本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『検死秘録』 支倉 逸人

2006年05月21日 | 科学

子どもが犠牲者になる異様な犯罪が、また起きました。実にいやなニュースで、いつものことではありますが、“死体”には “首を絞められたあとが…” とか、“刺し傷は○○に達し…”などと報道されますと、捜査のためとはいえ、小さな遺体が、さらに痛めつけられているような気がしておりました。

また、千葉地裁では、98年に死亡した建材会社員の男性の生命保険金をめぐる裁判の判決で、「男性に保険契約を働きかけ、“急性サリチル酸” 中毒で死亡させたと推認できる」 となりました。フィリピン人女性が保険金支払いを訴えた裁判で、逆に鑑定書から、“殺人” の疑いをかけられてしまったかたちです。

保険会社が、病院に保存されていた建材会社員の臓器の鑑定を申請し、サリチル酸が検出されたとする鑑定書が決め手になっていました。

本書の著者、支倉氏は東京医科歯科大学の教授で、いわゆる検死官として働いています。これまで、様々な事件を担当して犯罪を暴いたり、逆に無実を証明したり。司法解剖をするという場合は常に犯罪捜査、裁判に関わるわけですから、今回のフィリピン人女性の場合も同様、責任は計り知れないほど重大です。

あの日航ジャンボ機墜落時のこと、サリン事件での被害者の解剖、有名映画監督の自殺とされた死体の解剖、ある有名ロック歌手の変死体の解剖など、世間を騒がせた事件から、数多くの悲惨な殺人事件を含め具体的な例を挙げて検死の意味、重要性を説明しています。

“死体” というのは実に数多くのことを物語っているのだということがよくわかります。医学部を志す人には格好のテキストでしょうが、犯罪をもくろむ人たちにもヒントを与えてしまいそうで…。

当教室のOBでも、医学部に進学した、かつての生徒たちが、“死体解剖” の経験をいろいろ話してくれます。私から見ると、幼かった教え子から、『慣れるんですよ』 と言われると、複雑な気がしますが、頼もしく見える瞬間でもあります。

北朝鮮による拉致事件でも、横田めぐみさんや、その夫、娘さんに関する情報の決め手はDNA鑑定でしたね。本書は、医学・科学の進歩が世の中の正義、真実の究明に寄与している場面を垣間見せてくれました。

http://tokkun.net/jump.htm


『検死秘録』支倉逸人
光文社:1575円




にほんブログ村 本ブログへ

検死秘録―法医学者の「司法解剖ファイル」から

光文社

詳細を見る


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ご登録ありがとうございました (MEMORIZERS管理人)
2006-05-21 16:37:26
MEMORIZERS管理人です。ランキングご登録ありがとうございました。

メールでもお知らせしましたが、サイドバーなどにMEMORIZERSのトップページをリンクしてあるのが確認され次第参加となりますので、リンクはお早めにお願い致します。

いつも興味深いレビューをとても楽しみにしております。たくさんのご投稿をお待ちしております。これからもよろしくお願い致します。
返信する