市教育委員会と奈良県立橿原考古学研究所が3日、称徳天皇が造営した奈良市の西大寺旧境内から日本最古の公開図書館「芸亭(うんてい)」を開設したことで知られる奈良時代の高官で文人、石上宅嗣(いそのかみやかつぐ、729-781)の名前や肩書が書かれた木簡が見つかったと発表した。
木簡の記述から、内裏に準じる宮殿があった平城宮東院の造営責任者だったことも判明。
今年7月にイスラム陶器の破片が出土した幅約7mの溝には大量の木簡が捨てられていた。宅嗣の名前が書かれた木簡は縦29・7cm、横2・75cm、厚さ0・46cm。縦書きで「参議従三位式部卿常陸守中衛中将造東内長官石上朝臣」と墨書されていた。「造東内長官」は東院造営の責任者、「石上朝臣」は宅嗣を指す。
高官の名と数多い肩書が記された木簡の出土例は珍しい。各肩書の横には一~四の漢数字も記され、紙の文書作成時に肩書の誤記を防ぐ役人の手控えとも推測され、出土例のない木簡という。
木簡群は判読可能分だけで約250点。西大寺の造営事務所「造西大寺司」に属したらしい「金堂所」に関係する木簡や、「太政官謹奏…」と記された木簡もあり、西大寺造営や役所的事務にかかわる重要な資料となりそうだ。
西大寺は764年、称徳天皇が建立を発願。同寺の造営がほぼ完了したとされる宝亀年間(770~780年)に造営担当の役所が投棄した可能性がある。
7~13日午前9時~午後5時、市埋蔵文化財調査センター(奈良市大安寺西2丁目)で公開する。
[参考:共同通信、産経新聞、読売新聞、奈良新聞]
参考
続日本紀 桓武天皇天応元年(781) 辛亥6月24日
大納言正三位兼式部卿石上大朝臣宅嗣薨。詔贈正二位。宅嗣左大臣從一位麻呂之孫。中納言從三位弟麻呂之子也。性朗悟有姿儀。愛尚經史。多所渉覽。好属文。工草隷。勝寳三年授從五位下。任治部少輔。稍遷文部大輔。歴居内外。景雲二年至參議從三位。寳龜初。出爲大宰帥。居無幾遷式部卿。拜中納言。賜姓物部朝臣。以其情願也。尋兼皇太子傅。改賜姓石上大朝臣。十一年。轉大納言。俄加正三位。宅嗣辭容閑雅。有名於時。毎値風景山水。時援筆而題之。自寳字後。宅嗣及淡海眞人三船爲文人之首。所著詩賦數十首。世多傳誦之。捨其舊宅。以爲阿閦寺。寺内一隅。特置外典之院。名曰芸亭。如有好學之徒。欲就閲者恣聽之。仍記條式。以貽於後。其略曰。内外兩門本爲一體。漸極似異。善誘不殊。僕捨家爲寺。歸心久矣。爲助内典。加置外書。地是伽藍。事須禁戒。庶以同志入者。無滯空有。兼忘物我。異代來者。超出塵勞。歸於覺地矣。其院今見存焉。臨終遺教薄葬。薨時年五十三。時人悼之。
木簡の記述から、内裏に準じる宮殿があった平城宮東院の造営責任者だったことも判明。
今年7月にイスラム陶器の破片が出土した幅約7mの溝には大量の木簡が捨てられていた。宅嗣の名前が書かれた木簡は縦29・7cm、横2・75cm、厚さ0・46cm。縦書きで「参議従三位式部卿常陸守中衛中将造東内長官石上朝臣」と墨書されていた。「造東内長官」は東院造営の責任者、「石上朝臣」は宅嗣を指す。
高官の名と数多い肩書が記された木簡の出土例は珍しい。各肩書の横には一~四の漢数字も記され、紙の文書作成時に肩書の誤記を防ぐ役人の手控えとも推測され、出土例のない木簡という。
木簡群は判読可能分だけで約250点。西大寺の造営事務所「造西大寺司」に属したらしい「金堂所」に関係する木簡や、「太政官謹奏…」と記された木簡もあり、西大寺造営や役所的事務にかかわる重要な資料となりそうだ。
西大寺は764年、称徳天皇が建立を発願。同寺の造営がほぼ完了したとされる宝亀年間(770~780年)に造営担当の役所が投棄した可能性がある。
7~13日午前9時~午後5時、市埋蔵文化財調査センター(奈良市大安寺西2丁目)で公開する。
[参考:共同通信、産経新聞、読売新聞、奈良新聞]
参考
続日本紀 桓武天皇天応元年(781) 辛亥6月24日
大納言正三位兼式部卿石上大朝臣宅嗣薨。詔贈正二位。宅嗣左大臣從一位麻呂之孫。中納言從三位弟麻呂之子也。性朗悟有姿儀。愛尚經史。多所渉覽。好属文。工草隷。勝寳三年授從五位下。任治部少輔。稍遷文部大輔。歴居内外。景雲二年至參議從三位。寳龜初。出爲大宰帥。居無幾遷式部卿。拜中納言。賜姓物部朝臣。以其情願也。尋兼皇太子傅。改賜姓石上大朝臣。十一年。轉大納言。俄加正三位。宅嗣辭容閑雅。有名於時。毎値風景山水。時援筆而題之。自寳字後。宅嗣及淡海眞人三船爲文人之首。所著詩賦數十首。世多傳誦之。捨其舊宅。以爲阿閦寺。寺内一隅。特置外典之院。名曰芸亭。如有好學之徒。欲就閲者恣聽之。仍記條式。以貽於後。其略曰。内外兩門本爲一體。漸極似異。善誘不殊。僕捨家爲寺。歸心久矣。爲助内典。加置外書。地是伽藍。事須禁戒。庶以同志入者。無滯空有。兼忘物我。異代來者。超出塵勞。歸於覺地矣。其院今見存焉。臨終遺教薄葬。薨時年五十三。時人悼之。
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