「野口哲哉展 ―野口哲哉の武者分類図鑑―」 練馬区立美術館
何も知らないままこのチラシに出会い惹かれた作家、野口哲哉の初の個展。
とにかくこの作家、無類の鎧好きらしい。
時代によって構造の違う鎧を正確に造り分け、
「フェルメールと同時代の武将がデルフトを旅していたら?」という想像を
「デルフトの眺望」の絵をバックに洋傘を持った武将の立体造形を置いて表現したり、
架空の武家に代々伝わる兜を、先祖の肖像画と子孫の立体造形を並べて表現したり、
時に立体、時に平面によって虚実織り交ぜた世界観を創り出していた。
展示作品中一番好きだったのがこれ。
とにかく顔が良い!実に良~い顔をしている。
いろんな角度から見れば見るほど良い。
男なのか?女なのか?どっちにも見える。
兜の隙間からボサボサの前髪がはみ出てる感じが妙に現代っぽさを醸し出していたり、
しょぼくれた感じの姿勢と足先の感じがなんとも言えず良い。
こういう感じでいる時あるある!!と思わずにいられない。
戦国時代に自分が行ったら絶対こんな感じに決まっている。
歴史の真ん中には絶対にいないタイプ。
後ろ姿もたまらない。
何度もこれを見返してはニヤついていた。(なぜこれの絵葉書が売ってないんだ!?)
ある時代の甲冑と全く同じ構造で素材をプラスチックにしたらSFっぽくなるという作品。
【トークショー】
作家本人と山田五郎によるトークショーがあるということで会社を早退して行ったのだが、
わざわざ早退した甲斐のあるおもしろい内容だった。
山田五郎は、野口の鎖帷子のこだわり方に「明治の超絶技巧の工芸作家を連想する」と語り、
静岡にプラモデル工場が集中しているのは何故か?という話(徳川家について行った江戸職人の話)や島津製作所が辿ってきた歴史(仏具から始まり人体模型・マネキン製作と枝分かれしていった歴史)を絡めながら野口を「そういった流れの中にあるように見える」と言っていた。
(「そういった流れ」とは日本の工芸の技術・感性・人材が時代のニーズに合わせて形を変えながら生き残ってきた流れの事だと思う。因みに野口本人は「工芸とはちょっと違うと思う」と語っていたが、私には山田五郎の話がとても印象に残った。)
【雑感】
紗錬(シャネル)のロゴが入った鎧「シャネル侍着甲座像」のシリーズとして
ヴィトンもやって欲しい。鎧に合うブランドカラーだと思うしあのロゴの兜は
さぞかしカッコイイだろう。
当て字をするなら「備屯」がいい。
図録として先行販売していた作品集