'11-04-26投稿、強調
既報にて、海水中に存在しているイオン化傾向が大きく水溶性で深さ方向の濃度が均一になり易い元素を既報の引用データから選択してその平均濃度を算出しました。
今回は放射性同位元素(水素~ウラン、プルトニウム)の中から海水のpH範囲で酸化物、水酸化物などの化合物になり、水環境内に沈積し易い元素を既報の引用データ(海水主成分元素であるNa、Mg、Clを除く)から、選択してその平均濃度を算出しました。
周期律表(クリック)で原子番号、質量数を確認できます。
⇒算出した濃度は将来的な海の清浄化など対策の「ベンチマーク」になると想われます。
今後は原発から漏洩して環境水中(主に、海水中)に存在している放射性物質の浄化に係る記載を調べる予定であります。
再び、大津波が発生して原発敷地内および比較的沿岸に沈積している放射性物質の化合物が排他的経済水域外に拡散しないように、厳重なる再拡散防止対策が必要と思われます。
<海水中の元素濃度>
濃度(ppm=mg/kg)
引例 (-2~-11)から抽出
(典型元素) 平均
ホウ素(B) 4.6 4.5 4.6 3 4.5 10.8 4.5 5.2
アルミニウム(Al) 0.00002~0.01 0.0047
ガリウム(Ga) 0.00002 0.0000013
インジウム(In) 9.2 x 10-9
タリウム(Tl) 1.2 x 10-5(0.000012)
(ランタナイド系:レアアース) 一部を抽出
イットリウム(Y) 0.000017 0.0003 0.000024 0.00009
ランタン(La) 0.0000056 ~0.000012 0.000006
セリウム(Ce) 0.0000007~0.000012 0.000006
ネオジム(Nd) 0.0000014~0.0000092 0.000004
サマリウム(Sm) 0.00000092~0.000006 0.000002
ジスプロシウム(Dy) 0.0000011~0.0000029 0.000002
(アクチナイド系)
ウラン(U) 0.003
(比較例)
ヨウ素(I) 0.06 0.058 0.06 0.1 0.053 0.07
セシウム(Cs) 0.0003 0.0005 0.0005 0.00029 0.0004
*アクチニウム(Ac)、ネプチウム(Np)、アメリシウム(Am)、
プルトニウム(Pu)は記載なし
サンプリング場所、深さ方向など不詳
⇒今回調査した元素は海水中で沈降して海底に沈積し易いと思われます。
その沈積状態は化合物の粒子径(分散/凝集よって変化する)、比重、海水温などによって、変動して基本的にはストークスの法則に則って海の底に沈降すると思われます。
但し、漏洩した放射性物質の正体(組成、粒子径など)は不詳につき、サブミクロン以下の半減期の長い微粒子が含有されている場合は、海流にのって排他的経済水域外に拡散して生態系に異変を発生させる可能性はあると思われます。川上(発生源)での総力をあげての早期回収が望まれます。
(google画像検索から引用)
<周辺環境のイメージに係る引用例>
周期律表で質量数の大きな元素の化合物、凝集粒子径の大きいほどより沿岸に沈積し易いと思われます。
(google画像検索から引用)
海水中の元素はさまざま要因によって、その存在状態が
下図のように変わると思われます。
各元素の化合物の存在形態は海(主成分:Naイオン、Clイオン)の温度、およびpHに影響を及ぼす溶存酸素(O2)、溶存CO2、SOx、NOx、POxイオン、微生物、SS(浮遊物質)、およびイオン化傾向の高いアルカリ金属イオンなどの共存状態によって変化すると想われます。
<google画像検索から引用した海水中の微量元素(化合物)の存在状態>
<<詳しく見る>>
<google画像検索から引用した海水中の溶存CO2の挙動例>
藻類などによる光合成によって消費するCO2、生成される酸素によって、それぞれの溶存濃度の変化が推察されます。CO2が多く溶解しておればpHは低くなり酸性サイドに移行します。
<凝集・分散に影響する考え方>
上記化合物の分散と凝集は海水のpHにおける各化合物の表面電荷(ゼータ電位)の正負によって左右されます。例えば、海水のpHが7.5において全て正(+)もしくは負(-)なら分散します。
今回選択した元素のうち、アルミニウム(Al)の酸化物(Al2O3)、イットリウム(Y)の酸化物、プルトニウム(Pu)の酸化物は海水pH域において正(+)を示します。*したがって、仮に、海水pH7.5とすれば、分散(いずれはストークスの法則に従って沈降してどこかの海底に沈積)していると思われますが、強いルカリを示すCsが共存している場合は海水pHが等電点に近づくため凝集して沈殿しやすくなると想われます。
*参考文献:
「ゼータ電位の測定 」の表1 各種酸化物表面の電荷零点
(または等電点)によれば、
「・・・Al2O3:7.4~9.2、Y2O3(水和物) 9.3、PuO2 9.0 、SiO2(石英) 1.8~2.5 ・・」
http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2004/kougi200405.pdf
一般的には、黄砂などの砂塵(シリカ、SiO2化合物:珪酸)、バクテリア、微生物、海藻(アルギン酸、など)由来の負(-)の共存物質の存在によって凝集すると推察されます。その結果、上記元素は既報のように深さ方向の濃度が高くなっていると考えられます。
しかし、原発周辺海域の共存物質は不明なことから、今回の漏洩した放射性物質の粒子径が小さければ海水中に分散して浮遊して拡散するかもしれません。
<シリカとアルミナのゼータ電位例>
たとえば、アルミナおよびシリカ単独では、等電点(電荷が0のときのpH)がそれぞれ約pH2.5とpH9であり、pH7~7.5(海水の平均)では両者のゼータ電位が反対になっています。マイナスを示すシリカ(SiO2)がプラスを示すアルミナ(Al2O3)に吸着しています。
また、水のpHが化合物の等電点と同じときはその化合物は分散できないので沈殿します。
(google画像検索から引用)
<タンパク質(有機物)のゼータ電位曲線例>
等電点 4.5を示します。したがって、正(+)の電荷を示す酸化物に吸着します。
タンパク質のゼータ電位曲線と等電点(電荷が0のときのpH)
(google画像検索から引用)