戦後の教育のあり方に対して今から30年前に問題提起した大村氏とその教え子であった苅谷夏子氏、夫である苅谷剛彦氏との共著です。苅谷氏の著作は、何冊か読み、格差の指摘など、多くの点で感銘を受けたのですが、大村氏とこういうつながりがあったとは驚きでした。大村氏はこの本を書かれた時点で90歳くらいでしょうかね?
「教師が教えなくなった」という問題は大村氏が提起した後30年経った今でも大きな意味を持っています。いや、ますます大きくなっているといえるでしょう。自由に表現しなさいと言われても、表現するテーマについての基本的な知識や表現方法を指導されることなしに自由な表現などありえないという問題です。
昨今の総合的な学習の時間については、やり方次第では豊かのものを育てられるとしながらも、大村氏は単元の目標やノウハウがなく、そして何より詰め込みや押し付けと履き違えて「教えること」そのものを否定してしまった現代の教育現場には多くは期待できないとしています。
本書ではこのように「教えなくなった」教師に対する鋭い批判とともに、大村氏の30年にわたる教育実践を紹介しながら、「教えること」の意味や大切さ、教師の役割について述べています。
大村国語教室では、30年間一度も同じ授業をしなかったということです。同じ単元を繰り返し行なうことによる「慣れ」が、授業に向かう緊張感をそぐという理由で一度たりとも同じ授業をしなかったというのです。正直、耳が痛い話しで反省させられます。教えるということに対する教師の側の気迫を十二分に感じさせてくれる一冊です。
残念ながら大村氏はすでに故人ですが、本書など、大村氏の著作が長く長く読まれ続けることを願わずにはおられません。
http://tokkun.net/jump.htm
教えることの復権筑摩書房詳 細 |
『教えることの復権』大村はま/苅谷剛彦・夏子
筑摩書房:231p:756円
「教えることの復権」実習前に読んでみたいと思いました
ご紹介ありがとうございます
「大村はまさんはうちのおやじのお勧め本。会社で売っておるのだ。しかし売れないとよ。
最近の若い教師は勉強が足らんとおこっておる。」ですって。
直接的には関係が薄いトラックバックに思えましたが、良い本を紹介していただきありがとうございます。
今日は教育関連のことを書いてみるつもりなので、もしよろしければご一読ください。
tiakujoさん:そうでしたか。本当に不思議とご縁がありますね。とても他人とは思えないくらいです(笑)。今後ともよろしくお願い申し上げます。
かばさん:ええ、ぜひ、かばさんのブログでもいろいろお話しできることを楽しみにしております。
この本も読んでみようと思います。
がお勧めです。
大村先生が若い教師に向けて行った講演会の記録です。大村教育哲学が分かりやすく理解できると思います。
昨年と同じテキストを使いながらも教え方には工夫を凝らします。
それは生徒が違うからに他なりません。
このサイクルをルーチンワークとして何年も続けた時、
教えることへの怠慢が生まれてくるかもしれません。
そうならないように気をつけたいと思います。
こちらの書籍も是非読んでみたく思います。
ありがとうございました。