T・R・P『rebirth リバース-傷・林・檎-』/STスポット/9月22日(火・休)昼観劇
30歳ぐらいの女が、入院中の元彼を見舞いに来て「私、もう死んでもいいかな」を連発する。具体的な理由はほとんど出てこない。ただ、生きにくさを感じていることだけが察せられる。病床の元彼は、その気持ちを優しく受け止め、自身は、妻に逃げられたりして挫折したが、やはり生きたいと話す。だが、女に「死ぬなよ」と言い残して、病死する。
次の場面は天国。死んだ元彼と、死なずに99歳まで生きた女が対面して、女があの後、どう生きたか、語る。いったんはあきらめた女優で成功して、賞を取りまくったと明るく語る。
その次は、女と元彼とその妻が生まれ変わった話。と言っても、生まれ変わった時代は過去、昭和30年代。また夫婦になった元彼とその妻が突然、自分たちが携帯電話のある時代に生きていたことを思い出す。なぜか過去に戻って生まれ変わった夫妻の会話から、観客に、女と元彼とその妻の、少しややこしい関係が伝えられる。
一度は「死にたい」という思いに取りつかれた女が、強く生き続けた。その明るい展開のままで終わらず、過去に生まれ変わり、もう一度、人生をたどる場面を加え、元彼は生まれ変わっても33歳で病死する、という陰影のあるラストで締めた。
T・R・Pは、多摩美術大学の演劇専攻出身で、舞踊家として活動する小島美菜子が書いた作品のために集まったグループで「タマビーズ・リバース・プロジェクト」の略らしい。
当日パンフによると、小島が最初に書いたのは、四百字詰め原稿用紙17枚の対話形式の作品。31歳の誕生日の夜に書いたもので、「もう死んでしまいたい」が繰り返される。それを受け取った、大学の恩師で俳優、演出家の庄山晃が「続きを書かないと上演できない」と返事をしたところ、半月後に送られてきた続きには、死にたいと言った女性がその後、したたかに生きたことが面白おかしく書かれていた。
そこで、庄山が小島の作品に手を入れて、小島と同期の面々に声をかけて俳優やスタッフを集め、上演を実現させた。
STスポットの大平勝弘館長が、小島の在学時代、教育スタッフ(アシスタント)だったことから、会場としてSTスポットが選ばれた。病室や茶の間などでの対話でつづられるドラマだから、小空間のSTスポットは、都合のよいことに、この作品に合っていた。
この舞台化までの経緯を、芝居を見た後に読むと、なぜ、暗い内容の対話がリアルな演技で続けられた後、天国での対話という幻想的な設定の明るい場面が来て、続いて生まれ変わりの話が来たのか、何となく納得できた。
さらに、このような舞台を実現させた庄山が、多摩美の演劇専攻の授業で学生とどう接しているのか、どういうことを指導しているのか、ということも想像させられた。学生の感性をくみ取りつつ、演劇で観客に何を伝えるべきか、という基本は押さえているのではないか。
出演者3人のうち、一人は小島(妻役)。病気降板の女優の代わりだった。残り2人、女役の中澤佳子と男役の菊口富雅は、ふだんも俳優として活動していて、どちらも、スタニスラフスキー・システムなどの基礎を大切にする姿勢が伺えた。このことも、庄山の指導姿勢と関係があるように思えた。
(写真はタイトルのイメージ。モデルのリンゴは、舞台上に置かれていたリンゴ箱に入っていたもので、千秋楽公演後、観客に配られたものの一つ)
30歳ぐらいの女が、入院中の元彼を見舞いに来て「私、もう死んでもいいかな」を連発する。具体的な理由はほとんど出てこない。ただ、生きにくさを感じていることだけが察せられる。病床の元彼は、その気持ちを優しく受け止め、自身は、妻に逃げられたりして挫折したが、やはり生きたいと話す。だが、女に「死ぬなよ」と言い残して、病死する。
次の場面は天国。死んだ元彼と、死なずに99歳まで生きた女が対面して、女があの後、どう生きたか、語る。いったんはあきらめた女優で成功して、賞を取りまくったと明るく語る。
その次は、女と元彼とその妻が生まれ変わった話。と言っても、生まれ変わった時代は過去、昭和30年代。また夫婦になった元彼とその妻が突然、自分たちが携帯電話のある時代に生きていたことを思い出す。なぜか過去に戻って生まれ変わった夫妻の会話から、観客に、女と元彼とその妻の、少しややこしい関係が伝えられる。
一度は「死にたい」という思いに取りつかれた女が、強く生き続けた。その明るい展開のままで終わらず、過去に生まれ変わり、もう一度、人生をたどる場面を加え、元彼は生まれ変わっても33歳で病死する、という陰影のあるラストで締めた。
T・R・Pは、多摩美術大学の演劇専攻出身で、舞踊家として活動する小島美菜子が書いた作品のために集まったグループで「タマビーズ・リバース・プロジェクト」の略らしい。
当日パンフによると、小島が最初に書いたのは、四百字詰め原稿用紙17枚の対話形式の作品。31歳の誕生日の夜に書いたもので、「もう死んでしまいたい」が繰り返される。それを受け取った、大学の恩師で俳優、演出家の庄山晃が「続きを書かないと上演できない」と返事をしたところ、半月後に送られてきた続きには、死にたいと言った女性がその後、したたかに生きたことが面白おかしく書かれていた。
そこで、庄山が小島の作品に手を入れて、小島と同期の面々に声をかけて俳優やスタッフを集め、上演を実現させた。
STスポットの大平勝弘館長が、小島の在学時代、教育スタッフ(アシスタント)だったことから、会場としてSTスポットが選ばれた。病室や茶の間などでの対話でつづられるドラマだから、小空間のSTスポットは、都合のよいことに、この作品に合っていた。
この舞台化までの経緯を、芝居を見た後に読むと、なぜ、暗い内容の対話がリアルな演技で続けられた後、天国での対話という幻想的な設定の明るい場面が来て、続いて生まれ変わりの話が来たのか、何となく納得できた。
さらに、このような舞台を実現させた庄山が、多摩美の演劇専攻の授業で学生とどう接しているのか、どういうことを指導しているのか、ということも想像させられた。学生の感性をくみ取りつつ、演劇で観客に何を伝えるべきか、という基本は押さえているのではないか。
出演者3人のうち、一人は小島(妻役)。病気降板の女優の代わりだった。残り2人、女役の中澤佳子と男役の菊口富雅は、ふだんも俳優として活動していて、どちらも、スタニスラフスキー・システムなどの基礎を大切にする姿勢が伺えた。このことも、庄山の指導姿勢と関係があるように思えた。
(写真はタイトルのイメージ。モデルのリンゴは、舞台上に置かれていたリンゴ箱に入っていたもので、千秋楽公演後、観客に配られたものの一つ)