日本歯周外科学会

日本歯周外科学会(会長:伊藤輝夫)より、会員および患者さんへの情報発信のページ

インプラント(フィクスチャー)に賞味期限があることをご存じですか

2009-06-03 17:21:04 | Weblog
歯科インプラント治療が発展するとともに、欧米のインプラント臨床医から、以前、聞いた話だが「古いインプラントは使わないほうが良い」・・・と言われたことがある。我が国のインプラント臨床医は、材料業者(輸入業者など)より購入する際、インプラントの製造年月日、使用期限を意識して、確認することはないようだ。また、表装ケースに使用期限の記載が有ったり、無かったり、また、ほとんどの業者も無関心である。実際、何時製造さられたのか、何時輸入されたのか、新らしい物か、古い物か、全く不明のまま、患者さんの顎に埋入されている。インプラントの表面性状に関しては、古くからオステオインテグレーション(オステオと略)の成否を左右する重要な要素であり、多くの研究が行われてきた。現在、発売されている多くのインプラントの表面はブラスト処理と酸エッチング、あるいはチタンのプラズマ溶射(TPS)など、さらに各メーカの特徴的処理が施されている。
古いインプラントの使用を避けよう
2009年5月18日共同通信社ニュースによると、人工歯根などチタン材料は製造後、骨細胞との接着力が半分以下に低下して、急速に劣化すると述べ、これは真空包装してないチタン材料は製造直後から空気中のCOが表面に付着して、細胞との接着力を阻害して、製造後1か月には50%に低下し、実際、我々が使用する数か月後には約30%まで、接着力が下がることが判明している。今日まで、インプラント治療を行っている多くの歯科医はチタン材料の劣化に関しては知られてなく、数年間は有効で、問題がないものと信じていた。そこで日頃のインプラント臨床でオステオが獲得できず、インプラントが抜ける現象の原因の一つにチタンの劣化があることに注目する必要がある。このインプラント表面の劣化を改善・防止と接着性能回復のためにUCLAの小川隆広准教授らは特定の波長をもった紫外線を照射することにより、炭素が除去され接着力が復元される実験を行ない有効性を確認した。
 インプラント表面の親水性を増強させよう
 一方、このチタンの劣化改善、骨との接着力改善については、本学会の岩田哲也先生の名古屋インプラントセンターにあるプラズマ発生装置(PICOTRON)を使ってインプラント埋入直前にプラズマ照射することにより、インプラント表面における血液の濡れ現象(親水性)が増強され、骨との接着力(オステオ)を獲得する処理をルーチンに行っている。従って、古いインプラントの埋入の際、紫外線、あるいはプラズマを照射することにより、性能が新品同様に蘇り、固定期間の短縮や、オステオの獲得が難しい骨の脆弱(オステオポロージス)患者や高齢者など)のインプラント治療の拡大が期待される。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。