ワンダフルなにか ビューティフルだれか

並べてみると 輪郭がつかめるかもしれない

高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。を観る

2014-12-27 01:15:08 | 映画




wowow未加入で一年前の放送を見ていないのでずっとDVD化を待っていた。高畑を通して見えるジブリの風景は見たことがなく脇役として現れる宮崎駿も新鮮だ。インタビューの場ではない高畑宮崎二人の会話、鈴木を入れた三人の会話シーンがこれほどはっきりと映った(しかも最近の)映像作品てはじめてじゃないか。


高畑勲は「怖い・怒りっぽい・スケジュールを守ったことがない」と鈴木敏夫がメディアを通してよく言っているが、実際どんな感じなのかピンときていなかった。公の場での高畑勲は頭の良さから来る気難しそうな雰囲気は多少あるとしてもどのように怖いのか?普段の高畑勲はどんななのか?冒頭数分や宣伝ポスターのやりとりで、鈴木敏夫の発言の意味を瞬時に理解した。これか、と。それも全てに理由があり、その理由にも筋が通っているために余計に怖い。


その他にも魅力的な映像がたくさん詰まっている。制作が遅れに遅れ、机に突っ伏して「どうしよう」とつぶやく高畑勲77歳(突っ伏したり机に足を載せたり寝転んだりと高畑の様々な姿勢が今作には映っている)、自転車をこぎながら「映画できないかもね。」とつぶやき、撮影者に「いまなんと仰いました?」と思わず聞き返されるシーンなんて最高。宣伝ポスターの色に関する緊張感のあるやりとり(高畑勲が怖いとはこういうことか。言ってることが正しいだけに余計に怖い)。この高畑勲とあの宮崎駿を長年相手にしてきた鈴木敏夫ってどれだけ凄いのかと改めて思う。二階堂和美の名曲が生まれる瞬間(完成版のサビをはじめて聴き、おしゃべりがピタッと止まり聴き入る瞬間が記録されている)。


全編を通して言えるのは高畑勲の作品に対する粘り。プロデューサーと監督によるスケジュールと作品の質の攻防(録音室で目を合わさずに座る無言の緊張)や久石譲や声優たちとの作品を巡るやりとり(違和感に対する高畑の明確な説明から質がどんどんよくなっていく様は鳥肌もの後ろにいる鈴木敏夫の充実した表情を見てると、スケジュールを守れないのにまた映画を創らせてしまう気持ちがなんとなくわかる)。そして完成試写を終えた後のあの笑みと発言は印象的だ。何かを創る喜びに満ちたあの瞬間は唯々羨ましい。


赤毛のアン制作途中での宮崎駿脱退に対する高畑勲の思いを吐露するシーンは今作の中でも特に印象的なシーンだった。





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