まちと表現、そして劇場  Town, expression, and theater

横浜を拠点に演劇公演を見て回るとともに、地域の芸術文化、まちづくり、ビジネス、歴史など幅広く取材する中で……山田ちよ

ライブ空間ならではのバレエ

2011年12月10日 01時02分21秒 | OFF演劇時評
音楽劇団紫人会・第五回公演 第1部ソング&ダンス『ふるさと』、第2部オリジナル音楽劇『空蝉~土は十年、空は十日~』/サンフォニックスホール/12月4日(日)昼観劇
サンフォニックスホールは、横浜アリーナの建物の一角にある、着席200の小ホール(写真はホールの観客出入り口の前。新横浜駅前の大通りに面している)。舞台の天井の高さはあまりなく、演劇よりも、明らかにコンサート向きだ。
オリジナル音楽劇は、樹医を目指す女性が、庭の木の下にあるアリの巣に入り込み、アリたちや、もうすぐ成虫になるセミの幼虫、木の精の老女と交流する。擬人化した生き物と人間が絡む話を通して、自然とか環境について考えさせる、という、いわば市民ミュージカルの定番のような内容だ。出演者も人数は少ないものの、子どもから中高年まで幅広い年齢層で、全体的に「ミニ市民ミュージカル」のような感じだ。
それより印象に残ったのは前半、ソング&ダンスの何曲か。「竹田の子守唄」から始まって「ふるさと」で終わるのだが、「グリーンスリーブス」といった海外の歌や最近の歌もあり、それにバレエやタップなどのダンスがつく。
紫人会の主宰、紫歩は歌とダンスの教室をしていて、その生徒や同じところで教室を開いているバレエ教室の生徒らも出ている。主なバレエ・ダンサーのプロフィールを見ると、皆、そこそこキャリアがある。しかしアップテンポの曲に合わせて切れのよい踊りを見せる、という場面はなく(ステージがライブハウス程度だから、第一に物理的に無理)、スローテンポで、手をゆっくりしなやかに伸ばしたり、かかとでそっと立ったりして、少しの間、ポーズを取り、またゆっくりと動く、といった踊りが主だった。
沖縄民謡テイストの「イラヨイ月夜浜」と、讃美歌「アメージング グレイス」に合わせたバレエは、そうしたゆったりの踊り(「舞い」と言うべきか)が曲とよく合っていた。
バレエというと、天井の高く広々とした大空間で踊られるもの、というイメージがあり、こういう小空間でバレエが魅力的に見えるのは、ダンサーが間近に見られるせいなのか、とも思った。しかしテンポよくリズミカルに動き回るだけがバレエではないだろう。ゆっくりした振りにも、バレエの魅力はある。密度の濃いライブ空間で、クラシックよりも親しみやすい曲とともに、そうした踊りをまじまじと見たことで、バレエのもう一つの味に触れられたのだ、と気が付いた。