラダラ、というのではない。ちょっとぶっ飛んだり、ミステリー風なところもあるので、「分かりやすさ」がいい方向で加わった、と言えよう。

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