日本歯周外科学会

日本歯周外科学会(会長:伊藤輝夫)より、会員および患者さんへの情報発信のページ

抗凝固剤、血小板凝集抑制剤服用患者の歯周外科手術時の注意と最新情報

2008-06-22 19:36:46 | Weblog
日常の抜歯および歯周外科手術において、患者さんの中に心筋梗塞や脳梗塞など循環器系疾患、またペースメーカーを埋入されている患者さんは血流をサラサラにするする薬剤(血液抗凝固剤、血小板凝集抑制剤)、例えば薬剤名☆ワーファリン、☆バイアスピリン、☆バナルジン、☆ベルサンチン、☆アンギナール、☆プレタール☆ドルナー、☆プロサイクリン、☆オバルモン、☆プロレナール、☆エバデールなど、を服用している場合が多い。このような時、術者は投薬担当主治医と相談し、抜歯や手術を行う際は、それらの薬剤を休薬するのが通常でしたが、2004度の日本循環器学会から出されたガイドラインに従って、口腔内の手術は直視下で創部の止血処置が可能であることから、投薬を継続して抜歯や手術を行た方が原疾患に対しても良好であるとの結論に至り、現在のところ、薬剤を服用したまま抜歯等の手術が行われているのが現状である。しかし、近時、ある報告によると術後出血で問題になるケースよりも、心筋梗塞、脳梗塞の再発が顕在化したケースが多いと言う・・・、一方、小規模手術でワーファリンを中断する時のへパリンによる「橋渡し」の安全性が疑問視されている。webMD専門ニュースサービスHeatwireによる報告では、橋渡し抗凝固薬療法を受けた患者と受けなかった患者(抗凝固薬を継続投与)の出血性合併症のリスク比較。橋渡し抗凝固薬投与の場合、大規模出血3.7%、小規模の出血9%。橋渡し抗凝固薬(ワルファリン)未投与の場合、大規模出血0.2%、小規模出血0.6%であった。即ち、口腔内小手術(通常の抜歯など)の際は、投薬担当内科医と連携のもとに、抗凝固薬を中断して手術を行う。これは、低リスク患者は橋渡し療法を行わずにワルファリン治療を4~5日間中断しても良い言う米国胸部疾患学会による現行のガイドラインに一致している。
 一方、米国のWahlの報告によると、ワルファリンを中止した493例に492回の抜歯を行ったうち、5例(約1%)に血栓症が起こり、うち4例(80%)が死亡した。国立循環器病センターの最近の検討では抗凝固療法で脳梗塞を発症した23例中、投薬を意図的に中止していた例が8例(うち4例は抜歯による)あった。中止例は退院時要介護(mRS:3以上)が71%と非中止例の21%に比べ予後が著しく悪くなっていた。抗血小板薬と抗凝固薬のいずれにおいても、抜歯時休薬により血栓症が起こる頻度は1~4.2%程度と高くはない。しかしながら、現在少なくとも300万人がアスピリンを服用しており、ワルファリン服用患者もおおよそ100万人あることを考えると、例え1%といえども、かなりの発症数
になる。また、一度発症すると非常に重篤な場合が少なくない。このような観点から、日本循環器学会の抗凝固・抗血小板療法ガイドラインでは「抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましい」と明記されている。

 そこで、術者は歯科医療の安心・安全のため、以下の事項に注意しましょう
 ◎投薬担当内科医と、口腔内の病状、外科的侵襲度、感染防止等について対診を 行うことが望ましい。
 ◎原則として、休薬しない。
 ◎確実な止血処置ができないと予測されたら、近隣の歯科口腔外科へ依頼する。
 ◎通常の残根や膿漏歯(動揺歯)の場合でも、歯周の炎症が存在し、脆弱歯肉は  的確な止血縫合ができないので、抜歯の時期を見合すべきである。歯肉炎症を  消退させたのちに抜歯・止血処置を行う。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。