日本歯周外科学会

日本歯周外科学会(会長:伊藤輝夫)より、会員および患者さんへの情報発信のページ

静脈内鎮静法の応用について

2008-07-16 19:57:50 | Weblog

歯科治療に非協力的な小児患者や歯科治療に対して恐怖症の患者など、1時間以上処置を必要とする時に、インフォームドコンセントを踏まえたうえで、患者の意識レベルを消失することなく、局所麻酔剤の作用を増強かつ補充する意味で、意識レベルを下げ、鎮静状態を得ることができる薬剤を静脈内に投与することにより、患者の抱いている不安や緊張感を緩和し、リラックスした状態でスムーズに処置(手術など)を受けられる状態にする。他方、笑気による吸入鎮静法があるが、鼻マスクの装着やガス量の消費など、問題があるので、近年、使用頻度は少ない。 この静脈内鎮静法は、直接血行を介して薬剤を投与するので、自覚的、他覚的に症状や意識レベルを観察しながら処置かできるので安全で、調節性に富んだ精神鎮静法(Psychosedation)ある。 使用薬剤としては、精神安定剤のDiazepam(セルシン、ホリゾン)が一般的である。次に、重症の全身疾患を有しない健康成人に対し、最も簡便で安心して応用できるDiazepamを使用した静脈内鎮静法について説明する。

最近、べんゾジアミンアゼピン系薬剤 #ジアゼパム、フルニトラゼパム、ミダゾラム の3種  、覚醒が速やかな ミタゾラムが多用されている。

  1. 出血が予測される時は、前投薬としてアトロピン(0.5mg)を筋注する。 これは必ずしも必要でない。
  2. 患者は水平仰臥位とする。点滴静注(Ⅴ-drip)をセットする。  例:ブドウ糖注射液5%250mLと生理食塩液100mLを混合注入液として、点滴しながら、ケーブルゴム管側からDiazepam(10mg/2mL)1Aを2分以上かけて徐々に注入しながら、Ⅴerrill徴候の出現をみる。精神的緊張度や個人差によってⅤerrill徴候[注釈末尾]の出現に差がみられるが、20mg(2A)以内までは、問題なく注入可能であ  り、呼吸抑制は極少と言われている(舌根沈下による気道閉塞0.1~5%発生率)。適量は成人体重60kg)で10mgで十分であるが、高齢者は若年成人の1/2~1/3量で充分効果が期待できる。なお、ホリゾン注射液は他剤と混合、希釈した場合白濁を生じることがある。
  3. 局所麻酔は各徴候が出現(3~5分後)してから行う。
  4. Diazepam静注後、数分で鎮痛効果を示すので、術中は常に患者と対話しながら、手術は1時間前後で終了させるようにする。効果:筋緊張の減少、鎮痛、緊張の緩和、健忘、抗痙攣作用。
  5. 1時間前後で徐々に覚醒する。術後30分位安静状態におき、のちに帰宅して 頂く。なお、車の運転を遠慮して頂くこと。次に、本法の注意点と欠点を示す。 
    a.あくまでも鎮静法であることお忘れずに、決して無意識下にならないように、麻酔深度のサインを知っておく。
    b.薬剤の過剰投与に注意。患者に応じた適量を投与。 
    c.投与時に血管痛を訴えることがある。また、覚醒時間がやや遅く、調節性に乏しいことが欠点と言える。

なお、臨床上安全性が高い鎮静法や麻酔法を応用するとしても、外科手術時の偶発症の発生については、常に念頭においておく必要がある。従って、それに対処できる備品や設備、術中患者の静脈路の確保など、日頃から緊急時のためのトレーニングを心掛けておくことが大切である。なお、緊急時に適切な対応にため、医科保険医療機関と連携していること。 

「注釈」徴候:流唾および出血抑制、眼瞼下垂(Ⅴerrill徴候、言語の不明瞭化、応答が鈍る。

保険算定について:
    静脈内鎮静法120点+使用注射液
         例:ホリゾン注射液10mg      104
           ブドウ糖注射液5%250mL   120
           生理食塩液 100mL       92
                              ー‐‐‐‐‐‐
                       316-40÷10=27.6≒28点


 


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