【悲しみも笑顔も聞きし花は咲く】哲露
春めいてきたある夜。
後輩の計らいでビルボード東京のLIVEにありつけた。
「Woman Needs Love」がかかると、あの頃の匂いが蘇る。
ディスコと呼ばれた箱が楽しかったあの時代。
街の空気は、煌びやかで、穏やかで、優しい驕りの時代。
「ゴーストバスターズ」がかかると、厳格な家庭に育ち常に表情の硬かった友人が笑ったことを強く思い出す。
演奏が始まってから終始にこやかで、ユーモア溢れるレイ。
バンドのメンバーもみんなイカす大人たちだ。
客層はまた渋い紳士淑女たち。
仕事帰りに、こうした楽しみを享受できる平和を想う。
6年前。
こんなことがあった。
紙面からありえない戦慄が伝わってくる。
あれから寄付と偽善、絆と分断、嘘と真実がせめぎ合う。
そして、人々はいつの間にか日常に流され、見て見ぬ振りの無関心がはびこる。
福島や被災地だけでなく、自分の日常と直結する政治にも無関心になりつつある。
「慣らされる」、この真の怖ろしさを、欧米、中東、アジア、日本の現状を横目にひしひしと感じる。
6年前には完成していなかったツリーに、人々は群がる。
あの日も、花は咲いていた。
目に見えないのは放射能だけでなく、慣らされて無関心になっていく無機質な心だ。
何を知ろうとし、何を考えるか。
行動より先にすることは山ほどある。
現代は本当にメロウな夜を迎えているのか。
現実を直視せよ。
そう自分に問いかけ、今宵もまた酒精をすする。
合掌。