週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

【連載】異国を旅して -韓国篇2(世界遺産昌徳宮)-

2017年02月05日 | 【連載】異国を旅して




【権勢の面影残る紅葉かな】哲露


 ソウル滞在二日目の朝を迎えた。

 ベイトン東大門ホテルの部屋からNソウルタワーが見える。

 特別市龍山区の南山公園の頂上にあることから、かつては「南山タワー」と呼ばれた。

 タワーの高さは236.7mで、南山と合わせると、479.7mの眺望となる。

 滞在中、ソウル市の随所から見えたランドマークだ。

 コンビニの飯はマズいと、ガイド役の作家Mさんから聞いていたので、朝からカップ麺をすする。

 朝早い集合だからそれで済ませたが昨夜の市場飯との落差が激しく、やはり外で食えばよかったと後悔。

 旅の二日目の朝から学ぶこと多し。


 


 安国駅で、
Mさんと待ち合わせ。


 ハングル文字に四苦八苦しながら、地下鉄を乗り継ぐ。

 外は快晴。

 危惧していた気温も穏やかだ。





 本日の観光は、世界遺産の昌徳宮(チャンドックン)。

 1405年に建立され、約270年に渡り正宮として使われた。

 朝鮮王朝の中でも、極めて美しい景観で名高い。

 自然の地形に沿って建物が造られており、優雅な庭園と相まって癒しの巨大空間を演出している。







 外国人のための通訳サービスも充実していて、日本語で案
内をしてもらう。

 流暢な日本語で、時折ジョークを交える達者ぶり。

 王宮の歴史を、とてもわかりやすくガイドしてくれた。

 写真は、ソウルに現存する最古の正門。 

 動物の石像がのるのは、やはり最古の石橋、錦川橋。 

 都会からほど近い場所に、こんな庭園式の王宮があるなんて羨ましい限りですな。







 ご覧のように、カラフルな木々のコントラストが素晴らしい。 

 そう、東京より緯度の高いので、葉の色付きが早いのだ。

 まさに、ドンピシャで、異国の紅葉を楽しめた(註:2016.11.10) 。

 なんと贅沢の極み。




 



 地を象徴する四角い池の真ん中に、天を表す丸い島が造られたのは、芙蓉池(プヨンジ)。

 芙蓉は蓮を意味し、夏場の池には蓮の花が咲くとのこと。

 天からの眺めも蓮に見えるとも言われている。

 
蓮の天井。

 汚い水に、綺麗な花を咲かせることから、聖人君子と言われるらしい。

 「宮廷女官チャングムの誓い」で、チャングムが散策をしていたのがこの場所とか。

 韓流ドラマ好きにはたまらない聖地ってわけだ。

 わしとMさんも、チャングムになりきって眺めてみた。

 女官には、はたして何が見えたのか。





 

 一枚の岩を削って造られた不老門(プルロムン)。

 王様の長寿と息災が願われ、この門を潜ると年を取らないという言い伝えがあるとか。

 愛蓮池の奥には、東屋愛蓮亭が鎮座。







 東屋の天井はどれも優美な色彩。

 屋根
は丸(空)天井は八角(人)と四角い建物(地上)と織りなす。

 かつての王宮の権勢を象徴しているようだ。

 どれも保存状態がいい、世界文化遺産になった一つの理由だろう。







 日よけの工夫なども、よくできたもの。

 冬の寒さから韓国の人々を救ったのが、このオンドル。

 部屋の下に火を焚いた、現代でいうところの床暖房。

 マイナスが冬の常時である厳寒を生き抜くための生活の知恵。

 ただ燃やす材料によっては、煤だらけになったそうな。

 韓流オンドル。

 一度、体験してみたいものだ。





 映画のワンシーンのような二人。

 どうやら王様とお妃になりきったアジア人。

 種明かししなければ、それっぽいでしょ。

 ちなみに、ガイドさん曰く、

 「1
番偉いのは、四代王様セジョン。ハングル文字作ってお札にもなっている。2番目は22代イサン」

 そう、あのイサンとのこと。







 建物の様式が特徴的。

 三国史記やら、過去の歴史が組み込まれている。

 また日本の建造物との対比も面白い。

 まさに文化の交流がなせる技。

 政争に明け暮れず、こうした平和な交際ができないものか。





 24代王・憲宗(ホンジョン)が後宮(フグン、王の妾)のために建築した楽善斎は、

 最後の皇太子、李垠(イウン)に、梨本宮家から方子(まさこ)が嫁ぎ暮らした場所。

 木を凝らした素朴な感じがある。

 海を渡り、異国の人に囲まれながら、方子はここで生涯を閉じる。

 何故、帰国しなかったのか。

 皇太子亡き後の、孤独に苛まれた日々を思う。

 彼女はどんな心境で晩年を過ごしたのだろう。
 





 秋真っ盛り。

 異国を感じさせない多彩色の紅葉。

 神様からいただいた大切な1日。

 柿の木に人々が群がり、笑顔が見られる。

 人種も、肌も、言葉も、文化も違えど、四季が織りなす造形美への畏敬は普遍だろう。

 その感覚が世界を取り巻く不穏を、払拭することを願う。

 異国の旅、まだ続きます。