ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、前国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

いったい日本の論文数の国際ランキングはどこまで下がるのか!!

2015年05月01日 | 高等教育

 日経新聞の記者から、日本学術振興会理事長の安西祐一郎先生と、コマツ会長で経済同友会副代表幹事の野路國夫さんの対談記事(たぶん日本の科学技術に関する内容と思われます)が近々掲載されるとのことで、それに僕のブログの論文数のデータを載せてもいいか、という問い合わせがあったので、OKと返事しました。ただ、せっかく載せていただけるのなら、最新のデータのほうがよいと思ったので、僕が分析している学術論文データベースであるトムソン・ロイターInCites™を確認してみると、2014年のデータが掲載されていたので、新しいデータを日経新聞にに送りました。

 実は野路さんとは、この4月25日に三重県でご講演をお聞きしたばかりです。「待ち兼ね会」という阪大に関係した方々の会が三重県で発足したのですが、僕の阪大の先輩で、この3月まで三重大学長をお勤めになった内田先生(医学部卒)と野路さん(基礎工学部卒)は、阪大の同級生で、ワンダーフォーゲル部でごいっしょだったとのことです。そんなご縁で、「待ち兼ね会」で野路さんのお話をお聞きし、ご挨拶をさせていただきました。野路さんは盛りだくさんのお話をされましたが、その中で、コマツが先端的なイノベーションを開発する上で、日本の企業はものつくりについては優れているが、画像処理については海外企業に頼らざるをえず、数学者の育成の面で国際競争に負けてしまっているというような趣旨のお話をされたと思います。僕の分析したデータでも、日本のコンピュータ・サイエンスの論文数は、人口が日本の5分の1しかいない台湾に、絶対数で負けているくらいですからね。

 日経新聞にはG7諸国と日本との論文数の推移のデータが掲載されるようですが、日本の国際ランキングがどうなっているかも気になったので、確認してみました。

  まず、論文の絶対数についてです。3年移動平均で表示しているので、2013年の論文数は2012−1014年の3年間の平均の論文数になります。幸いにも昨年と同様に世界5位で順位は変わっていませんでした。ただし、人口が半分のフランスに接近されており、このままのペースが変わらないと仮定すると3年後にフランスに追い抜かれて6位になります。

  次に人口当り論文数では、3年移動平均値の2012年値から2013年値にかけて、日本が新たに追い抜かれた国は、ルクセンブルグ、ポーランド、スロバキアの3か国でした。国立大学協会に報告したデータでは、2013年時点で単年度人口あたり論文数世界31位と記載しましたが、この時点ですでにクロアチアとセルビアには追い抜かれており、3年移動平均値では世界33位、単年度では世界35位の間違いです。(報告書を提出したばかりで、間違いにきづき、まことに申し訳ありません。間に合えば国大協報告書の修正を試みます。)

 今回は、国ではありませんが香港を加えますと、国際順位としては37位、香港を除けば36位となります。(万が一、さらに見逃している国があれば、日本はこの順位以下となります。)

 

 

 

 

  下の棒グラフは、3年移動平均値ではなく、単年度の人口当り論文数を示したものですが、2014年の国際順位は2013年3年移動平均値と同様に37位でした(香港を含む)。

 

 

 

 あとは、日経新聞に掲載されるかもしれない、G7諸国との比較です。G7諸国との論文数もそれまでの傾向と同様に広がり、国際競争力は継続して低下しています。

 

 

 

  国立大学協会への報告書の総括で、このままの政策が継続されれば、さらに国際競争力が低下する旨を書いたのですが、少なくともこの1年間については、予測が当たったことになりますね。あと何年間予測が当たることになるんでしょうかね?当たらないことを切に希望します。

 なお、文部科学省内のコンピュータからは、一部を除いて、セキュリティーのために外部のブログにアクセスできないようであり、僕が今までブログに掲載した情報も政策決定者に届いていない可能性があります。ブログ等で情報が届かないとなると、何らかの別の媒体を考えなくてはいけませんね。

 

 

 

 

