監督:原恵一
声の出演:冨沢風斗、横川貴大、田中直樹(ココリコ)、西田尚美、なぎら健壱
『河童のクゥと夏休み』、映画館で観ました。
夏休み前のある日、康一が学校帰りに拾った石を洗っていると、中から河童の子供が
現れた。 第一声から「クゥ」と名づけられた河童は人間と同じ言葉を話し、初めは
驚いた家族もクゥのことを受け入れ、クゥと康一は仲良しになる。やがてクゥが仲間の
元に帰ると言い出し、康一はクゥを連れて河童伝説の残る遠野へ旅に出るが‥‥。
原恵一(監督)の新作を今か今かと待ちわびて、とうとう5年も待たされた。しかし、
いざ観てみれば、その5年の月日の長さを忘れるほどに、“心地よい2時間強”が
過ぎていき、観終わった後には“優しい心”に満たされた。“(温かみに欠ける)CGを
多用した映像面”に若干のアンバランス感を感じるものの、「観て良かった」というのが
正直な感想。胸に突き上げてくる感動から、涙でボヤけて画面が見えなくなること数度…、
エンドロールが始まっても観客の誰一人として席を立ち上がる人が居なかったのは、
流した涙の跡を乾かしながら“その余韻”に浸っているようだった。
さて、物語は、かつての『E.T.』やアニメの『あらいぐまラスカル』に代表される…、
ひと夏を通した少年と野生動物との“友情”を軸に、その出会いと別れを描いている。
ただ、一方で、それが単なるノスタルジックな友情と、少年の成長物語だけに収まる
ことなく、環境問題やいじめ問題、更にはマスメディアのあり方まで、現代社会が抱える
暗部が所々で見え隠れする。この映画の素晴らしさは、一見“詰め込み過ぎ”に思える
それらの諸問題を、“心の問題”として一つに関連付けて考えている点だ。例えば、
“自然破壊”はそれによって住む場所を追われる野生動物の気持ちが…、“いじめ
問題”は嫌がらせを受け、仲間外れにされる者の寂しさが…、また“マスコミ問題”は
その標的にされ、公共の見世物にされる者の苦しみが…。つまり、それらの諸問題の
根幹にあるものは、自分さえ良ければ他の者はどうなったって構わない、そういう
“思い上がった個人プレー”と、“人間の身勝手さ”にあるのだと。映画終盤、ついに
自分の隠れ家を見つけた河童のクゥが、天の神様に向かって“たった一つの願い事”を
する場面がある。「この川で(自分が)生きていくのに必要なだけの魚を獲ることを
お許し下さい」と。もしも、みんなが今よりほんの少しだけでも個人より社会全体のことを
考え、“相手(弱者)の気持ち”になって行動することが出来たなら‥‥。結局、映画は
ついに最後まで、すべてメデタシメデタシで収まるハッピーエンドが訪れることはなく、
姿形の違う一人ぼっちの妖怪同士が、互いに身を寄せ合うように山の奥地へと隠れ住む。
では、彼らのこれからは‥‥??、“僅かの含み”を持たせたその結末に、彼らの未来の
安全は“我ら人間の良心”に掛かっている‥‥と、そんなメッセージを投げ掛けられて
いるような気がした。
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