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他と違いすぎる (地方大学教員)
2015-05-02 10:49:40
いつもありがとうございます。日本だけ世界の潮流からダントツに孤立してるように見えてすごいですね。しかしここまで定性的に違うと他の先進国との定量的な比較はもはや意味がない段階まできていますよね。違うグループの国だということを早く認め、他にも減っている国があるでしょうからそれと比較し、変曲点はいつだったのか、そこで何が起きたのかを調べた方が建設的ではないでしょうか。イスラエルとかロシアとかはどうなんでしょう?エジプトやウクライナなんかきっと悲惨でしょう。それらの中に復活して来た所はあるのか、あるとしたら何が起きたのか。それに学ぶことは出来るか。
Unknown (私立大学非常勤講師)
2015-05-02 12:35:13
ふと、タイトルが気になり拝読させていただきました。論文数だけの国際ランキングを見れば下がり続ける一方であると思います。というのも、先ず日本は通信制大学、あるいは大学院というものを軽視しすぎている点にあると思います。通信制大学生のコンテクストを読まずして、どこか知的に劣っているだとかその類の評価が良くなされます。その評価は世間のみならず、通信課程を設けている大学の教授ですら「通信課程の学生はうちの正式な学生とは認めない」というスタンスでいらっしゃる方がいます。通信教育蔑視はとても根深く、そしてそのような意識は情報化した世界に対して日本はただただ自損をしているだけであると思っています。また、日本の大学そのものも問題です。ハーバード大学では学士号や修士号まで取得できるコースがあり、学生数のみで語れば、パキスタンのアラマイクバルオープン大学が130万人、インドの国立インディラガンディーオープン大学で学生200万人、院生50万人を抱えています。一方、日本の国公立の大学のどこが通信課程を設けているのでしょうか。放送大学は特殊法人立大学なので、名称だけにこだわれば国公立にはあたりません。日本における国公立大学に於ける通信教育課程は0です。情報社会に於ける通信教育に対する大学改革が進まなければ、ますます論文数だけの国際ランキングはさがるばかりであると思います。
分業ができていないのでは (J)
2015-05-11 02:04:52
研究予算の影響もあるでしょうが、それだけではないように思います。日本の大学教員は上に上がれば上がるほどマネージメント的な仕事をやるようになり、研究時間が取れなくなります。仕事は既に飽和状態で、研究予算を増やしたところで、これ以上論文は増えないように思います。  

アメリカはマネージメントを行う専門のスタッフがいて、運営を効率的に行っているように思います。教員はマネージメントに関しては素人です。にもかかわらず、日本はそれを教員が学内の実務経験を通して学ぶのが慣習になっているため、キャリアが重視されて採用の年齢制限が出てきます。運営を専門に行うスタッフのポジションを作るべきではないかと思います。
墜落中 (かわず)
2015-05-21 23:38:17
私の井戸で見て参りましたことを書きましょう。

1990年台のいつでしょうか、それまでならば大学教員になれず去って行くべき運命のオーバードクターたちに大量のパーマネント職が与えられました。大学院重点化です。その後、そのものたちはお手盛りで教授の職階に登って行きました。いまでは、給料の低い職階にいるものは極わずかです。

その後、そのものたちにとっては、悲惨な時代になります。研究論文を書く能力はもともとなかったのですが、日本語での作文能力すらなかったため、改組のたびに作文がかけず、官僚にいじめられます。また、いけてない自分をなんとかとりつくろうとするため、評価疲れが起こりました。うそはどろぼうの始まり。自分たちがどろぼうだと認めるのは辛いことです。一時はポスドク1万人計画と歌われましたが、能力のないものがポストをしめているので、優秀な人材はほぼ例外なく産業に流れました。

このような中で、論文がどのようなレベルであっても書けないのは、論文のねたを作る時間も、書く時間も、そして、残念ながら能力もないものが大学や研究機関の半分以上のポストを占めているからです。半分占めれば、そのものたちが価値を決定していると言えましょう。

現在、グローバル化というかけ声で改革をすすめるように言われていますが、そもそも無理筋です。現在の人員の半分以上が外国から見て、あんただれ?という状況で、どうグローバル化をはかれるというのでしょう。資本のすくない大学からつぎつぎにつぶれて行くのを見守りましょう。時間の問題です。最後に国民の質にふさわしい大学が残るでしょう。そこまで行かなきゃ、上昇に転じることはないようにおもいます。
論文数が減るのは文科省の指導の帰結 (霞仙人)
2015-08-09 17:27:42
半期で15週授業を完全に実施せよということになってからは、前期の試験期間の終了時期が8月第1週に食込む
ようになり、従来の7月20日後から7月末ぐらいまでに
開かれていた海外での会議・コンファレンスに発表に
出向くことが事実上無理になりました。

研究費を特定分野に集中して配分するという方針で
校費研究費が20万円程度になり、必然的に研究活動
に対して自腹を切る割合が多くなりました。特定分野に
集中させたら、全体としての論文の数が減るのは当然
のことでしょう。

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